昨夜、小さなパブでユジーンと彼の奥さんに会った。
奥さんはれっきとした日本人だが、もう日本よりも海外暮らしの方が長い。
6~7年前、いつもいつも1人だった彼が「日本人のガールフレンドができた」と言っていたが、どうやらそのすぐ後に結婚したらしい。
その時の写真が傑作だ。
ゴールウェイの街を沢山の人に囲まれて練り歩く2人。
奥さんはフランス暮らしが長いらしく、今でもフランスに仕事でしょっちゅう出かけるらしい。
そうするとユジーンは1人でパブの飲み歩き。多くの場合はチコリの前で過ごす。
昨夜は奥さんが面白いことを言っていた。
寺尾聡のファンらしく「嬉しい。寺尾聡世代の人とお話しできる」もちろん彼女はそれ、ルビーの指環を聴いて育った世代、ということだ。
そこで思い出したのが「道連れは南風」のレコーディング。
当時、ルビーの指輪でブレイクした編曲家の井上鑑を迎えたレコーディングは鬼気迫るもので、あっという間に終わったものだった。
渡された楽譜はほとんど、よく政府が出してくる黒塗り状態。それくらいに音の嵐。
僕と省ちゃんとで「これ、どないなっとんのや?」と眺めていると、彼が「アコースティック・ギターは今まで通りやってください」と言う。
さて、レコーディングが始まると、独特な井上鑑の世界。ギタリストの今剛がご機嫌なリフを弾く。ドラムはずっとポン太だと思っていたが、どうやら林立夫だったらしい。パーカッションに斉藤ノブがいた、と記憶している。彼とは京都時代からなぜかよく知った仲だった。
とにかく、あっと言う間に終わったレコーディングだった。みんなが滞在した時間はセッテイング含めてせいぜい30分程度だったかと思うが。
当時の凄腕たちの恐ろしいレコーディング風景を目の当たりにした感じだ。
ところでユジーンはもうすでに出来上がっていて、同じ話をずっとしていた。約40分くらい。
例によって「一杯やるか」と言ってちゃっかり自分の分も。横から奥さんが「あんた、まだやるか!」と言いながら自分もちゃっかり一杯。
そんな風にして流石にあまり同じ話を繰り返すユジーンに「あんた、そろそろ帰るよ」
すると、残っていたビールを豪快にあおったユジーンは観念したらしく、奥さんに抱えられてフラフラ出て行った。
僕らもその後すぐ出たが、帰る方向が同じなので、少し後ろの方から気がつかれないように歩いていたら、通りの先にパブがある。
驚くことにそこへフラフラ入って行くではないか。
面白いので僕らも入ってみると、奥さんがビールを注文している「あんたがた、まだやるか!」と言うと、振り向いた奥さんが「いや、ユジーンがおしっこ我慢できなくて」と言う。
パブはちょっと大人が集まる所、と言う感じで空いていて静かだったが、中にはユジーンの知り合いが5~6人で飲んでいる。
トイレから戻ってきたユジーンが僕らを見つけると「おい、一杯どうだ」
いやいや、僕らはもう無理。
奥さん、あと1週間ほどで日本に行くので、留守の間ユジーンは「ホームアローンだ」と寂しそうに(嬉しそうに?)言っている。
どこまでも微笑ましい夫婦だ。