僕にとっての音楽とは…って考えたこともないけど、それでは終わってしまうので、ちょっと考えてみようかな、と思った。
確かに葉加瀬太郎がアイルランドに行って、マーク・ドネランに「あなたにとって音楽とはどういうものですか?」と尋ねた時の彼の反応が面白かった。
「へぇ、そんなこと考えるんだ」という表情で笑いながら「考えたことない」と言っていた。
マークはほとんど地元から出ないフィドラー。
酪農の傍らの演奏だが、彼の追従者は希花さんも含め非常に多い。
僕も何度か一緒に演奏させてもらっているが、その楽しい演奏と素晴らしい技量とで圧倒させられる。
アンドリューとのトリオで演奏したことがあるが、一向に止まらなかった記憶がある。
多分、アンドリューにしても、自分にとって音楽とは…なんて考えたことがないだろう。
果たして僕ら、いや、僕は音楽が好きなんだろうか。音楽とはそういうものなんだろうか。
以前、あるエンジニアにマスタリングをお願いした時に、普段どういうもので音楽を聴いているか尋ねられたが、返答に困ってしまった。
まず、音楽を聴くことは無い。
何か特別に覚えたいもの、覚えなくてはならないものでもない限り、目的なしに音楽を聴くことはない。
何かをしている時、後ろで音楽が流れていることは絶対に無い。
何気なく音楽を聴いていることはまず無いし、リラックスするために聴くこともない。
幼少期、ピアノを習っていた頃、家に帰ると即ピアノの前に行き、さっき聞いた救急車の音などと言って弾いていたらしい。
あの頃はただ単純に好きだったんだろうなぁ。他に何かに入れ込んでいた記憶は無い。
先生からはとんでもない天才かもしれない、とも云われたらしい。
よく「好きこそものの上手なり」と云うが、子供の頃の僕にはかなり当てはまっていた言葉かもしれない。
音楽の無い人生なんて…みたいなキャッチコピーもあるが、その通り、とはあまり感じない。
やっぱりそんなこと考えたこともないし、ひょっとしたら自分自身が音楽そのものだと考えるとつじつまが合うのかもしれない。
まわりに音楽が存在しなかろうが、自分には関係が無いのだし。
たかが音楽、されど音楽、とはよく言ったものだ。