R L Givensマンドリン

‘91年か‘92年頃だろうか。丁度、省ちゃんがカリフォルニアに居た時、友人から面白いニュースが入った。

サンタ・クルーズ近辺で活躍しているバンド、サイド・サドルスの人が現在使っているマンドリンを売ろうかと思っている、という話だ。

サイド・サドルスと云うバンドは女性5人くらいの編成でカリフォルニアではかなり名の通ったバンドだ。

そのメンバーのKim Elkingという女性。

彼女は週に一度、サンタ・クルーズでDJをやっているという。DJと云ってもお皿を回すやつじゃない。ブルーグラスを聴かせてくれる番組だ。

それじゃぁ、せっかくだから見に行きたいけど、物は何だろうと思い、取りあえず電話をしてみた。

するとR L GivensのFだという返事が返ってきた。提示された値段は敢えて書かないが、とてもリーズナブルなものだった。

Givensと云えば、当時知っている限りでは相当若い時のサム・ブッシュがAタイプのものを弾いている写真を見たことがあるだけで、現物にお目にかかったことは無かった。

取りあえず見に行くか、と省ちゃんを連れてサンフランシスコから1時間半ほどのラジオ局へ出かけて行った。

Kimが「よく来たわね。これよ。」と、とてもフレンドリーに手渡してくれたものは、渋い色の紛れもなく本物のGivens Mandolinだった。

省ちゃんは目をまん丸くして「わー!初めて見るGivens!」と感激してしばらく弾いた。

番組が終わるまで考えていた省ちゃんは「ウ~ン、もうちょっと考えるわ」

彼の買い物は決して衝動買いではない。何に関してもじっくり考える。

Kimに「もう少し考えるらしい」と伝え、ラジオ局を後にした。

帰り道、ずーっと「ウ~ン」と唸っているのはいかにも彼らしかった。

そしてサンフランシスコに着いた途端「やっぱ買うわ!」と叫んだのも彼らしい。

急いで彼女に電話して明日また会えるかどうか、と訊いたら「いいよ、ラジオ局で会おうか?」と云ってくれた。

「省ちゃん、今晩寝たら気が変わらないように」と云っておいた。

そして次の日、再びサンタ・クルーズに出掛けて行ってめでたく珍しいGivensを手に入れたのだった。

彼はその楽器を様々なレコーディングで使っている。勿論Gibsonもよく使用していたが、確かにまた一味違う鳴り方をしている楽器だった。

そしてその製作者、R L Givensはそれから間もなくして亡くなった(‘93年の初めころ)と聞いた。

素晴らしい楽器を提供してくれた彼に感謝。そして彼の楽器を使用して素晴らしい音楽を提供してくれた省ちゃんにも感謝。

更にこの楽器を省ちゃんの手に渡してくれたKimにも感謝。