2014年 アイルランドの旅〜7月4日から〜

7月4日(金)朝から雨が降っている。いよいよアイルランドらしくなってきた。そんなに強い雨ではないが、これでは走りに行けない。

お茶を飲みながら、何か曲でも覚えるか…。知っている曲でも最後の1小節が定かでなかったりする場合、なんとか見つけ出してクリアーにする。いろんなバージョンがあるので、それに全て目を通した上で、これが一番好きだ、と思うものを覚えることにする。

伴奏者にとってはとても大切なことだ。自分の選ばなかったバージョンで弾く人もいるので、即座に対応できなければいけない。適当に感覚で済ますわけにはいかないのだ。

メロディを常に覚えておかなければいけないリード楽器奏者に対するリスペクトを、きちんと果たさなくては伴奏者として成り立たない、と考えている。

こうして朝、昼、晩を問わず練習するのには雨の日がもってこいだ。といえども、今日はまたセッション・ホストの仕事が入った。6時頃なので充分時間はある。もう少しRainy Dayを楽しもう。

そういえばRainy DayとDown The Broomはよく似ている。Follow Me Down The Galwayというオールド・セッティングもある。

あまり考えすぎると頭が混乱する。

さて、少し晴れて来た。セッションまで海辺を散歩でもしてみよう。

セッションはいつもの通り、ミックがすっ飛ばす。彼も素晴らしいフィドラーだ。

セッションを終えてからスピダルまで行くことになった。この週末はそこで大きなフェスティバルがあるのだ。

まず、アコーディオン奏者のDermot Byrneに出会う。そしてその次にウロウロしていたのはMichael McGoldrickだ。日本のフルート奏者のだれもが憧れる大物だ。気軽に僕らの会話にも加わってくる。Charlie Lennonもいる。もうすでに「ハイ、チャーリー」と声をかける。そして、12年ぶりにHarry Bradleyとも出会った。あの時(アメリカでツアーした)はまだ25歳の若者だった。

沢山の人と挨拶を交わし、街を離れたのが11時過ぎ。西の方の空はまだすこし明るかった。

 

7月5日(土)快晴。

今日の予定は、昼頃からジョニーとスピダルに行って、6時までに戻って、昨日と同じメンバーでセッション・ホストをやる。昨夜は12時頃戻ってからあまり寝れなかったので、今日はセッションが終わったら早い目に引き上げてきたいが、どうなることだろうか。

午前9時半、青空のあいだから突然雨が落ちて来た。しばらく降るだろうか。実にアイルランドらしい。

11時。まためちゃくちゃにいい天気になった。

スピダルに着いた。美しい海で水遊びを楽しんでいる人達もいるが、多分水は冷たいだろう。

チャーリー・レノンがいた。彼が自身のスタジオを見せてくれる、と言う。ぼくらが付いて行くとそれはそれは素晴らしい木造りの広いスタジオに案内された。

オーケストラも小規模だったら入るだろう。

そこでチャーリーがちょっと試しに一緒に弾こうか、と言ってくれた。

これはまたとない機会だ。特にフィドラーにとっては。希花に至っては、まだ生きていたとは知らなんだ(おとみさん、か!)というくらいの人物だが、今、まさに目の前1メートルくらいのところでフィドルを弾いている。しかも二人だけ、という恵まれた条件だ。

しばしスタジオで時を過ごしてから、ゴルウエイに戻り、またセッション・ホストだ。今日1日も矢のように過ぎて行く。因にチャーリーはiPhoneを使っていたがよく見えない、と言って希花に文字の入力を頼んでいた。

 

7月6日(日)快晴。

朝のうち海辺を走る。風が冷たくて気持ちがいい。

今日はジョニーとミルタウン・マルベイに行く。アイリッシュ音楽に関わっている誰もがステイタスのように思っている“ウイリー・クランシー・ウイーク”だ。

今は亡きパイパー、ウイリー・クランシーに因んだこのフェスでは様々なワーク・ショップも開かれ、サマー・スクールという名目でも知られている。

1昨年はブレンダン・ベグリーの家に泊まって、恐るべきケリー集団の洗礼に遭った。

今日は日帰りなので気が楽だ。いろんな人に挨拶だけして帰ってこようと思っている。

夜、ゴルウエイに戻ってからのセッションでショーン・スミスと久しぶりに出会った。

 

7月7日(月)曇り(小雨がぱらついている)

今日は七夕。日本はどんな天気だろう。少し晴れて来たけど今夜、星は見えるだろうか。アイルランドは関係ないか。

5時から7時まで観光客相手のパブで演奏。今日は早く寝れそうだ。

 

7月8日(火)晴

昼からミルタウン・マルベイ。セッションをしたり、こちらに住む赤嶺“フー”さんとお茶を飲んだり。

彼の勧めで、メインストリートでバンジョーを弾いたところ、おおいに受けた。彼はなかなかバイタリティーがあり、思ったことはなんでも実行すべきだし、興味のあることにはとことん食らい付いていく、ということをモットーとしているひとなので、この国で会うべき人としては欠かせない。

希花はそのあと、モーリス・レノンと共にセッションに参加。1曲ごとに希花のロージンを弓に塗りたくる彼にハラハラしていたらしい。

クラシックの人の1ヶ月分くらいを1曲で使うらしく、だいぶ減った、とぼやいていた。

外に出ると、よそ見しながらテレビでも見るような感覚でパイプを奏でる10歳くらいの超絶テクニックの男の子や、それを取り巻く子供達の大集団が次から次へとトラッドを演奏する姿に出会い、あらためて感心。

帰ってきたらもう1時をまわっていた。