このコラムではフィドルについて、或いはヴァイオリンについて沢山書いてきた。
もう周知の如く、僕らの演奏する音楽はフィドル・ミュージックと云えるものだ。今回は統一してフィドルにしておこうかな。
いや、ヴァイオリンにしておこうか。
と云うのが、最近テレビを観ていて、希花さんが面白いことを言っていたからだ。
「このヴァイオリンという楽器ほど、持っただけで素人か、それなりに弾く人かが識別できる楽器は他に無いんじゃない?」
確かにピアノの前に座って鍵盤に手を置いているだけのポーズなら弾く人かどうか分からないだろう。
ギターでもにっこり笑って抱えていればあんまり分からないかもしれない。
チェロは弓を縦にしてでも持って、本体を股に挟めば…それで格好つけてれば分からないだろう。
笛の類もそうかもしれない。
そう考えるとヴァイオリンは構えた時の姿勢に無理があるのかな?それだけに難しいのかも。
大体、物を顎で挟んで肩に乗せるなんていう事は普段の生活でもあまりしない。
そう言えば、省ちゃんと電話でギター談義をするとき、よく受話器を挟んでギターを弾いたけど、あれはけっこうきついポーズだった。
しかもヴァイオリンの場合、自分の手から非常に遠い位置で音を出している。
弓だ。
誰が考えたのかな?あの弓なるもの。
左手の運指についても、ほとんど見えないところで動かす。
摩訶不思議な楽器だが世界中の音楽に使われていることがまた不思議だ。お、上手いこと韻を踏んだ。
それにあんなに怖い楽器もない。
もし弾いている最中に弦が切れて自分の方に飛んで来たら、なんて思ってしまうが、それはあまり無いようだ。五嶋みどりのようなこともあり得るが、自分の方に飛んでくることは無さそうだ。
そう言えばギターでもあんまり派手に自分の方に飛んでくることは無い。
僕は演奏中に弦を切ったことは今までに1回か2回くらいしかない。50年以上でそれだったら良い方だろう
でも、ギターの弦は安いものだ。
希花さんのヴァイオリンの弦は1本で僕の弦が20セットほど買える。
ヴァイオリン…つくづく大変な楽器だ。