アルバムを振り返ってみて(前編)

2011年 Keep Her Lit!

2012年  Music in the Air

2013年  The Rambler

2015年 Eire Japan

2015年  Through the Wood

時間があったので、今までにリリースしたアルバムを振り返ってみた。

基本的にはこのデュオによるものだ。

まず、手探りで始めた最初のアルバム「Keep Her Lit!」止まるな!とかそのまま行け!みたいな意味の、多くの場合イギリスやアイルランドで使われる言葉をタイトルにしてみた。

この頃僕は全編ガットギターを使用していた。Teetotaler’sのセットでは5弦バンジョーを弾いた。希花さんはこのアルバムでは全編フィドルだった。

夜汽車にOokpick Waltzをつなげたり(これは省ちゃんのアルバムで僕が使ったアイディア)旅立つ前にとCalliope House(これも以前、彼とのアルバムで僕が出したアイディア。というかこのCalliope Houseをやりたくてなにか合う歌が欲しいなと思って「旅立つ前に」を書いた、というものだ)

そんな風に歌とチューンを絡み合わせる、と云うのがこのデュオでやりたかったことのひとつだ。

アルバムジャケットを写真家の吉田恒星さんに撮っていただいて、サウンドタムで録音したこのアルバムはおかげさまで完売となった。なお、このアルバムではいくつかの曲でベースを河合徹三さんに弾いてもらった。

2枚目のアルバムはMusic in the Airというタイトルで、その多くをスローでとてもシンプルな楽曲を選んで録音した。

この時から自分達なりの時間の使い方なども考え合わせ、ホームレコーディングを始めた。ただ、仕上げはそれなりの技術を持った人にお願いするのが良いだろうと考え、同じ東京に住むプロフェッショナルの方にミックス&マスターをお任せした。

ジャケット写真はバードランドの藤森さんがどこか、横須賀の方の森の中で撮影してくれたものを使わせていただいた。

このアルバムから希花さんがアイリッシュハープを使用し始めた。

このアルバムはタイトル通り、全体を通してとても落ち着いた雰囲気の静かなアルバムで日本人好みというのだろうか、ファーストアルバム同様完売している。

2013年にはThe Ramblerというアルバムを作った。

ジャケット写真はアイルランドのコネマラ地方で撮影した羊を使わせていただいた。羊に許可は得ていないが。

最初からタイトルになっているアップテンポのジグで始まるこのアルバムでは、いよいよ希花さんのコンサーティナも登場するようになった。

また、トム・パクストンのLast Thing on my Mind(この想い)やナターシャー時代の民謡、おわいやれとBreton Gavotteをつなげてみたり、ワウワウを使用したバンジョーによるClinch Mountain Back Stepなども収録しているが、ある時アイルランドのラジオでそれが流れてきて驚いた。このアルバムの紹介をしてくれていたのだが、何故、よりによってこの曲だったのだろう。

この頃から希花さんは、アイルランド屈指のプレイヤー達とのワイルドな生活と、力強い音楽の真っただ中に存在するようになり、その本質をうかがい知るようになっていく。

それは僕が80年代に体験したカーターファミリーとの生活や、このアイルランド音楽を始めてからも体験し続けてきた世界だ。

理屈などでは到底語ることのできないものを得る良いきっかけになっているはずだ。

一年おいて、2015年にEire Japanをリリース。

これはデュオではなく、Frankie Gavin とPaddy Keenanの二人と共にリリースしたものだ。

1970年代から世界を股にかけてその名を響かせてきた大物二人との共作。一筋縄ではいかないこの二人とのことはもう散々書いているがアルバムは過去のNY録音の2曲を含めたアイルランド録音。

エンジニアをButtons & Bows やSkylarkなどで有名なGarry O’Briainが担当してくれた。寒い寒いアイルランドの冬だった。

同じ2015年Through the Woodをリリース。

このアルバムでは最初と最後にライ・クーダーで覚えたジョセフ・スペンスの曲を録音した。

これは紛れもなく僕の世界であるが、こんな一見遊びのような選曲もいい。

ただ、僕にしてみれば1970年の彼のソロアルバム、Ry Cooderの時から注目していた人なので極自然の成り行きという事だ。

もうこの頃になると、大学も卒業、そしてめでたく医師免許も取得した希花さんはコンサーティナも上達し、フィドルに於いてはアイリーン・オブライエン等と共にセッションホストもこなすようになってきている。

ここに収録されているTommy’s Tarbukasなどはなかなか弾く人は少ないだろうし、仮に超絶テクニックの人が弾いたとしてもこういう感じは出せないだろう、という演奏をしている。究極、そういうところがこの民族音楽の民族音楽たる由縁だ。

僕はまた、Lord Gordonをリクエストした。

このような曲をマイケル・コールマンから、またケビン・バークから学び、そして、マット・クラニッチと演奏し、曲について語る、こういう一連の流れをすでに経験しているのとしていないのとでは全く違うはずだ。

そして、コンサーティナ演奏にも磨きがかかってきたし、ケニー・ベイカーで有名なオールドタイムチューンも聴くことが出来る。

かなりたっぷり楽しめるアルバムだと確信している。

ジャケット写真もプロの方に撮ってもらったが、本当はこういうことに使用してはいけなかった場所らしい、という事は撮影が終わってから聞かされた。

なので、アイルランドの羊を付け加えておいた。誰か「あれ、The Rambler」のジャケットと同じ羊が居るけど…なんて気がついた人もいるかもしれない。