8月11日(月)雨も晴れも曇りも全てが交互に
もう晩秋だ。寒くなって来た。昨夜はエニスでスーパー・ムーンを観測したが、今日も相当月が明るいので、ペルセウス座の流星群を見るのは難しいらしい。
街を歩くと、クリーナ(コーマックの妹)に出会ったり、フランキーに出会ったり、やっぱりゴルウエイだ。
白鳥もすぐ近くによってくる。道行く人が餌にするパンをくれた。多分希花を見て、子供が餌をやりたがっている、と思ったのだろう。10羽ほどの白鳥に混じってカモメが見事なフライング・キャッチを見せる。
こんな光景もやっぱりゴルウエイならでは、だ。
ゆっくり休んでフィークルの疲れを取ることにする。
8月12日(火)雨も晴れも全て
朝、起きたら晴れているのにどしゃ降りだ。天気雨、狐の嫁入りなんていうものではない。本降りなのに陽が射しているのだ。そして、あっという間に止んだ。もう青空が出ている。
結局、今日も夕方にはとてもいい天気になった。
鳥達も満足そうに餌に飛びついていた。
8月13日(水)晴れ
今日は珍しく朝からよく晴れ渡っている。日本の11月中旬のとてもいい天気の日、という感じだ。
ブレンダンと電話で話したが、今日は比較的電波がよく、また彼も家にいてリラックスしているせいか、分かりやすかった。
いつも忙しく、電波の悪いところから急いで電話してくることが多いので、ほとんど何を言っているのかわからないまま終えることもある。
時々あせってゲール語になったりもする。
今日はこちらもリラックス。晩秋の一日をゆっくり楽しもう。
と思いきや、9時に先日出会ったダーモットがセッションをやっている、というパブを覗いてみたら帰りが午前様になってしまった。
今日は休肝日、と決めていたのにギネスをごちそうになって、しんどい。
ゆっくり寝よう。
8月14日(木)曇り
早野先生、古矢先生(彼女達はどちらも教師だ)にいただいた鳥の図鑑で、ここに来ている鳥達の種類が判明。
最初によく来るのがどうやらSong Thrush(うたつぐみ)Starling(むくどり)そしてRobin(こまどり)この3種類のようだ。
教えていただいて感謝です。
今日は、昨夜会った、ミックというおじさんにギターを教えてあげる約束がある。
彼はDADGADも試したことがあるけども、昨夜僕の弾いているのを見て、やっぱり少しこのチューニングも真剣にやってみたい、と思ったらしい。
アイリッシュ・ミュージックにおいてギターはやはり教えるのは難しい。それでも一生懸命ノートに書いて、テープに録って、練習して2週間後にまた来る、といって喜んで帰って行った。
2週間後が楽しみだ。でも、それで全然進歩なかったら教え方が悪いのか、はたまた本人のせいなのか…まるでダイエットだ。
8月15日((金)晴れ 気温13℃
今日は69回目の終戦記念日。
僕の父は陸軍少佐として最初、サイパン島にいたそうだが、ほどなくしてトラック島に移った。もしそのままサイパンにいたら僕は生まれていなかった。それこそ南方諸島の状況はかなりひどかったようで、あまり話をしてもらった覚えがない。
終戦記念日になると黙っていそいそと日の丸を掲げる父の姿に、それが軍国主義に基づいたものだ、とか言えるものではなかった。
父が癌で亡くなってからもう30年。戦火のなかで生き延びてきた彼も癌には勝てなかったようだ。
全ての戦没者に黙祷。
さて、今日はアンドリューがオーラ・ハリントンと共に教会のコンサートにやってくる。
オーラもクレアー出身のダンサー兼フィドラーだ。
僕らも少し一緒に演奏した。パブとは違って、じっくりと目をつぶって弾く彼の姿が印象的だった。
オーラがホーンパイプで素晴らしいステップを見せてくれた。本日のハイライトだった。
終わってから少しの間アンドリューと希花と3人で飲んで話しをした。オーラはクレアーに戻り、アンドリューは明日スライゴーに行く。
僕らも先日会った“ピート・シーガー・モデルのダーモットとお昼頃出発してスライゴーに行くことになっている。
8月16日(土)曇り
午前11時15分、ダーモットとの待ち合わせ場所に行くと、時間通りみんなが現れた。ダーモットと他友人2人、それに僕らでいざ、スライゴーへ。
アイルランド音楽最大のイベント、フラー・キョール目指して。
10万人はきているらしい、なんていう情報もあるが、1週間以上続けてやるのでトータルで、だろう。
だが、小さな町、スライゴーの通りという通りは人でうめつくされていた。子供達がいたるところで演奏している。
このお祭りについてはネットでいくらも出てくるだろうし、他にもこのために日本から出向いて来ている人も沢山いるので、ここでは詳しく書かないことにする。
しかし、毎年行われるこの祭典のコンペティションで優勝したら、いちやくアイルランド中に有名になることまちがいなしだ。
勿論それでなくても名の出るミュージシャンは沢山いるが。
僕らもそれぞればらばらになって、人をかきわけかきわけいろんなパブをみてまわった。
ここでは、ジェリー・フィドル・オコーナーがフィドル・ショップを出している、というメールがきていたので、そこに行ってジェリーと会うのはひとつの目的でもあった。
小さな町なのでそれは簡単に見つかった。小さな町の小さな店にお客さんがいっぱい。アコーディオン部門はマーティン・クインが担当していた。
忙しそうだったので挨拶だけ済ませて、また通りに出た。
しばらく歩くとDunnesとPennysといういわゆるスーパーマーケットが一緒になっている大きなショッピング・モールがあった。
その中の1店舗であるコーヒー屋さんがMusicians Welcome Free Coffeeという看板を掲げているではないか。
行ってみよう、と希花と2人入って行くとショッピング・モールのいたるところで子供達が演奏している。
目的のコーヒー・ショップはちょうどスター・バックスのようなお店。希花が店員さんに訊きに行った。
「いつでもはじめていいよ。コーヒー持って行くからって言ってる」というが、それぞれに多くの人がくつろいでコーヒーを飲んでいるところで、突然楽器を出して弾く勇気はなかなか無い。
本当かな、と思いながら周りを見回しておそるおそる楽器を出した。少し弾き始めたら店員さんがにこにこしてコーヒー^を持って来てくれた。
どうやら本当だったらしい。そこで1時間くらい弾いているとおかわりも持って来てくれて、沢山の人が喜んでくれた。
このお祭りのために人が集まり、そしてこのお祭りのために街中がミュージシャンをサポートしていることがよくわかった。
ダーモットから連絡が入り、良い場所が見つかったからここで一緒にやろう、と言ってきた。
そろそろ1時間半にもなるので店員さんにお礼を言って店を出た。彼らは口々に「こちらこそ良い音楽をありがとう」と言ってくれた。
それからはダーモットと僕ら、フルート吹き、そして2人の少年バンジョー弾き。後からマンドリンやフィドルなども加わって大セッションに発展。
一人の少年バンジョー弾きの両親がずっと前、ロングフォードで僕を見たと言った。おそらく2002年頃だろう。パディ・キーナンとの演奏だった。そして帰り道、パーキングに向かって歩いていると、懐かしい顔が向かいから歩いて来た。バンジョーのブライアン・ケリーだ。
同じく2002年頃、家に遊びに来て、前の晩全く寝ずに飲み続けていてお腹が減ってしにそうだ、と言ったのでピザを食わしたら、馬のようにがっついて、と思ったらトイレに駆け込んで、吐いて、そしてケロっとしてまた食べたかと思ったらすぐバンジョーを弾き始めた奴だ。
あの時、まだ子供のような風貌で信じられないプレイを見せてくれたが、もうかなり大きくなっている。
YouTubeでみていたので分かったが、それでなければわからないかもしれない。しかし、バンジョープレイはかなりすごい、狂気に満ちたものがある。
少し話しをして別れたが、またいつか会えるだろう。
ゴルウエイに着いたのが9時45分くらい。ダーモットは「さぁ、無事にみんなを送り届けたから飲みに行くぞ」と一緒に行った2人とパブに入って行った。僕らはそこで失礼した。
彼に感謝だ。もし彼に会わなかったらスライゴーには行かなかった(行けなかった)だろう。