朝からいい天気。でもすごく寒い。アイルランドで寒さに慣れてしまった僕らは、11月でもコートなど着ていなかったが、さすがに寒くなってきたようだ。
この日、12月5日、栩木先生との“アイルランド音楽とモノ語り”の第2回目の会を主催した。
普段の僕らの単独コンサートとは一味も二味も違って、きちんとしたアイルランドの歴史や、文学の世界を体験できる…そう、僕らにとってもいいチャンスなのだ。
僕らが初めて観光というか、見学に向かったトリ二ティ・カレッジのオールド・ライブラリーに展示されている“ケルズの書”に関する見事なまでの詳しい説明。まるで、その時代に生きてきたかのような語りは流石だ。
そして、ブライアン・ボルーに関してのお話。いわゆる“ブライアン・ボルーのハープ”というものに関してのお話。
それはそれは興味深いお話をいっぱい聞くことができた。
また、この夏、僕らがブレンダン・ベグリーに言われるがままに連れていかれた、ホース岬での1大イベント。大統領まで出席したそのイベントについても、北アイルランド問題の源となる詳しいお話を聞くことが出来た。
1部の最後には、この夏、僕らがレギュラーで演奏した“セント・ニコラス・チャーチ”についてのお話。
伝説のミュージシャンたちとの出会いのことをお話すると、さすがに音楽にも精通しているNobi先生。嬉しそうに頷いてくれる。
僕らが彼のようないわゆる“アイルランド文学の崇高なる学者”と一緒に、こういう会を開けるというのは、まぎれもなく彼の幅広い音楽知識にもよるものだ。
来年公開される、ケン・ローチ監督の“ジミー、野を駆ける伝説”という映画についてのお話。映画のなかでベン・レノンの姿が確認できるそうだ。
僕らの、この夏の出会いの中にチャーリー・レノンやモーリス・レノンがいたことも偶然ではないのかもしれない。
2部では音楽を聴いていただく。
The Connaughtman’s Ramble/Pull the Knife and Stick it Again/Jig of Slurs
Jackie Tarr/ Golden Eagle
Sunday’s Well
May Morning Dew/Sheep in the Boat/Gallowglass/The Cuckoo
Indian ate Woodchuck
Dodarebachi/Abbey Reel
Through the Wood/Mamma’s Pet
これらを演奏して栩木先生の詩の朗読で終了。そしてアンコール。
Father O’Flynn/Cranking Out/Tommy’s Tarbukas/Croocked Road to Dublin
思えば今日の会は栩木先生のお話の前に、1曲演奏した曲のタイトルがDublin Reelであった。
そして最後の曲がCroocked Road to Dublinだった。僕らも計画していたわけではなかったが美しくまとまったかもしれない。
その後の栩木先生の詩の朗読がまた素晴らしかった。「夜道、気をつけてお帰りください」という言葉に繋げるところもさすがだった。
ところで、僕はここで栩木先生と書いたりNobi(ノビ)と書いたりしているが、僕らにとっては本当にとても手の届かないくらいの人なのでどうしても先生、と言ってしまうが、ご本人の希望で「ノビと呼んでください」と言われると、恐る恐る「ノビ」と呼んだりもする。そうすると嬉しそうにしてくれるが、ついついお話をきいているうちにまた「先生」と呼んでしまう。
「いや、どちらでもいいんですが“ノビ”と呼ばれるとアイルランド・モードになれるんだなぁ」と、にこにこする姿は思わず頭でもなでてみたくなる気さくな人なのだ。
アイリッシュ・ミュージックを目指す人たちにも、彼の知識を得ることをお勧めする。そして本当にトラッド・ミュージック、伝承音楽とはなにかということを知ってほしい。 改めてそんなことを考えさせられる会であった。
休憩時間も多くの方の質問に丁寧に答えていただいた栩木先生に感謝。
そして、年の瀬、お忙しいところ、足を運んでいただいたみなさん、ありがとうございました。