7月18日(金)小雨のち曇りのち晴れ
朝8時、ブレンダンと共に一路、北アイルランドを目指す。今年2回目という新しいフェスティバル、SOMA Festivalに出演依頼が舞い込んだのが約2ヶ月前。
ブレンダンと共にステージ、後は並みいるミュージシャンと共にセッション・ホストの依頼だ。
比較的スムーズに12時半頃、町に着いた。
あたり一面緑に囲まれた小さな町だ。ここにくるまでにユニオン・ジャックをいたるところで見ている。
そうだ、ここはユナイテッド・キングダムなんだ。
ハイウエーをおりてすぐに両替もしたし…でも変な感じだ。よその国なのだ。
使い慣れないお金で少しだけ腹ごしらえをしてみるが、よくこんなものをレストランと名のつくところで出すなぁ、と感心してしまう。それどころか、老若男女、結構入っているから驚きだ。
きっと、すしやすき焼きはこの人達にとって美味しくないものになるのだろう。
主催者のひとり、Tionaとすこしだけ打ち合わせをするが、そのラフさ加減にも驚き。
スケジュールもその場で「えーっと」なんて言いながら手書きで書いてくれる。
今日はどうやら8時半まで、宿泊先でゆっくりしていればいいらしい。さっきの口直しにどこかチャイニーズでも食べられるところはないだろうか、と少しの期待をよせて町のガイド・ブックを読んでいると、ありました。ここにも。こんなところにも、というと失礼かもしれないが、チャイニーズ・レストランが2軒も。
そのうちの1軒Ocean Palace Chineseというところで、先ず、こわいのでメニューを見る。
選んだのはチャーハン・シンガポール・スタイル。5ポンドちょっとくらい。どの辺がシンガポールなのか分からないが、カレー味のチャーハンだった。そしてまぁまぁだったので、ほぼ満足。
毎日毎日遅く、今朝も早かったし、今夜も11時半までは決められているし、それで終わりそうにもないので少し昼寝しておく。
途中Dundalkという町を通り過ぎた時Gerry “Fiddle”O’Connorにメール。彼は確かこの町の出身だったような記憶がある。その返事が寝ている間に来ていた。今回は会えないかもしれないが、またどこかで会えるだろう。
9時半、セッションが始まった。ブレンダン、希花、僕を中心に集まったメンバーはフルートが3人ほどいた。中でも「てーさん」に似た顔のおじさんは上手かった。フィドラーも上手いな、と思うひとがいたが、しばらくして、驚くことに彼はDervishのメンバーだったShaneだ、ということが発覚。もう18年くらい前に何度か会っているのだ。
時間が進むにつれて、多くのミュージシャンが現れた。僕らは疲れていたので一応11時半まで役目を果たし、それでも12時半ころに宿泊先に戻った。
結局3時頃までセッションの音が聞こえていた。
7月19日(土)一面霧、霧、霧
南ではあまり見かけなかった霧が町をすっぽり覆っている。
目一杯いろいろな種類のシリアルやフルーツが用意された朝食は、どこか他のフェスティバルとは違う。どうやらこのイベントの音楽担当の人達は健康志向らしい。
それはとても助かることだ。朝からソーセージや分厚いベーコンはきつい。
僕らはBBC北アイルランド支局のラジオ出演のため、公園に出かけた。
目の前に広がるとてつもなくでかい自然公園(Castlewellan Forest Park)。そのゲートをくぐると、大広場にいるわいるわ羊の大群。
それぞれ身をよせあってケージの中でメーメー言っている。ここは羊の品評会場も兼ねているらしい。
様々な種類の羊達がそれぞれ沢山のケージに入れられている。数えはしなかったが、300匹はいるだろう。
足を数えて4で割る、というのが早い数え方だ、という小話があったが、これ全部数えていたら眠れないまま次の日までかかりそう。
僕らが特設会場に着いたら、John McSherryが演奏していた。それぞれに1曲ずつ。間にいろいろな出演者がいてインタビューがあって。さすがにラジオ局ともなるとアイルランド人でも時間は気にする。大きな時計を持ったスタッフが忙しくしている。
しばし羊を見学して宿に戻り、今度はランチだ。僕らはKevin Keegan / Ukepick Waltzを演奏した。
またまた素晴らしい料理に驚き。ベジタリアンのディッシュまで用意されている。
これは主催者の一人、Tionaの計らいだろう。彼女のご主人が何人かのスタッフと共に料理を作っている。
料理は決して本職ではないそうだが、アイルランドで入ったどのレストランよりも美味しい。
食事の楽しみなフェスティバルなんて、今まで経験したことはない。
それと、驚いたことにJohn McSherryはTionaのブラザーなのだ。
ニーブ・パーソンズやシボーン・ピープルスなどと共に食事を済ませ、この日の一大イベント、教会でのコンサートに出かけた。
3人で1時間20分ほど。素晴らしく大きな教会で、素晴らしいサウンド・スタッフ。弾いているこっちまでうっとり。
ブレンダンの素晴らしい歌声が人々を魅了する。この人は絶対に日本に連れて行きたい人だ。力強いアコーディオン・プレイと繊細な歌。そして歴史を語る。真のアイリッシュ・ミュージックとはこういうものなのだ。
そして、夜のセッションでは、本当にトラッドをきっちり勉強してきた若者2人(パイプとフィドル)と僕と希花でホストを務めた。
テクニックも知識も素晴らしい若者達だった。
7月20日(日)くもり
来る前に北アイルランドの天気を調べたら3日間雨、と出た。しかし一度も降られなかった。
今こそ声を大にして…いや止めておこう。ここはアイルランドだ。いつ何時その神話は崩れるかわからない。
今日、昼、夜のセッション・ホストを務めれば無事終われる。
バウロン奏者John Joeの、シスターが勢い良く…喋りまくる。ティン・ホイスルもかなりの腕前だが、話も止まらない。
かくして、3日間、絶景に囲まれ、親切な人達と、良いミュージシャンと、素晴らしい料理とに明け暮れた。
僕らをミュージック・パートナーとして選んでくれたブレンダン・ベグリーに感謝だ。
今週末にはまた一緒にWexfordとDublinに向かう。
それまでしばらくお休みすることにしよう。