キアラン・サマーズ Ciaran Somers

とてもいいフルート奏者であり、僕らが生きている証であるアイリッシュ・ミュージックの基本中の基本をたっぷり聴かせてくれた演奏家であった。

この音楽を演奏しているにもかかわらず、楽し気に飛び跳ねるパフォーマンスばかりが横行している昨今。そしてそれがもてはやされているこの国。

確かに、あまり一生懸命になっても時間が足りないし、一般的な人達にはどうでもいいことだし、本場の超一流のミュージシャン達と関わるよりも、自分たちの身内でつるんでいるほうが気楽だ。

もちろんみんなで楽しむことも音楽のひとつの大切なかたちであるのだが、これでお金をいただいている僕らにはこの音楽に対する飽くなき探求心と尊敬の気持ちがとても大切なこととなる。

知る限り、本当に真面目に取り組んでいるミュージシャンもこの日本には数少ないが居ることも確かだ。問題はそのことがさっぱりわからないのにこの音楽に関わってこようとする人間が居ることなのかもしれない。

とに角Ciaranの演奏からはまた気を引き締められるいいチャンスを与えてもらった。

僕は、アンドリュー・マクナマラに始まり、ジェリー・フィドル・オコーナー、ブリーダ・スミス、トニー・マクマホン、ジョン・ヒックス、コーマック・ベグリー、パディ・キーナン、フランキー・ギャビンを日本に紹介した。イデル・フォックスは大使館の招聘だったが、彼女との素晴らしい演奏も体験させていただいた。

そして彼らは一様にトラッド(伝承音楽)に対する真摯な姿勢を僕らに見せてくれた。

だが、この日本でアイリッシュ・ミュージックを自分たちの生業の一角として演奏している人たちがほとんどそういった会に姿を見せないことが不思議でならない。

ま、諸々の事情もあるのだろうし仕方のないことだが…。

80年代、トニー・マクマホンがコマーシャリズムに乗りかけたアイリッシュ・ミュージックを嘆いていた、というが、アイルランドですらそういうことが起きるのだ。

そんな中で、しっかり伝統を守っていきながらこの音楽で生活を築いていく人達は貴重な存在だ。

Ciaran Somersにもう一度「ありがとう」と言っておきたい。