いい天気。昨日はそれでもやっぱり神経は使ったらしく結構疲れたようだ。
何と言っても相手はアイルランド人。子供といえどもアイルランド音楽で育ち、それぞれにバンドで別な楽器を担当している。
そして音楽そのもののレベルも違うだろうが、取り組む姿勢も違うだろう。
教える人ってみんなよくやるなぁ、と思ってしまう。
さて、今日、明日で帰る準備もしなければならない。
あちこち連絡もしておこう。いろんな人にお世話になっているし。
昼、キアラン君がソーダ・ブレッドの作りたてを買って来てくれた。
以前、日本の某有名ベーカリーでソーダ・ブレッドを見たが、紙っぺらみたいなものが5~6枚で400円くらいしていた。
これはその5倍もあってずっしり重い。日本円に換算すると300円くらいらしい。
日本人の大好きな「フワフワモチモチ」と違って「ゴツゴツガリガリ」だが、ムチっと詰まっている。
そこにジョンがアップルパイを持ってやって来た。焼きたてのものを買って来てくれたのだ。リンゴがこれでもかと言うほど大量に入っている。
日本なら1500円くらいだろうがこれもまた5分の1くらいの値段だろう。せっかく持って来てくれたのだから値段のことはともかくとして、日本はやっぱりなんでも高すぎるし、包みもきちんとし過ぎている。
ソーダブレッドもアップルパイもその辺のビニール袋のようなものに入っているだけだった。
でも、どちらも満足のいく味だ。
パン好きの僕にとっては、確かに日本のパンも良くできていて美味しいが、こちらの一見雑な作りのものも好きだ。歯ごたえがあっていい。
ところで、何故キアラン君がソーダブレッドを買って来たかと言うと、前日に僕が買ったソーダブレッドが非常に安物で、そんなものは馬にあげてこい、僕が本物のソーダブレッドを買ってくる、と意気込んでいたからだ。
確かに僕の買ったものは日本では1000円くらいだろうが、50円くらいだったのだ。
夕方、キアラン君の言う通り、それを持って馬とロバに会いに行った。
また何を思ってか、3匹揃ってやって来た。あれだけ今まで何にももらえなかったのにやっぱりいそいそとやってくる。
しかし今度はソーダブレッドがある。
すごい勢いでがっつく。馬は背が高いのでフェンスの上から首を伸ばしてがっつく。
ロバは下の方から一生懸命首を伸ばす。
そのうち我慢が限界に来たのか、フェンスの真ん中あたりからなんとか餌をもらいたいと背伸びして頑張るが、次の瞬間、見事に首が挟まった。
中国人の子供よろしく、どうしても抜けない。
なんとかしてやろうと思うが近くに寄ると意外と顔がでかい。悲壮な目をしてもがいている。下手に手を出したらまた噛まれる。
そんなことを繰り返したらロバも僕も一緒だ。
誰か呼ばなくちゃ。ロバも困ったが僕らも困った。そこは一緒だ。
ロバは挟まったままなので僕らは「こうしろ!早くこうしろ!」と何度も二人で首を横にして見せた。
馬もいるのにロバの耳に念仏だ。
踏ん張ってみたり後ずさりしたり、そうこうしている間にやっと抜けたロバは意気消沈して一人であっちへ行ってしまった。
悲しきロバの後ろ姿。よっぽど懲りたのだろうが、明日はまた忘れてやってくるだろう。
そう言えばジョン、何も忘れていかなかった。