2月も半ば過ぎた

この月の初頭から息子が来ていた。

既に国籍もアメリカなので、今回のコロナ禍にあって入国が叶わなかったが、彼の来日目的は美味しい日本の食にある。

そのために3年間じっと我慢していた…ようだがその間ヨーロッパに何度も出掛けて行ったり、東海岸にも出向いていた。

どこへ行ってもその土地の食べ物を食する姿勢は見上げたものだ。

コロナ前、フィリピンでの友人の結婚式に出席するので、その時日本に立ち寄ろう、と考えたそうだ。

そしてそのようにスケジュールを立てたが、いや、待てよ、先にフィリピンに行って腹をこわしたら日本で美味しいものが喰えない。

ならば先に日本で美味しいものを一杯食べてフィリピンで腹をこわしてアメリカに戻ればいいか、とスケジュールを組み直した。

彼曰く、フィリピンの食べ物は少し合わないみたい。でも、その土地に行ってその土地のものを食べないことはない…らしい。

ヨーロッパの、特にイタリアはお気に入りの様で、美味しいパスタを食べた時には、意を決して厨房に出向き、シェフに指導をあおったほどだ。

今回の日本ツァーではトンカツがお気に入りだったようだ。

もちろん以前にも食べていたが、やはり3年ぶり。こんなにも美味しかったのか、と再認識したようだ。2回食べた日もあった。

寿司も高級なところにはとても連れて行けないのだが、クオリティはそこそこの回転寿司だったら満足して20皿は食べる。

今、サンフランシスコですしを食べようとしたらとんでもないことになるそうだ。

マグロ一皿で7ドルとか8ドルとかするらしい。僕の頃は4ドルだったが、それでも高い。

日本の食パンにも感激。1斤買っても5分と持たない。

情緒も何もない、と言えばそれまでだが、本人は至って感激しているのでただ単に止まらないのだろう。

ラーメンもやはり美味しいようだが、アメリカではラーメン1杯20ドルとか当たり前田のクラッカー?のようだ。それでいて日本のものとは雲泥の差がある。それは僕にも分かる。

しかし、本人曰く、食欲は落ちたそうだ。笑かすやないか!というところだが。

食べ物の話はこれ位で、しかし綺麗な国だなぁ、とつくづく言っていたのが印象的だ。

僕もアイルランドから戻ると本当にそう思う。

日本では商店の棚は常に美しく並べてあるが、アイルランドのいわゆるデパートなどは床に商品が散乱している。店員も別に気にはしていない。

フードコートで家族が食事をした後は「おい、犬でももうちょっと綺麗に食べるぞ!」と言いたくなるくらいありとあらゆる残飯がところ狭しとばらまかれている。

もちろん皆がそうではないが、そんな光景は日常茶飯事、よく見かける。

しかしながらこの国の未来に関しては少し気になったようだ。

それは地球規模で起こっている現象かもしれない。

例えば、トランプのような人間が大統領になる。この時代にあって戦争を起こす奴がいる。

そればかりではなく至る所で人間は馬鹿な事をやっている。

アメリカも最低な国になってきたけど、世界中どこを見てもそんなに変わりはない。

ただ日本だけはこんなに綺麗にまとまっている国なのに、何故か将来に希望が見えない、と先日アイルランドから帰ってきたときに僕が感じたことと同じことを言っていた。

そして、さすがアメリカに居るだけに中国や韓国にもかなり関心があるようだ。

日本は近いだけにもっともっとこれらの国に若者が関心を持ってもいいのではないか、とも言っていた。もちろん政治的に、という事だろうけど、自分の国の政治にも無関心なのだから仕方がない。

しかし、あの役に立ちそうにもない面々を見せられたらだれでも「あんたらのお好きなようにどうぞ。こっちはこっちで適当にやっていくし」とでも言いたくなる。

久しぶりに会話が弾んだ。

彼の親しい友人の中のモン族の女性のシックスセンスの事など。だいたいモン族という人達のことも僕は良く知らない。

かなり広範囲に世界を見てきているので、ちょっと理屈っぽくはあるかもしれないが、それなりに説得力はある。

しかし、込み入った話になると英語になってしまうのでこちらも大変。それでも日本語はほぼ完ぺきに通じるのでその辺は楽だ。

すし屋で「炙りの、どぐろって何?」と訊いていたが。