アイリッシュミュージックに関わって30年。アメリカで、アイルランドで演奏してきたが、どこでも素晴らしい出来栄えのブズーキを見てきた。
最初はやはり、本場のグリークブズーキをアレック・フィンに見せてもらった。
また、様々な人にそれとは違う、いわゆるアイリッシュ・ブズーキも見せてもらったが、その多くはステファン・ソーベルかジョー・フォーリーかパディ・クリアーのものだった。
そしてそのどれもが素晴らしく、余裕があればひとつ欲しいな、と思っていたものだ。
しかし、この音楽を始めた頃、様々な演奏を参考にして自分のギタースタイルに、ブズーキの感触のする音を組み立ててみようと考えた。
それによってブズーキのバックアップからギターのバックアップに移行していくようなスタイルを作り上げてきた。
それでもやはりブズーキの音色は魅力的なものだった。
そしていくつかの、例えばトリニティ・カレッジのブズーキなども持っていたが、そう満足のいくものではなかった。
そんなある時、カリフォルニア州のアルケイタという町に良い楽器を作っている奴がいて、彼と相談してオクターブマンドリンを作ってもらった。
ブズーキにする?オクターブマンドリンにする?と訊かれたのでその時はオクターブマンドリンにしたが、今となってはブズーキにすれば良かった、と思っている。
しかし、その出来は素晴らしいものだ。因みにフィル・クランプという人物。
さて、本題に入るが、つい最近、櫻井航くんが素晴らしいブズーキ第1号を製作した。
これは間違いなく日本に於ける初めての本格的ブズーキだろう。
彼自身、試行錯誤して造り慣れているギターの製作方法を取り入れているが、そこから出て来る音は低音、高音共に紛れもなく超1級のブズーキだ。
若かりしときイギリスに住んで楽器作りを学んでいた彼は、長年ブズーキを作ることを考えていたようだ。
そして出来たのが今回の第1号。
興味のある人は南阿佐ヶ谷のLast Guitarにあるので、そこに行って小山さんと云う人を訪ねてみて欲しい。
きっとそのサウンドにノックアウトされること間違いなしだ。
普通こういうものは少なからず誇張して書くものだが、この楽器に関しては決して大げさではない。いち弾は百聞に如かず、だ。
ここに彼の送ってきたディテールを載せておきます。
★ 以下、櫻井航君からの伝言。
材料は表板がシトカスプルース、サイドバックはインディアンローズウッドです。
構造はギターと同じで予想がしやすいのでピンブリッジ、Xブレーシング仕様にしました。
G弦を響かせるためにボディは厚めにしてあります。
デザインはいつもの僕のギターと共通しているコンパスをモチーフにしたロゼッタ、
それにケルティック・ノットのインレイ、サイドのパーフリング(縁飾り)はアイルランドの国旗の色になっています。