ワイン

この頃、やっとワインの味が分かってきたような気がする。

それというのも、散々安物を飲んできたからかな? つまるところ、飲む、という行為には全く興味がない。

僕と省悟はツァーに出ると絶対に甘いものを食べに出掛けた。まず、酒を飲みに出る、ということはなかった。 打ち上げで、ビールで乾杯!ということはあったがその1杯でもう充分。

オフの日があれば、チョコレートパフェとかババロアとか、そんなものを求めて夜の街でもウロウロしたものだ。 彼も40過ぎて位からは結構飲むようにはなっていたようだが、根本的にそんなに強い性質ではなかった。

一方、僕の方はアイリッシュを始めてから、少しは飲めるようにはなっていたが、それも演奏中だけ。エネルギーと共に出ていってしまう演奏中だけだ。 ウイスキーなんてもってのほか。日本酒というのも好きではない。それでも、状況によっては美味しい日本酒だったらちょっとくらいはいいかな。

さて、ワインの話だが、キアラン君と深く付き合うようになってから、なんとなく美味しいものと、そうでもないものの違いがわかってきたかもしれない。 一緒にヨーロッパ各地に出向き、特にフランスではその安さに驚いた。そして、安いものでも美味しい。 僕らはアイルランドでも安物を買うがキアラン君は決まって「そんな安物は駄目だ」と言って少し高めのものを買う。 高いからいい、というわけではないが、確かに深みが違う…と言うことが分かってきたのだ。 さすが、ヨーロッパの人だな、と感じる。

フランスではどのお店に入っても、まず、味見にワインが出てくる。勿論、ブリタニーの小さい村。みんな僕らを連れていってくれた二コラの事は知っているからだろう。 そんなところで陽の光に当たりながら、緑に囲まれて飲むワインは絶品だが、結構安いらしい。同じものが日本では5倍くらいの値段なので、どうしても日本では安いワインを購入してしまう。

因みにアイルランドでもいいワインはそこそこの値段がする。 なので、アイルランドでも僕らは、ついつい安いもので満足してしまうのだが。

そう言えば京都で深夜、キアラン君とファミレスに入って彼が赤ワインをオーダーした時のこと。彼がまさかそうじゃないだろうな、という気持ちで「それって冷えてない?」って訊くと、アルバイトらしき若い男の子が張り切って「はい、キンキンに冷やしております」と答えた。

確かに安い赤ワインは少しくらい冷やした方が飲みやすいかもしれない。 ワインの味が少しは分かりかけてきた今日この頃。

秋の夜長、うんと冷えた白ワインか、少しだけ冷やした安物の赤ワインか、どちらにしようかな。因みに白ワインも安物。