2023年アイルランドの旅 17

今日は一転して寒々とした、しとしと雨模様。子連れ狼のような天気。

ちょっと外へ出てみると、まぁ大したことはない。

フードさえかぶっておけば大丈夫だ。

ストリートミュージシャンのロビンが、今日はバンジョーでなくマンドリンを弾いて歌っている。

けっこう安物のようなマンドリン。やっぱりワイルドウッドのバンジョーをびしょぬれにするのは気が引けたか。

あるいは修理にでも出しているのか。

いや、アイルランド人、たいがいの修理は自分でやってしまう。

先日、ギャリーがマンドラの指板を自分で取り替えた、と言っていた。

そういえばイデル・フォックスがコンサーティナをばらばらにして世間話をしながら直していた。

笑い声がコンサーティナくらいうるさかった。

アメリカで、なんか個人で楽器を販売しているようなおじさんがいて、よく出入りしていたころ、テナーバンジョーをそのおじさんから買った。

そこそこ1000ドル位したんじゃないかな。

「ここ、ちょっとフレット浮いてるみたい」と言ったら「あ、ほんとだ」と、言って、やにわに金槌を持ち出し、思い切り3~4回叩いた。

「これでどうだ」満足そうな顔をしてそう言った。

ま、確かに直っているようには見えるが、なかなか日本ではあり得ない経験だ。

煙をもくもく出しながらゆっくり走ってくるポンコツ車から、ふにゃふにゃの髪の毛をしたおじさんが出てきて、やにわにボンネットを開けてレンチみたいなもので、思い切りガンガン叩いている。

そしてすぐ乗り込んでそのまま走り去っていった。

ところがどっこい、3ブロック先で同じことをして、また走り去っていった。

僕もティプシーハウス時代、フィドラーのポールの車が発進するときはいつも押していた。

下り坂がある時には必ずそこに止めて「これなら楽にスタートできる」なんて言っていた。

ところで、その車も自分でエンジンを積みかえたらしい。

ノエル・ヒルなんか古い古い枠組みだけしかない家を購入して、3年くらいかけて見事な家に作り上げた。

ガスも電気も水道も壁に穴を開けて自分でひいたらしい。

ここは電圧が非常に高い。220~240下手すると大変なことになる。

先日も新しいライトを壁に取り付ける時「ジュンジ、スィッチオンにしてくれ」見るとドライバーかなんかの先っぽで火花が飛ぶ。

「よし、今度はオフにしてくれ。そのままいじるなよ。フランキー・ギャビンが来たらオンにしてもいいぞ」なんて笑って言いながら見事にライトの完成。

どうりでカーリーヘアーの奴が多いと思った…って冗談いっている場合ではないのだ。

今日は一日中雨のようだ。こんな天気のほうがアイルランドらしい。