Irish Music その23

Gentle Dentist (Reel)

★  Gentle Dentist

“この曲を覚えたのはHarry Bradleyの演奏からだった。ある朝Athenaから電話があり、今度、若いフルート奏者と一緒に行くからギター弾いてよ、と言ってきた。そしてやってきたのがHarryだ。30分ほど練習して、4日間のツアーに出た。彼らについてはコラムで既に書いている。最初聴いた時にはBパートの不思議な進行に耳を疑った程に変わった曲だ。希花も同じことを言った。レコ―デイングされたものはおそらくひとつしか存在しないくらいポピュラーではない。Desi Wilkinsonの作。アイルランドに親切な歯医者なんていない、という人も多いが…。僕は生れてこのかた、出来た虫歯は1本しかない。それもつい最近。そしてすぐに治った。Gentle Dentistは希花には必要な歯医者さんかもしれない”

 

70th Year (Jig)

★  70th Year

“これはかなり変な曲だ。CapercaillieのCharlie Mckerronのペンになる。以前レコーディングしたことがあったが、希花にこんな変な曲があるけど、何故か結構“くせ”になる、と言って教えたところ、やっぱり“くせ”になったようだ。Fから始まってBパートはDになる。おまけにメロディがなかなか考えられない進行で、これ以上変な曲は、なかなか存在しないだろう、と思われる曲だ。上記のGentle Dentistと合わせて変な曲を2曲掲載してみたが、どちらも僕らの頭の中から離れない。と言うことは、いい曲なんだろうか”

 

 

Humours of Ballyconnell (Hornpipe)

★  Humours of Ballyconnell

“いつどこで、また、誰が演奏していたか全く記憶にないのだが、変なメロディが長い事頭から離れなかった。そんなわけで僕らも音楽会では1回、あるいは2回くらいしかやっていない。しかし、これはトラッド好きにはたまらない変わったメロディ。常にレパートリーのひとつとして覚えておきたくなるようなものだ”

 

 

今回はあまり演奏したことがない、ちょっと変わった曲を掲載してみた。僕と希花は幸運にも音に関して好みが似ているので、変なのに好きになる曲、どうしても好きになれない曲、物凄く好きな曲、など、レパートリーも選びやすい。

レパートリーは多いに越したことはない。そして、それら全て正確に覚える必要がある。(あくまで僕の考え)その上、厄介なのがリズムだ。弾く人の出身地などによっても変わってくる。

最近思うことだが、これはもう生活のリズムだろう。幸運にも僕はアンドリューと寝食を共にし、パディ・キーナンやフランキー・ギャビンといったような超大物とかなりの間共にツアーをしている。あの面倒くさかったトニー・マクマホンとも何日も共に過ごして対等にやりあったし、彼らの生活のリズムというものも垣間見ることが出来た。

僕がアイルランドで希花にいろいろな演奏家を紹介するのも、ただただこの音楽を勉強するためだけではない。彼らの話しを聞いたり、一緒に食事したり、彼らの大切な自然の中を一緒に歩いたり、そういうことが大事だと思っている。

しかしここまでくるとちょっと可哀そうな気もする。深く彼等と付き合えば付き合うほど、この音楽の素晴らしさに惹かれてしまう。もっと簡単に気軽に楽しめれば良かったかもしれないのに。

でも、それはそれでいいだろう。希花も音楽に限らず適当な気持ちで物事に対処できない性格だし。

希花が生まれるよりはるか前、僕はヴァージニアで毎朝ジャネット・カーターの作るグレイビービスケットを食べ、ジョー・カーターと共に農作物を植え、川にボートを浮かべて晩ごはんのナマズを釣って、夜には村の集会に出て演奏した。

本当の意味でのオールド・タイム生活を垣間見たものだが、それはアイルランドでの生活とほとんど変わりはない。かけがえのない経験だ。

希花にも、もっともっと経験してもらおう。なめくじの一匹や二匹でピャーピャー言っているようでは…しかし、それでよく解剖なんて…と言うと、解剖でなめくじは出てこない、と言いやがるし、なかなか一筋縄ではいかないが、いいフィドラーになってほしいので我慢がまん。