今回から僕らのレパートリーについて詳しく書いてみよう。いつまで続くか、そして、
あまり書くべきこともないものもあると思うが、アイリッシュ・ミュージックに本格的に取り組みはじめてから23年あまり、希花とのデュオを組みはじめてから3年目、アイリッシュ・ミュージックのひとつの要素であるレパートリーの数もだいぶ増えてきた。
今回から僕らのレパートリーについて詳しく書いてみよう。いつまで続くか、そして、
あまり書くべきこともないものもあると思うが、アイリッシュ・ミュージックに本格的に取り組みはじめてから23年あまり、希花とのデュオを組みはじめてから3年目、アイリッシュ・ミュージックのひとつの要素であるレパートリーの数もだいぶ増えてきた。
Mayor Harrison’s Fedora/The Humours of Westport/Bucks of Oranmore(Reel set)
★ Mayor Harrison’s Fedora
“3パートのいいメロディを持ったリールで、もう20年以上演奏している曲だが、驚いたことに3パート目を知らない人が結構いるようだ。
ドーナル・ラニー達が2パートだけでやっていたせいだろうか。
オニールのコレクションには既に存在している古い曲である。このモデルになったハリソンは1897年から1915年までシカゴのメイヤーであったらしい。ちょうどオニールがシカゴで多くの曲をコレクションしていた頃だ”
The Curlew/Paddy’s Trip to Scotland/Dinkey’s(Reel set)
★ The Curlew
“Josephine Keegan作のこの曲を初めて聴いたのは、まだこの音楽を始めたばかりの頃でAltanの録音からだった。メロディの美しさ、特にBパートの美しさは特筆すべきものだ。
アイリッシュ・ミュージックにのめり込んだきっかけともなった曲といっても過言ではない。コード進行も非常に興味深い”
★ Paddy’s trip to Scotland
“典型的なDonegalチューンといえるだろう。若い人たちのほとんどはDervishの演奏で聴いているが、僕はやはりAltanのバージョンが好きだ。僕はこの曲にテキサス・フィドル・スタイルの伴奏に使うようなコード進行を使っている”
★ Dinkey’s
“この曲を書いたのはFrancis Dearg Byrneだと言うひともあれば、彼はトラベリング・ミュージシャンであるDinkie Dorrianから習った、と言うひともいる。多分にCape bretonフィーリングに溢れる曲なので、どうしてもNatalie MacMasterやAshley MacIsaacの演奏が耳に残っている”
Bush on the Hill/Castletown Connor/McIntyre’s Fancy(Jig set)
このセットはyou tube上で僕らとFrankie GavinとがGalwayで演奏しているものが見れる。
★ Bush on the Hill
“とても幅広い音の動きをする人気の高い曲だ。アメリカではFool on the Hillと呼ばれていた頃がある。ご存知ブッシュが大統領だった頃、ビートルズの曲とかけていたのだ”
★ Castletown Connors
“Ned coleman,Tommy mulhairesなど多くの名前がある曲だが、前の曲からのつなぎがとても好きでくっつけてみた。
★ McIntyre’s Fancy
“Siobhan O’Donnelleの#2だ、という人もあれば、John Bradyの作だという人もいる。
どちらにせよ、いいメロディを持った曲で若い人にも人気がある。Bパートで僕が弾いているコード進行を使う人には会ったことがないが、これをアイルランドで弾くと誰もがにんまりとする”
Chief O’Neill’s Favourite/The Galway Bay(Hornpipe)
★ Chief O’Neill’s Favourite
“おそらく、最も多くの録音がのこされているホーンパイプのひとつだろう。親しみやすいメロディと、Bパートで突然雰囲気が変わることで、人気があるのかもしれない。ところで、この人(オニール)は19世紀後半から20世紀に渡る頃のシカゴの警察署長だった人で、驚異的な記憶力で多くの曲を収集していた、とされる”
★ The Galway Bay
“Gマイナーで演奏されることが一般的なとても美しいメロディを持った曲。日本ではあまり聴くことがないが、実に多くの録音が残されている。Tommy PottsはDrunken Sailorを録音しているが、出だしはどう聴いてもこの曲だ。おそらくメドレーだと思うが、どちらもとても美しいメロディで希花のフェイバリッツでもある”
The Choice Wife/The Humours of Whiskey(Slip Jig)
★ The Choice Wife
“実に多くのタイトルを擁する曲でアイルランド語でAn Phis Fhliuchというらしいが、アメリカでもThe Choice Wifeのほうが一般的である。5パートの力強い曲”
★ The Humours of Whiskey
“ずいぶん前からとても好きだった曲。Altanで最初に聴いたかもしれないが、僕らのこのメドレーは実に気持ちのいい運びになっていると思う。Bmベースの曲だがEmで演奏する人も多くいるようだ”
The Twelve Pins/Kilty Town(Reel)
★ The Twelve Pins
“Connemaraの山の名称らしいが、Chalie Lennon作の素晴らしい曲で、日本の演奏家たちにはあまり馴染みがなさそうだが、希花のフェイバリッツのひとつ、ということだ。とても明るいメロディを持っている”
★ Kilty Town
“これもCharlie Lennonの作品だ。セットで演奏されることがほとんど。Frankie Gavinが素晴らしい演奏を残している”
Gypsy/Cavan Pothles(Tune)
★ Gypsy
“Lord of the Danceの中に登場した曲。Ronan Hardimanの作であろう。実際は管楽器で演奏されたものだったが、Gillian Norrisのとても官能的なダンスとともに、印象的なメロディであったので、これはレパートリーに入れない手は無い、と感じたものだった”
★ Cavan Pothles
“Donal Lannyの作になる非常にキャッチーな曲。どこから聴いてもスティングのあの名曲Englishman in New Yorkを素材にしているとしか思えないが、どうだろうか。Sharon Shannonのレコーディングを初めて聴いた時からそう思ったが、それはそれとしてかっこいい曲である。いかにも若者好みだが、ShannonもLunnyもれっきとしたトラッド・ミュージシャンでもある”
Forget Me Not/Tripping Down the Stairs/The flowers of Red Hill(Reel)
★ Forget Me Not
“様々なタイトルで呼ばれている。
の演奏でキーはDだったが、
★ Tripping Down the Stairs
“Arcadyの演奏で聴いたものが最初だった。
★ The Flowers of Red Hill
“De Dannanの初期のアルバムの中で(彼らのタイトルはThe Clogherだった)聴いたのが最初だろうか。
Smiling Bride/The Handsome young Maidens(jig)
★ Smiling Bride
“Charlie Lennon作。題名どおり、にこにこしたくなる曲だ。
★ The Handsome Young Maidens
“これもCharlie Lennonの作品。この2曲は、
The Eel in the Sink/McFadden’s Handsome Daughter/The Limerick Lasses(Reel)
★ The Eel in the Sink
“あまりポピュラーではない曲かもしれないが、Jody’s Heavenでの録音が残されている。その時に使ったアレンジ(
★ McFadden’s Handsome Daughter
“3パートの綺麗な曲だ。
★ The Limerick Lasses
“3パートで演奏される場合と4パートで演奏される場合がある。
Lord Gordon(Reel)
★ Lord Gordon
“5パートあるが、どこもかしこも似たり寄ったりで、
フィドラーにとっては永遠の名曲のひとつであろう。“
Dennis Doody’s/Tolka Polka/Tina Lech’s(Polka)
★ Dennis Doody’s
“Donal Lunnyのライブ・アルバムで覚えた曲。
★ Tolka Polka
“Donal Lunnyの作。普通に演奏しても結構トリッキーだが、
★ Tina Lech’s
“
Old Grey Goose(Jig)
★ Old Grey Goose
“Clareで毎日のように聴いていて、
Strayaway Child(Jig)
★ Strayaway Child
“Bothy bandの演奏で聴いてからずっと好きな曲だった。
An Paistin Fionn/Eamonn McGivney(hornpipe)
★ An Paistin Fionn
“同名のエアーも存在する。あまり聴くことがない曲だが、
★ Eamonn MaGivney
“Keep Her Lit とJody’s Heavenでも手がけたJacky Tarとほとんど同じ曲だろう”
Morning Dew/Jenny’s Chicken
★ Morning Dew
いつ覚えたか覚えていないくらい有名な曲だ。そのむかし、Stockton’s WingがGolden Studというセットの後半にちょっとメロディを拝借して使っていたような記憶がある。
以後、Dale Russのフィドル教則ビデオでリールのお手本として使っていたものをよく見ていた。その後ケビン・バークとミホーのビデオでも最初のセットの3曲目としてよく聴いたものだ。
基本Emで演奏したらよいのだが、Cmaj7, Am7,A7などを巧みにいれることによって変化がつくが、入れどころが微妙なニュアンスの違いを生む。トニー・マクマホンと演奏する時とマーティン・ヘイズと演奏する時とではギタリストの役割は違ってくるのだ。その辺が最も顕著に表れるタイプの曲かもしれない。因みにPaddy Cunnyは3つのパートの最後のパートから入るが、これもかなり効果的なやりかたかもしれない。
★ Jenny’s Chicken
“Michael Colemanによって一気に有名になった曲だ。ほとんどSleepy Maggieと同じ曲ではないか、と言う人もいる。この曲にいくにはBonnie Kateがベストだ、という人もいるが、ぼくらはMorning Dewからいくのがとても好きだ。そのむかし、スコットランドから来たLiam Whiteという、とても上手いとは言い難いギタリストがいたが、彼のアイデアのいちばん優れたものがこのセットを考えだしたことかもしれない。若手ばかりで、よくセッションに行ったものだ。Liam, Dana Lyn, Tina Lech, Ted Colt, Athena Targis当時、みんな若くて相当勢いに乗ったセッションを繰り広げていた。なかでは僕が一番歳寄りだった。40代後半だったかな。かれらは全員20代初めだった。そんななかで勢いと共に生まれたセットで、希花がその勢いを継いでくれている。
今日はこれだけ。しばらく北海道に出かけるので、帰ってきたらまた書き始めます。
Thomas’ Farewell/As the Sun Was Setting(Waltz set)
★Thomas’ Farewell
“読み人知らずだが、トラディショナルではない。美しいメロディを持ったワルツだが、あまり有名な曲ではない。キルフェノラ・ケイリ・バンドのレコーディングだけが唯一残されているというが、ティプシー・ハウスでは随分昔からやっていた。AパートとBパートのテキスチャーの違いはギタリストにとっても非常におもしろい曲だ”
★As the Sun Was Setting
“John Kirkpatrick作曲とされる美しいマイナー調の、どこかウエスタン風の曲だ。僕はデイル・ラスから習った” どこか日本人好みのメロディは、Aパートのウエスタン風からBパートの日本調ともいえる半音階の下がり方が印象的だからだろう”
Gold Ring(Jig)
★Gold Ring
“この曲には3つのバージョンがある。いや、それ以上かもしれない。パート数もいろいろだ。僕らは7パートでやっている。しかも、僕は勝手にパイプ・バージョン、フィドル・バージョン、そしてD Gold Ringと呼んでいるがDのもの以外はどちらもパイプで有名かもしれない。Seamus Ennis,Willie Clancy などで知られているので、やはりパイプ・チューンと言えるだろう。僕はDale Russと録音したことがあるが、これはThe Boys of the Loughのバージョンで、あまり知られていないものだ。整理するとKey of Gがふたつ、Key of Dがひとつ。ただ、Gの方のDaleと録音したものはKey of GだがDコードから始まる。Gold Ringを演奏するのならこの3つとも覚えておきたい。かわいそうな希花である。伴奏に於いても、7つもパートがあると、そのすべてのパートの音の動きを正確に把握する必要がある。それでないと単調な面白くない曲に聴こえてしまう可能性がある。因みにThe Broken Gold Ringという曲もあるが、これはDのバージョンの最初の2パートだけを演奏されるものだ。最後に面白い話をひとつ。Seamus Ennis曰く、この曲はアイルランドの妖精によって書かれた曲、らしい”
Galway Reel/Beare Island/Maudabawn Chapel/Hunter’s House(Reel)
★Galway Reel
“これは間違いなくLarry Redicanの作だ、という人もあれば、Paddy Faheyだという人もいる。曲調から察するにFaheyではないと僕は思う。タイトルではIroning Boardという人もいる。少しトリッキーな曲だが、Liz Carollの演奏でよく知られるようになった。伴奏者にとっても面白い曲だ”
★Beare Island
Kevin BurkeのライナーではDale Russの曲だ、と書いてあったが、本人曰く、ずっと前にKevinに教えたことはあるけど、僕の書いた曲じゃない、ということだ。いろいろ調べてみるとRichard DwyerがFinber Dwyerの為に書いたFinber Dwyer’s Fancyという曲だという説が最も有力かもしれない。Key of Eだが BパートでEmになる魅力的な曲”
★Maudabawn Chapel
“Ed Reavyのペンになる最も有名な曲のひとつだろう。BパートはDrowsy Maggieのような出だしだ。Eileen Iversはエアーのようにして弾いているが、それほどに美しいメロディを持ったリールだ。Kevin Burkeでも有名だが、、1979年のEd Reavy本人の録音も残されている。Edは1898年にCavanのMaudabawnで生まれた。これはローカルの教会をモデルにした曲だ。彼は1912年にアメリカに移り、フィラデルフィアで1988年に亡くなるまで水道屋として働いていたようだ”
★Hunter’s House
“前の曲からの繋がりはThe Green Fields of Americaのレコーディングから学んだ。これもEd Reavy の有名な曲で、ただ単にReavy’sというタイトルでも知られている。
Master Crowley’s/Roscommon (Reel)
★Master Crowley’s
“いつ頃から演奏しているだろう。Joe Cooley生き写しの演奏をするPatricia Kennellyのアコーディオン・プレイにしびれたのはもう13年ほど前のことだ。別名(勿論いっぱいあるが)Miss Patterson’s Slipperとしても知られる。Begley家のみんなと演奏してからは、すっかり希花の得意曲となった。なかなか彼女のようなフィドリングはアイルランドでも聴けない”
★Roscommon
“よくMaster Crowley’s #2としてメドレーで演奏される。Andrew MacNamaraが2曲を交互に演奏したが、Brendan Begleyも同じことをやっていた。ふたりともやんちゃな性格だ。僕らもそのやりかたがとても好きだ”
★ Boogie Reel
“John Nolan作。Terry BinghamはThe Durrow Reelというタイトルでやっていたが、これだけ作者もはっきりしている曲でも、伝わり方でこのように変化していくのは、この音楽の面白いところだ。BoogieというのはNolanのバンドのキーボード奏者のあだ名。僕らはJosephin Marshの演奏が気に入っている。もう、何年も前から演奏しているが、Bパートにブギーのリズムを使っているのは僕ぐらいかな。僕は90年初め頃、バンジョー弾きのSuzanne Cronninから教わった”
★ Splendid Isolation
“Brendan McGlinchey1973年の作、と言われるが、Kevin Burkeが1972年に、すでに録音している、という情報もあるので、71年から72年の作品ではないかと思われる。73年と言ったのは本人らしいが、多分記憶も定かではないのだろう。数多くの曲を作っていれば無理もないことだ。だが、作った経緯に関してはかなり明確だ。
アイルランド・ツアーを終えた彼は、ダブリンの空港でロンドン行きの飛行機を待っていた。2週間にわたるツアーでは、バンド・メンバーともさほどいい関係を保てず、ストレスを抱えたままコーヒーを飲んでいた。そんな時に、フッとメロディが浮かんだようだ。名作中の名作である”
★ Mrs. Lawrie’s
“同じくMcGlincheyのペンになる曲。2曲はセットで演奏されることがほとんどだが、こちらの方は、いつどのような経緯で作られたのかはわからない”
Sonny Murrey’s/Home Ruler/Kitty’s Wedding(Hornpipe)
★ Sonny Murrey’s
“別名Wicklow Hornpipe。SonnyはWest Clareのコンサルティーナ奏者である。
★ Home Ruler
“County Antrim出身のFrank McCollumの作”
★ Kitty’s Wedding
“これらの3曲はセットで演奏されることが定説”
Bold Doherty/Cock and the Hen(Jig/Slip Jig)
★ Bold Doherty
“これは同名の唄をインストルメンタルにしたものだ。そのむかし、シンガーと一緒にやっていたもので、どこかで聴いたことがある、と思っていたら同じ曲だった。僕らは次の曲とのセットでJosephin Marshをフォローしている”
★ Cock and the Hen
“18世紀ころからある曲だ、といわれる。そのタイトルもDoodley Doodley Dankというややこしいものから、Joe Ryan’s,Cathal McConnell’sなど様々だ”
Return To Miltown/The Road To Ballymac/Gun Ainm(Reel)
★ Return To Miltown
“典型的Donegalチューンのひとつ。僕は92年くらいからScott Renfortの得意曲として一緒に演奏していた。DmからBパートでDmajorにいくのが印象的な曲だ”
★ The Road To Ballymac
“アコーディオン奏者のLeslie Creigの作。Jack Gilderから教わったが、最近Steph Geremiaという若手フルート奏者が演奏しているのを聴いた”
★ Gun Ainm
“アイリッシュ・チューンではタイトルの分からない曲をこのように呼ぶ。これは、上の曲とセットでティプシー・ハウスがよく演奏したので、Jackにいつか訊いてみよう。Bパートは非常に珍しい音運びで興味深い曲だ”
Blackbird(Hornpipe)/Gallagher’s Frolics/Winnie Hayes/Rolling Waves(Jig)
★ Blackbird
“Kevin Burke&Jackie Dailyでずっと前に覚えた曲。同名のホーンパイプがいくつか存在するので、またそちらもやってみたいと思っている。Set DanceのバージョンはPaddy Keenanで有名だ。また、Bothy Bandが同名のものをReelでやっているものもあるが、これも別物。Andrewがこんなホーンパイプはホーンパイプじゃぁねえ!と捨て台詞を吐いたが、自分の聴いたことのないものは認めない、という意固地さもまた彼らしい。でも無類のブルース好きだし、Deiseal(Cormac Breatnach牽き入る3人組のモダーンなバンド。94年と97年に素晴らしいアルバムを残している)の演奏もすごく好きなようだし。それでAndrewのバンド、The LahawnsにDeisealのベース・マンであったPaul O’Driscollが参加していたことにも納得がいく。
因みにPaulは現在Frankie Gavinのバンドにいる“
★ Gallagher’s Frolics
“The Clareというタイトルでも知られている。O’Gallagher’s Frolicsともいう。日本のセッションでもよく登場する、比較的ポピュラーな曲だ”
★ Winnie Hayes
“作者はわからないが、れっきとした個人名がついている。Micho Russellの演奏でも良く知られるようだが、それについての興味深い話しがある。MichoはClareのコンサルティーナ奏者Kitty Hayes(つい最近亡くなった)のご近所さんで、同じくご近所さんのWinnie(同じHayesだが親戚関係はないらしい)に曲を習っていた。それは40年代初め頃の話で、お互いに行き来があったなかで、Winnieという人物がいたわけだ。
因みにPackie Russell(Michoの弟でコンサルティーナ奏者)はKittyの結婚式で演奏したそうだ。1948年のことらしい。結局のところ出どころはわからないのだが、多分WinnieからMichoが教わったうちのひとつで、このタイトルがついているのだろう。Eminorで演奏する人も多い、と聞くが、僕らはAminorでやっている。
★ Rolling Waves
“僕らのバージョンはJohn Williamsから得たものだが、それにしてもRandal Baysのバッキング・ギター・スタイルはとても魅力的だ。Kevin Burkeの演奏でもポピュラーになった曲
Rolling in the Barrel/Lafferty’s/Lads of Laoise(Reel)
★ Rolling in the Barrel
“僕らはMartin Hayesの演奏からヒントを得ているが、かなり前からAndrewの演奏などでも聴いていた曲”
★ Lafferty’s
“Sean Ryan(Tipperaryのフィドラー)の作といわれるが、彼が作曲を始めるよりも、かれこれ20年以上も前にJames Morrisonが録音している、という説もあり、定かではない。タイトルも、どちらかといえばGlen of Aherlow(AhelowはSean Ryanの出身地)というほうが正しいという説もあるが、これに関しては明確な事実があるようだ。Paddy CannyとP J Hayesが録音した時のピアニストが最も好きだった曲ということだが、彼女の名前がBridie Laffertyという。そこで、Lafferty’s Favouriteなどと言われるようになり、この名前に変わってしまって一般的にはこう呼ばれるようになった”
★ Lads of Laoise
“古いスコットランドの曲でLads of Leithというらしいが、アイルランドで演奏されるようになって、このタイトルに変わったそうだ”
Morgan Magan(O’Carolan)/Shaskeen/Congress(Reel)
★ Morgan Magan
“クラシック・フィーリング溢れるこういう曲は僕らの最も好きな分野かもしれない。僕は多分アイリッシュを始める前から知っていた曲だ。アメリカの演奏家にも人気の高い曲だけに、様々な人が演奏していた”
★ Shaskeen
“めずらしく他の名前で呼ばれることのないとてもポピュラーな曲。前の曲と出だしが同なので繋げてみた”
★ Congress
“Gordon Duncanの作といわれるが、いや、もっとむかしからあったスコティッシュ・チューンだ、というはなしもあり、よくわからない。非常に“のり”のいい曲だ”
Lover’s Waltz(Waltz)
★ Lover’s Waltz
“2010年、電車の中でPaddy Keenanが「いい曲があるぞ。この間友達の結婚式で聴いたんだけど」と言って聴かせてくれた。「Jayなんとかっていうやつがつくったんだけど」「Jay Ungerか?」そう、メロデイの創り方が、かの名曲Ashokan Farewellによく似ていたのですぐに分かったのだ。Fiddle Feverは大好きだった。特にAshokan..の入っていたアルバムはジャケット・デザインからして、今でも最もお気に入りの一枚かもしれない。希花のフィドル・スタイルにもよく合っている曲だ”
Two Days to Go/Beaujolais in Boston/Jimmy’s Trip to Clonmel
★ Two Days to Go
“とてもセンスのいい曲を沢山創っているパイパー、Diarmaid Moynihanの作曲。
Deantaの演奏から覚えた”
★ Beaujolais in Boston
“この3曲はDeantaによって、セットで演奏されていたもので、とても気に入っている。
メンバーのフィドラーKate O’BrienとフルートのDeirdrie Havlinの共作、ということだ。
とても美しいメロディーで前の曲とも後の曲ともとてもつながりがいい”
★ Jimmy’s Trip to Clonmel
“北アイルランド出身のDeirdrieが父のJimmyとのアイルランドの旅を想い出して書いた曲。おそらくAll Irelandのフェスティバルに参加した時のことではないか、と思うが、この3曲のセットは希花の最も好きなセットのひとつかも知れない”
George White’s Favorite/Lad O’Beirne’s/Sweeney’s Buttermilk(Reel)
★ George White’s Favorite
“非常にとっつきやすい、いいメロディだ。キーはGだが、多くの人はEminorから入る。
僕は過去、Michael O’Domhnaillで聴いたCmajor7のコードが好きだが、これは独特な世界観を持つので、相手に尋ねてからのほうがいいかもしれない”
★ Lad O’Beirne’s
“Co.Sligo出身のこのフィドラーはPaddy Killoran,Michael Coleman,Ed Reavyらと並ぶ人物だ。1911年に生まれ、‘28年にアメリカに渡ったが、いわゆるコマーシャル・レコーディングは残されておらず、ほとんどがプライベートなテープ録音だといわれている。
しかし、名曲をたくさん残している”
★ Sweeney’s Buttermilk
“Brendan McGlinchey作。こんな逸話が残されている。あるワークショップで一人の少年になにか弾くように促したところ、出て来た曲がこれだった。彼はすかさず「なんていう曲か知ってるか?」と尋ねたところ、少年は胸を張って答えた。「Sweeny’s Buttemilk」
彼はさらに質問した「誰が書いたか知ってるか?」少年は首を横に振った。彼は言った。「俺さ」少年のその時の驚きようと、目の輝きはこのワークショップでの語り草となっている。
因みに変わったタイトルだが、これは、彼の友人の一人であるSweeneyという男と彼とがバターミルクが大好物だったので出来た曲らしい…“
Dunmore Lasses/Sporting Paddy/Sean Sa Ceo(Reel)
★ Dunmore Lasses
“Tom Morrisonの1927年の録音ではAパートとBパートが逆に演奏されている。Chieftainsのアルバムでは普通のリールとして演奏されているが、Matt Molloyはスローで演奏している。Mick moloneyはMorrisonと同じ手法を取っている、など様々だが、僕等はA,Bと演奏している。イントロにスーパーギタートリオの地中海の舞踏のイメージを使わせてもらっている”
★ Sporting Paddy
“特筆するような情報はないが、とてもポピュラーな曲で200以上の録音が残されている”
★ Sean Sa ceo
“John in the Mistという英語のタイトルでも知られているこの曲は、DonegalのフィドラーであるNeillidh Boyleの作と言われているが、本人は、うんと古い曲で母から習ったと言っているらしい”
Concert/Now She’s Purring/Ivy Leaf(Reel)
★ Concert
“Frankie Gavinが次の曲と共にConcert Reelとして録音を残しているので、混乱している人もかなりいる”
★ Now She’s Purring
“そういうわけで、こちらもConcert Reelだと思っている人がいるが、こんなタイトル、あるいはCallaghan’sともいわれている”
★ Ivy Leaf
“Micho Russellの非常に強いクレアー・アクセントからI Will Leaveだと勘違いしている人もいるらしい。まるでJody’s Heavenだ”
The Monaghan Jig/The Hungry Rock (Jig)
★ The Monaghan Jig
“Patric(Patsy)Touheyのパイプ・バージョンは圧巻だ。その昔、3パートで演奏されていたものを1921年のマイケル・コールマンのニュー・ヨーク録音で、彼が4パート目を作りあげたらしい”
★ Hungry Rock
“Liam Kelly(Dervishのフルート奏者)のペンになるとても難しい曲だが、とことんかっこいい”
The Humous of Tullycrine/The Garden of Daisies(Hornpipe)
★ The Humous of Tullycrine
“12~3年前、Terry Bingham,Andrew MacNamaraと共によく演奏した曲だ。Dm,Em,Gm,Amと、いろんなキーで演奏されるが、僕等はDmでやっている。あの時はAmでやっていて、しかも面倒くさがりやのAndrewはTerry’s Hornpipeなんていっていたなぁ”
★ The Garden of Daisies
“Padraig O’Mileadhaの作、といわれている。小節数からいって、セット・ダンスだと思うが、ホーンパイプとして扱っている書物もあるので、とりあえずホーンパイプにしておいた。僕等はPaddy Keenanから教わった”
The Banks of the Ilen/The Scartaglen/Eddie Moloney’s Favorite(Reel)
★ The Banks of the Ilen
“Tipsy Houseでもよく演奏したセット。次の曲とは決められたように、誰もがセットとして演奏する。因みにHumours of Drinaghという曲もあるが、この曲のJigバージョンだ。
IlenはCo. Cork, Skibbereenを流れる川で、アイ・レンというような発音だ“
★ The Scartaglen
“Dennis Murphy とJulia Cliffordの録音で有名な曲”
★ Eddie Moloney’s Favorite
“ほとんどの演奏は上2曲で終わるが、Tipsy House3代目のFiddlerであったLaura
Riskが突然この曲を弾き出した。僕もジャックもそのアイディアの素晴らしさに感動したものだ。それ以後、この3曲はセットとして演奏することにしている”
The Rose in the Heather/The Banks of Lough Gowna(Jig)
★ The Rose in the Heather
“とても落ち着いたいいメロディを持った曲で、初心者にもとっつきやすい。こういう曲におけるギター・プレイがいちばん難しいかもしれない“
★ The Banks of Lough Gowna
“この2曲のセットはDale Russからいただいた。たまにこのセットのあとSaddle the Ponyにいくこともある。セッションでも比較的よく登場する”
Down the Hill(Set Dance )/The Yellow Tinker/The Drunken Tinker(Reel)
★ Down the Hill
“James Kelly,Paddy O’Brien(Co.Offaly)の演奏で覚えた曲。長いことワルツだと思っていたが、いろいろ調べているうちにセット・ダンスということが判明”
★ The Yellow Tinker
“これはいかにも若者好みの曲だと思うが。文献からは作者などに行きあたらないので、トラッドとみていいかも”
★ The Drunken Tinker
“前の曲とはとても興奮を呼ぶつながりかたをする。決して誰もがやっているわけではないが、Tipsy Houseの当たりナンバーだった”
The Fly Fishing/Michael Tennyson’s/John Burke’s (Reel)
★ The Fly Fishing
“Jackie Dalyの作。Verena ComminsとJulie Langanのパブ・ライブで覚えた曲。アコーディオンとフィドルのこのデュオはとても優雅で、本物のトラッドを聴かせてくれたものだ”
★ Michael Tennyson’s
“別名Poor but Happy at 53というが、VerenaがMichael Tennysonから習ってこう呼んだらしい。実際の作者はダブリンのフルート奏者で1994年に亡くなったPaidi Ban O’Brien”
★ John Burke’s
“ Verenaの作品。フィドルではかなり音が飛ぶので難しいと思うが、希花の得意曲の一つとして存在している。この3曲のセットは彼女たちのものをそのまま頂いた”
Irish Musicその17
Red Crow/Darley’s/Big John McNail(Reel)
★ Red Crow
“AltanのMairead Ni Mhaonaighの作。初めて聴いた時、とても興奮したことをよく覚えているほどの名曲だ”
★ Darley’s
“1920年以前にフィドラーであり、バイオリニストのArther Darley(Donegal)によって書かれた曲だが、アルタンの二人(MaireadとFrankie Kennedy)の演奏で有名になった。彼らはRaddy Redicanから習った、ということだ。僕等はJohn Williamsの演奏を参考にしている”
★ Big John McNeil
“Peter Milneの作。典型的スコットランド・タイプの曲だが、僕は70年代からよく聴いていた。オールド・タイマーたちはよくSt. Anne’s Reelの後にこの曲を演奏するらしい。Jon Hicksが強烈なギタープレイを聴かせてくれたのもこの曲だ”
Swan LK 243(Waltz)
★ Swan LK 243
“美貌のハープ奏者、Catriona Mackay作の、この世で最も美しいと思えるくらいの曲だ。変わったタイトルだが、1999年に彼女がCutty Sark Tall Ships Raceに行った時に、この古い船であるSwan LK 243に乗った。その時の想い出をもとに書いた、と言われる。これは希花が僕に教えてくれたが、本当に美しい曲だ”
O’Carolan’s Concerto/Planxty Joe Burke(O’Carolan/Hornpipe)
★ O’Carolan’s Concerto
“特に好きな曲ではなかったが、Frankie Gavinと一緒にやってから何故か好きになった曲。日本のプレイヤーもよく演奏する比較的有名な曲だ”
★ Planxty Joe Burke
“Anamの演奏で初めて聴いたときはJoe Burkeの作品だと思ったが、考えてみたら自作のPlanxtyはおかしい。これはCharlie Lennonの作品だ。どこかバロック風の美しい曲だが、前曲のクラシック・フィーリングとよく合っていると思い、つなげてみた”
Maid I Never Forget/JB’s/Lad O’Beirne’s(Reel)
★ Maid I Never Forget
“かなり前にArty McGlynnとNollaig Caseyの演奏で聴いていたものだが、僕らは
Padraig Rynneの演奏からレパートリーに入れている。Padraigはクレアー出身のコンサルティーナ奏者だが、2002年頃、Breda Smythと共に行ったGalwayのパブ・セッションで一緒に演奏したことがあった。若手ナンバーワンのコンサルティーナ奏者というふれこみ通り、素晴らしくテクニカルな演奏を聴かせてくれた。その時にはCherish the Ladiesのアコーディオン奏者Mary Raffertyとも久しぶりに演奏した 。大きなセッションだったけど、どこだったんだろう”
★ JB’s
“全く何の情報も得られないが、Padraigのセットから学んだ。とまで書いたところ、待てよ、他に調べる方法があるだろう、と思い情報をひっくり返していたら見つかった。その文献によると、James Murdoch Hendersonによって1932年頃に書かれた曲らしい。そしてJBとはスコットランドのフィドラー、James B Patersonという人のことだそうだ”
★ Lad O’Beirne’s
“Sharon Shannonの演奏でも有名だが、この3曲セットはPadraigのものだ。キーは何故か必ずF”
Cutting A Slide Reel(Reel)
★ Cutting A Slide Reel
“これは、Irish Musicその10の項目でGun Ainmとしておいた曲だ。(Road to Ballymacとのセット)95年頃、ジャックの家で教わった曲で、それから15年ほど経って、今度は僕が希花に教えた。Bパートがとても特徴あるメロディで、当時ジャックはPhil Cunninghamと言っていたような覚えがあり、正確なタイトルを知りたかったので、ジャックに電話したが、もう長年弾いていないので覚えていない。どんな曲だった?というので弾いて聴いてもらったところ、確かにPhilの曲だと思うけど調べておくよ、ということだった。数時間たってメールが入った。わかったぞ、Cutting A slide Reelだ。有難うジャック。タイトルの分からない曲もたくさんあるが、こうして情報をえられることはとても嬉しいし、とても楽しいことだ。アイリッシュという音楽をどういうかたちであれ、すこしでも自分たちの音楽の一部としてでも取り上げている人達は、タイトルを知ることや、古い録音に耳を傾けることや、いろんなバージョンを知ることに努力すべきだ”
The Rights of Man/Pride of Petravore(Hornpipe)
★ The Rights of Man
“あまりにも有名な曲だが、誰がいつごろ書いたものかは分かっていない。僕はその昔、1972~3年頃かな、Incredible String Band のRobin Williamsonの演奏で聴いたのが最初だと思うが、彼は3パート弾いていた。だが、それ以後他の人の演奏では3パート目は聴いたことが無いが、それはスコットランド・セッティングらしい。因みにナターシャー・セブンではそれをお手本にして録音したことがある。また、Lord Cedar Hillというタイトルの詩がついている、という話もある”
★ Pride of Petravore
“上記の曲とのセットを有名にしたのはDe Dannan。Rights & Prideという上手いネーミングで人々に知られている。イアンとシルビア(カナダのフォーク・デュオ)の1963年のアルバムでこの曲を取り上げていた、という話もあるが、もしかしたら高校時代、フォークソングに明け暮れていたころに聴いたかも知れない。Percy French(1854~1920)の詩で歌われることもある。因みにタイトルはEileen Oge(Young Eileen)だそうだ”
Lane to the Glen/Man of Aran/The Musical Priest(Reel)
★ Lane to the Glen
“Ed Reavy作の有名な曲のひとつ。僕はRandal Bayes&Joel Bernsteinの演奏から学んだ”
★ Man of Aran
“ダブリンのパイプ&ホイッスル奏者、Darach de Brunが、友人である同じくダブリンに住むアコーディオン奏者のTommy Walshの結婚のお祝いとして書いた、とされる。尚Tommyは、かの有名な曲Inisheerの作者である、ということだ”
★ The Musical Priest
“Bmのとても人気の高い曲だが、アイリッシュ・ミュージックを始めたばかりの希花さんは、ある人達が、半音高いアコーディオンに合わせてみんなが半音高くチューニングをしていることも知らず、Cmでコピーしてしまった。後に本当のキーはBmだと知ったわけだが、いっそのこと両方ともやろう、ということになり、僕らは両方のキーを交互に演奏する。今までに聴いたことのないフィドル・プレイだ。因みにフォギー・マウンテン・ブレークダウンの最初の録音は、やはり半音高いのだ。そうともしらない希花さん。G#というとんでもないキーで事もなげに弾いていたが、ブルーグラスのフィドラーも大したもんだ。こんなに難しいキーでこんなことやるんだ、と感心していたそうだ。彼女にとってキーというものはテクニック的なことでいえば、まったく関係ない”
Jug of Punch/Eddy Kelly’s (reel)
★ Jug of Punch
“この曲はかなり前にDale Russと演奏していたものだが、後年になって、John Williamsの素晴らしいアコーディオンプレイで聴いて以来、ずっと演奏している。もっとも彼はEmでやっていたが、オリジナル・キーはDmのようだ”
★ Eddy Kelly’s
“前の曲とのセットとして演奏する人が多い。EddyはCo.Roscommonのフィドラーで、この曲を1966年頃に10分ほどで書きあげた、という話だ。普通のリールテンポより少し遅いくらいのスピードが良い、という人もいっぱいいる。実際に美しいメロディを持った曲だし、それも確かなことだ。最初のころの録音物ではシングルで演奏されているのもそんな理由かもしれない”
Galtee Hunt/Stolen Apple (Set Dance/Waltz)
★ Galtee Hunt
“Clannadの演奏でかなり前に覚えた曲。ちょっと変わった拍数で覚えにくい曲である。
でも、なんとも言えない、初めはなんとなくダサいと思える曲でも、やりはじめるとくせになるような曲がたまにあるが、これもそのひとつかもしれない”
★ Stolen Apple
“Lunasaがやって有名になった曲。Slip Jigだという人もいるが、ワルツとして考えたほうが分かりやすいかもしれない。Grey Larsonによって書かれた可愛らしい曲。彼とはアメリカで一緒に演奏したことがあるが、セッションにヒョコっと現れて、「Hi, I’m Grey」
と言ったので「Hi, I’m Red, and This is Green」なんて言ってしまった。まさかGrey Larsonだとは思わずに。とてもいいフルート奏者兼コンサルティーナ奏者だ“
The Stage/The Messenger (Hornpipe)
★ The Stage
“僕自身はJames KellyやPaddy Glackinの演奏で覚えた曲。聴いたところ、かなり難しそうだが、希花がいい感じで弾いてくれる。日本ではあまり聴くことが無い曲だ”
★ The Messenger
“この曲はシアトルに住むJoel Bernsteinによって書かれた美しいものだ。Joelはシアトルに行くと、必ず一緒に演奏した仲だ。バンジョー、フィドル、コンサルティーナ、そして彼の代名詞でもあるハーモニカを全部自転車に積んでシアトル中を走り回ってセッションに出かける。そう、彼の昼間の仕事はバイク・メッセンジャーなのだ”
Jackson’s/Come West Along the Road (Reel)
★ Jackson’s
“Frankie Gavinの演奏で覚えた曲だが、本当にこのタイトルかどうかがわからない。しかも、2曲のメドレーであるが、ただJackson’sとしかクレジットされていない。しかし、フィドラーにとってはやりがいのある曲だと思う。
★ Come West Along the Road
“Gで演奏されることが多いようだが、僕らはAでやっている。Martin Hayesの演奏でもよく知られるポピュラーな曲”
Young Tom Ennis/Langston’s Pony (Jig)
★ Young Tom Ennis
“これは非常に変わったタイトルを持つ曲だ。このタイトルで知ったのはTony MacMahonの演奏からだが、本来はThe Banshee’s Wail Over the Mangle Pitという。Martin Hayesも不思議に思ってPaddy O’Brienに、一体このタイトルはどこから出てきたものかを尋ねたことがあるらしい。しかし、詳しい事はわからない。一説によると本来The Banshee’s wailらしいがPaddy O’Brienが後からOver the Mangle Pitを付け加えたようだ。どちらにせよ、多くの人にはYoung Tom Ennisのほうが簡単かもしれない”
★ Langston’s Pony
“古くはThe Moving Heartsの演奏で聴いた覚えがある。Moon Coin Jig という曲と、ある意味酷似しているので、メロディ楽器は大変だ。そういう意味でも伴奏者が曲を知らなければいけないことになる。同じような伴奏をしていたら惑わされてしまうだろうし、曲にも変化が出なくなる。こういう曲のひとつひとつの音にしっかり即した伴奏をすることが僕の信条だ”
The Oak Tree/The Foxhunter’s(Reel)
★ The Oak Tree
“僕がこの曲を初めて聴いたのは、おそらくDick Gaughanのアルバムだっただろう。スコットランドのシンガーである、彼のギター・アルバムだった。後年彼と同じフェスティバルに出演する機会があったので、ミーハーにも、少しだけお話させてもらったが、いかつい風貌から想像もつかないくらいに穏やかそうな人だった。美しいメロディを持った、3パートのリールで、多くの人が(しゃれではない)演奏している”
★ The Foxhunter’s
“これはThe Bucks of Oranmoreと共にエンディングに持ってこいの曲だ。GかAで演奏される。どちらで弾くのがよりよいか、という事に関する意見交換などもよくあるらしいが、Andrew MacNamaraとの演奏では交互にやった。それはそれは盛り上がるやり方だ。
フィドルではJames KellyやSean KeanがAEAEというチューニングで演奏するらしいが(勿論、キーはA)これはまるでBlack Mountain RagをAEAC#にチューニングする、ブルーグラスでの手方に似ている”
The Green Fields of Glentown/Tamlin/The Mouth of Tobique (Reel)
★ The Green Fields of Glentown
“初めて聴いたのはSilly Wizardのアルバムだったが、かれらは3パート目を抜かしていた。‘92年頃のことだ。セッションで弾いたら「あんた、Silly Wizardでおぼえたんでしょ」と誰かに言われたもんだ。Tommy Peoplesの作になるとても魅力的な曲で、典型的フィドル・チューンと言えるだろう”
★ Tamlin
“West Coast Seamus Eaganのバンジョー教則ビデオの最初の曲だ。彼はソーラスのSeamusとは違う。当時、オレゴンに住んでいたバンジョー弾きで、非常にパワフルなヒッピーである。Dale Russが最近、自転車に乗った彼を見たらしいが、あのぴちぴちのパンツだけはやめて欲しい、と言っていた。彼のことを僕らが呼ぶ時はこう呼ぶ。Seamus Reel Eagan。Reelを弾かせると、物凄く太い腕で、まるで大砲のような音量で、機関銃のように弾くからだ。Tamlinは初心者にもとても親しみやすい曲である”
★ The Mouth of Tobique
★ “この曲を初めて知ったのは、ジョン・ヒックスのプレイからだと思う。セッションでは大受けに受ける曲だ。作者は分からないが、カナダのTobique Riverというところで、Fiddlers on Tobiqueという集まりがあるそうだ。そんな意味でも典型的な、フレンチ・カナディアン・チューンのような気もするが、何故かTexas Quickstepというタイトルもついている。日本ではシャロン・シャノンの演奏で有名になった曲だろう。これをよく演奏していたころの彼女のバンドのフィドラーはAthena Targisだった。そういえば、彼女とあと数人の若者とセッション・サーフをしていたころから、彼女の得意曲だった”
The Graf Spey/Paddy Fahy’s #25/Never Was Piping So Gay/Hut in the Bog
★ The Graf Spey
“1884年に出版されたScottish dance Collectionの中にThe Rothiemurchus Rantとして記載されている曲だろう、といわれる。かなり古い時代にアイルランドに渡ったスコットランドの曲のひとつらしいが、僕はクレアにいた時に最もよく聴いた曲だ。多くの人が何かあるごとに演奏していた。キーは普通Cである”
★ Paddy Fahy’s #25
“結構難易度の高い曲だと思うが、希花がとても上手く弾く。こういう曲を弾くと、どこかAthena Targisと似ている。かつての彼女の相棒、Laura RiskとAthenaをたして2で割ったような感じかもしれない。そう言えば、僕自身は希花のフィドル・プレイはNollaig Caseyの音に似ていると思っていたが、ある時ジョン・ヒックスが偶然にも同じことを言ったのには驚いた。みんな素晴らしいフィドラーだ。彼女たちに似ている、というのは大きな賛辞だ。若いうちはそんな風にいろんな人に影響を受けて、やがて自分のスタイルを見つけ出していったらいい”
★ Never Was Piping So Gay
“Ed Reevyの作。このタイトルはW.B YeatsのThe Host of the Airという詩の最後の一節から取っているらしい。これもかなり難易度の高い曲だと思う”
★ Hut in the Bog
“Paddy Killoranの作でOn the Road to Lurganだ、という説、更にキーはEmだ、という話があり、普通Amでやることが多いこの曲のことを調べていたら、どうやらThe Cashmere Shawlという曲ではないか、というところに到達した。ただ、この曲は長い事Hut in the Bogとして知っていたのだ。Andrewのバンドの一員としてツアーしていた時に彼から習い、「タイトルはHut in the Bogって言うんだ」と教えてもらった。アイリッシュ・チューンではよくあることなので、こんな風にいろんな角度から曲のことを知っておくに越したことは無い”
Letter to Peter Pan(Air)
★ Letter to Peter pan
“Liz Carroll作の美しい曲で希花のお気に入りだ。自分のブログのタイトルにも使っているくらいに好きな曲。確かにどこかメルヘンの香りがする”
Air Tune/MacLeod’s Farewell (Air/Reel)
★ Air Tune
“Liz Carrollの作。とてもきれいな曲で、単独でもいいが、僕らはそんなに速くないリールを後に持ってきている”
★ MacLeod’s Farewell
“多くの人がWedding Reelという名前で覚えているだろうが、それはLunasaの影響である。本当のタイトルはMacLeod’s Farewell (written by Donald Shaw)という。作者はCapercaillieというバンドのメンバーでキーはEで書いた、ということだが、Sean Smyth以来みんなDで演奏する”
Sailor on the Rock/Last Night’s Fun/Toss the Feathers(Reel)
★ Sailor on the Rock
“これは2001年にAndrew MacNamaraとレコーディングしたことのある、僕の大好きなセットの最初の曲。80年代にかなり人気のあった曲らしい。古くはEast Galwayの伝説的音楽家であるEddie Moloneyの演奏が有名だが、Frankie Gavinのそれは明らかに同じ地方の出であるEddieから習ったものだろうと言われている。因みに彼の息子であるSean Moloneyも演奏している”
★ Last Night’s Fan
“Joe Cooley’s #1ともKilloran’s Reelとも言われている、出どころが分からない曲だが、とても人気が高い”
★ Toss the Feathers
“様々なバージョンがある。最も有名なのはEmのバージョンだが、僕はそのBパートがあまり好きではない。Solasのバージョンもあるが、日本のプレイヤーたちにはこの二つが有名だろう。ここに登場するのはクレアーバージョンだ。最もすきなメロディ。この3曲をレコーディングした時Andrewはなにも言わずに目をつぶったまま弾き始めた。なにが出てくるかわからないままに進行していったが、キーはすべてDである。最後の曲を弾き始めた時、僕はまだこのバージョンをはっきり知らなかった。どこかで聴いたことがあるな、と思いながら弾いていて3まわり目くらいからToss the Feathersだと思ったものだ。Andrewと出会ってから9年目くらいの時。クレアのリズム、タラ・ケイリ・バンドのリズム、Andrewのたたきだすリズムは胸に響く”
Holly Bush/The Boy on the Mountain Top(Reel)
★ Holly Bush
“これも同じころTerry Binghamとレコーディングしたセットだ。Finber Dwyerの作。Terryのコンサルティ-ナ・プレイには心がこもっている。見た感じ、少し体重オーバーのシルベスタ・スタローンだが、めっちゃやさしい。彼についてはコラムの別な項目でも触れている。毎年アイルランドはドゥーランで一緒に演奏する希花も、最も好きなミュージシャンのひとり。シャイなわりに話し好きでもあるし、トラッドの本当の姿を音で教えてくれる素晴らしい演奏家だ”
★ The Boy on the Mountain Top
“この2曲のセットは何故か頭から離れない。いいメロディだ。この曲はもしかしたらフルート・プレイヤーに向いているかもしれないが、シングル・リールの美しいメロディをTerryが軽やかに聴かせてくれた。The Boy on the Hilltopとも言う”
The Cuckoo’s Nest (Hornpipe)
★ The Cuckoo’s Nest
“僕らはPaddy Keenanから習っているが、僕はブルーグラス時代、よく演奏した。あの時は今演奏している3パート目から入り(少しメロディは違うが)2パート目(ここも少し違う)を演奏した。その2パートの繰り返しだった。John HartfordやNew Grass Revivalで覚えたものだが、アメリカに渡って変化したものだろう。また面白い事にJackie Tarというタイトルも付いているが、僕らは全然違うJackie Tarをファースト・アルバムでレコーディングしている。もうなにがなんだかよくわからない、というところもトラッドの面白いところではある”
Gentle Dentist (Reel)
★ Gentle Dentist
“この曲を覚えたのはHarry Bradleyの演奏からだった。ある朝Athenaから電話があり、今度、若いフルート奏者と一緒に行くからギター弾いてよ、と言ってきた。そしてやってきたのがHarryだ。30分ほど練習して、4日間のツアーに出た。彼らについてはコラムで既に書いている。最初聴いた時にはBパートの不思議な進行に耳を疑った程に変わった曲だ。希花も同じことを言った。レコ―デイングされたものはおそらくひとつしか存在しないくらいポピュラーではない。Desi Wilkinsonの作。アイルランドに親切な歯医者なんていない、という人も多いが…。僕は生れてこのかた、出来た虫歯は1本しかない。それもつい最近。そしてすぐに治った。Gentle Dentistは希花には必要な歯医者さんかもしれない”
70th Year (Jig)
★ 70th Year
“これはかなり変な曲だ。CapercaillieのCharlie Mckerronのペンになる。以前レコーディングしたことがあったが、希花にこんな変な曲があるけど、何故か結構“くせ”になる、と言って教えたところ、やっぱり“くせ”になったようだ。Fから始まってBパートはDになる。おまけにメロディがなかなか考えられない進行で、これ以上変な曲は、なかなか存在しないだろう、と思われる曲だ。上記のGentle Dentistと合わせて変な曲を2曲掲載してみたが、どちらも僕らの頭の中から離れない。と言うことは、いい曲なんだろうか”
Humours of Ballyconnell (Hornpipe)
★ Humours of Ballyconnell
“いつどこで、また、誰が演奏していたか全く記憶にないのだが、変なメロディが長い事頭から離れなかった。そんなわけで僕らも音楽会では1回、あるいは2回くらいしかやっていない。しかし、これはトラッド好きにはたまらない変わったメロディ。常にレパートリーのひとつとして覚えておきたくなるようなものだ”
今回はあまり演奏したことがない、ちょっと変わった曲を掲載してみた。僕と希花は幸運にも音に関して好みが似ているので、変なのに好きになる曲、どうしても好きになれない曲、物凄く好きな曲、など、レパートリーも選びやすい。
レパートリーは多いに越したことはない。そして、それら全て正確に覚える必要がある。(あくまで僕の考え)その上、厄介なのがリズムだ。弾く人の出身地などによっても変わってくる。
最近思うことだが、これはもう生活のリズムだろう。幸運にも僕はアンドリューと寝食を共にし、パディ・キーナンやフランキー・ギャビンといったような超大物とかなりの間共にツアーをしている。あの面倒くさかったトニー・マクマホンとも何日も共に過ごして対等にやりあったし、彼らの生活のリズムというものも垣間見ることが出来た。
僕がアイルランドで希花にいろいろな演奏家を紹介するのも、ただただこの音楽を勉強するためだけではない。彼らの話しを聞いたり、一緒に食事したり、彼らの大切な自然の中を一緒に歩いたり、そういうことが大事だと思っている。
しかしここまでくるとちょっと可哀そうな気もする。深く彼等と付き合えば付き合うほど、この音楽の素晴らしさに惹かれてしまう。もっと簡単に気軽に楽しめれば良かったかもしれないのに。
でも、それはそれでいいだろう。希花も音楽に限らず適当な気持ちで物事に対処できない性格だし。
希花が生まれるよりはるか前、僕はヴァージニアで毎朝ジャネット・カーターの作るグレイビービスケットを食べ、ジョー・カーターと共に農作物を植え、川にボートを浮かべて晩ごはんのナマズを釣って、夜には村の集会に出て演奏した。
本当の意味でのオールド・タイム生活を垣間見たものだが、それはアイルランドでの生活とほとんど変わりはない。かけがえのない経験だ。
希花にも、もっともっと経験してもらおう。なめくじの一匹や二匹でピャーピャー言っているようでは…しかし、それでよく解剖なんて…と言うと、解剖でなめくじは出てこない、と言いやがるし、なかなか一筋縄ではいかないが、いいフィドラーになってほしいので我慢がまん。
Tom Ward’s Downfall/Hunter’s Purse/Dinny O’Brien (Reel)
★ Tom Ward’s Downfall
“Jody’s Heaven当時から演奏しているセットの最初の曲で、かなりポピュラーなものだ”
★ Hunter’s Purse
“これも、誰もが知っているくらいの曲だが、最も衝撃を受けたアレンジメントはギタリストのArty McGlynnによるものかもしれない。エレクトリック・ギターとパーカッションを駆使した独特なサウンドとリズムで、僕はこの音楽を始めた当初からよく聴いていた。Bパートのコード進行は今までに無かった独特なものだ”
★ Dinny O’Brien
“Co. Tipperary出身のPaddy O’Brienが父親Dinny(フィドラー)のために書いた曲とされる。ロビン・ピトリーも大好きだったとてものりのいい曲だ”
The Boys of the Lough/The Tap Room/The Galway Rambler (Reel)
★ The Boys of the Lough
“有名な曲だ。1930年代のEd Reavyのものが最も知られるかたちだが、他にもPaul BrockやThe Boys of the Loughの演奏で知られている。僕らは僕の以前のバンドである、
Tipsy Houseのアレンジからこのセットを演奏している。
★ The Tap Room
“Mary MacNamaraの演奏でよく知られるが、The Tap Room Trioの演奏が一番だ、という人も多い。僕は先の曲から2小節空けて(ギター)この曲に入るやり方を創り上げて大層受けたものだ”
★ The Galway Rambler
“この曲をひっつけたのは僕だ。先の曲からの音の繋がりはとてもスムーズだと思う”
Killavil/Paddy Canny’s/Drag Her Round the Road/John Brady’s (Jig/Reel)
★ Killavil
“比較的有名なジグだ。Killavilは、かのMichael Colemanが生まれた場所。Co.Sligoにある”
★ Paddy Canny’s
“前曲とのつながりが良く、Tipsy House時代からやっていた曲で、とてもムーディな響きがある”
★ Drag Her Round The Road
“ジグからリールと、リズムが変わるが、音の関連性があるため非常にスムーズに繋がる。これもTipsy House時代から組んでいたセットだ”
★ John Brady’s
“僕らは最後にこれを付けてみた。Gの曲だが、頭からCで始まる。ただ最初の一発がCであるだけなので、そんな時リード奏者は伴奏者にCと伝えるがすぐにその次のGを把握するかが伴奏者の度量である。ましてや聴いたことが無かったりしたら、勘で行くしかない。しかし次のパートでは、もう勘では許されない。確固たる理由が必要となるため、曲の把握は即座におこなわなくてはならない。伴奏者の難しい、そしてやりがいのあるところだ”
Sgt. Early’s Dream/Blocker’s/Dan Breen/ Palmer’s Gate
★ Sgt. Early’s Dream
“いつ覚えたか定かではないが、多分Dale Russの演奏で聴いたのが最初だったか、それ以前から知っていた曲かもしれない。マイナー調のとてもいいメロディの曲だ。
★ Blocker’s
“これは明らかにDaleのセットで覚えた。この繋がりはとてもいい。ただ、これを書いたのはTipperaryのフィドラー、Sean Ryanで、オリジナル・キーはGらしい。その後なぜかFrankie GavinがDで演奏してからそのキーで知られるようになった、ということだが、僕らもDでやっている。とにかく前曲との繋がりがいいのだ”
★ Dan Breen
“West Clare Reelとしても有名な曲。僕らはAmとBmの両方でやっている。この曲に関して僕は、かの名曲「Summer Time」でよくつかわれるコード進行を利用している”
★ Palmer’s Gate
“LeitrimのJoe Liddyのペンになる曲。Darvishの演奏で有名かも知れない。Maj7thが多用できる若者向きの曲のような気がする”
The New Mown Meadow/The Bag of Spuds (Reel)
★ The New Mown Meadow
“O’Neillの本ではThreepenny Bitというタイトルで掲載されている。Bパートで転調するとてもエキサイティングな曲だ”
★ The Bag of Spuds
“この曲をくっつけたのは、サン・フランシスコに住むパイプ奏者のTodd Denmanだ。素晴らしい録音を古くからの友人であるDale Russと共に残している。この2曲のセットが入っているのは、消防士でフィドラーのBill Dennehyとのアルバム「Like Magic」だ。このアルバムでは、同時にGerry O’Beirneの素晴らしいギター・プレイも聴くことができる”
Byrn’s/Cronin’s (Hornpipe)
★ Byrne’s
“とてもポピュラーな曲で初心者向きでもある。むかし、De DannanがWill You Merry Meという唄とひっつけてやっていた。75年くらいのアルバムだったか”
★ Cronin’s
“Dennis MurphyかPaddy Croninで有名な曲。これも比較的初心者向きであろう。よく知られたメロディだ”
Poppy Leaf/O’Callaghans (Hornpipe)
★ Poppy Leaf
“あまり知られていない曲だが、美しいメロディだ。僕はKieran Hanrahanのプレイから習った。Brian Rooneyの演奏も素晴らしいというはなしだが、まだ聴いたことが無い。たしかFrankieもすごいスピードでやっていたと思う”
★ O’Callaghan’s
“Mickey Callaghan’sとしても知られる曲。BパートでEmにいくところが非常に魅力的な曲だ”
今回はブルーグラス界でも比較的よく演奏されるIrish Tuneを集めてみた。その中には、70年代、80年代、ブルーグラスに夢中だった僕等が、IrishやScottishとは知らずに、或いは知っても、それはブルーグラスとして演奏していたものだ。
そんな曲が数多くある。
★ Cooley’s Reel
“初めてこの曲を聴いたのは、もしかするとCountry Cookingかも知れない。ギタリストのRuss Barenbergが弾いていた記憶がある。アイリッシュのセッションでは通常この後にWise Maidが来るが、ブルーグラスでは、それぞれが思い思いのソロを展開して1曲で終わるのが普通だ。まだ、若かった僕等はこれがJoe Cooleyの曲とは知らずにブルーグラス独特の通称“ドライブ”という感覚で弾いていた。70年代半ば頃ならきっと“スイング”感覚もあっただろう。後にアンドリュー・マクナマラと出会った時、彼は“Flow”という言葉を使っていた。“川の流れのように”というのだろうか。彼は美空ひばりを知っていたわけではない。
★ Blackberry Blossom
“これは初めてのナターシャー・セブンのLPで僕がソロのバンジョー曲として録音したものだ。アイリッシュにもブルーグラスにも同名曲があるが、これは全く違うメロディを持った曲だ。何故、この曲を選んだのかは理由がある。僕にとってはとても興味深い経験があるからだ。
それは、サン・フランシスコのプラウ・アンド・スターズという僕等のバンドのホーム・グラウンドでのセッションに於いてだった。いつものように僕とジャックとケビンがホストのセッションに、Fタイプのマンドリンを持った男が現れた。それだけで僕には、“あ、彼はブルーグラス畑の奴だな”という想像がつく。ジャックが尋ねた。「アイリッシュ・チューンは知ってるか?」すると彼が答えた。「よく知らないけどフェイクできる」彼は彼なりの解釈でアドリブできると言うのだ。ジャックはきっぱり言った。「NO FAKE!」
これはブルーグラスのセッションではない、と言う。少し険悪な雰囲気になったが彼は真面目な顔をしてしばらくおとなしくしていた。さすがに可哀そうに思ったのか、ジャックが「なんか知ってる曲があるか?」と聞くと「う~ん、そうだ。Blackberry Blossomなら知っている」と言って弾き出したのがブルーグラス・バージョン。始まったとたんにジャックが「ブラックベリー・ブロッサムはそれじゃない」とむりやり止めて、やにわにフルートを吹き始めた。明らかに違うメロディだ。僕も両方知っている。3回も4回も目をつぶって続けるジャック。終わってからあまりに可哀そうだったので「僕がギターを弾くからあんたブラックベリー・ブロッサム弾いたらいいよ」と言ったら、彼は喜んでブルーグラス・バージョンを弾いた。ジャックはもうバーの方でギネスを飲んでいた。「ごめんね。ここのセッションはきびしいんだ。メロディを正確に覚えないと参加できないことになっている。ブルーグラスのセッションみたいにフレンドリーではないんだ」彼はその1曲だけで、僕にお礼を言って帰っていった。僕にとっても想い出深い曲のひとつだ”
★ Pigtown Fling (Stoney Point)
“1962年 12月8日、カーネギー・ホールでのFoggy Mountain Boysのライブで“Fiddle&Banjo”というタイトルで演奏された曲だ。むかしはギターが入らず、ポーチなどでよくこんなかたちで演奏されたものだ、というような解説で、アイリッシュからするとBパートと言われる方から始まっている。アイリッシュ・ミュージックに関わるまで何も気にしていなかったのだが、(ましてや忘れていた曲だったが)ある時「あれ、もしかすると聴いたことがあるかもしれない」と思い始めてもう一度聴いてみると、明らかに同じ曲なのだ。ブルーグラス畑でもよく知られている曲らしい、と言うアイリッシュ関係者はいるが、それがFoggy Mountain Boysからなのか、それ以前なのかはわからない。どちらにせよ、ブルーグラス畑では多分タイトルはFiddle&Banjoになっているだろう。
★ Earl’s Chair
“時々ブルーグラス畑でも演奏されることがある、という程度の曲だがコード進行についていろいろ考えられるので面白い。この曲をセッションでやる時、先ず最初のコードを何にするか。Bm|BmかG|Gか。或いはBm|Gか。G|Bmといのはあまり良くないだろう。BパートではA/Bm|A/Bm|もありだがEm/Bm|Em/Bm|もありだろうし、Em/Bm |Em/D(F#bass)|もありだろうし Em/D(F#bass)|G6/Bm|A/G|D(F#bass)も面白いかもしれない。でも、そんな時考えるのがベースの進行だ。もし自分がこの曲でベースを弾いていたとしたら、いちばん気持ちよく進む音を選びたい。その上、あくまでリード楽器奏者のこだわりについても無視するわけにはいかない。究極のところ、いつも僕が思っているように、全ての曲のメロディを知らなければ、伴奏はただの迷惑になるだけだ。ブルーグラスは多分にジャズの要素も含まれているので、自分なりのリックも要求されるが、そこでもどれだけ基本のメロディを重視しているか、ということも見逃すことが出来ない。この、Earl’s Chairに於いてはブルーグラスの演奏家たちがどんなコード感覚の中でどんなリックを展開するか楽しみだ。そんな意味でこの曲を選んでみた。
★ Saint Anne’s Reel
“これはよくブルーグラスでも演奏されるフレンチ・カナディアン・チューンだ。アイリッシュのそれとは出だしが少し異なることが多い。カナディアン・フィドラーとして有名なJoseph Allardの1930年の録音を聴くと、ブルーグラスで弾かれるバージョンに近い。アイリッシュの曲よりスコティッシュやフレンチ・カナディアンの曲の方がリズムも含めてブルーグラスに近いような気がする。
★ Lord McDonald’s (Leather Breeches)
明らかにLeather Breechesという曲として、60年代からPete Seegerの演奏で聴いていたものだ。ブルーグラス・フィドル・チューンとしても、よく取り上げられる。単調な曲だが、深い趣がある。フレイリング・スタイルのバンジョーでもいいが、僕はよくPaddy Keenanと一緒に演奏した。こういう単調な曲では、どのパートを盛り上げて、どのパートでどういうテキスチャーで伴奏するか、メロディを聴きながらよく考える必要がある。伴奏者の真価が問われる曲のひとつかも知れない。
★ Miss MacLoeod’s
“これはひょっとすると、高校時代から知っていた曲だ。多分ニュー・ロスト・シティ・ランブラーズが演奏していたものを聴いたのだろう。フォークソングをやっていたあのころは、勿論キングストン・トリオや、ブラザース・フォア、ピーター・ポール・アンド・マリー、その他あらゆる情報にアンテナを張り、そのルーツなどを紹介する、ニュー・ポート・フォーク・フェスティバルの録音などにも興味を持った。ドック・ワトソン、クラレンス・アシュレィ、モリス・ブラザース、カーター・ファミリーなどに加え、ニュー・ロスト・シティ・ランブラーズは衝撃的だった。彼らのレパートリーに多く、アイリッシュやスコティッシュの曲が含まれていることはまだ知る術もない時代だった。Miss MacLeod’sはもともとスコティッシュ・チューンのようだ。そちらのバージョンは確かにアイリッシュで弾かれているものよりアメリカで聴かれるバージョンに近い。アンドリュー・マクナマラはジョー・クーリーから習ったバージョンを弾いている。1923年のTom Ennisの録音では既にアイリッシュでよく聴かれるバージョンになっている。こんなことを頭に入れながら弾くのと、ただ弾くのとでは全く違う、と僕は思う。伴奏者も知るべきことだ”
★ Rickett’s Hornpipe
“Bill Keithのバンジョー演奏で70年代からよく知っていた。別名Manchester Hornpipeというもので、ほとんどアメリカン・チューンといってもよさそうだ。この手の曲は沢山ある。Fisher’s,Sailor’s,Soldier’s Joy,などアメリカで創られたものか、もともとあったものかを調べるのはおもしろい。尚、これらの曲をアイリッシュ・ミュージシャンが演奏することはまず無い。多分嫌っているのだろう。イギリス方面の曲だから、ともいわれているし、聴くに堪えないつまらないものだ、と酷評する人もいるくらいだ。そこら辺が特にアイリッシュ・ミュージシャンからすると、ブルーグラスなんてやっていられない、という話しにつながってくるのだろう。30年ほどもブルーグラスに関わってきてアイリッシュに移行した僕にとっては分からないことでもないが、スタンレー・ブラザースなんかを聴くと、アイリッシュと同じように胸が熱くなることも事実だ。
★ Mason’s Apron or Devil’s Dream
“驚いたことにDevil’s DreamはHornpipeとしても記載されている。勿論「Reelだと思った」という意見もあるのは、普通ブルーグラスではかなり速く弾かれることが多いからだろう。一方Mason’s Apronは2パートだけの場合もあれば、7つものパートを演奏する場合もある。ほとんどバリエーションとも言えるが…。とりあえず最初の2パートはほとんど一緒だと言える。ブルーグラスでは2パートだけで、それぞれが自分のソロが回ってきた時点でバリエーションを展開する。どちらにせよ、出どころはスコットランドだろうか。
John Brosnan’s/The Crock of Gold (Reel)
★ John Brosnan’s
“Co.Kerry 出身のアコーディオン奏者John Brosnanが1974年に書いた曲。コーマック・ベグリーが彼のアパートのキッチンで練習していた時に曲名を尋ねた。BパートがちょっとCongressのAパートに似ているが、さほどにこんがらからないのはBパートがお互いにそっくり、というわけではないからだろう”
★ The Crock of Gold
“1920年にCo.Galwayで生まれたフルート、パイプ奏者Vincent Broderickによって書かれた曲とされている。シングル・リールという人もいるが、ダブルで演奏する人も多い”
Up Sligo/The Golden Stud (Jig/Reel)
★ Up Sligo
“80年代、よくStockton’s Wingで聴いていたセットだ。驚いたことにCape Breton
のフィドラーMike McDougallという人の書いたIngonishという曲らしい。Michael ColemanやKevin Burkeの演奏でもよく知られている。
★ Golden Stud
“Maurice Lennon作のスロー・リール。Paul Rouchが書いたという人もあれば、同じグループのKieran Hanrahanが書いた、という人もいる。いずれにせよ、シンプルで美しいメロディを持った曲だ。僕等はこの後、Morning Dew/Jenny’s Chickenをひっ付けて最近レパートリーに取り入れている”
The Kylebrack Rambler/Paddy Fahey’s#1 (Reel)
★ The Kylebrack Rambler
“Finber Dwyer の作になるとても魅力的な曲だ。かなり前ティプシー・ハウスのフィドラーPaulがよくやっていたのを覚えていた”
★ Paddy Fahey’s#1
“数多い彼の作品のなかでも、最も有名な曲かもしれない。前の曲との繋がりはスムーズ過ぎて変わったことが分からないかもしれないが、テンポが絶妙に合う”
Humours of Tullyknockbrine/Maire Breathnach/A Punch in the Dark (Reel)
★ Humours of Tullyknockbrine
“De Danannがずいぶん前にThe Rat in the Thatchというタイトルでやっていたが、いかにもフランキーが好きそうで、彼の音が聞こえてきそうな曲だ。
★ Maire Breathnach
“僕等はSolasの演奏で覚えたが、彼らはAパートとBパートを逆さにして録音したようだ。確かにそのアレンジは一理あるような気がする。また、タイトルだが、Branohmという登録もある。ただし、このタイトルで少なくとも2曲あるし、#1#2とよんでもいいのかも知れない。本人に会った時、訊いてみればよかったが、こちらは本人とは認識せずに一緒に弾いていて、上手い人だな、と思っていた。失礼”
★ A Punch in the Dark
“BanjoのGerry O’Connorが書いた曲。ずっと前、Lunasaと一緒にフェスティバルに出ていた時、彼らがメドレーでこの曲に入った時、ギターのDonoghが絶妙なコードを弾いた。それは多分にベースのTreverとの音の組み合わせだったかもしれないが、とても印象的な音使いだった。後年、彼に会った時、その話をしたが、彼のコード・ワークにも独特なものがある。Donogh と僕、そしてDennis Cahillはいつもフェスティバルで一緒だった。Gerry O’Connorとも一緒になり、両親を紹介してもらったりしたもんだ”
Johnny When I Die /The Humours of Lissadel/The Connemara Stockings (Reel)
★ Johnny When I Die (Bury Me in Kerry)
“Jody’s Heavenでもずいぶんやった曲だ。Johnny When You Dieとも言うし、ここに書いたようにBury Me in Kerryが付いたりもするし、全然違うタイトルで呼ばれることもある。しかし、実際にKerryにいるとその気持ちは分かるような気がする”
★ The Humours of Lissadel
“前の曲との繋がりがすごくいい。Dale Russから習った”
★ The Connemara Stockings
“この曲は The Reel Of Mullinavatという曲にとてもよく似ているが、あまりそれについて語る人はいない。僕の知る限りでは東京のフルート奏者Mr.Slainteくらいかな”
Faymoy Lasses/Bunker Hill/John Dwyer’s (Reel)
★ Faymoy Lasses
“誰がいつ頃書いた曲かはっきりしたことは分からないが、1907年にはすでに楽譜として出版されているので、トラッド扱いにしてもいいだろう。AパートはEm BパートはGで、特に出だしは“3連符の天国”といわれる”
★ Bunker Hill
“これも前の曲と同じく1907年には採譜されているものだ。このセットはDale Russが好んで使っていた。
★ John Dwyer’s
“前の曲とのつなぎはAndrewから頂いた。とてもつながりが良く、彼のいたずらっぽい顔が目に浮かぶようだ”
Drunken Sailor (Hornpipe)
★ Drunken Sailor
“美しい5パートのホーンパイプだ。昔からとても好きだったので、希花が大好きな曲だと聞いた時には驚いた。それなりに弾くにはとても難しい曲だと思う。テクニックではどうにもならない曲のひとつだろう”
Hand Me Down The Tackle/Cooler’s Morning Dew (Reel)
★ Hand Me Down The Tackle
”初めて聴いたのは、もしかしたらNoel Hillの演奏だったかもしれない。アルバムではPure Dropとクレジットされていた。他にもTom Steeleというタイトルで知られている。結構気持ちよく音が飛んでいて、いい曲だ。僕らはこの後に以下の曲をもってきたが、その音のつなぎがとても気に入っている。確かアコーディオンのJohn Williamsがライブで、別な曲だったが同じつなぎをやっていた”
★ Cooley’s Morning Dew
”これは有名なMorning Dewと考えていいだろう。変な言い方だが、Morning Dewという曲自体、様々なやり方がある。Bパートから入るのが非常におしゃれな時もある。このCooleyのバージョンはそれに似ている。いずれにせよこの上ない名曲で、どのようにもアレンジでき、またかっこよくすることができる。多分若者達はこういう曲にパーカッションやチョッパーベース、キーボードなどが入ればもっとかっこよくなる、と思うだろう。しかしこのようなシンプルで美しい曲をまず、いかに基本的に演奏するかがとても大事だと僕は思う。機会があれば、ケビン・バークとミホー・オドンネルの演奏を聴いてみるといい。胸が痛くなるほどの感動を覚えるはずだ”
The Maid Behind The Bar/Gneevgullia/Miss Brady’s
★ The Maid Behind The Bar
”ブルーグラスでもたまに演奏される。70年代によく演奏したBilly in the Low Groundはほとんど同じ曲ではないか、と思われる”
★ Gneevgullia
”変わったタイトルだが、Co.Kerryにある小さな村の名前らしい。非常に美しいメロディの3パートのリールだ。アイルランドでもよくセッションで登場する。またThe Pride of Rathmoreというタイトルでも知られているそうだが、こちらもRathmoreというちいさな場所の名前であり、双方はとても近いところに存在するということだ ”
★ Miss Brady’s
”コードはAから入り、すぐにDにいき、そしてBパートはEmになる。こちらのパートを先にもってくる人もいる”
The Mullingar Races/Maple Leaf/Five Mile Chase (Reel)
★ The Mullingar Races
”思えば、希花に最初に教えたセットかもしれない。この曲の出だしのメロディが好きで、よく頭に浮かんでいたからだ。ずっと前、Mullingarを通過した時もついつい口からこのメロディがでてきたものだ。トラッドらしい大好きな曲のひとつだ”
★ Maple Leaf
”Darach De Brunという人物が、自身の結婚式の為に書いた、という曲。ダブリンのMaple Hotelで行われたので、この名前にしたそうだ。Aパートは美しい。Bパートは単純といえば単純だが、このEmで始まる曲、ほとんどEmでしかないのだが、BパートはAm始まりでもいいのではないか、と思う。ただし同じAmでもこのコードの響きはDADGADでないと出ないものかもしれない”
★ Five Mile Chase
”1886年頃のコレクションにも登場するくらい、古い曲だと言われる。この3曲のセットは昔から好きでよくやっていたものだが、希花ならすぐ把握できるだろうと、これを選んだ。とにかくトラッドを沢山覚えて欲しい、という僕の願いの最初のセットだったが、これから先が希花にとって大変だっただろう”
The Cat in the Fiddle Case/Gypsy Princess (Barn Dance)
★ The Cat in the Fiddle Case
”次のアルバムのタイトルはこれで決まり…かな。The Sessionのサイトにコメントを送っている、Mr.Gian Marcoの作。本名かペンネームかはわからないが、彼にお礼を言いたいくらいにとてもかわいらしい曲だ”
★ Gypsy Princess
”コーマック・ベグリーがよく弾いていた曲。もともとニュー・オーリンズあたりのケイジャン音楽だという説もある”
Brown Coffin/Rodney’s Glory (Hornpipe)
★ Brown Coffin
“1898年出版の書籍にはThe Factory Smokeというタイトルで掲載されている、ということだが、Martin HayesはこのBrown Coffinというタイトルを使っていた為に、多くの人はこのタイトルで知っている”
★ Rodney’s Glory
“古くはディビッド・ブロンバーグのギター演奏で覚えたホーンパイプ。セット・ダンスというカテゴリーにも入ると思う。前の曲とのつながりは、ちょっと似すぎていて混乱の素となる可能性があるが、どちらも美しいメロディだ”
Tear The Calico/The Longford Tinker (Reel)
★ Tear The Calico
“Rip The Calicoともいう曲。いいメロディを持ったスピード感あふれる曲だ”
★ The Longford Tinker
“ほとんどJenny Dang The Weaverというスコットランドの曲と一緒だ、という説がある。確かによく似ている。このセットはティプシー・ハウス時代によくやったものだ”
The Green Groves of Erin/The Jolly Tinker (Reel)
★ The Green Groves of Erin
“ボシー・バンドの幻想的なキーボードのイントロが好きで、1975年くらいから大好きだった曲”
★ The Jolly Tinker
“5パートあるこの曲はギター奏者にとっても考えるのにもってこいの曲だ。各パートごとに独特なテキスチャーがある素晴らしい曲だと思う”
Within A Mile of Dublin/The Glass of Beer/Dick Gossip’s (Reel)
★ Within A Mile of Dublin
“やはりBarney McKennaの演奏が最もよく聴いたものだろうか。フランキー・ギャビンが猛烈なスピードでやっていたものもあった。東京のフルート奏者Mr.Slainteはこの曲の後にTyrone Ashplantを薦めている。確かに一理ある”
★ The Glass of Beer
“僕等は敢えてこれをもってきたが、これはとても楽しい曲だ。多くの録音が残されているが、僕はストックトンズ・ウィングのライブ盤でよく聴いていた”
★ Dick Gossip’s
“これも僕等は敢えてBパートから入っている。そうすることによって前の曲とのつながりがとてもエキサイティングに聞こえる。これは見事なチェンジだが、このアイディアはジャック・ギルダーからいただいた。因みにタイトルだがThe Castleとしても知られている”
March of The King of Laoise (Jig)
★ March of The King of Laoise
”そんなによく演奏する機会はないが、
Chanter’s Song/The Maids of Mitchelstown (March/Reel)
★ Chanter’s Song
”ずいぶん前にKim Robertsonのハープ演奏で聴いたことがある。
★ The Maids of Mitchelstown
”この曲はなんといってもThe Bothy Bandだろう。初めて彼らのアルバムを手にした頃から、
John Nee’s/The Gravel walks (Reel)
★ John Nee’s
”またの名をHarvest Moonといって、Paddy O’Brienによって書かれた曲だ”
★ The Gravel Walks
”おそらく最も有名なセッション・チューンのひとつだろう。
The Golden Keyboard/The Reel of Rio/Dublin Porter (Reel)
★ The Golden Keyboard
”Martin Mulhaireの作。よくジャック・
★ The Reel of Rio
”Sean Ryan作のポピュラーなセッション・チューン。リオはリオ・
★ Dublin Porter
”ダブリンに着くとついつい口から出てしまうのがこの曲。
Pigeon on the Gate/Trim the Velvet (Reel)
★Pigeon on the Gate
“Kevin Burkeで聴いて以来、何故かこの音楽の代名詞的な曲だと感じてしまうくらい大好きな曲だ。この曲に関してはギターはあまり小細工せず、メロディーに忠実に伴奏したいと思ってしまう。何度も登場するが、東京のフィドラー“モハーさん”が久しぶりに見せてくれたKevin Burke とMicheal O’DomhnaillのOhio Universityでのライブは穴のあくほど見つめたもので、この曲から入る最初のセットで、もう胸が締め付けられ、身動きができなかったほどだ“
★ Trim the Velvet
“なんといってもMichael Colemanの演奏だろう。個人的に好きなのだが、決してスーパー・プレイではないし、どう聴いても上のCのノートは可哀そうなくらいに外れている。しかし彼のプレイを聴いてニュー・ヨークのアイルランド移民たちが涙を流したということがよく分かる。僕らでさえ涙なくしては聴けないものだ。希花にもずっと弾き続けてもらいたい曲のひとつだ”
Flatbush Waltz/The Shepherds Dream/Onga Bucharest (Waltz/Reel)
★ Flatbush Waltz
“ブルーグラス・マンドリンの異端児Andy Statman作のいかにもユダヤ音楽らしいメロディだ。彼はクレズマー音楽の管楽器奏者でもあり、また、普通のブルーグラス・マンドリン奏者が使わない、ティアー・ドロップ型の丸穴タイプを使っていたが、その独特な音色と独特なリックは言葉で表すことが難しかった。マイナーの美しい抒情的なメロディをもった曲だ”
★ The Shepherds Dream/Onga Bucharest
“De DanannがJewish Reelとして演奏していたものだ。2曲セットなのでこのように表示したが、これもAndy Statmanの曲らしい。1987年のDe Danannの録音では正式なタイトルは記載されていなかったが、その演奏は凄まじいものだった。僕は1986年にアメリカで彼らの演奏を見ているが、その時にも既にレパートリーに入っていた最も印象深かった曲のひとつだ。マーチン・オコーナーのアコーディオンとフランキー・ギャビンのフィドルが強烈にすっ飛ばす。僕等は多分、2011年の10月くらいからこの曲をレパートリーに取り入れ出した。二つの楽器が絡む様をフィドルひとつで表現してくれ、というのは無謀ではあったが、見事に自身のレパートリーとして成り立っている。これにはメアリー・シャノンも、張本人であるフランキーも度肝を抜かれたようだ。You Tubeに初めて希花とフランキーをひき合わせた時にこの曲を演奏している画像がのっているが、フランキーも久しぶりなのに、強烈なハーモニーですっ飛ばしてくれた。この曲をフィドルだけで弾くのは希花くらいだろう。アイルランドでも他の人の演奏で聴いたことは無い”
Miller of Droghan/ Music in the Glen (Reel)
★ Miller of Droghan
“スロー・リールという感じで演奏しても趣のある美しい曲だ。僕らはGで演奏するが、僕は敢えて2フレット目にカポをして弾いている。そうすることによってサビのEmが俄然生きて来る。コードに含まれる音の配列を考慮に入れてみるとそういうことがよくみえてくるはずだ”
★ Music in the Glen
“セッションでもよく登場するポピュラーな曲。前の曲同様にスロー・リールとして演奏しても趣がある”
The Hawk/MacArthur Road/Sitting on the Throne (Reel)
★ The Hawk
“これはもともとホーン・パイプとして知られているが、Beginishの録音ではリールとして演奏していた。それがずっと頭から離れなかったので、いつのまにかリールだと思ってしまった。更にShetland Fiddlerという曲がソースになっていると思われるので、その辺からも混乱していたのだが。どちらにせよBパートのメロディが印象深く、どうしてもレパートリーに取り入れたかったものだ”
★ MacArthur Road
“Dave Richardsonのペンになる曲。この人Key of Eの曲が好きなのかな。因みにCalliope Houseがそうだ”
★ Sitting on the Throne
“James Kellyのペンになる非常にエキサイティングな曲。出だしから他とは少し違うテキスチャーをもった面白い曲だ”
Dublin Reel (Reel)
★ Dublin Reel
“セッションでもよく登場する人気の高い曲。3パートで一般的にはKey of Dだが、Gで演奏する人達もいるようだ。この曲を僕等は34で出たGlass of Beerの前に演奏することもあるので、敢えて1曲だが載せておいた”
Dougie MacDonald’s/Kit O’Connor/Tommy Peoples’ (Reel)
★ Dougie MacDonald’s
“多くの人はSolasで覚えた曲だろう。その昔James KellyとZan MacLeordのアルバムにも入っていたそうだが記憶にない。それくらいSolasの演奏が印象深いものだったのかもしれない。作った本人はBroadcove Bridgeとよんでいたそうだが、何故か彼の名前がタイトルとして浸透している”
★ Kit O’Connor
“この曲に関してはなんの情報も得られなかった。ただかなり前からアメリカの西海岸では演奏されていたもので、ティプシー・ハウスのレパートリーでもあったものだ。確かにみんなこのように呼んでいたが、それも明確なことではないかもしれない。とてもいい曲だが、以後誰かが演奏しているのを聴いたことが無い”
★ Tommy Peoples’
“トミー・ピープルスという名が付いているが、彼の作品ではないそうだ。アイリッシュではよくあることだ。Jenny Nettle’s FancyとかPaul Montague’sとも呼ばれている。 Bmで始まるAパートが特に美しい”
Cape Breton Fiddlers’ Societys’ Welcome to the Shetland Islands/The Contradiction/
President Garfield’s (Reel)
★ Cape Breton….
“いい加減にしてくれというくらいのタイトルだ。それにいい加減にしてくれというくらい別なタイトルも存在する。Shetland とCape bretonが逆になったものもある。作者はShetlandのWillie Hunterだ。70年代に持っていたスコティッシュ・フィドル・オーケストラのアルバムでよく聴いていた曲”
★ The Contradiction
“とても歴史の深い、そして超絶テクニックが必要な曲だ。1800年頃William Marshallによって書かれた、とされている”
★ President Garfield’s
“元々はホーンパイプ。だが、前の曲からのチェンジがとてもかっこいいのでこれを持って来てみた”
Paddy Mills’ Fancy (Reel)
★ Paddy Mills’ Fancy
“この曲にもいろいろなタイトルが付いているが、どれも彼の名前から始まる。それはDelightだったりSpecial Dreamだったり、そんな意味ではまぎれもなく彼の作品だ。なんかいいメロディ、ついつい弾きたくなるような曲だ。僕等はよく「その26」に登場したThe New Mown Meadowの前にやっている”
My Love is in America/Heathery Breeze (Reel)
★ My Love is in America
“とても古い曲で、かつ、とてもよく知られた曲だ。2002年くらいにMick Moloneyとのコンサートで演奏したことがあったが、これとColliersという曲とは余りにもよく似ているのでわざと二つを一緒に演奏した。その時はダブル・バンジョーだった”
★ Heathery Breeze
“元々のタイトルはHeathery Braesではないか、と言われる。Braesは丘や堤の斜面、あるいは側面、という意味がある、主にスコットランド地方で使われる言葉らしい。
僕はこの後で「その12」に登場したCongressを持ってきて録音したことがある”
The Long Drop/The Guns of the Magnificent Seven (Reel)
★ The Long Drop
“シアトルのフィドラーRichard Twomeyという人によって書かれた曲、ということだが、僕はRandal BaysとJoel Bernsteinの素晴らしい演奏でよく聴いていた。Joelは「その19」に登場したThe Messengerの作者。JoelとRandalは共に僕の大好きなミュージシャンだ”
★ The Guns of the Magnificent Seven
“これは言わずと知れた(と言っても、僕等の世代には)荒野の7人という映画のタイトルだ。ジョン・スタージェス監督の名作で、元々はクロサワ作品「7人の侍」を真似て作った映画だ。いつも、7人は誰が演じたかな、と考えてしまっていたけど、今のネット社会なら何の問題も無く解決してしまう。だから良くないのだろう。一生懸命探しに出かけたり、考えたりしなくてもいいわけだ。曲の方は映画とは無関係だがFintan McManusというフルート奏者によって書かれている。尚、このタイトルを付けたのはSeamus Eganだという説があるが、彼のバンジョー・プレイは絶品だ”
日本語でいうと代理コードとなるがsubstitution chordといわれるもので、この音楽ではあまりいい意味では使われない。
メロディをよく聴かずに自分のためにだけギターをかき鳴らすタイプの人達がよく犯す間違いだ。
ジョン・ヒックスくらいでないとなかなか言ってくれないが、もし良く分かっていないのなら、アイリッシュ・ミュージックに関わるべきではない。
リード楽器の演奏を注意深く聴きながら、この音に対してはこの和音を使うべきではない、これは許されるだろうが彼(彼女)は好きだろうか、などと考え、相手の出方を見る。
先日、久々にデイル・ラス、そしてトム・クリーガンのトリオで演奏したが、半分ほど知らない曲や、聴いたことはあるけどやったことが無い曲、というものがあった。
そんな時はひたすらよく聴くのだ。例えばAパートを聴きながら彼らのリズムと音の進行を聴く。もし、聴いたことのない曲だと、Bパートで5度にいく可能性もあるし、更にCパートもDパートもあるかもしれない。とても危険だ。
ただほとんどの場合Bパートを聴けば、その次にどういうメロディがくるかの予想はつくが、多くの人はこういう時、訳も分からず代理コードを使ってみたりする。
和音(コード)は、使ってみたりしてはいけないのだ。
そこに確固たる理由がなければいけないのだ。
僕はKid on the Mountainという曲の4パート目にAmを使う。キーはEmだ。これは普通のチューニングでは得られないDADGAD独特の響きを利用する。
しかし、今回のトリオではパイプがいる。その場合ドローンが存在するから、もしかしたらAmが邪魔になるかもしれない。ただ、ここでAmを使うことで4パート目からぐっと違う世界に持って行くことができる。もしここでEmを使うならばビートの打ち方を変えたほうがよいかもしれない。その方が曲にメリハリがつく。
そんなことをこの曲が始まった時から考える。
僕はほとんど全ての曲でこんなことを考えている。
今回のMorning DewではA7(代理コード)は使わなかった。いつもは3回目に使うが、このトリオには合わないかもしれない。そう思ったら自分の満足のために使うべきではないのだ。
とことんEmで彼等と共通の世界を創り出す。そのことに専念すべきだ。
日本で人気のあるギタリストはジョン・ドイルとドナウ・ヘネシーだろう。彼等はとてもいいギタリストだが、なぜか彼らをフォローしている人達の多くが勘違いをしている。
彼らのスタイルは決して代理コードいっぱいの適当ギターではない。ひたすらかっこいいが、実によく計算されている。
ギタリストはギターを置いて、今一度Michael Coleman James Morrison Seamus Ennis Patrick Touhey Paddy Killoran Joe Cooleyなどの演奏に耳を傾けるべきだ。
Cooley’s/Bantry Bay (Hornpipe)
★ Cooley’s
“Paddy O’Brien作のホーンパイプだがJoe Cooleyがとても気に入って演奏していたのでこう呼ばれている。とてもいい曲で僕等のお気に入りでもある”
★ Bantry Bay
“The Little Stacks of Wheatと呼ばれることもあるが、それはそれでちがう曲が存在する。それというのもPaul BradyとAndy Irvineのアルバムでこうクレジットされているから、らしい。まぁそこそこあることではある”
Tom Billy’s/The Castle/The Cliffs of Moher/Farewell to Erin (Jig/Reel)
★ Tom Billy’s
“De Danannの演奏で70年代から大好きだった曲。3パートをどういう風に弾き分けるか、ギタリストにとっても非常にきめ細かい神経が必要なおもしろい曲だ”
★ The Castle
“Sean Ryanというタイトルのほうが一般的かもしれない。前の曲からこの曲にチェンジする時がとても好きだった。De Danannのセットだ”
★ The Cliffs of Moher
“クレアー・スタイルの有名な曲。一時リールとして演奏することが流行ったりしたこともあった。
★ Farewell to Erin
“僕等はここからリールに突入。名曲中の名曲かもしれないが、ギタリストが最も気を付けるべき曲のひとつではないかと思う。4パート全てが違うのだ。いや、ほとんど同じだ。だからこそ違うのだ。なんだか「バカボンのパパなのだ」みたいだが、こういう曲でギタリストがどう弾くかを聴いてみると、その音楽に対する理解度が解ってしまう。全ての音の進行、そしてリズム、どこをとっても興味深い、やりがいのある曲だ。長い曲だが、もし4回、5回やるとなると、どうするか…。マーティン・ヘイズと二人で5回以上やったことがある。彼が異常に乗ってきて止まらなかったからだ。そのようにリード楽器奏者を高揚させていくのも面白い”
追加:The Castleの後でThe Nightingaleという同じくSean Ryanの曲を持ってくるのが一般的でポピュラーなセッションでのやりかたかもしれない。そんなことも知っておくと便利だと思う。
今回は、僕等が練習している時、わざとよく似たものをセットとしてではなく、ただくっつけて弾いてみたりする曲をいくつか載せてみた。適当に崩すわけにいかない厳しさを覚えるために、僕等はよくこういうことを練習の時にやってみたりする。あんまり似ているのでギターも気を付けて弾かないと違いが出ない。
まずキーオブDのポピュラーな曲3曲から。
Providence (Reel)
★ Providence
“Michael ColemanとLad O’Beineがロード・アイランドからニュー・ヨークに向かう汽車のなかでこのメロディが浮かんだという。ちょうどプロビデンスに差しかかった時、あるいは目的地がプロビデンスだったか。しかしこの曲を書いたのはCo.Mayoのフィドラーで殆どをニュー・ヨークで過ごしていたJohn McGrathだ。そしてもともとは彼の出身地であるRossportの名前を付けてRossport Reelと呼んでいたそうだが、コールマンが付けたこのタイトルのほうが有名になってしまった”
Dowd’s No9 (Reel)
★ Dowd’s No9
“SligoのフィドラーJohn O’Dowdの作品といわれている。他に8作品あるかどうかは定かでないらしいが、この9番は有名だ。DervishのSeamus O’Dowdはひ孫に当たるということだ”
The Cedars of Lebanon (Reel)
★ The Cedars of Lebanon
“Sean Ryan(Offaly)の作。ずっと好きな曲だったが、タイトルを忘れていたところ、Doolinのセッションで最初にテリーが弾いたことによって、全てが蘇った”
Ah Surely! (Reel)
★ Ah Surely!
“Seamus Tanseyのライナーによると、かなり古い曲で、書いたのはSligoのフルート奏者Willie Sneeという人物らしい。この曲はGで演奏されるのでまだこんがらからなくて済むが、前の3曲とひっ付けたりすると、時々Bパートがどうなるか忘れてしまいそうになる。多分“その13”に登場したGeorge White’sあたりと一緒にやると、もっと分からなくなる危険性もある。他にもすでに登場しているBucks of OranmoreとLast Night’s Fanなんて一緒にやったら分からなくなりそうだし、そういう曲は数限りなくあるので、それはそれで面白い”
The Humours of Tulla/ Skylark/ Roarin’ Mary/ Swinging on the Gate/
Rakish Paddy/The Chicago/The Gooseberry Bush/Janine’s/
Richard Dwyer’s/Dougie MacDonald’s/Kit O’Connor/Tommy Peoples/
Tom Ward’s Downfall/Hunter’s Purse/Dinny O’Brien/Fox Hunter’s (Reel)
この長いセットはずいぶん前に冗談のようにして作ったものだ。これだけの曲を途切れなしにリールのセットとして考えてみた。
やってみたらなかなか繋がりが良かったような気がする。
★ The Humours of Tulla
“僕はBattlefield Bandの演奏からこの曲を知ったが、後にアンドリュー・マクナマラとよく一緒に演奏したものだ。このあとの2曲共にタラ・ケイリ・バンドのおきまりセットである”
★ Skylark
“メロディが美しく大好きな曲のひとつだ”
★ Roarin’ Mary
“大体これまでの3曲はセットで演奏されることが多い。ジョー・クーリーをはじめ、クレアーのお決まりでもある。僕はアンドリューからとことん仕込まれたリズムが大好きだ”
★ Swinging on the Gate
“Katherine Brennan’s Favoriteという同じメロディを持ったホーンパイプがあるが、僕はずいぶん前にブルーグラス・バンドで聴いたことがあったが、それはリールだった”
★ Rakish Paddy
“ずいぶん有名な曲で、映画「タイタニック」の中でも主人公達が急いで船に乗り込むシーンなどにふんだんに使われていた。元々はスコティッシュ・チューンで3パートのものあり、4パートのものあり、挙句の果てに6パートのものも存在するらしいが、僕は2パートで充分のような気がする”
★ The Chicago
“この曲も80年代からストックトンズ・ウィングでよく聴いていた曲だ。ただ、メロディラインがあまり好きなタイプの曲ではないが、非常にポピュラーだ”
★ The Gooseberry Bush
“この3パートのリールは大好きだ。ギタリストにとってもなかなかにおもしろい。それぞれのパートに深い味わいがある”
★ Janine’s
“Jim Sutherlandよって書かれたGmのエキサイティングな曲。僕はDeclan Coreyから習った”
★ Richard Dwyer’s
“これは別なタイトルもありそうだが、僕はブリーダ・スミスに教わったこのタイトルを使っている”
★ Dougie MacDonald’s/Kit O’connor/Tommy Peoples
“この3曲はすでに「その38」に掲載されている”
★ Tom Ward’s Downfall/Hunter’s Purse/Dinny O’Brien
“この3曲も「その24」に掲載されている”
★ Fox Hunter’s
“これは「その20」で出ているが、このセットを考えた時にはGで1回、Aで1回、Gに戻って1回、さらにAで2回やった。これはアンドリューお得意のやり方だ。このセットで最初からFox Hunter’s以外の曲を2回づつやると、約22分になる“
Humours of Castlefin/The Templehouse (reel)
★ Humours of Castlefin
“このセットはTony MacMahonとNoel Hillのアルバムで1曲目に入っていたもので長い間お気に入りだった。まだトニーがアンドリューの伯父さんだということを知らなかった頃からだ。今でも覚えている。彼がバーのカウンターでギネスを飲みながら「トニー・マクマホンのプレイはどう思う?」と訊いてきたので、僕はすかさず「ノエルとのアルバムで聴いている。素晴らしいプレイヤーだ」すると言葉少ないアンドリューがこう言った。「My Uncle you know」
後にトニーとツアーをするようになったのはアンドリューが彼に「ギタリストが必要だったらじゅんじに頼め」と推薦していたからだと知った。さすが親族だけあって性格もよく似ているし、どちらも超Aクラスのアコーディオン奏者だ。曲の方はEagan’sとも呼ばれているが、どのEaganだろう。彼等はダブルでやっているが踊りの為だろうか。普通はシングルみたいだ。でも僕等はダブルが気に入っている”
★ The Templehouse
“この2曲を演奏していると、本当にクレアーの景色が浮かんでくる。トニー、そしてノエルとの演奏、アンドリューとの日々、朝から晩までクレアーのリズムをアンドリューの家で体に入れていたこと。朝起きると咳が聞こえてきて、飲みに行くか、というお誘いがかかる、そんな日々が走馬灯のように浮かんでは、また消えていく。僕の大好きなセットを今、希花が弾いている。きっと彼女にはあの、辺り一面真っ暗な村に夜10時半過ぎると、ポッと灯りが灯るフランのパブが見えているだろう。あの傾いた狭いパブが。このようなトラッド・チューンがこの上なく好きなのだから困ってしまう”
Tone Jacket (Reel)
“作曲者についてはこのようになっている。Connie O’Connell, a fiddler from Kilnamartyra, Co. Cork. 非常に美しい、しかも覚えやすいメロディーライン持った曲だ。僕らはこの曲を「その32」で掲載したGneevgulliaの前に持ってくることもある”
London Lasses (Reel)
“この曲はTone Jacketの次の曲として持ってきて、2曲だけのセットとしてもいいかもしれない。セットを考えるのもなかなか難しい。この2曲は出だしが似ていて、音の進行に関連性があるので選んでいるが、たまに度胆を抜くような曲のチェンジも面白いことがある。と同時に全く合わない曲というのもあるから尚面白いのだ”
Sligo Maid/Silver Spear (Reel)
“これは有名な曲のひとつだ。ギター・コードについていろいろ取沙汰されているが、僕はAmから入り、BパートでCを頭に持ってくるやり方が好きだ。実際にはメロディーとの組み合わせでC13thになるが、もしかしたらD7でもいいかもしれない。しかしかなり違う趣になる。ギタリストは要注意だ”
“これも超有名な曲だ。出だしのメロディーはちょっと「お馬の親子」に似ているが、そうならないように演奏することを心掛けなくてはならない。もっともアイルランド人はそう思っていないだろう”
Sweeney’s Wheel/The Otter’s Holt (Reel)
“Jackie Daly作のこの曲は長い間知っていたけど、すっかり忘れていた。ひょんなことからPatrick Streetの昔の録音物で見つけ、思い出したものである。この音楽に詳しい人なら、いかにもJackie Dalyらしいと思える作品だ。オリジナル・キーはBm”
“Junior Crehanの作。彼の母親が庭でコンサルティーナを弾いていたら、小川から、かわうそが出てきて聴いていた、という本当の話を題材にして作られたらしい。そういえば、ずっと前、フィドラーのPat O’Connorが自分の生い立ちを話してくれた時もそんなことを言っていた。彼の場合は、月夜の晩にフィドルを弾いていると、野うさぎがいっぱい出てきて聴いていた、というセロ弾きのゴーシュみたいなお話しだった。いずれにせよ、この音楽はそういう音楽である。20年ほど前に、バークレイのソングライター兼シンガーである、ダニー・カーナハンが見事に10拍子にアレンジして一躍西海岸で大流行したものだ。ダニーは僕と組んでいたハンマー・ダルシマーのロビン・ピトリーの元旦那で、グレイトフル・デッドのナンバーを巧みに生かしたアイリッシュ・スタイルのバンド「Wake the Dead」のリーダーであった人だ。尚、僕らはこの曲の代わりに「その34」にあるTear the Calico/Longford Tinkerのセットを持ってくることもある”
The Geese in the Bog/Gander in the Pratie Hole/Cook In the Kitchen (Jig)
“このセットはティプシー・ハウスから受け継いでいるものだ。キー・オブCの珍しいジグで、これは3曲がストーリーとして組まれている。先ず「沼地のがちょう」だ”
“Ganderはやはり「がちょう」だが、この曲での真意はわからない。“間抜けもの”という意味もあるので、なんとも言えないが、「がちょう」とすると、なんとなく沼地にいた「がちょう」が穴に逃げ込んだ、というストーリーが作れる”
“そして、結局捕まって料理された、という独断と偏見による解釈が成り立つ。あくまで作り上げたストーリーなのであまり真面目に反論されても困るのだが、いいセットだと僕は思う”
Palm Sunday/Merrily Kissed The Quaker (Slide)
★ Palm Sunday
“この曲をJigと考えるかSlideとするかでとても悩んだのだが、結局Slideとして載せた。おそらくメロディ・ラインが非常にSlideっぽくて、少し早めに演奏すればそう聴こえてくるだろう。Slideは、またの名をSingle Jigともいう。普段僕等がJigと呼んでいるのがDouble Jigと、まぁ、この辺はダンスをする人のほうが詳しいかもしれない。勿論スピードも、拍の取り方なども違うものだ。PolkaやSlideは僕等のレパートリーとしては非常に少ない。だが、Kerryに行けば否応なしに演奏することになる。ベグリー家の生活のリズムはまぎれもないPolka&Slideだ”
★ Merrily Kissed The Quaker
“この曲はJigだと思っている人も沢山いるだろうが、実はSlideなのだ。Andrewにいわせたら「どっちでもいい」かもしれない。確かに彼はダンサーズが要望すれば、どんな曲でも頼まれたリズムで弾く。とことん知っていて、そのうえで遊び心満載の彼のプレイがとても好きだ。それはさておき、この曲は、たしか‘81年頃に誰かが僕に、あるテープをくれたことがあって、その中に入っていた記憶がある。それはPlanxtyの演奏だった。以来お気に入りの曲ではあったが、一般的に初心者受けする曲、というイメージが強くあってあまり演奏したことは無い。果たして前曲との組み合わせもいいかどうか分からないが、僕等のレパートリーとしては数少ないSlideを取り入れてみた。…Quaker’s Wifeというタイトルでも知られている”
The Luck Penny (Jig)
★ The Luck Penny
“上記のセットのPalm SundayをJigと捉えたら、次の曲はこれでいってみようか、と思ったもの。3パートのとてもいい曲だが、Humours of Ennistymonまたの名をCoppers and Brassという曲にメロディも構成もよく似ているので、時々頭が混乱する。余談だが2パートだとCoppers…3パートまでやるとHumours…という話しだ”
Ned of the Hill/Munster Bacon/Scully Casey’s (Waltz/Jig)
★ Ned of the Hill
“これは、Sinead Lohanの唄で聴いて、長い事大好きだったメロディだ。コンサルティーナを手に入れた希花にちょうどいい曲だと思ったのでJigのセットのあたまに持って来た。Bパートになると、どうしてもHector the Heroのメロディが浮かんできてしまったが、それもその筈。今一度Sinead Lohanを聴き直してみると、この歌がそのままHector…に入っていたのだ。確かに良く似ている”
★ Munster Bacon
“可愛いメロディの曲だ。僕はGearoid O’hAllmhurain(彼をステージ上で紹介した時、何と発音したらいいか分からず困ったものだ)の演奏で長い間気にいっていた。Munster Grassというタイトルでも知られている。因みにJody’s Heavenはこのタイトルを使っていたかな”
★ Scully Casey’s
“1981年のKevin Burke & Jackie Dalyのアルバム「Eavesdropper」に入っていた美しいジグ。僕はこのLPレコードを古着屋さんのレコード・コーナーで「1ドル」で買った記憶がある。中には「その11」に出てきたBlackbird(Hornpipe)も入っていて、シンプルで素晴らしいアルバムだった。AmのJigこれも希花のコンサルティーナのレパートリーになっている”
The Scotsman Over the Border/Paddy Fahey’s (Jig)
“キーオブDのとてもいいJigでティプシー・ハウスでもよくやった曲だ。希花もずっと前から知っていたようなので急きょレパートリーに取り入れた”
“数ある彼の作品の中でもあまり知られていないかもしれないが、ストックトンズ・ウィングがよくやっていた記憶がある。特にBパートのメロディが美しくて好きだ。僕らはこの後で「その3」にあるMcIntyre’s Fancyを持ってくる”
Log Cabin/Shoemakers Daughter/The New Copperplate/The Old Copperplate (Reel)
“いい曲だが、意外と録音している人は少ないようだ。僕はDe Danannの古い録音から学んだ。The Little Thatched Cabinというタイトルで録音を残している人もいる”
“これは有名なEd Reavy の曲だ。ジョディース・ヘブンでも録音した。
“特になんの変哲もないような曲だが、やり方によっては趣のある曲だ”
“これはほとんどの場合前曲とセットで演奏されるが、このタイトルでありながら、こちらのほうが後からできた曲のようだ”
今回はこれだけ。そろそろ今年も終わりなので、大掃除もしなければいけないし、なんとなくせわしくなってきた。因みに、僕は「お掃除フェチ」かもしれない。いつも思うが掃除機のコードをしまうと何故途端に残ったごみを発見するのだろう。それはまるで、自分の並んだレジだけがいつまでも進まない、ということによく似ている。さっきまでスイスイ進んでいたのに、なんて。
そんなことを僕はJapanese Murphy’s low(マーフィーの法則)と言っていた。別に日本に限ったことではないが、僕がアイリッシュ・ミュージックをやっていることを知っている白人たちには結構受けたものだ。寿司を食べているとシャリだけが醤油にボトンと落ちる様なとき、そんなことを言っては笑わせた。この法則のことを知らない方はネットなりで調べてみると面白いかもしれない。
何はともあれ、いろんなことをしなくてはならないので、少しペース・ダウンするかもしれないし、何故か急に書き始めるかもしれない。年末とはかくも忙しいものか。
今回はkey of DのReelを何曲か取り上げてみる。他の曲とのつながりとしては、いろいろと考えられるが、取りあえず単独でメロディを知っているものの中から。セットとして「これしかないでしょう」というものもあるし、差し替えてもいいものもあるし、たまには気分を変えるために別な曲を頭に持ってきたり、様々なやりかたで練習をする。なかには、知っているけど好みの関係上レパートリーには入れていない、という曲もあるし、やたらと羅列したりはしないつもりだ。
Love at the Endings (Reel)
“比較的遅い時期のEd Reavy Tuneということだ。僕はよくアンドリューと一緒に演奏した。覚えやすいいいメロディだ”
Jim Kelly (Reel)
“この曲は長いことDick Sherlock’sというタイトルで知っていたものだ。他にもいろいろとあるが、A Night in EnnisというタイトルでバンジョーのKevin Griffinが録音している。このタイトルはいいなぁ”
The Cameronian (Reel)
“これは元々key of Fで書かれたThe Cameronian RantというScottish Tuneだと云われている。セッションなどでも好まれるいいメロディの曲だ”
Lucy Campbell’s (Reel)
“これも、元はScottish Tuneということだ。StrathspeyでMiss. Lucy Campbellとも呼ばれる。Campbell Soupというのはアメリカのニュージャージー州にあるが、もとはスコティッシュ系の人が立ち上げた会社だろうか。僕はその本社があるカムデン(キャムデンと呼んでいた記憶がある)という街でコンサートに出演したことがある。Mick Moloneyと一緒だったと記憶しているが”
Jenny’s Wedding (Reel)
“素晴らしくスピード感あふれる曲だがBパートがどこにでも存在しそうなメロディで時々わからなくなりそうだ。パディ・キーナンの演奏がすきだ”
The Trip to Durrow (Reel)
“僕は本当に初期のころにこの曲を一生懸命覚えた記憶がある。そういう意味では比較的初心者でも取っつきやすい曲かもしれない。Durrowは、ちょうどアイルランドの真ん中あたり、Co.Offalyにある小さな村のことだろうか”
前回と同じコンセプトでKey of GのReelを掲載してみる。
The Swallow’s Nest
“Paddy O’Brien作のとても美しいメロディを持った曲だ。僕は若いフルートとフィドルのデュオで聴いてからとても好きになった”
London Lassies
“またの名をLondon Lassesといい、フルート奏者に好かれる曲だと言われている”
The Moving Bog
“The Moving Bog of Powelsboro という曲らしい。普通、僕らはThe Moving Bogと呼んできたが、同じタイトルで、もう少し有名な曲がある。これは魅力的なメロディを持った曲だがあまりポピュラーではなさそうだ”
Maud Millar
“これも同じタイトルで違う曲がたくさんある。こちらのほうはI Wish I Never Knew Youというタイトルのほうで知っている人のほうが多いかもしれない”
Flagstone of Memories
“Galwayのフルート奏者Vincent Broderickの作。Paddy Keenanのスピード感溢れる演奏が耳に残る”
Ladies Pantalettes
“とても古いCo.Clareの曲で、またの名をThe Duke of Leinster’s Wifeといい、長いことこちらのタイトルで知っていた。これはなにかの後で持ってくるほうがいいかな。僕らはSailing Into The Walpole’s Marshという曲の後で演奏する”
Garrett Barry’s
“これはFで演奏する人もいるようだ。アコーディオン奏者John Williamsのアルバム中、Eoin O’Neillのブズーキ・プレイが印象的で大好きな曲のひとつになった”
The Morning Star
“これは‘92年のMartin Hayesの印象が強すぎる曲だ。Fで演奏する彼のスタイルが官能的すぎる。もちろん70年代のBothy BandにおけるPaddyのパイプから始まるセットも魅力的だが。とても美しいメロディだ”
Miss Johnson
“これは有名なリールだが、Miss Johnstonとも呼ばれる。またMiss Johnstone’sというジグもあり(詳しくはHop Jig だという人もあり、Slip Jigだ、という人もいる)メロディはとてもよく似ている。どういう経緯でそうなったのかはよくわからない。元々はスコットランドの曲らしい”
Trip to Birmingham
“またの名をJosie McDermottというが、僕はこちらのタイトルで覚えていた。おそらく‘91年ころにDavey McNevinの演奏で聴いたものだろう。それから何回か、クレアーのケイリ・バンドで聴いた。あまりやる人はいないようだが、結構有名だし、いい曲だと思う”
Casadh An Tsugain (Set Dance)
“An Suisin Banという曲だが訳すとWhite Blanketとなる。最初この曲を見つけたとき、どこかで聴いたことのある曲だと確信した。そこで思いだしたのが70年代によく聴いていたBothy Bandのレコードだ。Micheal O’Domhnaillの何とも言い難いほどの素晴らしいボーカルで聴いていたものだ。しかし、セット・ダンスとしてはあまり馴染みがなかった。どこかで聴いたような気もするが。そこで、僕らは彼のボーカルのスタイルからセット・ダンスに持っていこうと考えた。スローで演奏すると、とても美しいメロディがひきたつし、そのあとのセット・ダンスもうんと可愛らしく聴こえてくる”
The Coolin/An Chuilfhionn March Air/Polka
“古いエアーで元々ハープ曲らしいが、僕はBreda Smythから習った。確か、元の大阪サンケイ・ホールの楽屋で急に「これやろうよ。とても有名な曲で、最近みんながやっている」と言って弾き出した。出番の5分ほど前だった。フィドルで弾いても、ギター曲にアレンジしても素晴らしい曲だ。有名な曲なので僕もメロディは知っていた。彼女はこの後The Boys of Malinに持っていった”
“多くの人の間で、MarchなのかPolkaなのかが討論されている。僕は多分Tina LechからPolkaとして習った、という記憶がある。もちろんMarchとして演奏する人もいる。メロディはとても可愛らしく、どちらのリズムで演奏しても楽しくなるような曲だ。
これは、まさしくThe Coolinのメロディをもじったものである。Coolinのアイルランド語表記もAn Chuilfhionnである。もちろん多くの例にもれず沢山の別なタイトルも存在するが”
Above and Beyond/Mickey Callaghan’s Fancy (Slow Reel/Hornpipe)
“Diarmaid Moynihanが両親のために書いたとされる非常に美しいリール…と呼ぶよりエアーといったほうがいいかもしれない。彼はCalicoというグループのメンバーであり、又いい作曲家でもある。彼らのCelanova Squareというアルバムは僕のお気に入りの一枚だった。日本のわらべ歌にも通じるところがあるような抒情的なメロディだ”
“この曲はアンドリューのお姉ちゃんであるMaryさんがよくやっていた。僕らもFでやったりGでやったりするが、CalicoのセットとしてやるときはGで演奏する”
The Bunch of Green Rushes (reel)
“とても変わった出だしの、特徴のある曲だ。2パートの場合もあるが、おそらくは後からもう一つパートが付け加えられたのだろう。古い曲だ。29で登場したKylebrackのセットの3曲目に持ってくるといいかもしれない。
Derry Craig Woods/The Cottage in the Glen (Reel)
“Father Kelly’sとも呼ばれるこの曲。これだからアイリッシュ・ミュージックはやめられないという代表のような曲だ。初めてやった時のこと。2パートめに差し掛かった時、待てよ、どこかで聴いたことがある、と思った。Father Kelly’sと呼ばれる2パートの違う曲に2パート目がほとんど一緒なのだ。でもGから演奏すると片方はAmになるのに対してこの曲はAmajorでないといけないのだ。ほとんど同じメロディだが、C♮かC♯の違いだ。全然違うのだ。そして更に3パート目がやってくる。まさにこういう曲に初めて出会ったとき、ギタリストはどう反応するか…腕の見せどころではある。因みにNollaig Caseyはこの曲でもAmにしている。そんなこともあるのでギタリストとしてはまず、3度を無視してみるのも方法のひとつだ。僕は初めての人と演奏するときには常に相手の出方を伺ってきた。相手が一番気持ちよく演奏できる方法を選ぶのがコツだ。当たり前のことだが。
“またの名をTommy Cohenともいい、Coen’s Memoriesともいう。Emの美しい曲だ。
初めて聴いたのはDe Danannだったかもしれない。それならばもうずいぶん前、70年代かな。人によってAmや Gmの演奏もある。どのキーでもメロディの美しさが十分引き立つ名曲だ。
The Killarney Boys of Pleasure/The Reel With The Birl (Reel)
“そのむかし、僕が加入する前のティプシー・ハウスのテープで聴いたのが最初なので、おそらく‘91年くらいだろう。彼らはスロー・リールでやっていたが、確かに通常のリール・テンポで演奏するよりも趣がある”
“Aパートは有名なDrowsy Maggieによく似ているが、Bパートにくると明らかにメロディが変わる。確かFrankieがこの曲をDrowsy Maggieとして録音していたが”
The Ruined Old Cottage in the Glen/Miss Ramsey (Reel)
“オニールのコレクションによるとLovely Mollyという曲がこれに当たる。ずっと前にどこかでマット・モロイとアーティ・マグリーンの演奏を聴いてからずっと気になっていた曲。AパートとBパートのテキスチャーの違いが大好きな曲だ。
“僕らはCalicoというバンドの演奏から学んだ。かれらは独特なバージョンで演奏しているが、いや、パートの順番が独特であって、メロディは、ほぼくずしていない。落ち着いたいいメロディの曲だ”
The Whistler of Rosslea/The Road to Glountane (Reel)
“Martin Hayesの演奏で知った曲だが、Ed Reavyの古い曲だ。とても好きだった曲なので、マーティンと初めてのステージでこれが出た時には気持ちが高揚した。何も言わず突然これを弾き出した時のことはまだ覚えてる。そのまま、今僕らがやっているのとは違うConner Dunn’sという曲に入った。それはCDと同じだったが、いよいよ乗ってきて、そのまま何も言わずBoys of Ballysadareに突入。あまりに乗りすぎたので、珍しく弓を滑らせて、僕のほうを見て「しまった!」という顔をして笑っていた。だが、このセットが終わるとショーの途中にも関わらずオーディエンスが全員立ち上がったくらいの白熱した演奏だった”
“Terry (Cuz)Teahan’sとしても知られている。長いことホーンパイプだと思っていた。少しゆっくり目にやるといい感じの曲だと思う。そんなことでホーンパイプだと思っていたのかもしれない。彼は幼くして父親を亡くしたが、残されたフィドルやフルートを姉たちが演奏しているのを聴いて育った、という、いかにもアイルランドの家族らしい話も、彼のチューン・ブックのなかで知ることができる”
Sailing into Walpole’s Marsh/The Duke of Leinster Wife (Reel)
“なんとも厄介なタイトルだ。それに、出だしがCastle Kellyという曲にそっくりなため、よく聴かないとこれを演奏しようとした人の気持ちを台無しにしてしまう。Castle Kellyと大きく変えるためには、ギタリストが頭をD7に切り替えることかもしれない。もちろんAmでもいいが、この曲に関してはCastle Kellyとほとんど同じメロディ(Aパートの最初の4小節だけ)でスタートするので、僕はD7にしている。このようにそれぞれの曲がよく似ていてもキャラクターが違うのだ。だからこそギタリストも何百通りもの組立が必要になってくる”
“The Ladies Pantalettesというタイトルのほうが一般的かもしれないが、僕は長いことこちらのタイトルで知っていた。1856年には採譜されているというクレアー・チューンだ。尚The Duke of Leinsterという曲もとてもシンプルで有名だが、これとは全く違う。「その49参照」”
The Moving Bog/The Green Fields of Rossbeigh (reel)
“こちらも「その49」に単独で登場しているが、とても面白い曲だ。何かの後でひっつけても、突然出てもなかなかに味のある曲”
“Kerry Reelとも呼ばれている、セッションでもよく登場するポピュラーな曲だ。RossbeighというところはCo.Kerryの美しい海岸線として有名であり、ディングルの対岸に位置するところだ”
King of The Fairies (Hornpipe)
“とても美しいメロディで、単独で演奏してもいいかな、と思う。そんな意味では、「その18」にあるThe Rights of Manと同じテイストの曲だ”
Taylor’s Twist/Lad O’Beine’s (Hornpipe)
“あまりポピュラーな曲ではないかもしれないが、いいメロディだと思う。Tommy PeoplesやLiam O’Flynnの演奏で知られる”
“これはEd ReavyがLadのために書いた、とされるが、彼のつけたタイトルはO’Beine’sではなく、O’Beineだという人がいる。この辺になるとESL(English Second Language)の我々にはその違いは大きいのか小さいのかわからない。メロディは大好きだ”
Drowsy Maggie/Farewell to Ireland (Reel)
“これはアイリッシュ・ミュージックを始めた人なら必ず最初のころに演奏するものだ。そのうち、あまりポピュラー過ぎて、3年もするとほとんど演奏しなくなるだろう。もちろん人によって違うだろうが。例えば、「アイルランドの洗濯娘」とか「ケッシュ・ジグ」とか、同じような曲が存在する。セッションでもテリー・ビンガムやクリスティ・バリーが、そんな曲を書いたリクエストの紙を丸めて捨てていた。この曲も間違いなくそんなうちのひとつだ。映画「タイタニック」でも3等船室で演奏されていた。僕らの感想は「あ、やっぱりこれかよ」だ。そして、面白い話がある。
以前一緒にやっていたフィドラーのローラ・リスクがジョン・ウェイランのバンドでどこかの大きなフェスティバルに出演したとき、タイタニックで演奏したあのバンドも出演していたそうだ。ローラ曰く「今までに聴いたバンドの中でも最も下手くそなバンドだったのに、CD売り場には長蛇の列が出来ていた。あたしたちなんて見向きもされなかった。じゅんじ、どう思う?」そんなもんだ。分かるような気もする。
話はそれたが、この曲、いろいろなバージョンがある。普通は2パートで演奏されるが、ティプシー・ハウスではJoe Cooleyが創ったと言われている3つ目のパートを演奏していた。AパートはEm、BパートはD、そしてCパートでBmにいく。これで演奏している人は他に知らない。Joe Cooleyは一時、サン・フランシスコに住んでいたので、ジャックはそこから学んだのだろう。もしかしたら偶然にも気まぐれに一度だけやってみたのかもしれないが、なかなかいい。尚、Drowsy Maggieとしてもうひとつ明らかに違うメロディが存在する。明らかに違う、と言っておいて何だが、これはほとんど曲の進み方が同じだ。Donegalバージョンと言えるだろうか。因みに2パートだ。ところで、最近になって3パート目を創った人物はJoe Cooleyではないという有力な話を知った。1931年にFrank O’Higginsという人物が既にこのパートを録音しているらしい”
“これもややこしいものだ。よく演奏されるFarewell to Erinとは違う曲。ただし、このErinとはアイルランドのこと。そちらはAmで演奏される。「その40」にすでに登場している。こちらはDで演奏される全く別なメロディだ。さらに調べていくと、同じDの曲で少しメロディが違うFarewell to Irelandも見つけることが出来るが、こちらはバージョン違いだろうか。それにしてはだいぶ違うような気もするが”
The Blarney Pilgrims/Helvic Head (Jig)
“パディ・キーナンが必ずやっていた曲だ。映画「タイタニック」でも演奏されていたかな。有名なトラッド曲である”
“5パートあるこのジグ。Yellow StockingともThe Kittenともよばれるスリップ・ジグによく似たメロディが存在する。そのメロディはどちらかといえば「その4」で登場したThe Humours of Whiskeyのほうが似ているだろうか。しかし、ところどころこの曲に近いのだ。なのでどちらかというと“構成が”というべきだろうか。Jody’s Heavenでも録音したことがあるが、大好きな曲だ。ギタリストにとっても5パートというのは、非常に考えるに値する”
Sliabh Russell (Jig)
“確かパディはこの曲から上記の The Blarney Pilgrimsに行っていたかもしれない。Amで演奏されるとてもいい曲だ”
The Butlers of Glen Avenue (Jig)
“これは曰くつきの曲だ。タイトルは多くの人がChristy Barry’s#2ということで覚えている。確かKevin Crawfordがそのタイトルで録音していた。ところが、作ったのはバンジョー弾きのTony Sullivanということだ。Christyとのセッションに向かう途中、テリー・ビンガムにこの曲のことを話したら「その曲はやらないほうがいい。沢山の人がChristyと一緒になるとこれをやりたがるけど、書いたのはTonyだ。非常に複雑だ」と言っていた。#2というくらいだから#1があるのだが、あまり好きな曲ではないので省略する。この辺は希花とも意見が合う。そして#1だがこれもChristy Barryとして伝わっているが、やはり他で演奏されているのを‘79年ころに聴いたことがある、という人もいる。その人曰く…Mary Begleyという人から習ったが、彼女はSean Coughlanというアコーディオン弾きからこの曲を習ったそうだ。SeanはChicagoに住んでいたことがある。ChristyはChicagoにもNew Yorkにも、アメリカのいたるところをツァーしているので、彼からSeanが学んだことも考えられるし、またその逆もあるだろう。この答えはもしかしたら、Seamus BegleyかBrendan Begleyが知っているかもしれない。こんなことばかり調べていると頭が痛くなるが、とても面白い”
White Petticoat (Jig)
“とてもモダンなメロディだが曲は古い。ただし、Solasがやって有名になったかもしれないので尚のことモダンに聴こえるのだろう”
Stan Chapman’s (Jig)
“ケイプ・ブレットンのフィドラーJerry HollandによってStan Chapmanのために書かれた曲”
The Miller’s Maggot (Jig)
“ここまでは3曲別々に書いてみたが、これらはSolasのファースト・アルバムのセットからだ。かなりいいセットだが、このままやるとSolasになってしまうので敢えてばらして書いてみた。他にいいセットを組んでみよう。3曲ともいい曲だ”
The Lark on the Strand/The Humours of Glendart (Jig)
“僕はだいぶ前にDaleから習ったが、希花もよく知っていたので、時々弾いている”
“映画「ハリー・ポッター」でもウエディングのシーンで使われていたほど有名な曲だ。決して素晴らしいものでもないし、初心者向きでもあるが、ある意味乗りやすい曲かもしれない。僕にとっては‘70年代初期のPlanxtyの演奏が印象深い”
The Humours of Ennistymon (Jig)
“すでに「その46」のLuck Pennyのところでタイトルだけは書いているが、特別には触れていなかったのでここで。またの名をCoppers and Brass(2パート)という。2012年にフィドル講師のBrendan Larrisseyが「タイトルを忘れた」と言っていたが、すかさず僕が「エニスタイモンじゃないか?」と言って驚かせたのを今でも覚えている。そんなことがよくあると、歴戦の勇者である相手にも認めてもらうことができる”
Julia Delaney’s/Bobby Casey’s/Mother’s Delight/Glencolmcille (Reel)
“これもある意味、初めのころに習う曲の一つかも知れない。とてもいいメロディだし、いろんなテキスチャーを組み込める曲だ。パイプ以外の楽器にはもってこいだ、と言われている”
“Port Hole in the KelpともFarewell to Camden TownともいわれるBobby Caseyの数ある作品のひとつ。とても親しみやすいメロディだ”
“いろんなキーで演奏する人がいるかもしれないが、僕らは基本的にDmだ。最初のコードはF。この曲で思い出すのは2013年の夏、Galwayでバッタリ再開したKyleが、その昔、どういうコードを使ったらいいか訊きに来たことがあったが、その時、この曲の分析についていろいろな話をしたことだ。「AパートはFからC,Fに戻ったら今度はC7、勿論Cでもいいがその7thの音はともすれば大切な響きをもたらす。気がつく人は1000人に一人くらいだけど。そしてBパートはセクシーな感じを出すために思い切り切なく弾く」こんなことを話したことがある。とてもいい曲だ”
“前の曲からこの曲につなげるやり方はJack Gilderから頂いたが、数あるセットの中でもとびぬけて優れているチェンジだと思う。前の曲のテキスチャーを損ねずに突然世界観が変わる、なんとも心憎いメドレーになる。いつだったか、フィークルで結構凄腕の、北からやってきたフィドラーがこの曲を弾いて、希花が後を追いかけた。終わってからおじさんが「なんだっけ?これ」希花が「Glencolmcille」おじさん「おー、そうだ。そういえばGlencolmcilleだ。良く知ってるなぁ。あんまり弾くやつはいないぞ」確かにあまり聴くことはないが名曲だと思う。ちなみに、聞きなれない名前だが Co.Donegalにある小さな村、といっていいのかな、町といったほうがいいのかな。とに角ここから先は大西洋が広がっている「北の果て」といえるかもしれない”
Finberr Dwyer’s/Dr.Gilbert/Malbey Shuffle (Reel)
“若いアイルランドのバンジョー弾きの演奏で覚えた曲。彼はKevin Griffinから習った、と言っていたが、もともとはFinberr Dwyerの作と思われる。彼のアコーディオン演奏では聴いたことがあるのだが”
“とても美しいメロディの曲だ。有名でセッションでも度々登場する。元はフレンチ・カナディアンの曲をMichael Colemanがこの名前で録音したそうだ”
“Diarmaid Moynihanの作。この曲を初めて希花に教えたとき、「あ、これ好き」と言ったのをよく覚えている。実はこの曲は僕も大好きだ。非常に単純なメロディだが音の進行がとてもいい。この人はCalicoのパイパーで数多くの名曲を書いている”
Callaghan’s/The Flowing Tide (Hornpipe)
“あまりポピュラーな曲ではなさそうだが、AパートもBパートもいいメロディだと思う。ティプシー・ハウスでも長いこと演奏してきたが、他の人で聴いたことはほとんどない”
“僕はDick Gaughanのギター・アルバムから習ったが、かなり有名なホーンパイプで演奏している人も多い”
Celanova Square (Jig)
“またしても、Diarmaid Moynihanの作。これは実に単純だが、たまらなくなるようなメロディの曲だ。どう説明したらよいかわからないくらいに、同じようなメロディが繰り返し演奏されるが、気持ちが高揚するような曲である。コード楽器の人のセンスが問われるものでもあると思う。F#mの曲だが、Dmaj7しかり、Bmしかり、でもF#mでありたい、というような、気持ちの中で「このコードを使うのは今でしょ!」という強い気持ちと「今じゃないでしょ!」という強い気持ちと、「何故今使うのか。何故今使わないのか」という理屈がきっちりしていないと、単なる無意味な伴奏になってしまう危険性がいっぱいの曲だ”
Leaving Brittany/George Peoples’ (Waltz/Reel)
“これは素晴らしい曲だ。作者はJohnny Cunningham。彼の死には本当に驚いた。確かに体はどこか悪そうだったが、たかだか1時間弱のリハーサルでも強烈な印象を残し、本番ではそれに輪をかけてエネルギッシュな演奏を展開した。作曲者、編曲者としても一流であり、また、誰からも好かれる人だった”
“Seamus Gibson作、ということだが、ほとんどSharon Shannon以外では聴いたことがない。素晴らしくドラマチックな曲である。僕らは初期の頃からこのセットをよくやっている”
Paddy Fahey’s/ Rakes of Clonmel/Princess Nancy (Jig)
“これはMajorでもMinorでも演奏されるし、Martin Hayesと初めて演奏した時には、どちらもごちゃ混ぜにしてやっていた。3度さえ抜いておけばこちらはどうってことないが。いずれにせよ、どちらで演奏してもきれいなメロディだ。このセットでは、僕らはMinorでやっている”
“2パート?または3パート?本当は3パートらしいが、僕らは2パートでやることが多い。これは僕の意見だが、3パート目はなくてもいいメロディのような気がするから。おそらくFrankie Gavinもそう思って2パートにしているのだろう。いずれにせよ、3パート目もある、ということは覚えておいたほうがいいことだ。セッションで出た時も、どちらでやるかあらかじめ訊いておいたほうがいい、と思うし”
“Liz Carrollが、友人であるNancy Leoniのために書いた、とされる曲。美しく、親しみやすいメロディだ”
Glen Road to Carrick/Pipers on Horseback/McGovern’s Favorites (Reel)
“Donegalの曲だ。僕は初期のセッションで覚えた。僕らは6パートで演奏するが5パートの人もいるようだ。その場合最後の2つのパートはよく似ているので、6パートのうちの5パート目を省き、僕らがやっている6パート目を最後の5パート目にして演奏するようだ。あー、ややこしい。セッションで出たら要注意だ”
“The Fare-haired Lassというタイトルのほうが有名だろうか。あるいはMick’s Jig Away The Donkeyか”
“終わりの部分が少し変わった譜割りになっている。いろんなやり方があるだろうが、僕らはPaddy Killoranの古いNY録音から学んだ”
The Connaught Heifers/Corney is Coming (Reel)
“僕はこのセットをSeamus Ennisの録音から学んだような気がする。耳にしたのは初期の頃San Joseに住むパイパーのDave MacCortからかもしれないが。ちなみに彼と、スコット・レンフォートとの3人でSilver Spireというバンドを組んでいたこともあった。庭でトウモロコシやじゃがいもを栽培していたが、何故かキノコだけは食べたくない、と言っていた。あれは一種の“カビ”だと力説していた。曲は、単純だが、とても印象深いメロディだ”
“この2曲はパイプ・チューンと言えるかもしれないが、単純でありながら、いわゆる「らしい」と言えるメロディで大好きだ。このセットは通常のリール・テンポよりも少しゆったりしたほうがいいだろう”
Her Long Dark Hair Flowing Down Her Back (Hornpipe)
“Junior Crehanの作だが、本当のタイトルを書くべきかどうか悩んでいる。とりあえずこれだ。Flowing Down Her Back and the Colour of Her Golden Hair was Blackという、とんでもなく長いタイトルだ。しかし、こんな風に言う人はいないだろう。非常にトラッドの香りがするいい曲だ”
Butterfly (Slip Jig)
“初めてBothy BandのLPレコードを買った時、なんと悲しげな美しいメロディだろう、と思ったものだ。1975年頃のことだ。whistle playerであるSean Pottsの作だといわれるが、どうだろうか。FiddlerであるTommy Pottsの作ではないか、という人もいる。因みに、彼らは一族であるので、最終的にはSeanの作品(トラッドをベースにした作品かも)にTommyが少し手を加えたのではないか、という見解が一番妥当かもしれない。なにはともあれ、Bothy Bandのアレンジは他に類を見ないほど美しいと僕は思う。この音楽をよく知っている人にも、全く知らない人にもその美しさが胸に響くような曲だ”
The Night Before Poor Larry Was Stretched (Slip Jig)
“なんとも奇妙なタイトルだが、Martin Hayes の演奏まで聴いたことがなかった。そんなにポピュラーな曲ではないようだが、実にシンプルで美しい曲だと思う”
The Monk’s (Jig)
“またの名をSonny Brogan’s Fancyという。Arty McGlynnの演奏から学んだが、多くの人が録音している、有名な曲だ。僕らはこの後「その59」で出たPaddy Fahey’sをmajorで持ってきている”
The Cuil Aodha/The Piper’s Chair (Jig)
★ The Cuil Aodha
“これは随分前から知っていた曲だが、このタイトルでしか知らず、とても読めなかった。どうやらCo.Corkにある地名らしい。Cooleaという村であるらしいのだ。2000年頃、Terry Binghamと録音したことがあるが、とてもいいフレーバーを持った曲だ”
“前の曲とセットでTerryと録音した時、彼は曲目を知らなかったので、クレジットにはGun Ainmと書かせてもらったが、後になってこのタイトルであることを知った。ブルーグラスのマンドリン奏者であり、僕のレコーディングのエンジニアーであったDave Wellhausenはこの曲がすごく気に入っていた。余談だが、Daveは元ブルース・バンドのハーモニカ奏者で、ヨーロッパ・ツアーなどもしていた人だったが、ある時何を思ったか、突然ブルーグラスに魅せられてしまった。特にBill Monroeに傾倒して、ブルース・フィーリング溢れる演奏を得意としていた。もしかしたら、かなりブルージーな曲かもしれない。僕らも大好きな曲だ”
Lead The Knave/Alice’s (Reel)
“Arty McGlynnの、素晴らしいサーフ・ギターによる演奏が一際冴えわたる録音が残されている。作者は彼だという人もいたが、1909年にはすでに存在した曲だ、というので、間違いなく彼の作品ではないだろう。The Old Time Wedding というCape Brettonの曲と共通点がある、と言われる。他のタイトルはJohnny From Gandseyと言うらしい。僕らは独自のハーモニーを付けている”
“Frankie Gavin作の素晴らしく「のり」のいい曲だ。僕らはEmとBmのふたつのキーで演奏する”
The Plough and The Stars/The Star of Munster (Reel)
“Larry Redican作のこの曲はGmajでやる人とFmajでやる人がいるが、わざわざFmajというキーがあるくらいだし、オリジナルはFmajなんだろうか。ずっと前にSanta Cruzのラジオ局でAndrew MacNamara&Gerry O’Connorと出演した時、この曲をやっている最中にフィドルの4弦が切れ、Andrewはそのまま表情も変えずにアコーディオンを弾き続け、Gerryは、あっという間に張り替えてまた弾いていた。おっと、コラムのジェリー・オコーナーのところでも書いたか。何はともあれ、この曲にまつわる一番の思い出なのである”
“この音楽を始めた頃のほとんどの人が手掛ける曲だろう。親しみやすく、また、弾きやすい曲の代表格かもしれない。ほとんどはAmで演奏されてきたが、ある時くらいからGmが流行り始めてきた。マーティン・ヘイズあたりの影響もあったのかな。いつごろだったろう、イギリスから遊びに来ていたBrian Kellyという若いバンジョー弾きが、見事にGmで弾いて、今やGmの曲と言ってもいいくらいだよ、と言っていた。前夜、ご飯もたべず、全く寝ずに酒とセッションに興じていたせいか、僕がオーダーしてあげたピザを3人前くらい物凄い勢いで食べたかと思ったら、具合が悪くなってあげてしまったが、顔を洗ってすぐにバンジョーを弾き出した。強烈な印象を残していった若者だった。そんな彼もまだ少年のようだったが、今ではすっかり大ベテランだ。曲の方だがあまりにポピュラー過ぎて、この頃は僕らも演奏することがあまりないが、いい曲であることは事実だ”
Music on the Wind/Kerry Jig (Jig/Slide)
“1972年にLucy Farrによって書かれた、というのが有力な説としてあるが、ほとんどの人はArty McGlynnとNollaig Caseyの演奏かFisher Streetの演奏でBrady’sというタイトルを記憶しているはずだ”
“スライドだが、ジグという名称が付いている。書いたのはLucy Farrだ、という説もあれば、もっと古い文献に登場している、という事実もあるようだ。Arty達は上記の曲と共にBrady’s setとして録音を残している”
Fairies’ /The Stack of Barley (Hornpipe)
“この曲もDick Gaughanのギター演奏で覚えた。とても親しみやすく、可愛らしい、題名にぴったりの曲だ”
“The Little Stack of Barleyというタイトルでも知られている、とてもよく演奏される曲だ”
The Liverpool/Dunphy’s (Hornpipe)
“これもかなりポピュラーな曲。Bパートのメロディがとても好きだ”
★Dunphy’s
“上の曲と同じ、あまりにポピュラーな曲で特筆すべきことはない。これらの曲は基本的に覚えておきたいものである。といいながらそんな曲はまだまだ数知れずあるのだが”
Night in That Land (Waltz)
“Johnny Cunningham作の美しいワルツ。急に想い出したのだが、彼とステージで一緒にやったことがあった。随分前のことなので、メロディも一部しか憶えていなかったので、一生懸命探しているうちにこのタイトルを見つけた。なんかNightが付いたんじゃぁないかな、という記憶だけを頼りにして。彼が亡くなって、Phil Cunningham主催の、彼を偲ぶコンサートでもこの曲でギターを弾いたが、こんなに美しい曲を想い出して本当に良かったと思っている。尚、この曲はワルツというよりもエアーだと言えるかもしれない。彼が生きていたら「どちらのほうがいい?」と訊いてみたい。僕らはエアーかな”
The Hills of Tara (Barndance)
“実に可愛いメロディの曲だが、いろんな謂れがある。またの名をPearl O’Shaughnessy’sともいうが、彼女はスコットランド生まれのフィドラーでPaul O’Shaughnessyの母親だ、ということだ。更にPearl O’Shaughnessy’sというほとんど同じメロディをもった曲もあるが、こちらのほうは4パートあるそうだ。そしてさらに、それは2パートずつに分けて、2曲のセットとして特にDonegalあたりで演奏されることがよくあるそうだ。さらに他のタイトルとして、Fred Pidgeon’s#2というのもあり、彼自身はScotch Polkaとよんでいるというレポートもある。いずれにせよ、事細かにこういうことを調べてくれる人がいることは非常にありがたい”
The Flowers of Edinburgh (Hornpipe)
“これはホーンパイプだが、なぜかバーンダンスとしても登録されており、そしてリールで演奏する人もいる。確かにどのリズムで演奏してもいい曲だ。メロディも美しい。聞くところによると、スコットランドではリールとして、アイルランドではホーンパイプとして考えられているらしい。1740年頃には記録が残っているというから諸説あるだろう”
South Wind (Waltz)
“この曲を美しいと思わない人はいないだろう。ただあまり初心者向きでほとんどやらなくなっている。おそらくギタリストにとって非常に美味しい曲であろう。僕は、長年のアイドルの一人、John Renbournと同じフェスティバルに出ていたとき、この曲を食い入るように聴いた。美しいという言葉以外なかった。作者はFreckled Donal MacNamaraというCo.Mayoの人でホームシックから生まれたメロディ、ということだ。1700年代の話”
Josefin’s (Waltz)
“日本では、この曲を聴いてアイリッシュに興味を持った人が多くいるらしい。Dervishの演奏で有名になったが、作者はRoger Tallrothというギタリストで、スウェーデンのVasenというグループのメンバーだ。Dervishの録音でも確か一緒に演奏していたんじゃないかな。Dervishは初期の頃から一緒に出演することも多く、この曲もよく聴いていた。Vasenはこの曲以外にも素晴らしい演奏が多く、日本でも沢山のファンがいるようだ。ちなみに、作者は姪の洗礼を祝って書いたそうだ”
Colonel Fraser’s (Reel)
“魅力的な曲だが、パイプかフルートに適した曲だ。パディ・キーナンとはよく一緒に演奏したが、これも基本的には5パートからなる曲だ。全ての曲に於いて同じことが言えるが、ギタリストも正確にメロディを把握する必要がある。この曲は極端な話、GとDだけでもいける曲なので全ての音使いを明確に区別しておかなければならない。理由のない和音は使いたくない。シンプルなだけにその辺のことをきちんと考えなければいけない曲は他にも無数存在する。Colonel FraserはLeinsterにいたイギリス人の地主、ということだ。そして、当時の旅人パイパー(Travelling Piper)にとても親切にしてくれて、あるパイパーに新しいパイプをプレゼントしてあげた。すると彼が感謝の気持ちでこの曲を作った、というストーリーがあるそうだ。Colonel Fraserが馬に乗っている姿を見て書いたと言われている”
The College Groves (Reel)
“これも上記の曲と同様、魅力的な曲だ。8パートある、と言っていいのだろうか。最初Aパートを繰り返す以外はBもCもDもすべてのパート、おしりの2小節が違うので、4パートとは言えなかったのだ。ちなみにそのおしりの2小節はB,C.D共に同じメロディだ。これはフィドルにいい曲だと思う。1700年代後期から1800年頃のスコットランド音楽のコレクションに既に登場しているという古い曲だ”
Lord McDonald’s (Reel)
“有名なMichael Colemanの作といわれる。これは4パートと言えるだろう。そのむかし、ピート・シーガーのバンジョー演奏で覚えた曲とほとんど一緒だ。その曲はLeather Britchesという。既に「その27」で書かれているが、その時はほとんどLeather Britches(Breeches)として扱っていたのでここでも取り上げてみた。尚、コールマン作と言われているが、起源はこれもスコティッシュから来ているらしい。それで、ブルーグラスなどでもLeather Britchesとして演奏されていることに納得がいく。ナイス・フィドル・チューンだ”
Stoney Steps (Reel)
“初めて聴いたのはFrankie Gavinの素晴らしくスピード感あふれる演奏だった。キーはDだが、上記の3曲同様、コードは極端にシンプルだ。こういう曲では最も基本的な和音を使いながら、ビートで構築していくべきだろう。合いもしないコードをいろいろ使ってみるべきではない。ベースランは有効に使える”
The Flying Pig/Tell Her I Am (Jig)
The Kingというタイトルが一般的なようだが、僕はこのタイトルが好きだ。ところが最近、この曲がFlying Pigだという根拠はどこにもない、という説を見つけた。しかし、ともかくこのタイトルを見たとき、ピンク・フロイドのコンサートを思い出した。何万人もの観客の上をピンクの巨大な豚のアドバルーンが飛ぶのだ。その昔、彼らのジャケット写真で使用するつもりだったが、風に飛ばされて空港が閉鎖されるという事態に発展してしまった。それでも翌日の新聞記事のトップを飾るなどの一大宣伝効果はあったようだが、結局ジャケットは合成、ということになってしまったそうだ。その豚を会場で使うことを考えたのは素晴らしいことだ。そういえば昔、宇宙戦艦ヤマトを飛ばしたグループもあったなぁ。話は戻るがこの曲はやはりThe Kingと呼んだほうがいいかもしれない”
“僕らは2人ともあまり好きではない曲だったが、前とのつながりがすごくいいので選んでみた。古い曲で好きな人は多いようなので、知っておく必要は充分あるし、何度も演奏していると、なかなか味のある曲だと思えるようになってくる”
O’Carolan’s Ramble to Cashel (O’Carolan)
“数あるキャロランのレパートリーの中でもかなり好きな曲だ。僕はJody’s Heavenでも録音し、アイルランド移民たちが集まるコンサートでもよく演奏したものだ。勿論、もとはハープの曲だが、これはギターにアレンジするのが良いと考えた。いつごろ、どこで聴いたか全く覚えていない。今ではよくフィドルとの演奏もするが、それでも限りなく美しいメロディだ。希花はハープでも演奏している。Cashelはいろんなところにあるが、これはCo.TipperaryのCashelだろうか”
Margaret’s/My Bonnie Lies Over the Ocean (Waltz)
“Pat Shuldham作の美しいワルツ。多くの人はAly Bainの演奏で聴いているだろう。
キーはAがノーマルだがDやGで演奏されることもある”
“世界的に有名なスコティッシュ・フォークソング。ビートルズではじめて聴いたかもしれない”
The Jig of Slurs (Jig)
“古いスコットランドのジグ。キーはDだが、BパートでGに転調する。そしてエンディングはEmだ。相当前から演奏していたが、最近になってまた思い出した”
Humours of Kinvara (Reel)
“古いスコットランドの曲をPaddy Kellyがとても乗りのよい曲に書きかえたと言われている。Man from Bandoranというタイトルでも知られているが僕らは“その34”にあるWithin A Mile ..の代わりにこの曲からセットに持っていくことの方が最近は多い。基本的にはキーオブDといえるかもしれないがEからスタートする変わった曲だ”
Brendan McMahon’s/John McFadden’s Favourite (Reel)
“この曲は様々な伴奏者がどんなコードを弾くか聴いてみたいものである。AパートのスタートはEmしかり、Gしかり、相手の好みに合わせる。しかしながらBパートにいくとどうだろうか。もしAパートをEm中心でいったら、もし、G中心でいったら、どういくのが妥当だろうか。僕はCmaj7/Bm7/Am7/Bm-Emといくが、これは非常に目新しいコードだけに(特にこういった曲には)できるだけ自己主張は避ける。メロディーを引き立たせる、ということだけを考える。勿論、常にそこは最も大切なところだが”
“出だしはなんと“その8”のMaudabawn Chapelに似ていることか。多くの人が録音しているが、あまりセッションでは登場しない”
The Nine Points of Roguery (Reel)
“7つの大罪プラス2、という変わったタイトル。曲も変わっている。この後は何を持ってきてもいい。だが、どちらかというとマイナーの曲より明るいもののほうが合っているかもしれない。基本的に3パートだが、いろんなやり方があって、それはそれで面白い。多分に北の方の曲だと思える”
The Acrobat (Hornpipe)
“B♭で弾く珍しい曲だ。これもかなり昔から知っていた。たしかナタリー・マックマスターあたりがよくやっていたかも、ということを頼りにした。フルートでの演奏も聴いたことがあるかもしれない。マット・モロイかな。これも希花さんによく合いそうな曲という観点から選んだ”
La Coccinelle (Bourree)
“Jean Blanchard作。西海岸では人気の高い曲で、かなり前からダンスの伴奏曲として演奏していたが、こんなタイトルとは知らなかった。とても親しみやすい曲だ”
Crested Hens (Waltz)
“多くの人はSolasのスロー・バージョンで聴いているかもしれない。いい曲だが同じようにはやりたくなかった。スローだとちょっと演歌みたいに聴こえてしまうからだ。
Gillies Chabenatという人物の作で詳しく言うとワルツではなく8分の3拍子のこれもBourreeということだ。僕はあるていど早いテンポで演奏した方が好きだ。フレンチ・フォークダンスと解釈したらいい”
Letterkenny Blacksmith/Gneevgullia (Reel)
“長年Fisherstreetというタイトルで知っていた曲。僕らはOisin MacDiarmadaのバージョンでやっている。僕はこのバージョンを聴いたことがなかったが、希花がこれを演奏した時どこかで聴いたことがあると思ったものだ。それはまぎれもなくFisherstreetだったがBパートが違っていた。それも少しだけ。しかしOisinはとてもいいアレンジをしていたので今はこちらを選んで演奏している。尚LetterkennyはCo.Donegalにある都市の名前だ”
“これはすでにその32に登場している曲だが、前の曲からのつながりがとてもいいのでこれを選んだ。この曲をアイルランドで演奏した時、周りの人から「なんていう曲だった?」と訊かれたが発音が難しく、とても苦労したが何とか分かってもらえた…ようだった”
Derry Craig Woods/Cottage in the grove (Reel)
“Father Kellyとしても知られているが、明らかに少しずつメロディーが違う。またこれはMulvihillというタイトルでもよく知られているようだ。このタイトルは元Dervishで活躍していたフィドラーShane McAleerから教えてもらった。尚Father Kelly となるとBパートのメロディーが少しだけ違い、更に3パート目は無くなる。ギタリストはどちらに展開していくのか知るためにどちらも知らなくてはいけなくなってくる”
“Tommy Cohen’sとしてもよく知られている曲。その51で既に出てきている”
Across the Fence/The Messenger (Hornpipe)
“本当のタイトルはAcross the Fence to the Neighbor’s Wifeというらしい。作者は、かの有名なBrendan McGlincheyだ。3パートのとても魅力的なメロディーだと僕は思う”
“既に~その19~に出ている曲だが、前の曲とのタイトルの微妙な、というかバッチリな組み合わせを楽しんでみた”
New Century (Hornpipe)
“長い間、頭から離れなかった曲。いつごろ誰の演奏で聴いたのが最初だったか覚えていないが、大好きなメロディーだった。もしかしたらDale RussやRandal Baysで聴いていたものを、最近になってGerry Harringtonで聴いて、また思い出したのかもしれない”
High Level (Hornpipe)
“これも長いこと頭から離れなかった3パートの美しいメロディーを持った曲。アコーディオン奏者に最適だと思っていたが、実際にはフィドラーのJames Hillが書いた、とされている。しかも最初はB♭で書かれ、そのうちFで書かれたものが出版された、と言われるが、ほとんどの人はGで演奏しているようだ。最近、アイルランドでJohnny Connolly親子と一緒に演奏した時に思い出した。希花さんはコンサルティーナでトライしている”
In A Continental Mood/Flatworld (Waltz)
“90年代初期によく聴いていたイギリスのバンドBlowzabellaのメロディオン奏者であるAndy Cuttingの作。そういえば、と思い立った時、こういったバンドの演奏を再度聴ける、という点に於いてはインターネットの有難さも捨てがたいものだ”
“同じく彼の作品。最初こちらを見つけて、とても美しい曲なのでいたく気に入っていたが、前の曲を聴いた時、この組み合わせがベストと感じた。彼の相方であるChris Woodとの録音でも聴くことができる。彼も素晴らしいシンガーであり、フィドラーだ。なお彼ら、ライブではThe Old Queenという曲を間に挟んでいるがとても変わった曲だ。またいつかそのスタイルでやってもいいかな”
Farewell to Whalley Range (Slip Jig)
“いかにも若者好みのメロディだ。Michael McGoldrick作。彼が故郷マンチェスターのWhalley Rangeを去る時に書いた曲だそうだ”
Dick Sherlock’s (Reel)
“古いフィドル・チューンだが、とても美しい曲でこの後はなんにでも行ける。Jim Kellyというタイトルの他にも多くのタイトルを持った曲で、最初は何という曲だったか判断するのはもはや難しいことのようだが、僕は最初に覚えたときの名前Dick Sherlockで呼んでいる”
Tom Ward’s Downfall/The Reel of Mullinavat (Reel)
“すでに、その24に登場している曲だが、最近希花さんが新たにコンサルティーナのレパートリーとして取り入れている。本当は2曲目を先に練習し始めたが、曲のつながりを考えたとき、ふとMichael Colemanの古い録音でのセットを想い出し、この曲を頭に持ってきた”
“Connemara Stockings(その30に既に登場)によく似ている曲だが、これはこれでとても有名な曲。読み返してみるとその時も今回の逆でこの曲に似ている、と書いていた”
King of Fairies (Set Dance)
“先日、ある著名な歌手のアイルランド紀行のDVDを観ていたら、ダブリンの街角でストリート・ミュージシャンと出会い、その彼が「アイリッシュといえばこれだ」と言わんばかりに弾いた曲がこれだった。しかしその演奏は、とてもアイリッシュ・ミュージックとはほど遠い感覚で弾かれているものだった。しかしナレーションでは本物に触れた、というようなことを言っていた。確かにこういう著名人のものから興味を持つ人もいるかもしれないので、その存在は貴重であるが、その興味を持った人がこれからそれを、どう消化していけるか、そこが分かれ道でもあると思う。しかし惜しむらくは、もしプロデューサーなり、周りの人間が本質をもっと理解していたら、と思ってしまう。まぁ、僕も含めて誰だって最初は初心者なのだが。それはともかくとして、これはホーンパイプとして掲載されているものもあるが、小節数からみてもセット・ダンスと言えるだろう。とても美しいメロディを持った曲だ”
Black Rogue/Wake Up Paddy (jig)
“セッションでは、古今東西を問わずよく登場する曲だ。これは先日、栩木伸明先生にお会いして様々な話をしていたところ、翻訳本であるJ.M.Syngeの Aran Islandsを始め、多くの書物を見せていただいた中に出てきたので思い出して掲載してみた。一般的に良く知られている曲というのはあまりやらなかったりするが、そのせいかタイトルがなかなか思い出せなかったりする。また、逆にメロディがなかなか出てこなかったりする。この曲もそんな一つだ。たまにはやらなくちゃ”
“これはまぎれもなくSyngeのAran Islandsに出ていた曲。「起きろパディ」という曲を弾いた、という文章があり、栩木先生に「この曲は?」と訊かれたが馴染みがなかった。帰って調べてみると多分これだろう、と思えるものが見つかった。Paddy Get Upというもの。しかしこれは僕の知る限りJerry’s Beaver Hatという曲と同じようだ。前曲と同じくポピュラーな曲といえるので、これを弾いた、というのはうなずけるような気もする”
The Humours of Kilclogher (Jig)
“ちょっと聴くとスリップ・ジグかな、と感じるメロディを持った不思議な曲だ。デイル・ラスの素晴らしい演奏で聴くことが出来る。Kilclogherという地名はClareとLeitrimの両方にあるそうだが、これはClareのほうではないか、と言われている。また、Elizabeth Kellyというタイトルでも知られているようだが、この人はクレアー出身の著名なフィドラー兼コンサルティーナ奏者であるジョン・ケリーのお母さんだそうだ”
The Sheep in the Boat/The Gallowglass (Jig)
“希花さん、渾身のコンサルティーナ・セット。Junior Crehanの作と言われているが定かではない。悲しくも美しいメロディーが印象的な名曲だ”
“意味は「外国に雇われた兵隊」ということらしい。スコットランドでの言い方のようだ。Nathaniel Gow’s Lament For The Death of His Brother というタイトルでもある。これも悲しげな美しいメロディーを持った曲だ”
Irish Washerwoman (Jig)
“おそらく最も有名なメロディーを持った曲だろう。これを聴けば“なんだかアイリッシュみたい”と誰もが思うことだろう。例え一切アイリッシュ・ミュージックと無縁の人でも。それだけにセッションに登場することは皆無といってもいいくらいだ。ところが、去年のフィークルで突然アンドリューが弾き出した。それが、あまりに演奏されない曲なのでかえって新鮮に聞こえたのだ。そうしてみると結構いい曲だ。アンドリューも「みんな嫌うけど意外といい曲なんだな」と笑っていた。多分彼の持っている独特なリズム感が、そう聴こえさせるのかもしれない。ひょっとすると、クラシックの高名な演奏家がバイオリンで弾いたりすると、とんでもなく情けない曲として、僕らには聴こえてしまうだろう。アイリッシュ・チューンの中にはそんな曲がいっぱいあるが、これはその最たる例かもしれない”
“James Scott Skinner作のご機嫌な曲。古くはThe Boys of the Loughのレコーディングで知られているが、4年ほど前のDe Dannanの演奏が素晴らしく、また再発見した曲だ”
The Sligo Maid/London Lasses (Reel)
“非常に有名な曲。そんな意味でも特に最初の頃に覚える曲のひとつかもしれない。特筆すべきこともないが、コードについては考えてみたいものだ。最もトラッドなやり方はAパートBパート、共にDはじまり(key of G)だろう。何故かというと、パイプのドローンがDの音で鳴り続けるケースが多いからだ。その次はBパートでAmを使うやり方。更にAパートはAmで始まるやり方。こちらは大体の人がBパートもAmでやる。僕のやり方はAパートをAmで入り、BパートにCを持ってくる。Cをもってくることで、メロディとC6の関係を持つことが出来るが、同じメロディが4回出てくるので、3回目をAmでやり、AパートのAmを予感させる。この予感ということを習ったのは、ビル・キースからだ。彼のバンジョーでのリックでは細かいところで7thや9thを入れることで、次の音やコードの予感をさせる、という方法。彼がこの方法をたまたまビル・モンローのバンドにいたときに使ったら彼が振り向いた、という話がある。ビル・モンローも流石にハッとしたらしい。1963年頃の話だ。大したことではないかもしれないが、アイリッシュに於いてもギタリストはこれくらい細かいところまで気をくばりたいものだ。相手に合わせる、ということも忘れてはいけないし”
“これも非常にポピュラーな曲だが、BパートはほとんどDバージョンのFarewell to Irelandと同じ展開だ。キーが違うので、こんがらがってしまうことはなさそうだが、それにしてもよく似ている”
Fraher’s/Frieze Breeches (jig)
▪ Fraher’s
“非常にシンプルな古いパイプ・チューン。僕はMick O’Connerのバンジョーから習った。Paddy Cartyのフルートアルバムにバンジョー・ソロとして入っていたものだ。先日Edel Foxと演奏した時、彼女が弾いて想い出した。シンプル・イズ・ザ・ベストを絵にかいたような曲だ”
“一般的には5パートあるジグだが、いや、8パート、9パートある、という人もいるようだ。特に前の曲と繋げてやらなくても、これ自体で充分に美しく、かつ、長い曲だ”
Da Slockit Light (Air)
“SlocketともSlokitとも書く。この曲を初めて聴いたのは、定かではないが70年代後半に手に入れたThe Fiddle Music of Shetlandというアルバムからだったと思う。真っ白いひげのおじいさんがフィドルを作っている。背後の壁にはいっぱいフィドルが並んでいる。それも白黒写真で、という明らかに“ジャケ買い”といえるものだった。Tom Anderson/Aly Bainというデュオアルバムだった。Aly BainはThe Boys Of The Loughでお馴染みだったがTom Andersonとは、まだ誰だか知らなかった頃だ。そのアルバムの中のこの1曲はすぐにお気に入りの曲となった。それこそがTom Andersonの名作だったのだ。後年、僕は故坂庭省悟と共にツイン・ギターにアレンジしてよく演奏していたものだ。最近、クラシック畑の人が“シェトランド・エアー”と名付けてこの曲を演奏していたりするが、どうやら出どころを知らないらしい。Tom は1970年のインタビューでこのように答えている。
「それは1969年の1月の終わりころ、生まれ故郷のEshanessという村で見た光景だった。子供の頃は多くの灯りが灯っていたこの村も、一つ、また一つと灯りが消えていった。そして、それはまるで最近あの世へ旅立った自分の女房の想いでと重なるようだった。その時、古い言葉Slockitという文字が頭に浮かんだのだ。そして、その意味は“消えていく灯り”」彼のこの言葉を知らずしてこの曲を弾くわけにはいかない”
Ceilier/Carraroe Reel (Reel)
“長いことCalicoでの演奏しか聴いたことがなかったので、彼らの作品かと思っていたが、どうやらEd Reavyらしい。が、それも定かではない。ずっと前によく聴いていたThe Green Fields of Americaのライブ盤にも入っていたようだが、記憶にない。きっとCalicoの演奏が素晴らし過ぎたせいかもしれない”
“このタイトルではジグの方が有名だ。勿論その場合The Carraroeとだけ表示されるが。こちらはOisin MacDiarmadaの作品。始まった途端、いかにも彼らしい世界に引きずり込まれるような曲だが、これを2曲目に選んだのは、非常に前の曲とテイストが似ている、という理由からだ”
Lady’s Fancy (Reel)
“これはSay Old Man, Can You Play Fiddle?という曲をDan Craryがブルーグラス・ギターチューンとしてアレンジしたものだ。もともとの出どころは定かではないが、どうもアイリッシュ・チューンではなさそう。やりかたも人によって全く違うが、最もよく聴いたのはまだ10代後半だったSam Bushがグループ“Poor Richard’s Almanac”で残したものだ。(1969年)それを僕らは更にアレンジしている。アレンジする時も、できる限り多くの録音を注意深く聴くことが大切だ。たったひとつの曲でも実に多くの物語が存在する。そうして考えてみるとこのような音楽を演奏するということは、長い歴史に培われた物語を演奏することにもなるのだ”
The Bluemont Waltz (Waltz)
“Rodney Miller作のこのワルツ。希花さんがBottons and Bowsのアルバムから見つけてきた。そこで出どころを調べてみたら、Rodney Millerの1987年のアルバムに入っていたものだった。希花さんの生まれた年だ。とてもきれいな親しみやすいメロディを持った名曲だ”
Eddy Kelly’s/Moon Coin (Jig)
“別名Meelick Teamという。Eddy Kellyという名前でリールあり、また別メロディのジグあり、なのでこちらの名前で呼んだほうがいいかもしれない。ともかくEddyはCo.Galwayで1933年に生まれたフィドラー兼ボックス・プレイヤーだ。20曲のコンポジションがある、と言われているが、これはどうもNo1らしい”
“前の曲とのつながりは結構好きだ。3パートの美しいジグで僕はかなり前からやっていた。20年以上も前かな”
Eddy Kelly’s (Jig)
“もうこうなってくると訳が分からなくなってきてしまうが、これは彼のNo2と言われている。Drumshanboというタイトルでも知られている。Bパートがちょっとつまらないので(あくまでも個人的意見)あまりやらないが、かのジョン・ヒックスがよくやっていたので思い出した。さすがにBパートを少しアレンジしているやり方だったかもしれない。ちなみに、僕らが通常ジグの最中にEddy Kellyと叫んではじめるのはNo1のほうだが”
Brian O’lynn/Old John (Jig)
“これは、かなり初期に覚えたジグ。ハンマー・ダルシマーのロビン・ピトリーとフィドルのスコット・レンフォートと共に録音もしたし、よく演奏したものだ”
“さて、この曲。長いことBrian O’lynnの別バージョンと思っていたが、どうやら違う曲らしい。Old Johnというのはパイパーでフルート奏者のJohn Potts(Wexford)で、Tommy Pottsのお父さんであり、Sean Potts のおじいさんであるらしい。そしてこの曲にこの名前をつけたのはBrendan Breathnachだ、という情報がある。この2曲、出だしは場合によってはそっくりなので注意した方が良い”
Seanamhac Tube Station (Jig)
“僕らはあまりやらない曲。何故かというと、いかにも若者のグループが張り切ってやりそうなタイプのものなので、敢えてレパートリーとしてとりいれようとはしていない。だが、トラッド同様、新しい曲でも常にアンテナを張り巡らしておかないと、引き出しの少ない狭い観点のミュージシャンになってしまう。この曲のメロディ自体は好きなのでここに掲載してみた。この聞きなれないタイトルに使われているのはアイルランドの小さな村の名前だ。だが、そんな小さな村にTube Station(地下鉄の駅)などない。これは一種のジョークであるらしい。そして、作者はJohn Cartyというのが頷けるところだ。ところで、なんと読むのだろう。こんな発音らしい「SHANNAWOCK」”
The Wren/October Rain (Breton/Jig)
“ブリタニーのグループKornogのアルバムから随分前に覚えた奇妙な曲。またの名をAn-Droという。ティプシー・ハウスのフィドラー、ケビンの大好きな曲だった。大体この手の変わった曲を持ってくるのはケビンか、もう一人のフィドラー、クリスだったが、彼はエジプシャン・ミュージックなどもやっていた変わった奴だった”
“90年代中期に書いたオリジナル曲。10月のある日、空を見上げていたら、しっとりと冷たい雨が降ってきた。間もなくすると太陽が出てきて辺り一面陽の光に照らされた。まるで山のような天気だったその日にできた曲。坂庭省悟と宮崎勝之もレパートリーの中に取り入れてくれたものだ”
Lost and Found/Auld Lark In The Morning (Jig)
“Paddy Keenanがよくコンサートの最初に演奏したジグ。出だしがいかにも“始まる”という感じのメロディだ。どうやら沢山のタイトルが存在するらしく、いろんなバージョンでいろんな人がやっている。例えばMichael Colemanでは“Coleman’s Maid on the Green”Terry Binghamでは“Tommy People’s”他にも少しずつバージョンの違うものが存在するが注意深く見ていくと、それぞれに違う曲ではないかと思われる。これだからこの音楽はとても面白く、やめられない”
“Seamus Ennisの素晴らしいパイプ演奏が聴ける。Edel Foxもこのバージョンでやっていたし、結構好きなメロディだ。特にAパートが少しひねったメロディで気に入っている。こちらは2パート。Lark in the Morningをやろう、と言われたら、どのバージョン?と即座に尋ねることが出来るようにしたいものだ”
Lark In The Morning (Jig)
▪ Lark In The Morning
“ほとんど前曲と同じタイトルだが、少し違うところが面白い。80年代、Moving Heartsの録音で聴いていた4パートの美しいジグ。Morning Larkという曲もあり、非常に似ているパートを持っている”
The Bank of Ireland (Reel)
“初心者にもよく知られる有名な曲。事実、僕もこの曲は最初の方に習った。でも名曲である。これはどこのBankのことを言うのか、はたまた銀行なんだろうか、と議論が飛び交っている。そういえば、随分まえにアメリカで、Bank of Ireland と名付けたパブが出来たが、アイルランド銀行から“待った”がかかり、結局Irish Bankに名前を変えた、なんていう話があったなぁ。Francis ReynoldsというLongford のフィドラーによって書かれた曲で、
元々はFollow me down to Carlowというタイトルだったようだ”
Blackbird/Spike Island Lasses (Set Dance/Reel)
“何とも変わった曲だが大好きな曲だ。パディ・キーナンとは必ず演奏した。最初はエアーで入り、そのままセット・ダンスに持っていく。Jody’s Heavenでもギター・ソロからセット・ダンスに入る手法で録音したことがある。カナダでパディと演奏した時のこと。彼がエアーで思い切り感極まって演奏している最中に、パイプのチャンターが抜けてしまった会場は一瞬水を打ったように静まり返った。彼はまるで“鳩が豆鉄砲を食らったような顔”をして助けを求めた。僕はそのままメロディをギターで引き継いだ。彼は一生懸命チャンターを差し込んでいた。その後は爆発だ。いい思い出である”
“この曲のBパートは前の曲(The Bank of Ireland)のBパートにそっくりなのであえて同じ場所に載せてみた。しかし、3パート、4パートと進んでいくとそのパートごとのメロディの美しさがなんとも心地よくなって何度も繰り返したくなる。勿論、最初のパートも何だか途中から入るようなメロディでなんとも言えない。やっぱり名曲のひとつだ”
Pockets of Gold (Air)
“最近、ひょんなことからこの曲を録音した日本の演奏家のCDを見つけた。そこにはReeltimeというグループの録音から覚えたTradとしてクレジットされていた。僕自身、随分前にこれを録音したことがある。元々、Liz Carrollの1993年のアルバムで、ギタリストのDaithi Sproule(ダヒ・スプロール)が書いたTune For Mairead & Anna Ni Mhaonaigjhという長い、しかも読むのにも難しいタイトルだ。どういういきさつでReeltimeがPockets of Goldとしたのかはわからない。確かライナーにも書いていなかったと記憶している。1995年のリリースである。僕は当時カセット・テープで持っていた。因みにLiz Carrollの、このアルバムもカセットで購入したものだった。僕はReeltimeの付けたこのタイトルをあまり好まなかったが、なにせ元のままじゃぁ長ったらしくて言えないので、必ず本来は違うタイトルを持った曲ですよ、ということと、作者の名前を言うようにしている。この音楽ではとても大切なことだと思う。でないと、聴いた人は間違った情報を得てしまうからだ。Daithiは最も好きなギタリストの一人だし、彼に対する敬意としてもTrad、とクレジットして欲しくなかったのだが…”
Whelan’s Old Sow/Katie’s Fancy (Jig)
“1930年代、Tommy Whelanによって書かれた曲。とても変わった曲だが、なかなかいい。Rolling Waves 別名 Lonesome Jigともいう曲と、出だしは酷似しているが、なんとも変わったBパートをもっている。因みにSowというのは雌ブタのことである。しかし、何故かCat’s Rambleという別名もある”
“この2曲をつなげるやり方は随分前に考案したものだが、だれかがやっていて耳にのこっていたのかもしれない。前の曲の最後の小節を強引に次の曲に挿入していく面白いアレンジでやっている。去年、ショーン・ギャビン(フランキーの兄)に誘われてセッションに行ったとき、彼がいちばん最初にこの曲を弾いていたことを想い出した。3パートの名曲中の名曲だと思う”
A Fig For A Kiss (Slip Jig)
“とても美しいメロディーのスリップ・ジグ。Kid on the Mountainをつなげる人も多くいるようだ”
A Feg For A Kiss (Slip Jig)
“ここまで来ると、なんだかよく分からない。非常に似ているが違う曲であることも確かだ。ずっと前にBrendan Begleyが演奏していたが、それはそれで聞いたこともないタイトルで、また、聴いたことのない間合いでやっていた。ほとんどジョークの世界だった。しかし、これも美しいメロディーを持っている”
Esther’s (Reel)
“Aコードから入りDに行って、BパートはEmという変わった曲。エンディングはDだ。非常にユニークなメロディーだと言える”
Kid on the Mountain (Slip Jig)
“非常に魅力的なメロディーを持った5パートのスリップ・ジグ。一般的に5パートとして演奏されるが、オニールのコレクションでは最後にもうひとつパートが付いている。そして、それはAndy McGannの古い録音で聴ける。デイル・ラスは6番目のこのパートを3パート目に持ってきている。僕はこのやり方が好きだ。何故かというと、4パート目のメロディーに対して非常に効果があるからだ。ただし、セッションでは5パートで演奏されることが通常である。僕らはアルバムKeep Her Litでデイルのアイデアによる6パートで録音している”
Ballinasloe Fair (Reel)
“Michael Colemanの古い録音をはじめ、“その65”に登場したLord McDonaldとカップルでたびたび演奏される。1928年3月のTom Morrisonの録音では何故か「Roscommon Reel」とクレジットされている。John Masterson(1840-1925)というCo.Longfordのフィドラーの曲ではないか、と言われているが、定かではない。また、Leitrim Thrushとも呼ばれている曲とほとんど同じらしい。だが、セッションなどでこの曲が出ると間違いなくみんなBallinasloe Fairだと言うだろう。アイルランドで何度も何度もこの地を通り過ぎるが、そのたびにこのメロディーが浮かんでくる”
Miss Thornton’s (Reel)
“上記のTom Morrisonの録音がこの曲に行っていたのでここに載せてしまった。これもスタンダードな曲だ。Roscommonのフルート奏者、Packie DuignanはHouse on the Hillというタイトルで録音している”
The Ashplant (Reel)
“しりとりみたいになってきたが、上記のフルート演奏はこの曲に行っている。これはNoel Hill とTony McMahonの録音でよく知っていたし、アンドリューともよく演奏したものだ。大好きな曲のひとつ”
Black Haired Lass (Reel)
“ものはついでだが、上記の録音ではこの曲に行っている。僕も特に好きなセットのひとつなのでこのセットでやることもあるが、僕らがよくやっているのは「その32」に出てくるHand me down the Tuckleのセットの頭に持ってくるやり方だ。これもなかなかいいと思う”
Jenny Picking Cockles (Reel)
“もうひとつ、ついでだがNoel とTonyは3曲目にこれをやっている。出だしはほとんどJenny’s Welcome to Charlieと関連性のある曲だと思わせるが、2パートだけだし、その2パート目はD majorなので明らかに違う曲だ”
Rathlin Island/Michael Joe Kennedy’s (Reel)
“Josephine Marshのファースト・アルバムから学んだものだが、‘14年のDale Russ来日時、彼もやっていたセットだ。1953年ダブリン生まれのパイパーPeter Browneによって書かれたこの曲、日本ではLunasaの演奏で知られているだろう。またDervishも随分前のアルバムでやっていたかもしれない。北アイルランドBallycastle とスコットランドの間に存在するとても小さな島だ”
“メロディオン奏者Michael Kennedyによって書かれた曲。希花さん一発入魂のコンサルティーナ・セットだ”
The Highlandman who Kissed His Granny/Steeplechase/The Humours of Scarriff/Tone Jacket (Reel)
“謎多き曲だ。随分昔のスコティッシュ・チューン、それも1760年頃か、とも言われているくらい。その名もRobert Bremner’s Reelと言われるらしいが、O’Neillによると、なんとJolly Sevenと紹介されている、というからもうわけがわからない。確かによく似ているが”
“出処はよくわからないがCarrigalineというタイトルでも良く知られている。この土地名はCo.Corkの2番目に大きい都市として存在する”
“Bothy Bandの演奏でよく知られている。前曲からの繋ぎはTipsy House時代からのものだが、実によくつながっている、と思う。ScarriffはCo.Clareに存在する小さな村”
“作曲者はCo.Corkにある都市 KilnamartyraのフィドラーConnie O’Connellなので、彼のセルフ・タイトルでも知られている。とてもシンプルで可愛らしい曲だ”
The Galtee Rangers/Swinging on the Gate/The Green Fields of America
“別名Callaghan’sとして知られているとてもシンプルなメロディのポピュラーな曲だ。こういう曲は長いこと演奏していなかったが、メロディがすぐに思い出されるものだ。細かいところはいろいろな人の演奏を聴いてどれがいちばん自分の記憶に近いか、どれがいちばん道理にかなっているか、などを考える。そして、次の曲につなげていく”
その42にすでに掲載されているが、前の曲とのつながり具合もなかなか良かったので今回はここで使ってみた”
“出処はよくわからないが、古いマイケル・コールマンの録音で聴くことができるし、比較的ブルーグラスやオールドタイムの演奏家にも知られている曲ではないかと思われる。3パートある、という人もいるがまだ聴いたことはない。また、The Maid in the Meadowという曲はこの曲のジグ・バージョンだと言われるが、確かにそうかもしれない。更に同じタイトル、The Maids in the Meadow(複数形だが)というリールもよくやっていたことがあるが、それはまた全然違う曲だ。どうでもいいことかもしれないが、面白い。でも、どうでもいいこととしてスルーしてしまうより知っていた方がいいと僕は思うのだが”
The Plains of Boyle/Cronin’s (Hornpipe)
“バンジョープレイにもってこいといわれるホーンパイプだ。初心者向きの曲ともいわれるが、たまに思い出してやってみるとそう悪くない。可愛い曲だ”
“Paddy Croninの古い録音で聴けるというが、彼の作かどうかはよくわからない。これもかなり最初の頃に習う曲のひとつかもしれない”
The Mountain Road (Reel)
“とてもシンプルで初歩的な曲だが、最近注目すべき情報を手に入れた。あまりにポピュラーな曲なので特に気にかけていなかったが、面白いことに6パートもある、という。(普通は2パートで演奏される)。スライゴーのチャンピオン・フィドラー、Michael Gorman(1895-1970)による録音でそれは聴けるが、この人は有名なCooley’s ですら3パート目を作っている。そしてそれはまた別なタイトルまでつけられている。Put the Cake in the Dresserという。こういうことはよくあり、調べれば調べるほど様々な事柄が浮かび上がってくる。きりがないのだが、この音楽に関わってしまった者の宿命ともいえるだろう。こんなどうでもいいことでも、知っていてこの曲を演奏するか、なにも知らずに演奏するか、その辺は僕にとって大きな違いだ。ひとつの知識として”
Andy McGann’s (Reel)
“とてもモダンな、いいメロディのリールだ。これも良く分からないが、実際にはJohn McGrathの曲らしい。が、また別の人はSean Ryanの曲だとも云う。Andy McGannという人も著名な作曲家であるし、McGann #42という曲もあるくらいなので、それ以上のAndy McGann’sがあるのだろう。もうよくわからなくなってきたが、とに角できるだけ沢山の情報は得ておこう”
Jackie Coleman’s/Moving Bog/Ships are Sailing (Reel)
“Jackie Coleman #1としても知られる名曲。ジャッキーといっても決して瀬戸内寂聴さんのことではない。美しいメロディだ。僕は3小節目にEmを弾くか、G6とするか、いまだに悩んでいる。どちらにしても美しい。Emは非常にまともだが、G6はメロディに対して独特な響きを提供する。結局のところメロディをA A’と考えるとEmを弾いておいて次にD onF#からG6にもっていくのがきれいではないか、という結論に最近行きついた。その逆でもいいが、やっぱり曲の成り立ちから考えるとEm/D onF#/Gという並びの方がいいようだ。Em11th かEm11th on Bということも考えられるか。そこまで考えなくてもDADGADという調弦で自然にそんな響きを得ることが出来る。たったひとつのコードでもそこまで考えるのがギタリストの役目だ。自分たちの全てのレパートリーについて、これくらいの考えを持つべきだと思う”
“すでに2回も出てきている。その49と、その53だ。何故か変わっていて頭から離れない曲である。最近聞いた話で、希花さんは初期にMatt Cranitchの教則本で学んだそうだが、ある人が(知人ではないが、その人の文章で)Matt Cranitchのお父さんMichael Cranitchから学んだ、と言っていた。偶然で面白い”
“特にこれといって情報はないが、古い曲だ。結構初期に誰もが学ぶ曲のひとつであることは間違いないだろう。シンプルで美しいメロディだ。Drogheda Bay(Co.Louth)というBパートが全く同じ(人によりバリエイションが違う場合も当然ながらある)曲があるが関連性はわからない”
Drogheda Bay (Reel)
“ついでにこの曲についても調べてみたが、AndrewとMaryのマクナマラ姉、弟がやっていて、そのままMaids of Galwayという曲に入っているのだが、ほとんど同じ曲みたいだ。これじゃぁ、ついでにこの曲に関しても書かなければならなくなってくるが、そこには別にTie the Ribbonsというそっくりなリール(Aパート、Bパート共に少しだけの違いはあるが)も関わってきてしまうしこの辺にしておこう。とに角かなり古い曲であることは確かだし、多分にフルート・チューンと云えることも確かだ”
O’Mahoney’s/Swallow’s Tail (Reel)
“アコーディオン奏者のMartin Mulhaireが1950年代に彼の奥さんCarmel Mahoneyのために書いた、と云われる曲。MahoneyともO’Mahoneyとも、また、作者が付けた最初のタイトルはCarmel O’Mahoneyだった、とも云われている。なにはともあれとても美しい4パートのリール。Breda Smythと一緒によく演奏したが、彼女のホイッスル演奏は耳を疑うほどに素晴らしい。2000年頃、僕が日本に連れてきて、宵宵山コンサートなどで演奏したので、その時聴いた人もいるかもしれない”
“最初の頃、教則本で覚えたものだが、Dervishのバージョンとは違うものだった。勿論最初は91年なので、まだ彼らの存在は知らなかった頃だ。彼等自体もまだ形になり始めた頃と言っていいだろう。とに角彼らのバージョンはキーナン・ファミリーがやっていた、トラベラーズ・バージョン、しかもパディのお父さんのバージョンということなのでおもしろい。そして、僕が最初に覚えたバージョンで演奏する人は今ではほとんど聴かない”
This is My Love, Do You Like Her?/I Ne’er Shall Wean Her (Jig)
“有名な曲だが、スライドとして紹介される場合もある。それにI Lost My Love And Care Notという1950年代に録音されている曲はほとんどこれと一緒だと考えられる”
“いいメロデイの曲だ。様々なキーで演奏されているが、キーが違うとタイトルが若干変わったりするから面白い。I Shell Ne’er Wean Her となったり。その辺の詳しい事情は分からない”
Kitty O’Shea’s (Barndance)
★Kitty O’Shea’s
この曲を初めて演奏したのは、パディ・キーナンとのツァー中だったと記憶している。彼はたしかKitty O’Neil’s Hornpipeとして演奏していた。それは2パートのシンプルなものだったが、後になってEdel Foxとのツァー中、彼女が演奏したのは6パートだった。いや、7パートだったかもしれない。それくらい長くて混乱する曲だ。この人物は1870年代から80年代にかけてニュー・ヨークで活躍したダンサーということだ。Kitty O’Neil’s Champion Jigとよばれるこの曲。ジグでもないのに何故ジグなんだろうと思っていた。これは多分に時代によるものらしい。19世紀のアメリカでは2/4 2/2などでもミンストレル・ショーなどの躍動するダンスの象徴とされていたらしい。そういえば、何かの映画でブルース・ウィリスが全ての大活躍が終わった時「ジグでも踊るか」と言っていた。それがアイリッシュ・ジグに限ったことではないだろうことが、ここからも分かってくる。でも、なんでO’Neilと言ったりO’Sheaと言ったりするんだろう。一説によると、それはトミー・ピープルスが間違ってKitty O’Sheaと言ったのが始まりだ、と云われている。元々はKitty O’Neilだったはずだ。もっと調べればいろんな説が出てくるだろうが。ところで、最も古い資料では2パートだ、という説もある。
Billy in the Low Ground / Ragtime Annie (Reel)
★Billy in the Low Ground
“これは決してアイリッシュ・チューンではない。アメリカン・オールドタイムと呼ばれるカテゴリーに入るものだろう。面白いことにSharon Shannonがやっているようだが、随分僕の知っているメロディとはかけ離れているし、タイトルもなにかもじったようなものになっている。僕はというと、70年代初頭、Nitty Gritty Dirt Bandの最初のアルバムで聴いたのが初めてだった。Uncle Charlie and His Dog Teddyというタイトルのアルバム。その中で マンドリンとギターでフェイド・インして入ってくるしゃれたやり方が印象的だった。後年、アイリッシュの世界に入った時、Maid Behind the Barという曲に出会ったが、どこまでもこの曲に似ていたが、どこかでクロス・オーバーしたのだろうか。とに角これは希花さんに古いギブソンで弾いてもらうことにしたが、とてもいい音で曲調にもよく合っている。
★Ragtime Annie
“これもアメリカン・チューンだがアイリッシュ・ミュージシャンにも好んで取り上げられている。僕は1922年頃のEck Robertsonの録音をよく聴いていた。おそらくこれが最初のこの曲の録音だと言われているが本当だろうか。日本では石田一松が「のんき節」を録音したのと同じ年だ。なお、ほとんどのブルーグラス・ミュージシャンは2パートで演奏するが、この録音を聴く限りではもともと3パートのようだ。その昔、宵々山コンサートでジョー・カーターと弾いたのはこの曲だった。このようにアメリカン・チューンでもアイリッシュ・ミュージシャンに取り上げられているものや、決してそうでないもの、また、その逆の現象もあるので、こと細かに見ていると面白い。
Miss Thompson’s / Derry Reel (Reel)
敢えて書いてこなかったレパートリーもいくつかある。それはCDですでに録音、解説しているものなので、タイトルだけでも書いておこう。
★Far Away Waltz / Trip to Skye (Waltz)
“フランスからやってきた美貌のティン・ホイスル奏者“マリー”から90年代に習った曲。その頃はタイトルが分からず、マリーズ・ワルツと呼んでいた”
“John Whelanのペンになる美しいワルツ”
★The Maids of Selma / Coloraine Jig / Mouse in the Kitchen (Jig)
“Selmaは1965年 アラバマ州のマーティン・ルサー・キング・ジュニアによる行進が始まった都市のことだろうか。定かではない”
★The Girl Who Broke My Heart / Paddy Ryan’s Dream / The Boys of Malin (Reel)
★The Banks of Suir (Air)
★Jackie Tar / Golden Eagle (Hornpipe)
★Ookpick Waltz (Waltz)
“CDでは歌の挿入曲として演奏したが、僕らはよくKevin Keegan’s というワルツの後で演奏することも多い”
★Teetotaler’s Reel / Whiskey Before Breakfast / The Virginia (Reel)
“オールドタイム、ブルーグラスの流れを汲むレパートリー”
★Garech’s Wedding / Kid on the Mountain (Slip Jig)
★Planxty Hewlett / Give Me Your Hand (O’Carolan / O’Cathain)
★Jenny’s Welcome to Charlie / Rakish Paddy Donegal Setting (Reel)
★Inion Ni Scannlain (Donogh Hennessy)
★Calliope House (Jig)
★An Drucht Geal Ceoidh (Air)
アルバムKeep Her Lit!は2011年に発表したもので、既に絶版となっています。
2人で始めてわずか数か月という時に録音したもの。当時(今でも)名もないこのデュオのアルバムを購入していただいた皆さんに感謝いたします。
The Maid I Ne’re Forgot / JB’s / Lad O’Beirne’s (Reel)
★The Maid I Ne’er Forgot
“コンサルティーナ奏者のPadraig Rynneの録音から覚えたものだが、随分前にArty McGlynnとNollaig Caseyのアルバムで聴いていたものだ。彼らはEm Reelとして録音していたので同じ曲だとは気がつかなかったし、とっくに忘れていた。なお、RynneはBm Reelと名付けていた。O’Neillのコレクションにも含まれているというので、そんなに新しい曲ではなさそうだ。Michael Gormanの曲とも言われているが、とても現代的なメロディを持った曲だ”
★JB’s
“古いスコットランドの曲でF#mで書かれている。James Murdoch Hendersonによって1932年に書かれているというから驚きだ。JBとはどうやらJames B Patersonという人物のことらしい。これは多くの人がエアーのように演奏しているものだが、Rynne はReelとして超絶テクニックを披露している。僕らは彼の演奏から学んだので今度はエアーにしてみてもいいかもしれない。Old Blind DogsのJohnny Hardieがいい味を出している”
★Lad O’Beirne’s
“Josephine MarshやSharon Shannonの演奏でさんざん聴いた曲だが実にいいメロディだ。キーもFで書かれているし、一味違う感じがある。
この3曲はPadraig Rynneのセットだが、あれはいつだったか。恐らく2002年頃ゴルウェイでブリーダ・スミスとセッションに出掛けた時に初めて彼と出会った。ブリーダが「今、若手で一番売れているコンサルティーナ奏者」と言っていた。もともとはクレアーの出だがその時はゴルウェイにいた。今はまたクレアーに戻っているようだ。
その日のセッションではCherish The Ladiesのアコーディオン弾きMirella Murreyとも再会した”
今回は2枚目のアルバム「Music In The Air」での録音曲を掲載してみました。
★Si Bheag Si Mhor
“アイリッシュ・ミュージシャンのみならず、他の分野でもこぞって取り上げられる、親しみやすい、それでいて美しいメロディ。言わずと知れたO’Carolanのペンになる。あまりにポピュラーなため、演奏する機会も少ないがいい曲であることは確かだ”
★The Mountains Of Pomeroy
“ブレンダン・ベグリーの歌は格別だが、もちろんインストでやっても美しい。元はマーチとして書かれたというからちょっぴり勇敢な曲だろう。そう思って演奏してみると意外と面白い。Pomeroyは北アイルランドのCo. Tyroneにある”
★Lord Inchiquin
“O’Carolanによるこれも美しい曲。少し早い目に演奏されることが多いが、確かにそういう感じのメロディだ。僕も随分前にガット・ギターで録音したことがある”
★Jim Donoghue’s / Road to Cashel
“B♭とCmでの演奏が独特な世界を創り出している。コンサートではこの後Neckbellyという曲に突入する”
★May morning Dew
“大好きなエアー”
★Inis Sui
“Maire Breatnachのペンになる美しい曲。2013年に彼女と出会い、セッションにまで一緒に行ったのに彼女だとは気付かなかった、という不覚な出来事があった”
★Eleanor Plunkett
“これもO’carolanのペンになる美しい曲”
★O’Carolan’s Ramble to Cashel
“すでに“その66”で登場している”
★A Stor Mo Chroi
“1929年に書かれたと言われる曲。僕にとってのベストはBonnie Raittの歌かも知れない。初めて聴いたのはジャック・ギルダーとバークレーに行く途中の車の中だったが、いまだにその時の衝撃は覚えている”
★Hector The Hero
“スコットランドの美しいエアー”
★Valse Des Jouets / Going To The Well For Water / Fairy dance
“ワルツからスライド、そしてリールで締めくくり”
このアルバムも現在は完売。ありがとうございました。
今回は3rdアルバムThe Rambler で録音した楽曲から。
“ご機嫌なジグ。結構音が飛んでいるのでリズムを取るのも、テクニック的にも難しそうだ。2曲目はアメリカでもこぞって取り上げられるもの。どこか、言うなれば“らしい”といった感じの曲だ。ハンマー・ダルシマー奏者には結構人気がある。3曲目は超絶テクニックのコンサルティーナ奏者、Padraig Rynneの作。彼とは2001年か2年頃、ゴールウェイにてセッションしたことがある”
“ジョセフィン・マーシュから直々に教わった彼女の作品。CD発表時はまだタイトルがAnna Fox かと思っていたが、正しくはFoxe ということなので、ここで訂正しておく。ライブなどで演奏すると、みんなが「可愛らしい曲」と言って覚えてくれる”
“Kevin Crowford やGearoid OHAllmhurain(いまだに発音できない)のプレイでよく聴いていた曲。ひたすら美しいメロディに心を打たれる”
“フランキー・ギャビンから習った曲。他の人の演奏ではあまり聴いたことがない”
“ケビン・バークのアルバムから覚えた曲だが、これも他の人の演奏は聴いたことがないような気がする”
“とても古く、とても美しい曲だ。こんなに美しい曲がそんなに昔から演奏されていたなんて驚きだが、確かにヨーロッパの建造物などを多く見てみると納得がいく。こういうものを幼い時から当たり前のように見ていたら、この曲のような感性が芽生えるんじゃないかな、という気にさえさせられる”
“このセットはすでに「その7」に登場している”
“彼の作品の中でもとりわけ大好きな美しいメロディ”
“ファーストアルバムでも録音している美しいエアー。今回はハープとフィドルをメインにまた違った美しさが際立っている”
その他、このアルバムでは「この想い」「おわいやれ」の日本語の歌、それにバンジョーによる「クリンチ・マウンテン・バック・ステップ」も収録されている。
こちらのアルバムはまだ在庫があります。
Blackbird(Hornpipe)
“その11とその82に既に出ているが、ここでは違うBlackbirdを2種挙げておく。
困ったことに同じタイトルで5つのメロディが存在しているが、僕らがレパートリーとして取り上げているのは4種。もうひとつは明らかに誰かが作り上げたバージョンのような気がするので特に気にしてはいない。そう聞かれないバージョンである。
僕らは“その11”で掲載したケビン・バークとジャッキー・デイリーのバージョン、実を言ってこれもポピュラーなものではないが、メロディの美しさと、明らかに他のものとは違う点でレパートリーに取り入れた。アンドリューはそんなホーンパイプは無い!と言っていたがそれはひとえに彼の頑固さの象徴だろう。立派なホーンパイプである。それに“その82”で登場しているパディ・キーナンのパイプ演奏で有名なバージョンをよく演奏している。その他、のバージョンとしてOld Blackbirdと呼ばれるもの。これは大好きなメロディだ。それと、これもボシー・バンドがリールとして演奏していたメロディのもの。僕らはこの4つを好んで演奏している。ややこしい話であるが、Blackbirdと言ったら、どのバージョンで演奏するかを確認したいものである。少なくともビートルズの…ではないはずだ。
取りあえず、分かりやすく記しておくとこうだ。
Blackbird Em Hornpipe From Kevin Burk & Jackie Daly その11
Blackbird G/D Set Dance From Paddy Keenan その82
Blackbird D Hornpipe (Also as known as Old Blackbird)
Blackbird D Hornpipe/Reel From The Bothy Band
この4つのBlackbirdが僕らのレパートリーとして存在する”
★Crabs in the Skillet (Jig)
“オニールのコレクションからTara Breenの演奏で覚えた曲。Gmで演奏される3パートのジグ。特に3パート目が好きだ”
★Larry Redican’s Bow (Reel)
“ここしばらく頭の中にAパートのメロデイが浮かんでいて、どうしてもBパートが想い出せなかった曲。随分むかし、ティプシー・ハウスで確かGreat Eastern(別名The Land of Sunshine)という曲の後にやっていたと思う。全く記憶になかったBパートはBmから始まる意外な展開だった。取りあえず、こんな風にどうしても思い出せない曲はしつこくしつこく調べまわるしかない。そして見つけた時には相当な喜びになる。僕らはこれによく似た曲Oak Tree(その20)を後にもって来てみた。どちらもなかなかに好きな曲だ”
★Great Eastern (Reel)
“ついでにこの曲も。Martin Mulhaireのペンになる単調だが美しい曲。キーはCmajorで演奏される。AパートもBパートも全く同じコード展開なので(くずせばいくらもくずせるだろうが、理にかなわぬくずしは好きでない)曲のテキスチァーをよく把握することが伴奏者として大切なところだろう。どのようにすべきか、どのようにすべきではないか、その見極めは重要なポイントだ”
The Garden of Butterflies / Miss Galvin’s (Hornpipe)
“Poll Ha’ Pennyというタイトルの方が有名だろうか。ずっと前にJody’s Heavenで録音しているが、それとは別に僕らはWest Clareのバージョンから、Jody’sで演奏してきたバージョンへと移行している。どちらも変わったメロディで、ちょっと聴いたら変な感じだ。しかし、こういうへんてこなメロディというのは何故か頭から離れない。West Clareバージョンも長いこと聴いていなかったが、ゴルウェイのチャーチでClareからのフィドラーが弾いていて思い出したのだ”
“特にこれといって特徴の無い曲ではあるが、ほとんどの場合、前の曲とセットで演奏されることが多い。そんな意味でレパートリーとして取り入れている。因みにMrs. Galvin’sという結婚後の、違うバージョンも存在するが、こちらの方はあまり注目されない”
The Coalminer’s / Anderson’s (Reel)
“ずっと前からしょっちゅうタラの連中(アンドリューやケイリ・バンド)の演奏で耳にしていた曲。実にのりのいい覚えやすいメロディだ。特に目立った特徴はないが、何回繰り返しても飽きが来ないような感じだ。それだけにどんな曲とも組み合わせが可能な、いい曲だとも思う”
“時々、前の曲とセットで演奏されているようだが、これも比較的覚えやすい良いメロディの曲だ。Paddy Keenanの演奏でよく一緒にやっていたことがある。いかにも彼が好きそうな、ちょっとロックっぽいビートの曲”
その100といっても100曲ではない。もう何曲載せてきたか自分でも分からなくなっている。自分たちのレパートリーとしてのアイリッシュ・チューンや少しのアメリカン・チューンを掲載してきたが、まだまだ想い出せば出てくるだろう。できるだけダブらないようには心がけてきたが、これからも書き続けていったら、というか、残していったらどういうことになるかわからない。一時のようなペースでは書けないだろうが、まだまだレパートリーとして取り入れたい曲は沢山出てくるだろうし、想い出す曲もあるだろう。100回目にふさわしい曲は何だろう、と考えても仕方ないので、今回は敢えてレパートリーとして取り入れてはいない、非常にポピュラーなもの(ポピュラー過ぎるもの)を数曲羅列してみる。
例えば…。
取りあえずこれくらいにしておこうか。これらの曲はたまに練習中、思い出して復習ってみるもので、多分他にも一杯あるだろう。常識的に知っておかなくてはいけないものが多すぎて困る。しかし、記憶をよみがえらせるためにもこういうこと(記しておくこと)は必要なことだ。
久々に書いてみようかな、という気になった。今まで何曲のレパートリーを載せたのか、もう分からなくなってきているので、一項目1曲にしたほうが良かったのかな、と思いつつ、やっぱり何曲かまとめて、を基本にした方がいいか、という結論に達した。
今回はまずこの曲から。
★Johnny Cope (Hornpipe)
この曲はまず、Noel Hillがやろうということで持ってきた曲だ。なんとなくは聴いたこともあるし、タイトルも知っていたものだが、なにせ6パートのどこも似たような、それでいてちょっと変わった曲なのでもう忘れていた。彼自身も長らく演奏していない曲なので、やりながらどうもこんがらかっている様子だった。彼とのツァーも終わり、Dale Russにこれをやろう、とメールしたら、「俺の心を読んでいるなぁ。最近やり始めたところだ」というメールが返ってきた。スコットランド発祥の古いパイプチューンのようだ。どこかくせになるような曲である。また、ギタリストにとってはとても深い考えが必要な曲でもある。
★Geese in the Bog (Jig)
別名、Lark’s Marchと呼ばれる5パートのジグ。パートによってはほとんどLark in the Morningと言える。実際、これも8パートのバージョンもあると言われているし、同じタイトルで似たようなものもあるが、僕らはこのバージョンが好きなので敢えてこれを選んだ。
★Horizonto (Jig)
古いBlowzabellaのアルバムから。Paul James(Bagpiper)のペンになるいい曲だ。この人の作品も同じグループのメンバーであるAndy Cutting同様、なかなかに味がある。それにメロディーもいい。Bello Horizonteという古いオペラハウスを題材にしているようだ。
★Ritual / The Black Pat’s (Reel)
最初の曲はThe Old Blind DogsのパイパーであるRory Campbellの作。このバンドはスコットランドからの若者たち(元)で、その昔僕もすごく仲のよかった連中だ。彼らのアルバムではローホイスルによる素晴らしい演奏を聴くことができる。
2曲目はTommy Peopleのペンになるフィドラー必須の曲。
★Harp and Shamrock / Fairies’ Hornpipe (Hornpipe)
一曲目はPat Crowleyの作。古くからあるものと思っていたほどポピュラーな曲。とてもいいメロディで親しみやすい。タイトルは“ベタ”な感じがするのだが、作者の親が持っているパブの名前?あるいはそのパブで名付けた、というからやっぱりその名前のパブだったのかな。2曲目については、僕はかなり前Dick Gaughanのギターアルバムで覚えた、とても簡単ないい曲だ。
★The Devil and The Dirk
どこまでもScott Skinnerらしい曲だ。相当なテクニックが必要だろうが、それはそれなりに盛り上げる要素満載の曲と言える。決して名曲とは思えないが。
★Niel Gow’s Lament for His Second Wife (Waltz)
ニール・ガウ (1727–1807)の作品。彼が亡くなる2年前に亡くなった二人目の妻に捧げたものだ。因みに最初の妻も二人目の妻もマーガレットという名前だったという。一応ワルツとしておいたが、ジグという人もいるし、エアーとする人もいる。どちらにせよ美しいメロディで、僕はハープがきれいだと思う。本人はフィドラーであったというからフィドル曲なのかもしれないが。クラシックの分野でも特にギタリストに好んで取り上げられているようだ。有名な曲なので覚えておいて損はない。
★Jackson’s (Reel)
これは以前出た同名の曲とは違う曲だ。Jackson’s FavoritesとかJackson’s No1とかいうタイトルも付いている。おそらくMichael Colemanでよく知られている曲だと思うが、これもShips a Sailingに近い曲と言われている。その89に登場したDorogheda Bayという曲も同じような曲なので、これは3曲メドレーでやったら大変なことになるだろう。リード楽器は頭の混乱を覚悟しなければならないし、伴奏者に於いてはメロディは弾かないが全ての音の動きを把握していなければならないし。脳トレにいいかも。
★Planxty Davis (Hornpipe)
PlanxtyというとO’Carolanと思ってしまうが、これは違うようだ。しかもメロディもとてもO’Carolanっぽいので初めて聴いた時は完全にそう思っていた。どうやらスコットランドの有名な曲Battle of Killiecrankieが基になっているようだ。定かではないがThomas Connellanというアイルランドのハープ奏者(長年スコットランドに居たという)が書いた曲らしい。彼は1600年代、兄弟のウイリアムと共に700以上の曲を書いた、という記事が残っている。更にもう少し詳しい記事を見つけた。1694年に出版されたもののなかに載っているらしいがそこではKilliecrankieとなっており、後にロンドンでも出版された書物も同じタイトルであるが、なぜかアイルランドではPlanxty Davisとして知られるようになったのが1742年以降。正式なタイトルとしてはThe Two William DavisesとなっておりO’Carolanの作品とされている。聴いてみると確かによく似ているが違うところはかなり違う…がよく似ている。このあたりが「O’CarolanはCopycatだ」と言われる由縁かもしれないが素晴らしい作曲者であることも確かだ。この曲はNoel Hillから習った。
★The Maple Tree (Mazurka)
Blowzabellaからの選曲。マズルカは元々、ポーランド発祥のリズムと言われているが、確かにこの曲はリズムもさることながら、曲調もそんな感じがする。因みに作者はJon Swayne & Jo FreyaどちらもBlowzabellaのメンバーだ。
★O’Carolan’s Cup
さて、これはどうもCarolanの作ではなさそうだ。いろんな見解があるようだが、結局のところこの曲に関する資料はないようだ。因みにメロディはかなりCarolanっぽい。さもありなん、という感じはするのだが…。一方であまりにも「らしすぎる」感も否めないではない。
★Paddy’s Return (Jig)
Kitty Lie Overというタイトルもある。僕はKevin Burkeでその昔覚えた曲だ。
初心者にも非常に分かり易い曲だと思う。
★Up In The Air (Jig)
Kevin Burkeの作。とてもいいメロディだ。Jody’sでも録音したことがある。
★Trolley (Reel)
Cape BretonスタイルのフィドラーColin Grant作の美しいリール。最初はスローで始めるのだが、それがなんとも美しい。速くなってくるとそんなにいいとは(勿論いい曲であることは確かだが)思えず、よくある感じになってしまうので、僕らは敢えてスローだけで演奏している。
★Carriag Aonair (Air)
実に17年前、Dale Russ & Todd Denmanと録音したものの中に含まれている曲。飢饉から解放されるため北米に船出したアイルランド移民たちが、コークを出て「これがアイルランドの見納めだ」と称した小さな島Fastnet Rockのことらしいが、これは又「The Lonely Rock」というタイトルでもあるようだ。故郷を後にする移民たちの心をえぐるようなメロディが美しくも哀しい。
★Farley Bridge (Reel)
Duncan Chisholm作のこの曲はリールというよりも、スロー・リール、或いはエアーと呼んでもいいくらいの美しいメロディを持った曲だ。キーはEmajorでギターなど伴奏楽器の音の配列によっても大きくニュアンスが変わってきそうな気がする。僕らはいくつかの歌の後にこの曲を合わせている。
★Lonesome Eyes (Waltz)
Jerry Holland作のこれも美しいワルツ。彼のフィドリングは昔から好きでいくつかテープを持っていた。1955年にアメリカで生まれ、2009年にカナダで亡くなるまで、実に素晴らしい演奏を残している。思ったより若かったことにびっくり。
★The Fisher’s Wedding / Lady Harriet Hope
Alasdair Fraser & Jody Stecherの古いアルバム「Driving Bow」からの選曲。僕が90年ころからずっと聴いてきたもので、希花さんとやり始めた頃、彼女にCDを一枚選んでプレゼントしたものがこれだった。Jody Stecherはサン・フランシスコの人で一度だけ電話でお話したことがある。フォーク系の人でフィドルやバンジョーもこなすが、このアルバムでは素晴らしいギターを聴かせてくれる。Alasdairは何度か会ったことがあるものの、スコティッシュ・スタイルのフィドラーで音楽を合わせたことはなかった。彼もまた素晴らしいフィドラーだ。僕がよく一緒にやっていたLaura RiskやAthenaは彼の生徒さんだったと聞いている。因みに彼女たちは10代でスコティッシュ・フィドル・チャンピオンになっている。
1曲目に関しての資料は無いが、2曲目に関しては諸説ある。1800年頃Edinburghで出版されたものに記載されているようだ。又は1759年というピンポイントで指摘する人もいる。Lady Henrrietta Johnstone(1682 -1750)と云う女性がCharles Hope(1681 -1742)と結婚したという史実は残っている。後にHenrriettaはHarrietと呼ばれるようになったらしいが、彼女の娘も孫娘も同じ名前だったというからややこしい。
Irish Music その110
★Planxty Dermot Grogan (Jig)
最初はHolly Geraghtyのハープの演奏で聴いたもの。これは彼女によって書かれた曲で、2006年の2月4日に48歳という若さで他界した、Co.Mayoのフルート&アコーディオン奏者Dermot Groganに捧げたものだ。2009年に彼女自身が録音しているが、2016年、アイルランドのあちこちでこの曲を聴いた。美しいメロディでワルツとして、あるいはエアーとして演奏してもいい。
★Kilmovee (Jig)
多くの人が演奏していて、前々からよく知っている曲ではあったが、これもいろんな名前がある。そのひとつにDermot Grogan’sがある。Brendan Larriseyの作だという説もあるが、定かではない。
★Aisling Yoshua
先日、CD 「Gentle Wave」をリリースしたが、その2曲目のワルツは、長い間のフェバリッツ・チューンだった。
それは2014年8月21日(木)アイルランド、カウンティ・ケリーの午後。
僕らはシェーマス・ベグリーのバックヤード、いやフロントヤード(あそこまで広いとどこが表口かどこが裏口か分からない)に止めてあった一台のバンから聞こえてくるラジオ放送にくぎ付けになった。
美しいその曲は見渡す限りの緑の丘と、気持ちのいいそよ風に乗って僕らのハートに突き刺さった。
現代っ子の希花さんにすぐ録音してもらい、誰の演奏でなんというタイトルかを言うだろう、と待っていたがすぐ次の曲に入ってしまった。
が、僕らは早速希花さんのコンサーティナと僕のギターで自分たちのレパートリーとして取り入れた。
でも、どうしても曲名が知りたい。自分が演奏している曲のタイトルを知らないのは恥だと考える僕なのでその日から検索オタクになってしまった。
アイルランドからのミュージシャンにも尋ねた。アイルランドのラジオ局にも問い合わせた。が、分からないという。
あれから3年ほど。とうとう見つけた!
Johnny Og Connollyの書いたAisling Yoshua(Josha’s Dream)という曲だ。
彼とは一度だけSpiddle というところのバーで演奏したことがある。彼の親父さんでメロディオン奏者として著名なJohnny Connollyと、なんとチャーリー・レノンもいた。
同じ2014年の、この曲を聴くだいぶ前、6月28日(土)の夜だった。
2014年アイルランドの旅~ジョニーの家~参照。
3年経った今、やっと見つけた。
しかし、先日来日したBrian McGrathがレコーディングでピアノを弾いていたようだ。あの時、時間があれば彼にピアノを弾いてもらってこの曲やろうか、と思っていたがやらなかったのだ。もしやっていたら「あ、俺それ知ってるよ」ってな話になったと思うと残念だ。
それにしても結構近いところにヒントがあったもんだ。
先ほど、Johnnyからメールが来た。演奏してくれてありがとう。その曲が日本という素晴らしい国で聴いてもらえるなんて嬉しいよ、という主旨のメールだった。うん、政治家以外は素晴らしい国かもね(僕の心の中)
僕も素晴らしい曲をありがとう、とメールしておいた。
★Jem the Miller O’Carolan
この曲は僕が今、一緒にギターを弾くことで、ついでに教室としても考えてもらっている、通称、ケニア君という友人から教わったもの。
日本人ではあるが、ケニアに永く滞在した経験があるのでなんとなく僕がケニア君と呼んでいる。
彼が、ジャッキー・デイリーの演奏から覚えたと言って弾き始めたが、かなり前のことで忘れてしまったという。
少しだけ聴いてもなかなか良い曲だったので調べてみると、一応O’Carolanの作品となっているが、実際はもしかしたら、Co. LimerickのフィドラーNed Goggin(1844~1850’)の作品ではないかというかなり有力な説があるようだ。
メロディは美しく、時代背景からジグだと言う人もいるが、ワルツとして演奏することができるので、僕らはこの後、何にいくかは決めていないが、Ukepick Waltz にいくのもThomas Farewellにいくのも良さそうだ。
ケニア君に感謝。
The New Land (Waltz)
ロード・アイランド出身、現在はケイプ ブレットンに住んでいる楽器製作者Otis A Tomasのペンになるこの曲。実を言って僕は何年も前に聴いたことがある。省ちゃんが「こんな曲知ってる?めちゃアイリッシュっぽいんだけど。これトラッドか?」と言って弾きだしたのがこの曲。僕は「いや、聴いたことないけど、トラッドではなさそうだね。誰かが作ったんじゃないかな」と答えた。
正直、全くアイリッシュの雰囲気は感じなかったし、トラッドの曲調でもなかったが、日本では結構多くの人が「アイリッシュっぽい」と言って演奏していたようだ。それだけに反発して、どうも好きになれなかった曲だったが、今年(2017年)のアイルランド、キャスルアイランドのセッションで、ジャッキー・デイリーと演奏した時に彼が「君たちこの曲やる?」と言って弾き始めたのがNew Landだった。その日は、彼の作品の多くを僕らが知っていて演奏したことにとても心を開いてくれたようで、半分眠っている彼が嬉しそうに弾きだしたのだ。僕は素っ頓狂な質問をしてしまった「この曲もあなたの書いたもの?」彼は「いや、違うよ」と言いながら「ここ、こんなコードを俺は使っている。アコーディオンの特性としてこういきたい」などとゆっくり話しながら何度も何度も繰り返し弾いた。
それはとても美しいものだった。やってもいいかも、と思ったのはそれを聴いてからだ。
そのあと、ブレンダン・ベグリーの家に泊めてもらい、朝早くに散歩をしてから部屋に戻ると、ふと1冊の本が目に入った。「Fiddletree」というタイトルのその本。書いた人はOtis A Tomas
ページをめくると、彼が造ったフィドルや様々な楽器の写真が目に入った。自分でカットしたメイプルの大木1本から多くの楽器を作った話も。さらに進むとThe New Landという項目が現れた。他ならぬこの曲の楽譜と、書いた時の思い出などが綴られていた。彼が引っ越したケイプブレットンのSt.Ann’sのあたりの景色からインスパイアされたらしい。ここが自分の新しい土地だと感じた彼が「メロディが浮かんだのは確か…9月のいつ頃かよく覚えていないけど….」と語っている文章も載っていた。それ以来、これはこの曲をやるいいきっかけになるな、と思いレパートリーに取り入れた。キーはもともとFで書かれているが、Dで演奏する人も多いそうだ。
Larry’s Favorite
長い間知っていたPaddy O’Brienの名曲。Amで演奏されることが多いようだが、何故今までレパートリーに加えなかったかと言うと、2013年にコーマック・ベグリーが練習をしていたという記事を書いた時のJohn BrossnanにAパートがよく似ているし、その上75に登場したSligo Maidに3パート目が似ているといえば似ている。そんな理由で今回レパートリーとして取り上げるに際し、Gmにしてみた。そうして色々と聴いてみると、Gmでやっているひとも結構いるようだ。特にこの曲に関する情報は無い。Larryというのが誰かも分からない。
この後で49に登場しているGarrett Barryを持ってきた。キーはFで。
もともとGarrett Barryが大好きな曲で、この曲に続くもの、或いはこの曲の前に来るものを探していた時に思い出したものだ。いろいろ聴いているうちに、DervishのLiam KellyがBmで演奏しているものがあった。そしてAでGarrett Barryに行っているのだ。考えることは同じだった。
Planxty Mistress Judge
別名 Mrs. Judgeでいいのだが、どうやらこの長いタイトルが僕らの聴いたバージョンのようだ。Dale Russの演奏で覚えたものだが、彼はPaddy O’Brien(Offaly)の演奏から覚えたのかもしれない。非常にきれいなメロディを持った曲だが、Bパートが意外とややこしい。覚えられないものではないが、良くあるO’Carolanの曲で「そう行くか」というようなメロディなのだ。常識的に考えてこう行って欲しい、などという考えは捨てたほうがいいような曲は覚えるのが大変なのだ。アンドリューが覚えるのに苦労した「鉄砲獅子踊り」なんかもその類かな。この曲はどうやらO’Carolan’s Welcomeとそっくりな曲が後に付くらしいがPaddy O’Brienもそこまでやっていなかったので付けなくてもいいものかもしれない。ならWelcomeを付けてもいいかな。
Ryan’s Rant
以前書いたような気がしたが、コーマック・ベグリーが弾いていたものを僕が「なんだっけ?」と訊いたことがあるのでその時の記憶が残っているのかもしれない。この曲を最初に聴いたのはPaddy O’Brien, James Kelly, Daithi Sprouleの素晴らしいアルバムだった。これは僕にとってこの音楽のバイブルのようなアルバムだが、以前Edel Foxと見事に意見が一致したことがあった。彼女もよく聴いていたらしい。彼らはMan of the Houseからこの曲に行っているが、このMen of the Houseもバージョンが違う。明らかにBパートが聴いたことのないメロディラインだ。Paddy O’Brienの演奏には比較的そういうものが多いのだ。よく聴くとフィドルとアコーデイオンは微妙に違うメロディを弾いているが、それが心地よくぶつかっている。ややこしいメロディだし、人によってはGravel Walkと勘違いする現象もあり得るし、一体いくつのパートがあるのかもよくわからないくらいに似たり寄ったりのメロディを行き来する。メロディ奏者には面倒くさい曲かもしれない。
Coleman’s March (Polka)
不思議な曲である。オールドタイムのフィドラーが「アイリッシュのポルカから」ということで弾いているのを聴いたことがあるが、それ以外ではあまりポルカとして演奏しているものを聴いたことが無い。
元々アメリカンチューンではないかと思うのだが。その理由はこの曲に関する物語(実話)からだ。1847年ケンタッキーに住んでいた靴職人でフィドラーのJoe Colemanが絞首刑になった。理由は彼が女房を殺した、ということだが、それも定かではなかったらしい。限りなく疑われて絞首刑になったらしいが、運ばれて行く馬車の上,棺桶の横に座り彼がフィドルを弾いたということだ。
詳しい話をすればもっと長いが、それが決してこの曲ではなかったようだ。多分あとからそのストーリーを聴いた誰かが作ってそれがフィドルチューンとして知られるようになったのだと思うが、どうしてアイリッシュ・ポルカになっているのかはよくわからない。物語は事実のようで彼の絞首刑の後、彼のフィドルを受け取った人物の名前まではっきりしているようだ。
ところで、この時代にはよくあったことかもしれないが、彼の体は親戚の人達によって運ばれ、その後、彼は息を吹き返したという話も残っている。やがて彼はナッシュビルのほうまで行って、2度とケンタッキーには現れなかった、という話もあるので結構真実かもしれない。
フィドルチューンだが、僕はCathy Finkの演奏を参考にして5弦バンジョーで弾いている。なお、Coleman Kills His Wifeという曲もあるが全く違う曲だ。
Ashokan Farewell (Waltz)
余りにも有名な曲であり、またアイリッシュ・チューンでもないので、既にコラムで書いたような書いていないような、よくわからない位置にいた曲だ。この曲についてはLover’s Waltzの項目(12)で触れていた。同じ作者ということで。
この曲を初めて聴いたのは1984年にリリースされたFiddle FeverのWaltz of the Windというアルバムだった。その年、NYのソーホー辺りをウロウロしていたら彼らのコンサートの会場に出くわした。偶然だったし、人気の高いバンドだったので勿論ソールドアウトで中には入れず、扉の隙間から少しだけ聴いた。
アルバムを手に入れたのはその直後だったかもしれない。いや、もう存在を知っていたのだから直前だったかもしれない。完全なジャケ買いだった。そして内容も素晴らしかったが、とに角Ashokan..に強く惹かれた。変なタイトルだな、と思って文献を読んでみたら、NYのAshokanで行われるMusic & Dance Campのテーマ曲であることが分かった。
ほどなくしてアメリカの公共テレビ局PBSで南北戦争を題材にしたドキュメンタリー番組が放送されたが、そのメインとなる音楽がこのAshokan Farewellだった。それはそれは素晴らしく番組を盛り上げていた。多くの人はあの番組の音楽、ということで知ったようだ。数多くの録音が残されているがあまりに名曲なので、これをむやみにアレンジする人もいない。ワルツではなく、スコットランドスタイルのラメント(哀歌)だと言う人もいる。また、Jay Unger自身、作った時からAly Bainの演奏をイメージしていたらしい。Transatlantic Sessionでそう語っていた、という記事もある。とに角しつこいようだが美しい曲だ。
Farewell to Trion
これはオールドタイミーからの選曲。超有名なものではなさそうだが、最近多くの人が演奏している。出元は、アラバマのMack Blaylockと言う人が彼のおじさんに当たる人Joe Blaylockの書いたものだとして発表したらしい。彼(Joe)がジョージアのTrionからアラバマに戻ってくるときに書いた、とされている。そこにJames Bryanが3パート目を付けたものが今現在のかたちになっている。なので作曲者として3人Joe , Mack, Jamesの名前が記載されている。元はキーオブCで書かれたようだがGで演奏している人もいる。楽器によってだろうが。僕らは次に何かメドレーを、と考え、Dで演奏している。単独で演奏してもなかなかいいメロディの曲だ。その場合はオリジナルを尊重してCかな。Trionはデニムの町として有名だということ。今や世界中になくてはならないものであるジーンズの元になっている町だとは知らなかった。
Grey Owl (French – Canadian)
非常にキャッチーなメロディを持った曲だと思うが、フレンチ・カナディアンの別名Metis Tradという情報以外、いつごろ書かれたものか、誰か書いた人が居るのか、どうやって伝えられてきたのか等の情報が今のところ見つからない。
因みにMetis と言うのはカナダ・インディアン(いわゆるFirst Nations)とヨーロッパ人との間の混血民族ということだ。
アイリッシュ・チューンとは全く異なった感がある。フレンチ・カナディアン系の人をはじめBruce Molsky、Molly Tuttle、など、多くの人達が演奏している。
実際、あるグループのコメントで Bruce Molskyに習ったものだが、あまりにいい曲で僕たちは20分間も演奏し続けた、とあったがそれくらいに名曲だと言える。
いろいろ調べていたら1942年生まれのフレンチ・カナディン・フィドラー、John Arcandの作、という記述も出てきたが定かではない。そうだとしても、おそらく、Tradからヒントを得たものかもしれない。
★ Phoenix (Reel)
Arcadyで覚えたこの曲。アコーディオン奏者のDave Hennesseyが書いた、何とも小気味よいリズムの名曲だ。多分Patsy Broderickが弾いているだろうキーボードが実に曲の感じを引き立たせている。タイトルはCorkに存在したパブの名前からとったということだ。
★ Jackie Daly’s Reel (Reel)
こうクレジットされているが、2曲繋がっているので、どちらもそう呼んでいいのだろう。僕は特に1曲目が気に入っている。アコーディオンならでは、という感もあるメロディだが、とても好きだ。他の人の演奏ではあまり聴かないのでJackieの前でこれを演奏した時には彼も驚いた様子だった。ところでこの曲は2曲繋がっていると言ったが、最初の曲はCacodemonというタイトルで演奏している人がKathryn Tickellをはじめ、数人いる。Arcadyでは、これもPatsy Broderickのピアノ演奏から入る。そして2曲目はどことなくPhoenixに似た曲だ。
Amelia’s (Waltz)
1980年頃Bob McQuillenという人物によって書かれたワルツ。長年知ってはいたが、特に演奏したことがなかった。結構いろんな人が(オールドタイムなども含む)やっているので、というのが理由のひとつ。
みんながやるから押さえておかなくてはならない曲もあれば、みんなやっているから敢えてやらない曲もある。
この曲はAmelia Stilesなる人物のために書かれた曲と言うが、そこにはAmelia Earhartの存在が大きく関わっている。これには驚き。僕らは大学時代からブルーグラスのレパートリーとしてAmelia Earhartを取り入れていた。カントリー・ジェントルメンかグリーン・ブライアー・ボーイズで良く聴いていたと記憶している。そんなこともあり今回ここに記載して、レパートリーのひとつに加えたわけだ。因みにジョニ・ミッチェルのAmelia(1976)もいい曲だ。
彼(Bob McQuillen)はマンチェスター(ニュー・ハンプシャー)で2014年の2月4日に90歳で亡くなっている。
Stoney Point (reel)
これは以前27の項目でPigtown Flingとして掲載したものと同じものなので、また書くのもどうかな?と思ったが少し別な情報もあるので、もう一度書いてみることにした。
古いアメリカン・チューンを聴いてみると、何と3パートあった。
ポール・ウォーレンとスクラッグスは2パートだった。前にも書いたようにFiddle&Banjoというタイトルだった。
今回の情報ではRoving Bachelorという曲のファミリーではないか、と言うのだが、この曲Emの部分(Pigtownの2パート目)が無くて、古いアメリカン・チューンの3パート目のメロディーが2パート目に来て最初に戻るのだ。なので、この曲は2パートだ。
このようにしてひとつの曲でもいろんな角度から見られるのでとても面白い。
今年(2018)のNoel Hillが来日の際やっていたので、フォギー・マウンテン・ボーイズの話に少しだけ触れてみた。彼も「確かにブルーグラスでも演奏されていたなぁ」と言っていた。ひも解いていくと面白くてやめられない。
Bob McQuillan (Reel)
123で出ている名前だがこれは彼の名前がついたリールだ。かなり前にArcadyの演奏で聴いたことがある。Brendan Larrisseyの彼らしいフィドリング(Tripping Down The Stairs)からこの曲に入っていく。
調子のいい曲だが、どこか運動会みたいな感じで、結構単調だし、あまり好き好んでやってこなかったのだが、彼の名前が先に出たので想い出した。
これは彼の作品だと思っていた。ところがどっこい、Aly Bainの作らしい。
そして、ArcadyではMaud McQuillanとクレジットされている。
よくある話でDorsetshire Hornpipeという曲のリール版と言う人もいるが、Alyは彼の頭のどこかにこの曲が残っていて、それからヒントを得て作ったのだろう。確かに似ているが、かなり違う一面も持ち合わせている。
When It’s Moonlight in Mayo (Waltz)
これは歌で有名な楽曲だが、アンドリューのバンド、Lahawnsで聴いたことがあるし、彼等と演奏したこともある。
アイルランドでは有名な歌のひとつだろう。
しかし、サビがWhen Irish Eyes are Smilingとほぼ同じだ。
…Mayoの方は曲がPercy Wenrich 詩がJack Mahoneyとなっており、1914に世に送り出されている。
一方…Irish Eyes..の方は曲がErnest R Ball 詩がGeorge Graff 又はChauncey Olcottとなっており、こちらは1912年に出版されている。
どちらかと言えばこちらの方が有名かもしれないが、あまりにもベタな感もあるので、..Mayoの方がしゃれとしてやるにはいいかもしれない。
★Floating Crowber (reel)
Brendan McGlincheyの作といわれている。そして彼自身、70年代に録音を残している。
ところが、いろいろ調べてみると彼が録音した当時には既にThe Rathcroganというタイトルでこの曲は存在していた、とも言われる。
みんなどうやって調べるんだろう。
そしてどうやらFinber Dwyerの作というのが有力になってきた。どちらにせよ、なかなかにノリのいい曲だ。
★The Revelled Hank of Yarn (Reel)
多くの人に演奏されている名曲。出処はよくわからないがパイピング・チューンという感が強い。Willie Clancyの演奏で知られているようだし。
Sous Le Ciel De Paris (Waltz)
題名から分かるようにこれはアイリッシュ・チューンではない。フランスの有名な曲だ。
僕らの年齢の人なら大体知っているメロディではないだろうか。
「巴里の空の下セーヌは流れる」という1951年の映画に使われたというが、ひょっとして僕らは観たんだろうか?音楽は今さらながら言うのも変だが名曲だ。パリの魅力、強いて言うならば「巴里」かな。日本人にとっては。そんな、何とも言えない絶妙なメロディ・ラインを持っている。アイリッシュではないけど、蛇腹楽器を演奏する希花さんには是非レパートリーのひとつとして取り上げて欲しい曲だった。
こういう曲、探せばいっぱいあるだろう。何故か僕らの子供の頃はこういういわゆるシャンソンやロシア民謡などが、いたるところで聴けたような気がする。音楽の授業で仕方なく聴かされた覚えもあるが。
Morning Thrush (Reel)
有名な曲だったが、特にレパートリーに加えていなかった。それというのもどこまでもパイプチューンという気がするからだ。しかし今回、Seamus Ennisの父が1913年か14年に書いて、その楽譜を見つけたというSeamus Ennisが演奏しているものをお手本にしてレパートリーに加えてみた。いくつかのバージョンがあるが、やはり彼の父が書いたと言って始めた演奏が凄く良かった。以前、ゴールウェイの教会で共演したMick O’Brienの演奏もなかなか良かったし、Seamus Ennisのバージョンとほとんど同じだ。他にも数人のバンジョー弾きやNoel Hillの演奏もあるが、3パートあるうちの最後のパートのひとつの音がF#なのに対してGになっている。たったひとつの音だがどちらのバージョンを選ぶかを僕らは討論する。Gも確かに少しインパクトがあって良いが、僕らの結論はやはりF#でいこうということになった。こうしてどちらも知っておけば誰と一緒にやっても「うん?」ということにはならない。それにしてもすべてのパートが同じような音を行ったり来たりするので、久しぶりに覚えにくい曲だった。
Valurile Dunari (Waltz)
またしてもアイリッシュ・チューンではない。日本語のタイトルで言うと「ドナウ川のさざなみ」だ。ルーマニアの作曲家、ヨシフ・イヴァノビチが1889年にパリの万国博覧会で発表して有名になった、と言われている。同じドナウ川を題材としたもので、やはり超有名なヨハン・シュトラウスの「美しく青きドナウ」よりもメロディが感傷的な作品だ。
実際にはもう少し長く、別なパートも存在するが、僕らはさわりだけをやらせていただいている。というのも、僕らの世代(いや「僕の」だが)では良く聴いたメロディで、それもかなり前のことなので印象深い部分しか記憶にない。因みに「記憶にない」というのは絶対に聴いたことがある、やったことがある、会ったことがある、ということだろう。でなければ、全く知らないということがきっぱり言えるはずだ。うん?何のことを言っているんだろう。
とに角、僕らの編成では希花さんのコンサーティナが活躍している。
Mississippi Sawyer (Reel)
これはリールというかブレイクダウンというか、いや、ホウダウンだろうか、とに角アメリカン・フィドルチューンの超有名曲だ。この手のものもやり出したらきりがない。ところで、この曲のBパートは明らかに「スキップ・トゥ・マイ・ルー」だ。それはピート・シーガーの教則本で1970年代初期に覚えた曲だが、先日、商店街を歩いていたら、アーケードのスピーカーから子供のコーラスでこの曲が流れてきた。それはそれは安っぽい音だったが、こんなものを流すのは何故だろうと思ったものだ。何はともあれ、Mississippi Sawyerはとても乗りのいいシンプルな曲だ。フィドルでもバンジョーでも、そしてハンマーダルシマーなどにも持って来い、の曲だと思う。
Silver Slipper (Slip Jig)
Johnny Dohertyの1953年録音で有名な曲。多分その時のタイトルがThe Woods of Fanadとなっているはずだ。なかなか若者にも受けそうないい曲。少しややこしい感もあるが。
多くの人が、このコラムの60に出ているGlen Road to Carrickをこの曲の後にやっているので、僕らもそれに習っている。僕は特にVallely兄弟 Cillian & Niallの演奏が好きだ。
Cillianは日本で最も人気のあるバンド、ルナサのパイパーだ。ずっと昔、ひょっこりセッションに現れて(まだルナサに入る前)凄く僕のギタープレイに感動してくれたので「ニューヨークに来たら連絡してくれ」と言って渡してくれた名刺が「ごめん、これしかないんだ」と言ってお兄ちゃんのNiallの名刺だった。それ以来彼とは会うごとに親しくしてもらっている。因みにブルーグラスやオールドタイムではGolden Slipperという全然違う曲もあるがBoys of the LoughはこのSilver…をGolden…として演奏していたようだ。
Sleepy Maggie (Reel)
これは1995年にリリースされたAshley MacIsaacのアルバムで世界的大ヒットしたものだ。事実、当時アメリカでは一日に何回この曲がラジオから流れていただろうか。シンガーはMary Jane Lamondだったということだったが。確かにキャッチーなサウンドで若者の気を引くには持って来いの感がある。同列曲としてよくDrowsy Maggieなども取り上げられるが、それは明らかにタイトルからだろう。Drowsy(眠たいけどなんとか起きている)から言えばその少し前、まだ明らかに眠たい、こっちの方がまだ起きていないマギーさんということで、完璧な余談ではあるが。さて、どちらかと言えばJenny’s Chickenの方が近いということは、もうすでに「その6」で触れている。実際ノエル・ヒルも「これはJenny’s…の変形だ」と言っていたが、因みにDe Dannanはこの曲をNoel Hill’sというタイトルで1995年に録音している。
The Lament for Limerick (Air)
余りに多くの情報があって、書き切れない部分と、よく分からない部分があるのだが、美しいメロディなのでギターで弾いてみた。この手の曲ではパイプスに勝るものはないだろうが、ギターで演奏しているものは聴いたことが無いので、それはそれでいいだろう。マーティン・ヘイズがLonesome Touchというアルバムでやっているが、どちらにせよ、フィドルも音が伸びる楽器なのでこの手の曲には向いている。シャロン・シャノンもやっていたかな。ギターの良さは、プラス和音、というところだろう。こういう曲に最適なコード進行を考えるのはとても楽しい。
いろんな人が様々な形で演奏しているが、僕は1972年と1981年の2回のショーン・オリアダ・メモリアルコンサートでSean Pottsが演奏しているものをソースにしている。
Each Little Thing (Slip Jig)
今年(2018)のフィークルのフェスで、あるグループの素晴らしい演奏が耳に飛び込んで来た。ふと見ると、歳の頃はみな20代かそれよりも下。言うなれば少年、少女たちだ。
そのグルーブ感といい、テクニックといい、感性といい、もうここの子達でないとあり得ない演奏だった。そんな彼らが演奏していたもののひとつがこの曲。
希花さんがえらく気に入って録音していたが、それは曲の素晴らしさもさることながら、特にアコーディオン少年のセンスの良さとタイミングの素晴らしさにも、とてつもない才能と感性を感じたからだ。
僕はこの曲を以前聴いたことがある、とずっと思いながら聴いていた。
さて、そうなると僕の執念の資料集めが始まる。
まず、何の音で聴いたか。それは誰っぽい演奏だったか。いつごろ聴いたか、などの記憶を基に調べて調べて調べまくる。
そして辿りついたところがSharon ShannonのEach Little Thingだったのだ。作ったのはギタリストのStephen Cooney 別なタイトルをDiarmuid’s Marchという。
ところでフィークルで演奏していたのはアコーディオン奏者のColm Slattery多分今年20歳くらい。Co.Tipperary のNenagh出身だ。
そして、数日後、別なところでまたしても素晴らしいアコーディオン演奏が聞こえてきた。
見てみるとまだ子供だった。その場に居合わせたケイト・マクナマラの妹が「ジュンジ、彼知ってる?コルムの弟よ!」だそうだ。
Sunny Hills of Beara / Fox in the Thatch (Jig)
この2曲のセットはTony O’Connellの演奏から学んだ。2曲はほとんどのケース、セットで演奏されることが多いようだ。どちらもJohn Dwyerの作。Bearaは世界で最も美しい景色のひとつと言われる、ケリーやコークが見渡せるエリア、そう、トニーが犬の散歩で連れていってくれた壮大なエリアのこと。曲も美しいメロディを持っている。2曲目に関してはなかなか興味深い味わいのある曲。どこがどうの、ということはないが、ごく普通のトラディショナル・チューンのようにして始まり、Bパートでなんとも形容のし難い変わった、それでいてトラディショナル・フィーリングに満ち溢れたメロディを展開する。
そして、Arty McGlynnが実にツボを得たコードワークを聴かせてくれる。
他にもDwyer自身とEdel Foxのデュオで聴くことができる。TonyのアルバムではフィドルにBrid Harperが入っている。
Sally in the Garden (Barndance)
バ-ンダンスとなっているし、タイトルからも「あれ、アイリッシュ・チューンかな」という感じだが、明らかなるアメリカン・オールドタイム・チューンだ。元々、少し卑猥な内容を持ったバラッドだという話だがまだ聴いたことが無い。
インストとして初めて聴いたのはLaurel Primo & Anna Gustavssonという女性デュオのグォードバンジョーとニッケルハーパの演奏だったが、非常に幻想的な響きを持ったものでとても惹きつけられた。
それから参考のためにあらゆる録音物を聴いてみたが彼女たちの演奏に勝るものはなかなか見つからない。好みの問題だろうが。
また、ジグで演奏されているバージョンもあってなかなか面白い。珍しくA&Bパート、共に9小節の曲だ
Sandy Boys (American old timey)
この曲はそこそこ有名なものだが、始まりのメロディはまるでClinch Mt. Back Stepのようだ。よく聴くと2音目が違うことが分かるのだがほぼ一緒だ。
だが、なかなかいい。と言うのが最初に聴いたのがLukas Poolの素晴らしいプレイだった。
彼は4弦をオクターブ低いGに合わせていたのだが、12インチのヘッドを持ったバンジョーならではの音が響いている。勿論11インチのレギュラーのバンジョーでも出来ないことは無い。しっかりチューニングすれば問題は無い。しかし、それなりの低い音はやはり12インチならでは、かもしれない。
この曲には歌詞もあるがインストとして演奏する人も多い。
Tribute to Peadar O’Donnell (Air)
この曲を初めて聴いたのはいつ頃だったろうか。もうかなり前のことなのでよく覚えていないが、美しいメロディで常に頭の中にあったものだ、Davy Spillaneがすばらしいプレイを披露していたものだが、最近いろいろ調べていると、ジェリー・ダグラスがやっているものしか出てこない。僕にとってこれはムーヴィング・ハーツのサウンドそのものであったが。僕はギターで弾いている。それにしても素晴らしいメロディだ。
Peadar O’Donnellは1893年Co.Donegal生まれの政治活動家であり、小説家だ。
曲はやはりDonal Lannyかな。そのことについて書いてある記述が見当たらない。
Dear Irish Boy (Air)
何を書いたらいいのか分からないくらいに抒情的で、そしていい曲だ。
2018年のダブリン、ある夏の日に僕と希花とノエル・ヒルは一枚のCDに耳を傾けていた。それはWillie Clancyの古い録音で、彼はこういうものを何度も何度も子供の頃から聴いてきた、という話を聞きながら、そして美味しい紅茶を飲みながらの昼下がり。
話はやがてDear Irish Boyのことに及んでいき、僕らのアルバムでのパディの素晴らしい演奏のことも、そしてTony MacMahonのこれまた素晴らしい演奏のことにも触れ、じゃぁ最後にWille Clancyのものをもう一度聴いてみよう、ということになり、3人でじっと目を閉じて耳を傾けた。それは至高の瞬間だった。
そしてノエルが「ジュンジ、ギターでこれを弾け」と言ったことで僕も弾いてみることにした。決して難曲でも北極でもなく、ただひたすら奥の深い曲なのだ。
このような曲は生半可な気持ちでは弾けない難しさがある。
Darlin’Corey
今回はアイリッシュではないものを2曲。
この曲を初めて聴いたのは高校時代、ブラザース・フォアによってだ。彼らの演奏についてはすでにコラムの別なカテゴリーで述べているので特に何もないが、アメリカでも最も有名なバラッドのひとつと言えるだろう。
マイナーで唄う人、メジャーで唄う人、ブルーグラスでもブルースでも取り上げられる曲だ。
Cecil Sharpによって1918年の9月に採譜されたという。歌ったのはNCのClercy Deetonだと言われている。
こんなこと、インターネットがなければ分かるはずもない。勿論知らなくても唄えないことはないのだろうけど、こんなことを調べるのが好きだ。
Cuckoo Bird
これもまたずいぶん昔に聴いたものだ。もしかしたらPP&Mだろうか。そして大学時代、オールドタイムを演奏するようになって、やっぱりClarence AshleyやDoc Watsonなどのクローハンマーバンジョーによる、えも言われん世界にぞっこんになったものだ。
独特なサウンドだと言えるだろう。
In the Pines
今回は140に引き続き、アイリッシュ・チューンではない。ブルースからの選曲だ。とは言えどもビル・モンローもロレッタ・リンもカーターシスターズも唄っているし、Nirvanaも唄っている名曲中の名曲。またまた、とは言えども、歌詞が唄う人によって相当違う。レッド・ベリーのものからはマーダー・バラッドだと言うことが読み取れるが、カントリー系やブルーグラス系の歌詞からは放浪の唄、という感じがする。少なくとも1870年頃の唄だろうとされているが、こんな歌が何とFour Penniesというイギリスのグループに歌われて1964年のTop20になっているというから驚きだ。ビル・モンローはThe Longest Trainと呼ばれるバージョンで唄っているが、非常にミステリアスな内容であるとエリック・ワイズバーグが1994年にNew York Timesに寄稿している、という記述が残っている。
いろいろ調べてみると、世の中にこの歌が出たのは1926年のDoc Walshのものが初めらしい。彼はキャロライナ・ター・ヒールズのバンジョー弾きだ。
Black GirlまたはWhere Did You Sleep Last Night?というタイトルでも知られている。
Dark Hollow
またしてもアイリッシュ・チューンではない。れっきとしたブルーグラスソングだ。ただ単にすごく好きな歌として掲載してしまう。ブルーグラスの世界ではほとんど誰もが歌っているものだろう。特に好きなのはミュールスキナーによるものかな。ビル・キースの素晴らしいリックとクラレンス・ホワイトの“ザ・クラレンス”といえる素晴らしいギターソロ。作者はBill Browning 彼自身、1958年に録音している。 随分前、Nirvanaのライブをテレビで見ていたら、散々彼らのトレードマークであるグランジと呼ばれるロックをやった後、アンコールで「じゃぁ最後に俺の一番好きな曲を」とカート・コバーンが言ったと思ったら突然Dark Hollowを唄い出した。僕はのけぞってしまった記憶がある。だが、彼らのどの録音物をみてもこの曲は入っていない。
Pretty Girl Milking Her Cow (Waltz)
僕らはThomas’ Farewellとして録音しているが、このタイトルの方がよく知られているのかもしれない。過去にジュディ・ガーランドが1940年と1955年に録音している。非常に素晴らしい情感溢れるものだ。メロディの美しさは群を抜いている一作と言えるだろう。
この曲に関しては面白い話がある。
友人(アイルランド人)の一人が「僕は日本の文化にとても興味があるんだけど、ある日、日本のテレビ番組を見ていたら、とても日本らしいメロディの曲があった。それが凄く気に入っているんだけど何だろう」と言っていた。彼の記憶によるとそれは「Midnight Dinner」というタイトルだった、と言うではないか。まさに「深夜食堂」だと思った。そして、それは以前にもアイルランド人の別の友人から聞いた話だった。
斎藤常吉さんと言う人が「思ひで」というタイトルで唄っているものがそれだ。おもしろいことに「天国の階段」だ、と言う人もいる。そういえばちょっと似ているかな。
Thomas’ Farewellというタイトルがどこからきたものか分からないが、ひょっとして詩が
Thomas Mooreだと言うことなのでそれと関係があるのかな?
Killing the Blues
今回はまたまたアイリッシュでもなければオールドタイムでもブルーグラスでもない曲。
これは1977年のウッドストックマウンテンズというマッドエイカーズのアルバムの中に入っていたRoly Salleyのものだ。
なぜこんな曲を今更、という感じだが、ちょっと前にアリソン・クラウスが唄っていた。ロバート・プラントと一緒だったが。そして最近はA J Leeまで唄っていて、さすがにいい曲だけに今頃気がついたが、やたらと多くの人がカバーしている。
いろいろみていると、パディ・キーナンのアルバムでTommy O’Sullivanも唄っていた。そういえば僕は彼に「渋いうた唄ってるじゃん」と言ったことがあったけ。すっかり忘れていた。これもまた名演だ。
特にレパートリーに取り上げようというわけではないし、Irish Musicなんていうカテゴリーでもないが、好きな曲を想い出したので、ということで掲載してしまった。
Lough Key (Slip Jig)
Larry Redican’sとしても知られる名曲。僕はかなり前にミック・モロニー達の演奏で聴いた。KilkellyというアルバムでMaids of Selmaの後にやっていた。けっこう強烈な曲なのにシンプルなものだ。ところでこのアルバムタイトルになっているKilkellyだがCo.Mayoの小さな村の家族のストーリーを歌ったものだ。とても涙なくしては聴けないもので、大好きだったのでミック・モロニーと一緒に演奏した時にギターを弾かせてもらった。
ところで本題のLough Keyだが、Co.Roscommonにある「みんなで走ろう」みたいなイベントがあったり、釣りを楽しんだり、とても風光明媚な処のようだ。ま、アイルランドはいたるところそんな感じだが。キアラン君のバグナルスタウンもいいところだし。
The Tax Max Mazurkas (Mazurka)
不思議な曲だがAt the Racketの録音から学んだ。詳しいことはさっぱり分からないが、Seamus O’Donnellのサックスがなんともいい味を出している。勿論この曲に限らず、このグループのひとつの特徴となっているわけだが。一応マズルカとしてタイトルを付けられているがワルツとも言えるような曲だ。
Keeping the Cats Happy (Reel)
Brittny Haasの演奏から希花さんが見つけてきた、なんともカウントしにくいけったいな曲だ。作者はピアニスト、ギタリスト、フィドラーその他のMark Simos 僕は彼のギタープレイに早くから注目していたのでギタリストとしてのほうが馴染み深い。また、彼自身New Old -time Styleと名うってアルバムを出しているくらいなので、非常に良いセンスを持ったオールドタイムフィドラーだと言えるが、ギターに於けるジャズ的な要素をもったプレイはテキサススタイルやケイプブレットンから来ているのだろうか。因みに僕が希花さんと最初に録音したJenny’s Welcome to Charlieは彼のプレイを参考にしている。
Mountain Lark / Tom Doherty’s (Reel)
この2曲はMartin HayesとDennis Cahillがセットとして演奏していることで有名だ。先日もFeakleでMark Donnellanとこの曲を演奏したが、僕がDennisのものまねをすると、嬉しそうに彼もMartinのものまねで乗ってきた。Dennisのギタープレイもとても特徴的で、特にこの2曲目におけるコードワークはなかなか考え付かないものだ。そして、この曲はもともとスコットランドのDevil in the KitchenまたはHighland Flingと呼ばれる曲で、パイプやフィドルでゆっくり演奏されるものだ。Strathspeyとも言える。同じ曲であるかどうかは分からないが、MartinとDennisの演奏は実に素晴らしい。僕らも時々演奏するが、少しMartinの特徴が表れすぎるセットかもしれない。ともかく彼のプレイは一つの音で彼、と分かってしまう。B B Kingみたいなものだ。
Polly put the Kettle on (American)
これはLukas Poolのバンジョープレイから学んだいわゆるフィドルチューンだ。
彼自身Marcus Martinのバージョンだと言っているがTom CulbertsonやTommy Jarrell
のバージョンとは全く違う。これは同じタイトルを持った別な曲と言って良さそうだ。
因みにナターシャーセブンがマザーグースのアルバムで「やかんを持ってきて」と唄っているのがTom Culbertsonのバージョンに近い。僕らはこの両方のバージョンをやりたいが、今の処Marcus Martinのバージョンが気に入っている。マイナーのとても美しいメロディだ。余談の類だがJim Gibsonのピアノバージョンには度胆を抜かれた。