3年越しのフィークル・フェスティバル。
8時半からペパーズでアンドリューとの演奏が控えている。
今年は珍しく信じられないくらいの好天気の中、
世界中から集まった人たちと「どうしてた?」と言うようなやり取りでのっけから盛り上がる。
アンドリューの家の周りも、この村も、ちっとも変わっていない。
各パブのオーナーの笑顔もちっとも変わっていない。
10年の間、夏には必ず訪れていたこの村とプツンと途切れてしまっていたけど、彼らの笑顔を見るとそれだけで気持ちが落ち着くようだ。
演奏はいつも通りアンドリューのかっ飛ばしで始まり、浴びるほどのビールでそのまま2時過ぎまですっ飛ばす。
さぁ帰るぞ、と言う段階になり、それでもしばらくはまだ騒いでいる人たちと歓談をし、家に着いたのはもう3時を回った頃。
キッチンでおもむろに紅茶を淹れてじっと飲み干す姿を見ると歳いったかな?と思うがこちらも同じだ。
この中で一番若いはずの希花さんも流石に久しぶりの大爆発で疲れているようだが、いつ倒れるかわからない2人の面倒は何となく観なくてはいけない使命感があるのだろう。
老人2人は大好きなブルースを聴きながらまだ生きている。
結局、眠りについたのがもう4時半近く。
フィークルに降り注ぐ星に思いを馳せて誰のいびきも聞こえてこない静かな夜。いびきをかく間も無く全員眠りに落ちたようだ。もちろん僕も。
次の日8月7日は夜、マナス・マグワイアーとのセッションホスト役。
世界中から集まるこの音楽の愛好家達を引っ張っていく仕事なので1人くらいアイルランド人がいなくちゃまずいだろう、と考えた末に、
希花さんが普段からお世話になっている医者兼プロフェッショナルミュージシャンの彼にお願いした。
セッションではノース・カロライナから来たと言うフィドラーが実に巧みな演奏を聴かせてくれたので、彼と共にオールドタイムチューンも
楽しんだ。
マナスもアメリカでブルーグラスの大御所、リッキー・スキャッグスやブライアン・サットンなどとCDをリリースしているので、そちらの方面にも明るい。
そんな彼らのおかげでとても質の高いセッションを保つことが出来た。
ホストがしっかりしていて、周りに集まる人がしっかりと聞く耳を持っていれば自然とセッションはいいものになる。
あまりに気を使いすぎてもだらだらしてしまうし、こちらだけが楽しんでもダメだし、その兼ね合いを心得ているとみんなが楽しめて、なおかつ高度な演奏を展開することが可能だ。
この日、実は午後3時からアンドリューと別な場所で演奏していたので、このセッションは4時間ほどにしておいた。
役割は12時までなのでそれで店側もちょうどいいはずだ。
それにしてもアンドリューと4時間、マナスと4時間。かなり疲れている。おまけに前日の就寝4時過ぎというのも効いている。
その上、浴びるほどのビールだ。
しばらくは体を休めなくては老体に鞭打つことになる。