2012年アイルランドの旅 ~8月6日 タラ~

8月6日 曇り

エニスを出てアンドリューの家があるタラに向かう。ひたすら寒い。そして、何年も変わっていない景色が広がる。

まるで故郷に帰ってきたようだ。僕にとってのアイリッシュ・ミュージック発祥の土地である。

アンドリューが彼のセコンドカーであるメルセデスベンツを軽快に飛ばしながら言った。「今晩ポーラック(バンジョー)がミノーグスで集まろう、と言ってきている」彼の言葉はいつでもセンテンスが短い。余計なことは言わない。

僕も「オーケー」と答えた。

ミノーグスはあの伝統のバンド“タラ・ケイリ・バンド”発祥のパブだ。

8時過ぎ、出かけていたアンドリューから電話が入った。「ポーラックがミノーグスで待っている。おれも後から行く」

店に行くとポーラックがすぐに言った「なんか飲むか?」みんな先ずそう訊く。

僕はカールスバーグ、希花は最近のお気に入り、ホット・ウィスキーをもらった。そして彼が言った。

「もうすぐミーブ・ドナリーもやってくる」

クレアーのフィドラーでアメリカやヨーロッパでもかなり名の通った女性だ。僕も一度

だけアメリカで会ったことがある。

かくしてまたまたセッションの始まり。途中からアンドリューもやってきて1時半過ぎまで続いた。

次から次へと運ばれてくるギネスやホット・ウィスキー、それに大量のサンドウィッチまで。全部オーナーの計らいだ。

アンドリューが言っていた。「最近、ここ10年くらい、このタラですらもなかなかトラッドが聴けないようになって来た。寂しいもんだ」

僕らはこの地に、久々にトラッドの風を運んできたのかもしれない。