8月1日 晴れのち雨のちくもり
すぐ隣のホステルの談話室で練習させてもらっていたら、パディから電話が入った。今ディングルからダブリンに帰る途中だけど、僕らがドゥーランに来ているし、久しぶりにドゥーランに寄ってもいいな、と言っている。
是非そうしてくれ、という話になり3時過ぎに来ることが決定。
去年、なかなか連絡が取れなくて、同じ時期アイルランドにいたのだが、会うことが出来なかった。
とても楽しみだ。
3時半。パディから電話がきた。マクガンズにいる、と言う。すぐ近くのパブだ。てくてく歩くと、ちょうど時代劇のさびれた茶屋で浪人が茶をすすっているような、そんな雰囲気でパディが一杯飲んでいた。
見渡す限り広がる山、そして山。その真ん中に一本だけ続く道。遠くには牛や羊が何を考えているのか、ジーッとしているのが見える。
時折通る車、そしてトラクター。店の前に張り出したベンチに腰掛けて、長いコートに帽子といういでたちで佇む男。
どこから見ても絵になる。
再会を祝して、僕らも一杯。その後、何も無いドゥーランだが三人で散歩に出ることにした。
そこで僕は人生初体験をすることになる。
数日前から、とある民家の前庭にロバが佇んでいた。そのロバを入れて写真を撮ろうと、パディがカメラを構え、僕と希花が石塀にもたれかかったその時、突然ロバが僕の腕に噛み付いた。
緑の服を着ていたので草と間違ったのだろうか。ロバは肉食ではないはずだ。結構痛かったが、あまりのおかしさに3人で大笑い。
←いたそう
まれか大笑い→
青あざは1週間くらい残った。
夜はマクガンズでパディとセッション。といってもパディはパイプを持って来ず、最近凝っているバンジョーだ。しかし、兄であるバンジョー弾きの、今は亡き ジョニー譲りのいい感じで音を奏でる。
9時半過ぎからバンジョー弾きのケヴィン・グリフィンと若いフィドラーも加わった。その後、近くのフィッツ・パトリックというパブでエニスから来ている若者テクニシャン3人が演奏していたことを知っていたので、もうとっくに終わっていることは承知の上でテクテク歩いて出かけた。
ロバはもう眠っているかな。
パブに着くと3人のうちパイパーであるブラッキー・オドンネルが僕らを今か今かと待ち構えていた。
パイパーにとっては神様であるパディーが来ている、という噂は彼らにも届いていたようだ。
さっそくセッションしよう、と、どぎついブラッキーのパイプがうねりまくる。ここではパディもブラッキーのパイプを借りて円熟した音を聴かせてくれた。
結局4時まで演奏しまくった。
帰り道、ロバを見たが「あ、俺が噛んだ奴が歩いてる」というような目つきでこちらを見ていた。まだ痛かった。