我々は何故アイリッシュ・ミュージックを始めてしまったんだろう

このことに関しては良くアイルランドでも質問を受ける。でも、それは決して政治的な理由などを求めているのではなく、アイルランドの音楽のどこが好きなのかを訊ねられているに過ぎない。

そんな時には必ず「メロディの美しさに魅かれた」と答える。

事実、美しいメロディが数多く存在することは確かだが、それはどの音楽にも存在する理由でもあるだろう。

最近「合意無きEU離脱のイギリス」という番組をテレビで観てしまった。

そのこと(離脱)によってIRAの活動が再発するのではないかという懸念が生じているという。

詳しいことはここには書かないが、彼らが言うには、人々が思っているように1998年にアイルランド紛争は終わっているのではない、ということだ。

僕らは少なくともこういう国の音楽を演奏している。そして現実にアイルランドで演奏している。もちろん北アイルランドでも。

そして、かなり政治的な場でも演奏してきている。それは僕自身アメリカでも経験してきた。

そんな中でもなにも問題なく演奏をしてきた。

ただ、自分の中ではこれは黒人の背負ってきた運命と同じだという感覚がある。

まさにアイリッシュ・ミュージックにもブルースを感じるのはそこの処だ。

それが理解できなければ、ただ単に楽しい音楽のひとつとなってしまう。

幸いなことに僕はフォークミュージックからブルーグラス、そしてアイリッシュという道を歩んで来た。

そこには常に黒人音楽との密接な関係が存在してきた。決して音楽上の技術的な話ではない。

そうして辿りついたアイリッシュ・ミュージックが僕自身の音楽になっている。

これから自分にとってのアイリッシュ・ミュージックというものがどのようになっていくかは分からないが、「イギリスのEU離脱」という懸念を報じた番組を観ていて少し考えてしまった。