Irish Musicその118

Ashokan Farewell   (Waltz)

余りにも有名な曲であり、またアイリッシュ・チューンでもないので、既にコラムで書いたような書いていないような、よくわからない位置にいた曲だ。この曲についてはLover’s Waltzの項目(12)で触れていた。同じ作者ということで。

この曲を初めて聴いたのは1984年にリリースされたFiddle FeverのWaltz of the Windというアルバムだった。その年、NYのソーホー辺りをウロウロしていたら彼らのコンサートの会場に出くわした。偶然だったし、人気の高いバンドだったので勿論ソールドアウトで中には入れず、扉の隙間から少しだけ聴いた。

アルバムを手に入れたのはその直後だったかもしれない。いや、もう存在を知っていたのだから直前だったかもしれない。完全なジャケ買いだった。そして内容も素晴らしかったが、とに角Ashokan..に強く惹かれた。変なタイトルだな、と思って文献を読んでみたら、NYのAshokanで行われるMusic & Dance Campのテーマ曲であることが分かった。

ほどなくしてアメリカの公共テレビ局PBSで南北戦争を題材にしたドキュメンタリー番組が放送されたが、そのメインとなる音楽がこのAshokan Farewellだった。それはそれは素晴らしく番組を盛り上げていた。多くの人はあの番組の音楽、ということで知ったようだ。数多くの録音が残されているがあまりに名曲なので、これをむやみにアレンジする人もいない。ワルツではなく、スコットランドスタイルのラメント(哀歌)だと言う人もいる。また、Jay Unger自身、作った時からAly Bainの演奏をイメージしていたらしい。Transatlantic Sessionでそう語っていた、という記事もある。とに角しつこいようだが美しい曲だ。