もうご存知のように先日、アルバム「今風の中」を作った。
このアルバムでは初代(と言える)ナターシャー・セブンのメンバーであったマンドリン奏者金海たかひろと、ひと世代下のメンバーだった進藤さとひこに参加してもらった。
参加してもらったというよりも大活躍してもらったわけだが。
60年代も終わりころ、竜谷大に通っていた金海君に「君はマンドリン」と言って無理やりマンドリンをやらせたのは僕だったらしい。
本人曰く。バンジョーがやりたかったそうだ。
もともと器用だったのでバンジョーもギターも弾くが、メインはやはりマンドリン。マンドリンに於いては紛れもなくジョン・ダフィーの流れを汲んでいる。
アルバムの中でも「Night Walk」でその片鱗を余すところなく聴くことが出来る。
考えてみれば、バンジョーのような重い楽器はこの歳になると相当辛い。その点マンドリンは良い。
よくステージでフラットマンドリンの説明をするとき、高石さんが「普通、マンドリンというのはお腹が膨らんでいますが、その部分は彼のお腹の中に入っています」と言っていた。
彼は今よりも体重があったからだ。
そういえばこんな話もある。
彼に変わって坂庭君が入った時、必然的にマンドリンを弾かなくてはならなくなったのだ。そんな坂庭君「こんな女々しい楽器はいやや」と最初は言っていた。
しかし、サム・ブッシュやデビッド・グリスマンの登場により、マンドリンという楽器の可能性は大きく変わっていった。
金海君もナッシュビルで素晴らしいマンドリン(1964年製)を手に入れている。
今回はそれを使っているが、彼はまたレコーディング・エンジニアとしての大きな功績も残してくれた。
今回、スムーズに事が運んだのも彼のおかげだ。
ボーカルものは難しい。それにものがものだけに著作権のことも考えなくてはいけないし。その辺も長く音楽業界に携わっている金海君にいろいろ相談した。
そして、大体を作り終えて進藤君には後からベース、ドブロ、コーラスを重ねてもらった。
静岡で3人が揃う、というのも不思議な話だ。
ちょうど進ちゃんの誕生日だったので、豊川から武ちゃんがケーキを持ってきてくれた。
そんな進ちゃんにも大活躍してもらった。
進ちゃんは、僕と省悟にとっては弟分みたいなもの。中学生か高校生の頃から良く知っていてさんざんいじらせてもらったものだ。
今では「我夢土下座」のメンバーとしても大活躍している。今回はバンジョーを弾いてもらわなかったし、リード・ボーカルも無かったがドブロとベースにおいて「流石」というプレイを聴かせてもらった。
しばし会わなかったうちに著しく成長したものだ。
このメンバーによる第2弾はまだ考えていない。しかし、これから先、今年に限り本当に少しだけコンサートを考えている。
現実問題としてみんなが揃うのはとても難しいし、そんなにやるものでもない、とも考える。
なので、またどこかで皆さんとお会いしましょう、としか言えない。
でも、気の合う者同士、また、長年様々な形で音楽に携わってきた者同士、みんなそれぞれに歳も重ねてそれなりにいい演奏(渋い演奏?)を聴いてもらえるだろう。
たまには明日の活力のために懐かしさに浸るのもいいし。
また、CDには3世代ほど若い内藤がハープ、フィドル、コンサーティナで参加しているのでコンサートではいくつかの楽曲に付き合ってもらうことにしている。
そうして懐かしさだけではない「今」を出したいと思っている。
生きているうちは誰でもが「現在進行形」なので。