世屋高原 しおぎり荘 その2

さて、朝になった。きょうこそは少しだけでも降られるかな、と思ったが、外は陽が差している。

6時にスタッフの杉山さん(多分この字でいいと思う。椙の字かもしれないが)が宿泊場所まで迎えに来てくれる。

森の中にバンガローが沢山あって、こういうところが好きな人にはたまらないだろう。もちろんコンサートや食事をしたところも宿泊できるので、みんな飲み疲れたらすぐに眠ることもできる。

シャワーを浴びて、さぁ、朝6時半からの森の中コンサートだ。非常にリラックスしたムードでまず、バンジョーの音から響かせてみた。

ハープの音色に鳥たちも反応する。

まだ希花さんは8割くらい眠っているだろう。

僕や、椙谷さんのおかあさんくらいの年齢になると、もう2時間くらい前から起きているが。

40分ほど音楽を聴いてもらってから、朝ごはん。ガラス張りのひろーい空間で、景色を眺めながらの朝ごはん。何度めの極上気分だろうか。

朝ごはんのあとは、希花さんは眠りについたが、僕は秩父からやってきた高見さんや、椙谷さんのお母さんをはじめとする親戚一同の人達と山菜取りに出かけた。

僕は都会育ちなので、そういうものにはあまり詳しくない。というか、ほとんどなにも知らない。ぜんまいというのがくるくるしていることくらいしか知らない。

高見さんは詳しいらしく、歳の巧といえる椙谷さんのお母さんとともに、いろいろ解説してくれた。

おかげで、ふきがいっぱい取れた。

好きなだけ摘んで帰ってください、と言われたが他に荷物もあるし、そこそこにしておいたが、貴重な体験だった。

ここからは、それぞれのスケジュールで帰る人たちもいたが、やっと起きてきた希花を更にコーヒーで目覚めさせ、なんとなく練習がてら弾いているところに居残った人達も、コーヒー片手に集まって来る。

外は少しづつ雨粒が落ちてきて、霞がかかった世屋高原がまた違う美しいすがたを見せてくれている。

お昼御飯は“丹後すし”タンゴではない。ダンゴでもない。これまた絶品。今回は、椙谷さんの奥さんも急きょ厨房に入り、てんてこまいの忙しさだったので、ちゃんと挨拶も出来なかったが、彼女をはじめ、お料理を作ってくださった人達は、世屋高原の宝と言わざるを得ない。

コンサート参加費が10000円、ということだけで、しかも、かなり出かけるのには勇気がいる所、ということなども考えて、二の足をふんでしまう人もいるかもしれないが、これはそれ以上の価値がある。

あれだけの素晴らしい食材を使った素晴らしく美味しい料理と、飲み放題の数々、そして、あたたかいおもてなし、大自然の息吹を体に感じて、こんなに贅沢なことは生涯記憶に残るに違いない。

宿泊プランはお昼ご飯まで含めるとプラス5000円だが、朝ごはん、森の中の散策、お昼御飯など、これ以上のおもてなしはなかなかに存在しない。

とにかく美しいのだ。全てが。

椙谷さんは、気に入った音楽家たちと年に数回の音楽会をここで開催する。クラシックやジャズもここで聴ける。

ここは要チェックだ。

人生における何回かの極上のシーンのひとつに、是非、世屋高原しおぎり荘を加えて欲しい。

経営も維持もとても大変だと思うし、あまり有名になってやたらと沢山の人が集まってくれても、それはそれで困るだろうけど、僕らの思いとしては、もちろん音楽会にも来てほしいが、こんなに素晴らしいところ、そしてこんなに素晴らしい人達のことは、少しだけでもみなさんに伝えたい。

新幹線の窓をたたく雨の音を聴きながら、うとうとしてそんなことを思っていたら、品川に着いた。

もう雨は降っていなかった。

椙谷さん、杉山さん、厨房のお母さん達(すみません、全員のお名前を訊くの忘れていました)椙谷さんの奥さん、お母さん、親戚の人達、そしてここに集まってくれた全ての人達に感謝します。

高見さんも飛行機で伊丹まで来て、レンタカーですっ飛ばしてきてくれたらしいし、和歌山からも昔のお友達が来てくれました。そうそう去年に続き、名田庄村からも来てくれました。

もちろん京都からも。

でも、みなさん本当にいい時を過ごせたと確信しています。

僕たちは音楽しか提供できないけど、ここのお母さんたちはあんなに素晴らしいお料理でみんなを感動させてくれるし、椙谷さん、杉山さんの気くばりにも感動を覚えるし、その上に世屋高原の自然が語りかけてくれるのです。

また来年、逢えたら嬉しいです。

椙谷一族 撮影:高見さん

世屋高原 しおぎり荘 その1

これぞ極上の2日間。

天気予報は土、日ともにきれいな雨マークだったのが、前日にはすっかり消え、当日はきもちのいい晴れの天気となりました。

宮津の駅に迎えに来てくれた椙谷さんもその天気にはびっくり。

さっそく駅前の魚料理のお店に連れて行ってくれる。いつも混み合ったお店で、待つことなく入れることは珍しいという。

ハタハタとさんまの焼き魚定食が僕、椙谷さんがいわしの煮魚定食、希花がお刺身定食、さらにみんなで刺身の盛り合わせ。

お昼御飯としては、どえらい豪華だが、新幹線で駅弁など食べなくてよかった。実はこういうものを期待してお腹を空かせてきたのだ。

それに、晩ごはんはしおぎり荘の絶品料理がいただける。

キッチン・スタッフが、極自然に腕によりをかけた、たとえばこんにゃくひとつをとっても、芋からつくりあげるような手間をかけてくれるのである。

地元の食材を使った最上級の料理を、緑の世屋高原に包まれながら楽しむことができるのだ。おなかは空かせていった方がいい。

宮津から天の橋立を過ぎて、いよいよ世屋高原に入ると、どこかアイルランドを思わせる緑が広がって来る。

野生の藤がいたるところに咲き乱れている。今年は竹が黄色に色づいていて不思議だ、と椙谷さんが言う。

僕らには分からないが、確かに、鮮やかな緑の中に黄色く色づいた竹がなんとも異様だ。しかし絶景だ。そしてその中に紫色の藤が咲き乱れている。

春夏秋冬、どの季節に来ても極上の景色に包まれること間違いなしだ。

今日は、まず夕方4時半から、外で演奏。木々に囲まれて、鳥が囀る中での40分。外なのでバンジョーやコンサルティーナのような音の大きい楽器を演奏。もちろんハープはこのような景色の中では極上の味わいを醸し出す。

鳥が反応する。風が心地よい。天候に恵まれて本当に良かった。

撮影:高見さん

30分ほど休憩して、今度は室内での音楽会。

ステージのバックはガラス張りになっていて、まだ明るい世屋高原を一望できる。こんな幸せな時間を過ごせていいのだろうか、と思ってしまうくらいだ。

 

 

でもキッチンではそろそろ大変な時が始まろうとしている。もちろん、僕らが外でやっている最中にほとんど全ての用意はされていて、これからセッティングに入るのだ。

 

広いダイニングに極上の料理が並び、ワイン、ギネス、ノンアルコール飲料、ジュース、

デザートなどが所狭しと並べられ、食べ放題、飲み放題のひと時を過ごす。

一通りお腹が満足感を覚えたところで、さぁまた演奏。

ここからはみんなで一緒に唄える歌なども交え、アイリッシュ・チューンも演奏。なかでも椙谷さんとのデュエットで歌った「谷間の虹」には感動した。ハーモニーをつけても、つられることなしに歌う椙谷さん。

今風の中や花嫁、朝の雨、山と川などを含め、止まることのないアイリッシュ・チューンを演奏。みんなも料理をつまみながら、飲みながら、歌いながら、しゃべりながら、笑いながら、大忙し。

でも、これからお風呂に入り、明日の朝は6時半からまた屋外で音楽会がある。また晴れるといいな。

早く寝なくちゃ、と思いながらも、みんなとおしゃべりしていると楽しくてついつい遅くなってしまうが、11時頃にはキャビンで横になった。

闇に包まれた静かなキャビンでゆっくり眠ることができるのも、覚えていないが(眠っているので)極上のひと時だ。

続く

バードランド・カフェ ライブ

思い起こせば去年のおなじ母の日にも、ここ、バードランド・カフェにいた。別に母の日をバードランド・カフェで、と狙っているわけではないが、今回は旧友のアルマジロ君の娘さんが、アメリカから一時帰国している、というので、そろそろバードランドで、と考えていたぼくらの気持ちとが重なったわけだ。

オーナーの藤森さんも突然の申し入れにも関わらず、快くオーケーしてくれて、めでたくこの日を迎えることが出来た。

いつものように、しっかりセットリストを作っていくも、いろいろと気分で変わってしまうが、それもこういう場所ならでは、だろう。

こういうところでは、こちらから一方的に音楽を聴いてもらうよりも、すこし時間に余裕をもって、もっともっとみなさんとお話したりしたいものだ。

でもそれでだらけてしまう、というこわさもある。難しいところだ。

さて、久しぶりにAbove and Beyondから、Two Days to Goのセットで始めた。Above and Beyondはどこか日本のわらべ歌を彷彿とさせるメロディで、そのむかし、Calicoというグループで聴いてからずっと好きだった曲だ。98年のCelanova Squareというアルバムは素晴らしかった。

今回、僕はアルマジロ君の所有する1929年のRB-1を使わせてもらった。もう乾燥しつくしているのだろう。とても軽くて、音もいい。バンジョーというものは重いほど音もしっかりしているが、これだけ軽くてもしっかりした音がでるのは、やはりいい時期のギブソンならでは、かもしれない。

名器は日本中のあちこちに存在している。

そして、アルマジロの娘さんにも一曲The Water is Wideを歌ってもらった。普段から英語しか喋っていないはずなのに、日本語もきちんとこなす。お母さんがかなりしっかりした日本語を話すので、その影響だろうが、素晴らしいことだ。母の日に感謝。

お天気もよく、絶好のお出かけ日和に2時間ほどもお店にいてくれたみなさんに感謝します。

でも、この藤森さんのバードランド・カフェは飲み物も美味しいし、ケーキやパスタ、サンドウィッチも美味しいし、窓は大きくて明るいし、とてもくつろげる場所です。

また秋ごろ、一段とコーヒーの香りが深みを増す季節に、ここで皆さんと過ごせたら嬉しいです。

希花さんにはお勉強にも精を出してもらわなくてはいけないし、僕のほうもなんとかもう少し生き延びるために体力づくりに励まなくてはいけないし、みなさんもこれからやってくる暑い夏を元気に乗り切ってください。

藤森さん、そしてみなさん、ありがとうございました。

 

Mareka&Junji北海道ツァー2013

もう何年ぶりだろうか、この函館を訪れるのは。

70年代から最も好きな町だった函館から今回のツァーは始まった。しかし、この町に於いて感慨深いのは僕だけではない。日本各地を移り住んだ希花にとっては、最も長く住んだのがこの函館だ。

ある意味、故郷と言えるかもしれない。

午後4時。気温は10度ほど。東京を出てきた時、24度くらいあったのでかなりの気温差だ。

今日はRINKAの小松崎さんの紹介で、米田さんという方がセッティングしてくれた“g”というお店でのライブ。

小雨がパラついて寒々として、どこかアイルランドを思わせる。いや、それだけではない。人の数もそう感じさせるのかもしれない。

gに到着するとマスターと奥さんが気持ちよく迎えてくれた。生音でも、音響を使っても、どちらでも対応できるようにしておいてくれたので、いろいろ試した結果PAを使わせていただくことにした。

結果的にはマスターの言う通り使って良かったくらいに沢山の人が集まってくれた。

今回もバンジョーを借りてしまったが、鈴木一彦さんという人(本人は用事で来られなかったが、深浦さんという人が重いのに持ってきてくれた)の初期のスクラッグス・モデルで、しっかりしたいい音のバンジョーだった。とても助かりました。ありがとう。

音楽会もとても熱い気持ちになれて、打ち上げも楽しくツァーの初日にふさわしい一日となった。

みんなに別れを告げて外へ出ると、北国の冷たい風が吹いていた。

 

函館2日目は 朝市で海鮮丼を食べた後、希花想い出ツァーに僕と米田さんも参加。希花の住んだ家と、バイオリンの発表会で無謀にも小学1年生でありながら“ツィゴイネルワイゼン”を弾いたという想い出の公民館へ。

昨夜のライブにはなんと、その時の演奏を見た、という人が来てくれたのだ。

米田さんの計らいで、係の人も快くホールを開けてくれたので、20年ぶりにもなるだろうか、ステージに上がって写真を撮った。おそらく、希花のLetter to Peter Panというブログに掲載されるだろう。

米田さんにはここで別れを告げて、希花の通っていた幼稚園へ。カトリック教会の中にある白百合幼稚園だ。僕はナターシャー時代にここの教会を見学したことがある。もちろん希花が生まれるよりもずいぶん前のことだ。

僕もカトリック系の聖母幼稚園というところに通っていたので、それなりに幼少のころの思い出としてはダブっている部分があるかもしれない。

そして、さらに希花のバイオリンの先生のところへ。僕は終始小さくなっていた。なんかとてつもないエネルギーの人だったので…。しかし、この先生だったから1年生の希花に、無謀にも“ツィゴイネルワイゼン”を弾かせてくれたのだろう。ありあまる冒険心で、なんでもやってみなさいと言いながら基本を教えてくれるタイプの人だ。

先生に別れを告げてから、昨夜のライブに来てくれた柴田さんという方が経営している“カリフォルニア・ベイビー”というお店へ。

ずいぶん前からあるお店らしく希花のお母さんもよく知っていたらしい。そればかりでなく、函館の有名のお店のひとつらしい。そしてこれまた驚くことに、柴田さんもまた、ナターシャー・セブンはよく聴いていたということだ。

晩ごはんをご馳走します、というお言葉に二つ返事で乗っかってしまった。

連れていって頂いたお寿司屋さんは、クルクル回転するところではなく、柴田さんの同級生が握る函館でも最も美味しい店のひとつらしい。

いか、うに、あわびなど、クルクルまわるところでは一切食べないものから、絶品のまぐろや白身、やはりこれは芸術だ。見かけも味も芸術だ。爆発だ。

横に若い女の子がふたり入って来た。今風の、それでもどこか上品な子たちで、ガイドブックに美味しい店の紹介として載っていたので秋田からやってきたそうだ。

なんと、彼女達は秋田大学医学部の3年生だったので、先輩である希花の話しを興味深く聞いていた。僕らも彼女たちの解剖話しに寿司を食べながら耳を傾けた。

カウンターの中ではおやじさんが魚の解剖をしていた。てなわけないか。

とにもかくにもこんなに美味しい寿司に巡り合ったのも久しぶりだったので、本当にラッキーだった。

それに、次来た時にはカリフォルニア・ベイビーで演奏させていただくこともお願いしてしまった。

柴田さん、ありがとうございました。

 

5月2日。函館に別れを告げて、一路八雲へ。八雲では国柄さん夫妻が待ってくれている。もの静かなご主人と、いきのいいおかみさんとの絶妙なコンビだ。

そして、向かう先は今金(いまかね)。「いまでしょ!」と言われれば「いまかね?」と答えたくなってしまう。

場所は法林寺というお寺だが、ここの住職さんは僕の大学時代からの友人の阿知波君。女優の阿知波悟美さんのお兄さんにあたる人だ。

ここで住職をしながら、歌も歌い、地域の活動も行い、とても忙しくしている人だが、今回、無理を言ってお願いした。

着くなりいい香りがして、こだわりの阿知波君が「地元の野菜と、ルーからも手作りのカレーを作ったから打ち上げで食べましょう」という間もなく、「いや、食べたい。いつ食べるか。今でしょ!」と僕。「いまかね?」と阿知波君。

お腹も満たされて、いざコンサート。阿知波君やご家族、そして彼の友人たちが頑張ってくれたおかげで、いっぱいの人が集まってくれた。

2部で羽賀君(漢字がこれで合っているかな)というギタリストをよんで一緒に演奏したが、彼はいいタッチで絶妙なタイミングを持つフラット・ピッカー。

トニー・ライスをこよなく愛していることがよく分かるが、彼らしさも備わった、実に音楽を心得た演奏を聴かせてくれたことに正直おどろいた。

農業を一生懸命やりながらブルーグラスを追求するその姿は、それだけで充分美しいものだった。素晴らしい音楽をありがとう。

打ち上げもカレー以外にも美味しいものがいっぱいで、阿知波君のクローハンマー・バンジョーと楽しい歌も聴けて本当にいい一日だった。

5月3日、国柄さんの車で苫小牧に向かう。途中色々な処に寄った。

映画「幸せのパン」のモデルになったというパン屋さん、同じく洞爺湖畔の古民家カフェ。そうそう、湖畔に佇んでいた白鳥を撮影しようと近づいた国柄さんが、あわや噛みつかれそうになっていた。ドゥーランのロバを想い出した。

そして、苫小牧の会場である、岡林さん経営のお菓子屋さん“ポム・メリィ”へ。国柄さん夫妻とは一旦ここでお別れして、また札幌で会うことになった。

苫小牧には、とことん楽しい“トゥレップ楽団”がいる。一見もの静かで、こだわりがかなりありそうな、ホィッスルの滝さん、このバンドの楽しい部分を一手に引き受けているギターとボーカルの中原さん、そしてなかよしバンドの柱となっている高橋さん。

彼らは永遠の少年バンドとして歌い続けてくれるだろう。

ここでも、連休中というきびしい時にもかかわらず、多くの人を集めていただいた。バンジョー弾きの長谷川さんも、素晴らしいプレイを聴かせてくれた。

北の地の人達はブルーグラスにせよ、アイリッシュにせよ真面目だ。トゥレップ楽団は、その真面目さと底抜けに明るいエンタティメントが彼らの魅力かもしれない。

その夜も、ありとあらゆる種類のお酒を飲んではしゃぐ彼らは、まるで少年のようだった。(少年は飲まないが)

希花は12時半で沈没。僕は1時半だったが、彼らは4時近くまで盛り上がったらしい。

 

5月4日、高橋さんに案内されて、ウトナイ湖でバード・ウォッチング。そして江別の、前回もお世話になった、おそるべきオート・ハープ夫妻の渡辺さん宅へ。

今回は奥さんもインフルエンザにかかっていなく、前回よりもパワー・アップして旦那さんに指図していた。そして、それに嬉しそうに答えるテリーさん(通称)がなんとも微笑ましい。

夕食に高橋さんも交えて、車で50分ほどのところにポツンと、いや、そうはいえない、とんでもない広いスペースにある、建物自体もとんでもなく大きなレストランに連れて行ってもらった。

これっていったいどこなんだろう、と思うくらいの広大な土地で、知らなければ絶対に来ることがないだろう、そしてお客さんの入りようから見て、いかにも美味しそうな所だ。

地元の、というか、すぐそこで採れた米や野菜を使っているというところだろう。

僕たちは途中小樽でトーン・ポエムの堺さんを訪ねて、彼を待っている間に、えも言われん“地方のスナック”みたいなところで軽く食事をしてしまった。

スパゲティに味噌汁が付いていた。希花の辛子明太子スパゲティはやたらと多く、だんご状態、高橋さんのカルボナーラには真ん中に生卵が乗っていて、ハムとピーマンがなんとも和風だった。

僕のハムサンドには、なぜかパンの表側にべっとりとマーガリンが塗ってあった。ふとメニューに目をやると、沢山ある定食の最後に“ハムエッグ定職”というのがあった。

ここでこれを食べると仕事が見つかるのかもしれない。

とにかくそんなわけで、食事は少し遅い目の7時半からにしていただいたが、本当に美味しいお料理で、一体僕たちはお昼になにを食べたんだろう、と3人で小さくなったもんだ。

渡辺さんの家から50分ほどなので、みんな歳だし、食べたことを忘れて帰りにラーメンでも食べなきゃいいが…。

高橋さんとはここでお別れ。本当にありがとうございました。これからも中原さんと滝さんの面倒をよろしくお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5月5日、泣いても笑っても北海道最後の公演だ。札幌の“レストランのや”前回は食事だけに寄らせていただいたが、今回はここで演奏させていただく。

RINKAのおふたりの演奏は、北の大地のにおいがする。ある意味これこそが生活に根付いた音楽といえるかもしれない。

星くんも実にシンプルに操さんをサポートしているし、操さんからはとことんトラッドの心を感じ取ることができる。

今日は操さんのご主人でバンジョー奏者として、またハンマーダルシマー奏者としても高名な小松崎健さんも、ブズーキとコンサルティーナの田澤さん夫妻もまん前にいる。

のやのご主人の川端さんはむかしからのナターシャーファンだったらしい。それにぼくよりもナターシャーに関して詳しそうな鈴木さんという人もいる。

僕らは北海道4か所で、お客さんを見ながら多少セットを変えたが、基本的にこんな曲をやりました、というところを最後に書いておこう。

 

Banks of SuirからOut on the Oceanこの曲のGからAに転調するやり方はPaddy Keenanから教わった。Eel in the Sink/MacFadden’s Handsome Daughter/Limerick LassesのセットはJody’s Heavenと僕ら自身のアイデアを合体させたもの。Mountains of Pomeroyから初恋La Partidaからスカボロー・フェアー、そしてThunder Head/Waterman

休憩をいれて、Minor Break Down/Mason’s Apron(Devil’s Dream) Foggy Mountain BDなどを国柄さんから貸して頂いたバンジョーで。この想いからJim Donoghue’s/The Road to Cashel/Neckberry, She’s Sweetest when she’s Naked, ハード・タイムスから最後は八戸小唄Reel Beatrice/Abbey Reel/The Mouth of Tobique, そしてRINKAのおふたりと一緒にTeetotalor’s/Virginia/Garrett Barry’s, 最後に僕らで別れの唄とFor Ireland I won’t Tell Her Name,

 

RINKAのおふたり、星くん、操さん、ありがとうございました。末長く心からの音楽を北の地に響かせてください。

北海道でお世話になったすべての皆さんに感謝します。裏方として働いて頂いたみなさん。かれらはその土地その土地でがんばってやっている音楽家の友人たちです。本当に人と人との繋がりを大切にしている人達だということが、伝わってきます。

僕らはファッションとしてアイリッシュ・ミュージックを考えることが出来ない。今回本当は青森に寄るつもりだったのだが、どうもその辺で納得がいかないことがあり、北海道に絞った。でもそれは結果的にはとても良かった。

僕は常々思う。この音楽は浮ついた気持ちでやってほしくないのだ。テクニックでもないし遊びでもないし、ましてや受け狙いのイベント屋ではない。

どんなにかっこいいことを追求してもいいが、その裏にどれだけトラッドをしっかり守れるかがこの音楽を演奏する資格となるのだ。

ギター奏者、バウロン奏者などの伴奏者はリード楽器奏者と同じ努力を惜しまなくてはならない。

Paddy O’Brienは3000曲が頭の中に入っていると言った。僕はその3000曲にそれぞれ違う命を吹き込むことができる、と言った。

RINKAの演奏には命を感じる。トゥレップ楽団の演奏には喜びを感じる。阿知波君の唄声には悲哀を感じる。どれも人生そのものだ。

そして彼らと繋がっている人達。北の大地のみんな、それぞれに素晴らしい生き方を僕らにみせてくれた。本当にありがとう。

追加:札幌の朝、起きたら左目の白い部分が真っ赤だった。そんなに飲んでもいないので単なる疲れだったのだろう。痛くも痒くもない。

一応まだ眠っていた女医の卵に相談するも、眼科の実習はあと2週間先ということでネットで調べてくれた。元に戻るまでに少し時間がかかるが、心配はないそうだ。

今日で3日目になるが、少しよくなってきた。早く本職のお医者さんになってもらわなくちゃ。

Mareka&Junji 南青山Cay withかまやつひろし

超大物かまやつひろしをゲストに迎えることを考え始めたのは、ほぼ2ヶ月ほど前。無理かな、と思いつつもメールをしてみるとすぐにお返事をいただけた。

かまやつさんとの繋がりは、さかのぼること1985年、もう30年にもなろうかという頃から。

どうしてそういうことになったのかはよく覚えていないが、九州、沖縄地方を二人でツアーした。

諸々の出来事についてはほとんどステージ上で話したが、それはそれは貴重な体験であった。

そんなことを相方の希花に話してみると「かまやつひろしさんって誰ですか?お笑いのひと?」というリアクションであった。

これはいつか会わせてあげないといかん、と思っていたところだったのでちょうど良かったわけだ。

会場にかまやつさんが現れた。

僕には全然変わっていないように見えた。

いつもにこにこ人に接してくれるかまやつさん。

10年ほど前に京都でお会いしたのも久しぶりだったが、その時よりも若返っているようにも見えた。

ちょっとだけ打ち合わせをして「なんとかいけるでしょう。じゃ、僕、ちょっとブラブラしてきます」と言って出て行った。

ほんの少しの打ち合わせでも希花にとってはかなりのインパクトだったろう。

「かっこいいなぁ」と連発していた。

確かに、使うコードも歌い回しも、行動も、なんかうまく言えないけどかっこいい。

さて、今回はあくまでゲストということなので、まず僕らが30分ほどのセットを演奏する。

Banks of Suir/Out on the Ocean/Fox Hunterでスタート。お客さんのほうに目をやると、後ろの方にかまやつさんが見える。

聞くところによると「楽屋にいかれますか?」というスタッフの言葉に「いえ、ここで聴きたいです」と答えたそうだ。

そのまま”夜汽車”そして”Mountains of Pomeroy”この日は、もちろんいつも来てくれる人や、もう僕らの音楽を沢山聴いてくれている人たちも多いが、

全くはじめての人も多くいるだろうと思い、結構スタンダードな曲構成にしてみた。かまやつさんがまさにそういう人のひとりだ。

僕らのコーナーの最後はアンドリュー・マクナマラから習ったFlowers of Forestから、グレイ・ラーソンのThunder Head、そのままマイク・マゴードリックのWatermanを8分の6拍子から7拍子に。

終わって、セット変えの間かまやつさんが言う「すごいね。すごいねこの女子」

さて、いよいよ3人での演奏が始まる。

まず、「どうにかなるさ」フィドルとバンジョーを使ってのカントリータッチから独特なかまやつさんスタイルに持っていってもらう。

”コードオタク”の僕からみても、かっこいいコード進行だ。もうすでにかまやつ節、炸裂状態。

2曲目は”四葉のクローバー”を希花のハープにのせて、僕とかまやつさんのデュエットで。

それからは、僕のリクエストでかまやつワールドをたっぷり披露してもらう。

やっぱり、この人には引き込まれてしまう。素晴らしいエンタティナーだ。

3人での最後は”花嫁”。何故この曲を選んだのかというと、かまやつさんという人をいつも「かっこいいなぁ」と言っていた省悟の言葉が僕の中に残っていたからだ。

かまやつさん自身は歌ったこともないだろうけど、省悟が大好きだったかまやつさんに横にいてくれるだけでもいいな、と思って選曲した。

みんなにも歌ってもらった。

それから、かまやつさんを送り出し、She’s Sweetest when she’s Naked”を演奏。

その後、最後に”八戸小唄”からReel Beatrice/Irene Curran/P.Joe’s Pachelbel Specialへ

八戸小唄は、最近レパートリーに取り入れだしたのだが、これは1973年のナターシャー・セブン八戸ツアー当時から好きだった歌だ。

今年の始め頃”瓦礫の下から唄が聴こえる”という佐々木幹郎氏の本を読んで深く感動を覚え、この歌がよみがえってきたのだ。

詳しくは是非この本を手に取って読んでほしいが、この日は希花の朗読から歌に入らせてもらった。後半は希花のフィドル炸裂、という構成だ。

そしてアンコール。

3人で”フォギー・マウンテン・ブレークダウン”。「こんなスピードにはついて行けないよ」といいながら結構つぼにはまったところを押さえるのはさすがだ。

そして、「営業っぽくていやだなぁ」というかまやつさんに無理矢理「下駄をならして奴が来る~」と”我が良き友よ”を歌ってもらい、最後にもうひとつ。

コットン・フィールズで締めくくり。

僕は本当にいい時間を過ごさせてもらったけど、希花はどうだっただろう。かまやつさんはどうだっただろう。それに一番大切なこと。お客さんはどうだっただろう。

そんなことを思いながらステージを降りると、沢山の人がすごく面白かった、良かった、と、本心から言ってくれているようで、それなりにみなさんにも喜んでもらえたようだ。

かまやつさんも「久々にたのしませてもらったよ」って言ってくれたし、希花も「しまった。お父さんに見せる為のツーショット忘れた。でもまたいつか会えるよね」と言っていたし、

なんといっても、この奇妙な組み合わせもそんなに不釣り合いではなかったようで、またどこかでご一緒できたらな、と思いながら帰路についた。

快く引き受けてくれたかまやつさんに感謝です。

スタッフの皆さん、足を運んでいただいた皆さん、どうもありがとうございました。

撮影:谷口眞樹さん

Mareka&Junji  陽のあたる道ライブ

週の中ころから土曜日、日曜日は大荒れの天気になる、という予想だった。そして、土曜日はみなさんご存知のように、午後からどえらい風と雨だった。

このまま日曜日まで持ち越すのかと思いきや、朝起きてみると、のどから手が出た。これは、のどかな天気の時に使う僕と省悟の造語だ。

他にもある。「なにを飲む?」「そうだな。お江戸日本橋かな」といえば紅茶だ。

陽のあたる道は、長きにわたるナターシャー・ファンの、わんさんと、どんべーさんが、世界一のコーヒーを目指して始めた喫茶店。もう1年になるのかな。

溝口のバードランドと共に、ぼくらのフェバリッツのお店だ。

いくら小さいお店といえども、セットはきっちり考えていく。今日はどんなお客さんが来てくれるんだろう、ということを考えながら。

いつもいつも来てくれるひとたちも数人いるし、もう何度も聴きに来てくれる人達もいるし、初めての人は今回はほとんどいないだろう、なんてことを考えながら、前々日あたりからやりとりを開始する。

今やりたい曲、この曲はどこにいれるべきか、毎回のように聴きに来てくれる人達は、いったいなにを好き好んで来てくれるのだろう。

同じ曲をやってもいいんだろうか。全部変えてしまった方がいいんだろうか。必ずやらなくては満足してもらえない曲があるのだろうか、ということが頭の中をかけめぐっている。

そんな中で今回はEaster Snowから入った。少し時期は外れたが、そのむかしシェーマス・タンジーのフルート・プレイにしびれ、ポール・マグラッテンの同じくフルート・プレイに感動し、大好きな曲のひとつになった曲だ。ポールは“ビギニッシュ”のメンバー。ライブを初めて観た時、まだブレンダン・ベグリーがグループのアコーディオン奏者だという認識はなかった。

とにかくこの曲はもう20年以上前から大好きな曲だが、同じく希花も大好きな曲なのでこれに決定。

2011年10月16日の下北沢ラ・カーニャでもこの曲から出ている。

次はHumours of Tullyknockbrine/Maire Breathnack/Punch in the Darkのセット。最初の曲はかなり難しいと思われる。特にAパートの運指は。2曲目はソーラスもやっていて日本のプレイヤーたちにも人気のある曲。実際はAパートBパート逆だが、ソーラスがアレンジしたものが一般的に知られるようになった。3曲目はバンジョープレイヤー、ジェリー・オコーナーの作。ルナサの演奏でよく知られる。

そして、久しぶりに朝の雨。朝起きたら雨が降っていた、という語りで始めようと思っていたが、見事に予想は外された。のどから手がでたのだ。

次はMiller of Draughin/Bold Doherty/Cook and Henのリズムチェンジセット。極最近思いついたアレンジだ。

お次はパディ・キーナンから習ったLover’s Waltz。パディはトミー・オサリバンの結婚式で聴いた曲ですごく気に入ったからと言って、僕と希花に教えてくれた。

一部の最後は、ひさしぶりに“雨に消えた音楽会”前日からの状況が、あの嵐のアサップ・コンサートに似ていたので選んだ。北山さんの詩で僕の曲だ。

そしてそのままJim Donoghue’sのセットに。

2部の始まりはCoilsfield Houseを予定していたが、つい最近タンゴを聴きに行ってすごく感動した、という話しをしておられるかたがいらっしゃったので、タンゴとはちょっと違うけど、なんだか聴いたことがあるメロディだな、と感じてもらえるかと思い、急きょLa Partidaを演奏。後で、クラシックギターを長年やっているという女性から「あれは“君の影になりたい”ですね」という指摘がありましたが、その通りです。

有名な曲ですよね。ずっと前ケヴィン・バークが弾いていたのだが、もう忘れていた。そして去年ジョセフィン・マーシュが弾いたので、突然想い出し、僕らのレパートリーにも入れ、アリちゃんとのセッションでも大活躍した曲だ。

そして、やっぱりCoilsfield House。ケヴィン・クロフォードが“In Good Company”というアルバムで素晴らしいレコーディングを残している。また、Gaeroid O‘hAllmhurainがコンサルティーナで弾いているものも魅力的だ。この人とマーティン・ヘイズとのトリオでコンサートをしたことがあるが、すばらしいコンサルティーナ奏者で、またケルト民族の歴史などを教える大学教授だ。

次はスカボロー・フェア。僕ら独自のアレンジで、途中に“Man of the House”を挿入してみたが、このように合わせる曲を見つける作業もなかなか面白い。なんでもいいわけでもない。

そして、みんなでイムジン川を唄ってみた。特に今の時勢に合わせたわけではない。歴史的な背景の、そのさなかにはいなかった希花さんにとっては、この歌がなぜみんなに歌われてヒットまでしたのかが不思議で仕方ないらしい。

ただ、メロディの美しさは突出しているもののひとつだ、という考えは僕も同じなので、やってみよう、という話がまとまった。

次はComing of Spring/The Cucooから希花のリールセットへ。

そろそろコンサートも終盤に近付き、カーター・ファミリーとナターシャー・セブンで知られる海の嵐。そのままWater is Wideを楽器演奏で。

最後はHigh Reel/Moving Cloud/High Reel 最後の曲はぞくにWild Irish Manとも呼ばれている。

そして、アンコールはPockets of Goldギタリストのダヒ・スプロールのペンになる曲だが、元々はTune for Mairead and Anna Ni Mhaonaighという長いタイトルであったが、ReeltimeというグループがThe Pockets of Goldとして演奏していたものだ。

陽のあたる道にふさわしい美しい曲で締めくくれたと思う。

今回は、フィドルとギターという最小限の編成でのコンサートであったが、いろんな楽器を使ってのコンサートもあり、またこの編成でのコンサートもあり、でいいのではないかと思う反面、バンジョーは?ハープは?という方もおられる。

難しいところだが、また別なコンサートにもきていただけたらな、とも思うし、僕らもいちばん最初にやりはじめた基本的なかたちでもたまにはいいかな、と思うし、なんといってもこのかたちはとても難しい。

たったふたつの楽器で何曲も演奏することは、自分たち自身がそれぞれの楽曲に対して揺るがぬ思いを抱いていないと平坦なものになってしまう恐れがある。

今度はブルーグラスもやりましょう。希花さんにハープも弾いてもらいましょう。コンサルティーナも。そして、歌も、かな?

わんさん、どんべーさん有難うございました。

遠く京都から駆けつけていただいた川勝さん。大感謝です。そして、なんと、初めての方も半分ほどおられて、驚きました。わんさんと、どんべーさんのお人柄が確実に輪を広げているんだな、と思わざるを得ません。

世間の風当たりが強かった日(強風のことを僕と省悟はこのように言った)に集まっていただいた全ての方々に感謝いたします。

撮影:犬飼さんのFamily Member

Mareka Junji & Ari 岡崎、中津川、常滑 ツアー その2

またまた好天に恵まれて一路中津川へ。今日の音楽はレストラン「アニー・ホール」で。見るからに素敵な造りのレストランで料理も素晴らしく、中津川に行くなら是非寄りたいお店だ。

むかしからの知り合いである佐古さんが、奥さんと優秀なスタッフと共に運営していてライブも定期的におこなっている。

ここも僕と希花は2回目、アリさんは初めてということだ。中津川に着いたのが少し早すぎたのでお昼ご飯を食べようか、という話しになり、モスバーガーを見つけたが、多分佐古さんに電話したら何か食べさせてくれるよ、という僕の提案でそのままアニー・ホールに向かう。

ランチの時間、数組の女性達で賑わっていたが、僕らが到着するとすぐに佐古さんが出てきてくれてパーキングの場所を教えてくれた。

そしてスープ、サラダ、パスタなどをご馳走してくれる。どれをとっても超絶品だ。アリさんもポーク・ソテーに満足そうに微笑んでいる。

コーヒーをいただいてもまだ時間が充分あるので、一旦ホテルに向かうが、この町は何ともいえずいい景色を見せてくれる。自然と我夢土下座の歌った“小さな町”を口ずさんでしまいそうになる。

希花もこの中津川という町の景色が好きだと言っているので、ここで開業したら土着民や我夢土下座が“よいよい”になって現れるだろう。

そしてみんなで佐古さんのところで美味しいもの食べて、それでもなに食べたか忘れてすぐまた食べに行ったら佐古さんも作ったこと忘れて、また食べて音楽をやって…なんて中津川らしいなぁ。

コンサートにもみんな来てくれた。田口さん(通称たぐさん)の前でうたうのは緊張する。彼は、だれにも真似できない心のこもった歌を、極自然に唄える人だ。土着民のメンバーも奥さん達もどうしてみんなあんなにいい顔をしているんだろう。

ある意味、僕らがよく訪れるアイルランドの田舎町の人達と同じ雰囲気を漂わせている人達だ。

ここでも多くの人達が僕らの音楽に聴き入ってくれた。そして、初めて聴いたという人達からも感激の声を多くよせられたことはとても嬉しいことだ。

終了後も美味しい料理とワインで、時の経つのも忘れて仲間と語り合った。僕にとっては佐古さんも我夢土下座も土着民も、みんなみんな目標のような人達だ。

すてきな想い出をありがとう。音響の田口さん有難う。

 

今日は僕らにとっては初めての土地、アリさんにしてはもう10回目にもなろうか、というところらしいが、常滑だ。

焼きもの、特に急須が有名らしい。急須は僕としょうちゃんが“ばんじ”と呼んでいた。「ちょっと、ばんじ取ってくれるか」といったら急須を取ってくれ、という意味だ。

そんなことはどうでもいい。

会場に着いた僕らは、時間もあることだし、まずコーヒーをいただいてから、アリさんの道案内で焼きものを見学しに出かける。

とても興味深いつくりの細い入り組んだ道があちこちに広がっていて面白い。多くの工房に混じって古くからやっていそうな団子やさんがあったので、後から来るたけちゃんのために団子をおみやげに買うが、あまりにいいにおいだったので歩きながら、そしてアリさんのガイドを聞きながら少し食べた。

さて、リハーサルを始めようか、と思っているとたけちゃん登場。「いやー朝6時から仕事済ませて美味しいカレーパン買ってきました」

こりゃー太るぞ。

撮影 Ariさん

ここは岩橋さんという女性の方をはじめとする“ねこときんぎょの会”が沢山の人を集めてくれた。

もともとアリさんの紹介でいつか来れたらな、と思っていたので、今回アリさんと一緒に来れて勇気百倍だ。

それに音響は、また、てーさんがハトちゃんと安藤さんをスタッフとして、万全を整えてくれている。きょうはえびちりはやめておいたほうがいいかもしれない。

アリさんには今日は是非“Orange Blossom Special”をやってもらわなくては、ということで最後の曲は“Foggy Mountain Break Down/Orange Blossom Special”というあり得ないメドレーを演奏した。

そして、若い希花をもう一段印象付けるために“Jewish Reel”これはもう希花ならでは、である。

70年代から80年代、猛烈な勢いですっ飛ばしていたDe Dannan。その流れを彷彿とさせるフィドル・プレイは、さすがにフランキー・ギャビンをもうならせただけのことはある。僕もアリさんも歳がいっているので、ついて行くのがやっとだ。

たけちゃんも「いやーすごいですね。あのジュースリール」と訳の分からないことを言ってニコニコしながら「じゃ、明日帰る途中で美味しいそばご馳走しますから。いやーそれにしてもジュースリール、良かった。フィドル始めよう」と言って帰って行った。

みんなで打ち上げ。素晴らしい作りの和風ダイニングというのかな。絶対に美味しいだろうと思える店で、高見さん、奈良の谷口さんも交えての夕食。

てーさんも大人しくしていたので料理には満足したのだろう。僕らも大満足で最後にお茶漬けまで食べてしまった。

そして今日はみんなで岩橋家に泊めてもらった。それはそれは素晴らしい家でついついいろんなところを覗いてしまって、あっ、こんなところに洗濯ものが、なんて…。洗濯物ですら上品でオブジェにでもなりそうな素晴らしい家で、疲れていたはずなのに2時くらいまでお話がはずんでしまった。

岩橋さん、すごく眠たかっただろうに。

朝は美味しいコーヒーといちごとヨーグルトをご馳走になり、しばしまた岩橋さんと歓談して、一路たけちゃんの待つ豊川へ。

岩橋さん、そして“猫と金魚の会”のみなさん、ありがとうございました。

今回もたくさんのありがとうがあって、ほんとうにこうして生かされていることに感謝です。

たけちゃんのご馳走してくれるうどんを食べながら、この3日間の想い出を大切にしなくては、という思いにしばし胸がいっぱいになりました。

みなさん、そしてアリさん、本当にありがとう。

 

Mareka Junji & Ari 岡崎、中津川、常滑 ツアー その1

天気は上々。桜も至るところで満開。申し分ないコンディションに恵まれて幸先のいいスタート、と思いきや、やっぱり東京というところは車が多過ぎる。

「これくらいは普通やで」とクールな顔でフォードを飛ばすアリさんに全てお任せして一路岡崎へ向かうが、途中“美合サービスエリア(以下SA)”でたけちゃんが待っているはずだ。

アリさんとたけちゃんはこうして会うのは初めてなのだ。一応事前にこういう人で云々、という情報は伝えておいた。

双方とも胸を張って誰にでも紹介出来る人だ。すぐにうちとけるに違いない。かくして、SAに着くと、さすがにたけちゃん、すぐ分かる処にちょこんと座って待っていた。「いやー、いらっしゃい。お腹すいた?アリさんもお腹すいたでしょう。おいしいフランクフルト食べましょう」

聞くところによると、豊川のたけちゃんの家の近くの美味しいフランクフルト屋さんがここに店を出していて、東名でもここでしか食べることができないらしい。

「アリさん、大きいの食べるでしょ?ま、まれかちゃんは?大きいのにしなさいよ。食べなきゃだめよ。城田さんは大きいのだよね」

取りあえず、こういうときはたけちゃんに任せておけばいい。みんなで座ってフランクフルトにかぶりつく。

いつもこういう時に思うのだ。イサトさんや宮崎君だったらしっかり写真撮って、すぐにアップするのになぁ。どうも食べる方に先に神経がいってしまう。

ともあれ、さすがにたけちゃんは美味しいものをよく知っている。そして日本全国の道に関しても知識が豊富だ。

なので、僕らを宿泊先まで先導してくれる。到着したホテルのすぐ横の川べりには満開の桜が咲き乱れていた。

少しだけ態勢を整えて、また、たけちゃんが会場まで連れて行ってくれる。今回は彼のギブソン・バンジョー(本物です)を借りるのだ。

20年代のTB-1のボディを使い、60年代にスチュワート・マクドナルド社が金属部分とギブソン フライング・イーグルの5弦ネックをつけた、いわゆるコンバージョンものだ。

幾重もの時代を刻んできたような、激しくも華麗な音色は、いかにもオールド・ギブソンらしい。

会場に着くと、深谷君をはじめ、てーさんとハトちゃん、それにお手伝いの数人のかたがお出迎えしてくれた。

高見さんの“定峰まんじゅー”も山のようにお出迎えしてくれた。

会場になっている酒蔵は、僕らはこれで3回目。アリさんは初めてだ。リハーサルも楽しく終えて、たけちゃん、ギブソンの音色に満足したのか「お腹すいたでしょう。なんか食べましょう」軽く近くのコンビニで焼き鳥やおにぎりを買ってブラブラしていると、アリさん「しまった。ホテルにCD置いてきた。まぁ、ええか」すかさずたけちゃん「まだ充分時間ありますよ。取りにいきましょう」

即行動のたけちゃんは、やっぱりどんなときでもたのもしい。

コンサートは、まず前座として、さわやかな声でオリジナル・ソングを唄う杉浦君。彼には、是非歌い続けて自分なりのサウンドを創っていって欲しい。

僕らはまず、InisheerからOut on the Ocean、“ 夜汽車”でハーモニカが汽笛を鳴らし、“星めぐりの歌”でハープが幻想的な世界を創り出し、そのまま“Morning Star”そのあと、ハープ・ソロからみんなで“花嫁”を唄い“八戸小唄”からReel Beatrice/Abbey Reelでフィドルがさく裂、アリさんのバウロンも軽快に飛ばす。そして、オープン・ハウスのナンバー“Ocarina Tatoo”で一部を締めくくった。

2部ではまず僕が“Vincent”で入り、希花を呼んで官能的な“She’s Sweetest When She’s Naked”

アリさんを呼んで、彼の素晴らしいハスキーボイスで“港”そして、フィドルとバンジョーを加えて“Goodnight Irene”をみんなで歌い、アリさんのハーモニカで“ミケランジェロ”今度は希花のコンサルティーナをフィーチャーしての“Tour De Taille”そのまま“ハード・タイムス”そして“La partida”最後に言わずと知れたご機嫌な“Foggy Mountain Break Down”

アンコールは静かに“Si Bheag Si Mhor”てーさんの創り出す音がいつも素晴らしく僕らをサポートしてくれる。

打ち上げも無事終わり、と言いたいが、てーさんの頼んだ“えびちり”はとても食べられるシロモノではなかったようだ。

一応コンプレインはしたが、横にいたハトちゃん曰く「ずいぶん大人しくなったなぁ」だって。

みなさんお疲れ様でした。

Mareka Junji & Ari in 大森 風に吹かれて

さて、今回は“アリちゃん”とのトリオ。これから始まるツアーに向けて、力いっぱいの演奏を聴いていただけたら、という気持ちで。

ぼくらはこの後、愛知県で3か所まわってくるのでそれから詳しいレポートをすることにしましょう。

“アリちゃん”のことを全然知らなかった希花も、一緒に音を出してみた瞬間からとても気に入って「アリちゃん、アリちゃん」と盛んに言っています。

次々に色々な人を紹介できて「イサトさん」「有山さん」「徹三さん」なんて、今までに関わることがなかった人達とも一緒に演奏できたり、きっとそのうち面白いことができるミュージシャンになるでしょう。

いやいや、それよりも先にいいお医者さんになってもらわなくては。

“風に吹かれて”のマスターである金谷さん、お世話になりました。またよろしくお願いします。

タコライス絶品でした。お料理のおにいさん、素晴らしかったです。

たまねぎもおいしかったです。 By まれか

Mareka & Junji in 三島

今回の三島の会を主催してくれたのが、去年、下田のスパイス・ドッグで僕らとジョン・ヒックスの会を開いてくれた有馬君。

彼は古い友人というか、古くからの仕事仲間でもありました。整体師としての経験も長く、時々揉んでもらうのですが、それはそれは気持ちいいのです。

それはともかく、頑張って沢山の人を集めてくれました。サウンドも前回と同じ桜井君。とてもいいギター職人であり、気持ちのいい好青年で、いい音を作ってくれます。

ステージのバックに吊ってあった看板は、“いくさん”が仕事の合間をぬって作ってくれたもので、素晴らしいものだったのですが、本人は「いやいや、もっとちゃんと作れたはずなんだけど」と盛んに謙遜していました。でも僕も希花もとても気に入っていましたよ。

三島でのコンサートは初めてなので、やっぱり見るのも聴くのも初めての人が多いだろうな、と思いきや、いちばん前の席には秩父の高見さんや、奈良の谷口さんのにこやかなお顔がみえて安心した。

随分お久しぶりのお顔も見えたし、もちろんそれでも初めての人が圧倒的に多いようだった。

しかし、僕らの演奏するエアーなどはアイリッシュという音楽を知らない人達にも充分喜んでもらえる自信がある。

それと、とことん力強いトラッド・アイリッシュがあって、誰でも知っているフォーク・ソングとブルーグラス。

希花もフィドルにハープにコンサルティーナに、大活躍してくれる。初めての人も、もうずいぶん長いこと僕の音楽を支持してきてくれている人も、今のデュオのかたちは気に入ってくれていると思う。

なんといっても僕自身が、今、一番人々に聴いてほしいかたちで演奏できるのだから、こんなに幸せなことはない。

そんな気持ちを汲んで、アルマジロ君(有馬次郎君)がコンサートを主催してくれるのだから、僕らもその心意気にこたえなくてはいけない。

三島ではまた近いうちにできるかもしれない。旧友、アルマジロ君をサポートしてくれるみなさんに僕からもお礼を言います。本当にありがとう。

コンサートが終わってから、少しだけアイリッシュ・パブ「ギグル」に寄らせていただきました。

マスターの村松さん。コンサートにも来ていただいて、そしてビールもご馳走して頂いて、素晴らしいバンジョー・プレイも聴かせて頂きました。有難うございました。

これからもトラッド・アイリッシュを三島に広めていってください。

アルマジロ、有難う。

撮影 谷口 まさきさん