例によって、ライナーで書き切れなかった事をここに記しておきます。
★ Englishman in New York / Jordu
長い間聴いてきたスティングの大好きな曲を、いつかバンジョーで等とは考えていなかったが、ある時ふとバンジョーを手に取った時、突然弾き始めてみた。
お、なんかいい感じ!と思いながらも、これを形にするにはもうひとひねり何か必要だな、と感じ、Jorduを挿入することにしてみた。アイディアは、原曲の途中でブランフォード・マルサリスのサックスが入るのをヒントにして。これは結構ハマったような気がする。
思い入れがあったこの曲には、アメリカでの経験が大きく左右している。多くの移民に囲まれて過ごした想い出がこのアルバムのタイトルとしても、最初の曲としてピッタリだと感じた。
★ Count on Me
特によく聴いていたわけではないが、ブルーノ・マースの、僕にとっては名曲という感じ。
どことなくOver the Rainbowを連想させるこのメロディはとても印象に残った。
これ、バンジョーで、と思った瞬間に曲終わりまでの構想が成り立った。
詩の内容もYou’ve got a Friendを思い出させるほのぼのとしたものだ。
バンジョーのチューニングはダブルC、クローハンマーで演奏している。
★ Margaret’s / The Grey Owl
Aly Bainの演奏でよく知られている曲。とても親しみやすいメロディだと感じる。
2曲目のGrey Owlは実際にはDで演奏されるものだが、ふとバンジョーを手に取ってGフォームで弾いてみたらうまくハマったので、これでキーをAにしてみたら…と思い、それならばMargaret’sと良く合うんではないかと考えた。
★ The Boys of Ballycastle / The Pride of Petravore
ここらでごく普通のアイリッシュチューンを。
多くのホーンパイプは5弦バンジョーにとって比較的アレンジしやすいものだと感じている。この曲はKevin Burkeの演奏でよく聴いていた。コード進行についてはいろいろ試行錯誤したが、これが自分にとってのイメージ。少しテキサス・スウィングからヒントを得てみたが、僕は多くのホーンパイプでそんな手法を取っている。
2曲目はEileen Ogというタイトルでも(この場合は歌)知られているがDe DannanがRights of Menに続いて演奏したものがとても有名で、セッションではその2曲はほとんど必ずといっていいほどメドレーとして演奏されることが多い。
Rights…はすでに録音しているのでここではこの形にしてみた。
★ Mr.O’Connor
出た!という感じのオキャロランによる訳の分からない曲。しかし、このメロディは大好きだ。こういう曲に接すると何故か想像以上にハマってしまうのは何故だろう?
僕は常日頃から思っているが、本人は間違えて演奏したものが採譜されてそのまま現代に伝えられているものなんていうのもあるんではないか、なんて。
これもそのひとつで、どういう感覚で作られたものか見当がつかない。しかし、なんとも美しい。初めて聴いた時には、おいおい!という感じ。これを伴奏者に伝えるのは…勿論コード譜などを書けばいいのだが、そういうものでもないような気がする。究極、メロディを身体に入れなければどうしようもないものなのかもしれない。
★ The Bold Fenian Men / Sally in the Garden
1曲目はアイルランドの美しいメロディを持った歌唱曲。カリフォルニアのギタリスト兼シンガーで、名前は忘れたけど、彼の歌うこの歌が好きで、僕はよく彼にリクエストしたものだ。プロのミュージシャンではないけど、この歌はとても味わい深く歌ってくれた。
キアランも大好きでよく歌っていた。本当に美しい曲だと思う。
Sally…は過去にも録音しているが、ここではクローハンマーとスリーフィンガーのダブルバンジョーにしてみた。
★ Lost Lula
ジェイソン・ロメロの大好きな曲。過去にも録音したことがあるので、ここではあっさりと。
★ Flatbush / Clinch Mountain Backstep
最初はアンディ・スタットマン作のマンドリン曲。これは様々な分野で人気の高い曲だ。
この曲を聴くと何故か「山ネズミ ロッキーチャック」のテーマソングを思い出してしまう。
もし興味が湧いたら聴いてみてください。共感する人って居るかなぁ。
Clinch…も過去に録音しているが、ここではマイナーのメロディに敢えて正面からメジャーのコードをぶつけてみた。モーダルサウンド炸裂というところだ。更にダブルバンジョーにすることによって、ちょっとうるさ目の祭囃子のようになったかもしれない。
それもひとつの狙いではあったが…。
★ The Shadow of Your Smile / The Bluemont
Back to BanjoでもMistyを収録したが、このような曲をバンジョーの為にアレンジするのが大好きだ。暇さえあれば(いつも暇といえば暇だが)こういったものをポロンポロンと爪弾いては最適なコード選びを楽しんでいる。
Bluemontも過去に録音しているが、なんと美しい曲だろう。そしてまた、前曲にバッチリ合うような気がしてならない。
★ The Monaghan / Waterman’s
最初の曲は最も好きなジグのひとつ。この美しいメロディに最適なギターコードを乗せていく時がたまらなく好きだった。続いては限りなく現代的な曲。マイク・マゴ―ドリックのフルート演奏によるエキサイティングな、スリリングな曲。バンジョーでどんな味が出るか分からなかったが、ベースの河合徹三がここでも大活躍してくれた。そのおかげで少しは形になったようだ。
★ Just a Little Memory
この曲は数年前に書いたものだが、今回のアルバム用に更に書き加えてみた。アルバムはここからMemoryの域に入る。Englishman in NYに始まり多くの(全てではない)想い出がこの曲に、そしてこのアルバムに詰められている。
★ Blackberry Blossom
フィドルチューンとして、またバンジョーチューンとしても有名なこの曲。ナターシャー・セブン最初のアルバム、通称「お地蔵さん」でも弾いたもの。当時はギター無しでバンジョーだけだった。多分ヴェガのスクラッグスモデルを使っていたと思う。今聴いてみると、確かに若い!という感じが満載だ。でも、今回もそれなりに元気いっぱい弾いているように聞こえる…なんて思うのは僕だけだろうか?とても好きな曲。E マイナーになるところがたまらないが、アイリッシュでは全く違うメロディのBlackberry Blossomが存在するので、当初二つの曲をメドレーで、と考えたが、ここではMemoryという意味も含めて単独で録音した方が良いかな、と考えた。
★ Thirsty Boots
疲れた靴は高石氏の唄の中でもとても好きなものだ。
初期の頃、高石さんのボーカルと僕のギターだけで録音したことがあったけど、あれってレコードに入っていたっけ?だんだん記憶が…。
ナターシャー・セブンの録音では確か僕が12弦ギターを弾いたような気がするけど…あれ?省悟だったかなぁ。この辺はドクターサウンドの小林君に訊くと、彼は何故か知っている。とに角、高石氏の訳詩には素晴らしい感性を見出すことができる。
ライナーにも書いたけど、そのうち笑い話でもしに行くんで、また「あの子の膝まくら」から始めてみましょうか。
ところで…何気なし突然、ヘイヘイヘイを弾いてしまいました。自分の中のひとつの時代の締め括りなのか、イメージなのか、やっぱりJust a Little Memoryなのか…。