2014年 アイルランドの旅〜ブレンダン・ベグリーとの再会〜

7月9日(水)晴

今日は暑くなるようなことを言っていたが、少し暖かいかな、と思う程度だ。昼頃、ブレンダンから電話が入った。

今日はセント・ニコラス・チャーチで彼とのコンサートがある。そしてその前にパブでの演奏もある。

それはセットを決めたり、練習するにはちょうどいいことだ。

1年ぶりに会う彼は、真っ白いヒゲをたくわえ、髪の毛も真っ白いのが少し生えていて、まるで散髪したサンタクロースみたいだった。

力強いアコーディオン・プレイと、ますます円熟味を帯びた歌声はいつ聴いても素晴らしいものだ。

僕と希花が40分のファースト・セットを受け持ち、ブレンダンが30分一人でセコンド・セットを。おわりにUkepick Waltzと、彼の素晴らしい歌声に乗ってのFoggy Dew。最後にPaddy Ryan’s Dream /Moving Cloudのセットで、日本公演の経験もあるダンサーのエマ・サリバン(彼女はこのコンサートの受付も兼ねている)が軽やかにステップを踏む。

そして、今日一日が無事終えた。ブレンダンとは金曜日にまた一緒に演奏することになっている。

 

7月10日(木) 朝のうち小雨、 後晴れ

今日はフランキー・ギャビンと会う約束をしているので、待ち合わせの場所に行く。

パブのなかで音楽を始めるとやはりただ者でない雰囲気が人々に伝わる。2時間ほど3人で弾きまくって、また会う約束をして別れた。

 

7月11日(金)曇り

今日もブレンダンとの演奏がある。

まず街のパブで。そして教会だ。

来週には僕らと北アイルランドに行くので、とりあえずケリーに戻って行った。いつでもパワー全開の人だ。少なくともアイリッシュ・ミュージックを自分の音楽として位置付けている日本の若者には、是非目の当たりにして欲しいミュージシャンの一人だ。

 

7月12日(土)雨

いよいよ晴れ男としての出番がなくなるアイルランドらしい気候になってきたようだ。

今日も一日ゆっくりできる。

夕方、とはいっても9時半頃だが。天気が良くなったので散歩に出た。川のほとりや公演には多くのひとが、それぞれに美しい夕焼けと心地よい風を楽しんでいた。

極端に広いこの風景の中ではその存在は本当に小さいものだ。

ふと通りに目をやると、見たような男が車の列の先頭を歩いている。コーマックだ。

なんと、ワイングラス片手に千鳥足で車道をあっち行き、こっち行きしている。そのせいで大渋滞になっている。

クラクションが鳴り響いているがお構いなしにフラフラと歩いている。ドライバーも慣れたものだ。結構いるんだろう。そんな奴が。やがて歩行者だけの道の雑踏の中へフラフラと消えて行った。やっと交通渋滞は解消された。彼にとっては始まったばかりかもしれないが。

明日電話してみよう。覚えていないかも。

 

7月13日(日)曇り

今日は、夕方からフランキーの家にお泊まりだ。門から家まで100メートルあろうか。大きな家のバックヤードは充分野球が出来るほどの庭と、大きな湖があり、と一体どこまでが彼の土地なんだろう。

彼が一生懸命ディナーを作ってくれる。

ろうそくの灯りを囲んでワインと彼の作ったパスタで緑に包まれての食事は、いかにもヨーロッパ人の夕食のひと時だ。

そしてもちろん音楽。

毎日が忙しい彼だがいろいろな曲を一緒にやってくれる。

彼のフィドル・スタイルは、あらゆる地方のアイリッシュ・ミュージックを聴きまくり、そして手当たり次第様々な音楽を聴いてミックスしたものだ。

彼のように弾く人はゴルウエイには多いが、この人はやっぱりそういう人達にとっての神様だ。

彼が大きな2匹の犬の世話に手を焼いている、というのはどこか微笑ましい。

 

7月14日(月)雨のち晴れ

フランキーの家から戻り、夕方コーマックに会ったが、やっぱりこの間のことは覚えていないようだった。

 

7月15日(火)晴

午前11時。少し曇ってきたが、今日も雨が降るだろうか。だれかが「もう夏も終わった」と言っていた。「ここでの雨期は1月から12月までだ」と言った人もいた。でも相変わらず楽器の鳴りは良い。

 

7月16日(水)晴れたり雨が降ったり曇ったり

典型的アイルランドの天気。少し暖かいが、海辺を走る風は冷たい。今日も白鳥がいっぱいだ。

それぞれに首を水の中に突っ込んで、藻らしきものを食べているが、首の見えない白鳥は単なる白いかたまりだ。

今夜は10時にショーン・ギャビンと待ち合わせている。ソルト・ヒルというところにあるパブでのセッションだ。

フルートのGary Hastingsがいる。間違いなく良いセッションだ。少し後からWe Banjo 3のDavid Howleyが現れた。まだ23歳の、マルチ・プレイヤーでシンガーの彼も真剣な眼差しでみんなの音を聴く。

それぞれが相手の音を聴き、ゆったりしたペースあり、そこそこに早いものあり、いいチューンあり、沢山のギネスあり、そして、何と言っても静かなパブで本当にいいセッションだった。

帰ってきたら2時をまわっていた。ショーンは車を置いて自転車で帰って行った。

 

7月17日(木)曇り

明日からブレンダンと北アイルランドのCo.Downに出かける。朝早くの出発なので、今日は一日ゆっくりしておこう。

昼からジョニーがTommy McCarthy(フィドル)と演奏するので、近くのパブに聴きに行く。

100人ほどのお客さんの中に、Mairtin O’Connorを発見。この人とは一緒に演奏したことはないものの、いつでも「おー、ジュンジじゃないか」とハグしてくれる。相当前から僕のことをいろんな人を通して知っているらしい。

初めて、ダブリンで会ったときも、随分前から知っている、という感じで気さくに話をしてくれた。

この人はきっとみんなに親切なんだろう。この上ない超絶テクニックを持ったアコーディオン奏者で、この上なくいい人だ。