2015年 アイルランドの旅 10

今日は珍しいものを見た。

ことの発端は、買い物の帰り、死んだカモメの子供らしきものを見つけたことだ。

かわいそうに。車にはねられたのかな、と思ったが、そんなに激しい損傷もなく、また、歩道の上だったのでどうしたのかな、と気になっていた。

そこから数メートル歩いて来たら今度は全く同じくらいの、やっぱりカモメの子供らしき鳥が、ある家のドアにさしかかる階段のところで右往左往している。

見たところ飛べそうにない。怪我をしているのではなく、まだ飛べそうではないのだ。

このままでは他の動物に襲われるかも…もしかしたらさっきのもそれが原因だったのかもしれない。

もう少し歩けば仲間が一杯いる川縁に着くのだが、子供のカモメには遠すぎるし、車もかなり走っているので危険だ。

僕らは「さて、どうしたもんだろう」と、ちょっかいを出しながら通りに出てこないようになんとか道をふさいでみた。

しかしこのままではラチがあかない。

10分ほど困っていたところに、スペイン語を話す3人の女性が(一人は子供)歩いて来てすぐ状況を察知すると、どこかに電話をかけた。

なんでも友人が動物のレスキューに関する仕事をしている、と言う。だが、電話が通じないといい、そのうちの2人がちょっと行ってくる、と川縁の方まで歩いて行った。

残った一人が「今、レスキューを連れてくるから。親はいないのかしら」と言いながらあたりを見回して「心配しなくても必ず助かるから」とにこやかに話す。

それから10分ほどしてさっきの2人がもうひとりの女性を連れて帰って来た。どうやらその人が彼らの友人のレスキュー隊員らしい。

そして、ものの見事に持って来たコートのようなもので、サット包んでニコニコしながら「これで大丈夫。みんなありがとう」と言いながら去って行った。

クリント・イーストウッドか、古くはアラン・ラッドの後ろ姿を見る思いだった。

何はともあれ、素晴らしい仕事だな、と感激した一日だった。