初めて会った時のことは今でも鮮明に覚えている。それは若手新進バンド“ルナサ”が初お目見えしたカリフォルニアのパブでのことだ。
CDでは聴いていたので早速出向いてみた。
パブは大勢の人で身動きができないほどごった返している。しかしその頃、僕もそのパブの中では有名な存在だったので、多くの顔見知りが「じゅんじ、ここ空いてるぞ!」とステージのすぐ横のベンチに誘ってくれた。
演奏が始まった。力強い、スピード感溢れる堂々たるサウンドがパブ一杯に響き渡る。
まだ、パイプ奏者のキリアン・ヴァレリーはいなかった、と記憶している。
余談だが、キリアンとはずっと前にセッションで一緒に演奏したことがあり、ニュー・ヨークに来たら是非寄ってほしい、と言って、名刺のうらに電話番号を書いてくれたことがあった。そして、その名刺は彼の兄である超絶テクニックのコンサルティーナ奏者、ニール・ヴァレリーのものだった。
さて、ファースト・セットが終わると深ぶかと野球帽を被った若者が僕に近寄ってきた。さっきステージでフルートを吹いていた男に似ている。
手にはCDを持っている。そしてこう言うのだ。
「じゅんじ、君じゅんじだよな。大ファンなんだ。これにサインしてくれないか?俺の名はケビン・クロフォード」
そう言って僕と、ジャック・ギルダー、デイル・ラスのトリオ“ジョディース・ヘブン”のCDを差し出した。
驚きだ。こちらがサインしてほしいくらいなのに。
ルナサは、以後何度も聴きに行き、また様々なフェスティバルでも共演することになった。
あるカリフォルニアのフェスティバル会場でのことだが、出演者はマーティン・ヘイズとデニス・カヒル、ケヴィン・バーク、パディ・キーナン、チェリッシュ・ザ・レディース、ジョン・レンボーン、ルナサ、そしてパディのギタリストとして僕がいる
僕がケヴィンに「こんなリヴィング・レジェンドがうろうろしている楽屋の中に自分がいることは信じられない」と言うと、彼がこんな風に言った。
「何を言ってるんだじゅんじ。君も、もう充分リヴィング・レジェンドのうちの一人なんだぜ」
ケヴィンを筆頭にフィドルのショーン・スミス、パイプのキリアン・ヴァレリー、ベースのトレバー・ハッチンソン、そして今はポール・ミーハンに変わっているが、ギタリストのドナウ・ヘネシー、みんないい友達だ。
特にケヴィンはとても気さくで人なつっこい、誰とでも明るく接してくれる愛すべき人物だ。
クレアー ベースのバンド“Moving Cloudでの演奏、そしてDflute というアルバム、In Good Companyなど、彼の創り出す音は僕のフェイヴァリットなのだ。