2014年 アイルランドの旅〜ゴルウエイに戻る〜

8月11日(月)雨も晴れも曇りも全てが交互に

もう晩秋だ。寒くなって来た。昨夜はエニスでスーパー・ムーンを観測したが、今日も相当月が明るいので、ペルセウス座の流星群を見るのは難しいらしい。

街を歩くと、クリーナ(コーマックの妹)に出会ったり、フランキーに出会ったり、やっぱりゴルウエイだ。

白鳥もすぐ近くによってくる。道行く人が餌にするパンをくれた。多分希花を見て、子供が餌をやりたがっている、と思ったのだろう。10羽ほどの白鳥に混じってカモメが見事なフライング・キャッチを見せる。

こんな光景もやっぱりゴルウエイならでは、だ。

ゆっくり休んでフィークルの疲れを取ることにする。

 

8月12日(火)雨も晴れも全て

朝、起きたら晴れているのにどしゃ降りだ。天気雨、狐の嫁入りなんていうものではない。本降りなのに陽が射しているのだ。そして、あっという間に止んだ。もう青空が出ている。

結局、今日も夕方にはとてもいい天気になった。

鳥達も満足そうに餌に飛びついていた。

 

8月13日(水)晴れ

今日は珍しく朝からよく晴れ渡っている。日本の11月中旬のとてもいい天気の日、という感じだ。

ブレンダンと電話で話したが、今日は比較的電波がよく、また彼も家にいてリラックスしているせいか、分かりやすかった。

いつも忙しく、電波の悪いところから急いで電話してくることが多いので、ほとんど何を言っているのかわからないまま終えることもある。

時々あせってゲール語になったりもする。

今日はこちらもリラックス。晩秋の一日をゆっくり楽しもう。

と思いきや、9時に先日出会ったダーモットがセッションをやっている、というパブを覗いてみたら帰りが午前様になってしまった。

今日は休肝日、と決めていたのにギネスをごちそうになって、しんどい。

ゆっくり寝よう。

 

8月14日(木)曇り

早野先生、古矢先生(彼女達はどちらも教師だ)にいただいた鳥の図鑑で、ここに来ている鳥達の種類が判明。

最初によく来るのがどうやらSong Thrush(うたつぐみ)Starling(むくどり)そしてRobin(こまどり)この3種類のようだ。

教えていただいて感謝です。

今日は、昨夜会った、ミックというおじさんにギターを教えてあげる約束がある。

彼はDADGADも試したことがあるけども、昨夜僕の弾いているのを見て、やっぱり少しこのチューニングも真剣にやってみたい、と思ったらしい。

アイリッシュ・ミュージックにおいてギターはやはり教えるのは難しい。それでも一生懸命ノートに書いて、テープに録って、練習して2週間後にまた来る、といって喜んで帰って行った。

2週間後が楽しみだ。でも、それで全然進歩なかったら教え方が悪いのか、はたまた本人のせいなのか…まるでダイエットだ。

 

8月15日((金)晴れ 気温13℃

今日は69回目の終戦記念日。

僕の父は陸軍少佐として最初、サイパン島にいたそうだが、ほどなくしてトラック島に移った。もしそのままサイパンにいたら僕は生まれていなかった。それこそ南方諸島の状況はかなりひどかったようで、あまり話をしてもらった覚えがない。

終戦記念日になると黙っていそいそと日の丸を掲げる父の姿に、それが軍国主義に基づいたものだ、とか言えるものではなかった。

父が癌で亡くなってからもう30年。戦火のなかで生き延びてきた彼も癌には勝てなかったようだ。

全ての戦没者に黙祷。

さて、今日はアンドリューがオーラ・ハリントンと共に教会のコンサートにやってくる。

オーラもクレアー出身のダンサー兼フィドラーだ。

僕らも少し一緒に演奏した。パブとは違って、じっくりと目をつぶって弾く彼の姿が印象的だった。

オーラがホーンパイプで素晴らしいステップを見せてくれた。本日のハイライトだった。

終わってから少しの間アンドリューと希花と3人で飲んで話しをした。オーラはクレアーに戻り、アンドリューは明日スライゴーに行く。

僕らも先日会った“ピート・シーガー・モデルのダーモットとお昼頃出発してスライゴーに行くことになっている。

 

8月16日(土)曇り

午前11時15分、ダーモットとの待ち合わせ場所に行くと、時間通りみんなが現れた。ダーモットと他友人2人、それに僕らでいざ、スライゴーへ。

アイルランド音楽最大のイベント、フラー・キョール目指して。

10万人はきているらしい、なんていう情報もあるが、1週間以上続けてやるのでトータルで、だろう。

だが、小さな町、スライゴーの通りという通りは人でうめつくされていた。子供達がいたるところで演奏している。

このお祭りについてはネットでいくらも出てくるだろうし、他にもこのために日本から出向いて来ている人も沢山いるので、ここでは詳しく書かないことにする。

しかし、毎年行われるこの祭典のコンペティションで優勝したら、いちやくアイルランド中に有名になることまちがいなしだ。

勿論それでなくても名の出るミュージシャンは沢山いるが。

僕らもそれぞればらばらになって、人をかきわけかきわけいろんなパブをみてまわった。

ここでは、ジェリー・フィドル・オコーナーがフィドル・ショップを出している、というメールがきていたので、そこに行ってジェリーと会うのはひとつの目的でもあった。

小さな町なのでそれは簡単に見つかった。小さな町の小さな店にお客さんがいっぱい。アコーディオン部門はマーティン・クインが担当していた。

忙しそうだったので挨拶だけ済ませて、また通りに出た。

しばらく歩くとDunnesとPennysといういわゆるスーパーマーケットが一緒になっている大きなショッピング・モールがあった。

その中の1店舗であるコーヒー屋さんがMusicians Welcome Free Coffeeという看板を掲げているではないか。

行ってみよう、と希花と2人入って行くとショッピング・モールのいたるところで子供達が演奏している。

目的のコーヒー・ショップはちょうどスター・バックスのようなお店。希花が店員さんに訊きに行った。

「いつでもはじめていいよ。コーヒー持って行くからって言ってる」というが、それぞれに多くの人がくつろいでコーヒーを飲んでいるところで、突然楽器を出して弾く勇気はなかなか無い。

本当かな、と思いながら周りを見回しておそるおそる楽器を出した。少し弾き始めたら店員さんがにこにこしてコーヒー^を持って来てくれた。

どうやら本当だったらしい。そこで1時間くらい弾いているとおかわりも持って来てくれて、沢山の人が喜んでくれた。

このお祭りのために人が集まり、そしてこのお祭りのために街中がミュージシャンをサポートしていることがよくわかった。

ダーモットから連絡が入り、良い場所が見つかったからここで一緒にやろう、と言ってきた。

そろそろ1時間半にもなるので店員さんにお礼を言って店を出た。彼らは口々に「こちらこそ良い音楽をありがとう」と言ってくれた。

それからはダーモットと僕ら、フルート吹き、そして2人の少年バンジョー弾き。後からマンドリンやフィドルなども加わって大セッションに発展。

一人の少年バンジョー弾きの両親がずっと前、ロングフォードで僕を見たと言った。おそらく2002年頃だろう。パディ・キーナンとの演奏だった。そして帰り道、パーキングに向かって歩いていると、懐かしい顔が向かいから歩いて来た。バンジョーのブライアン・ケリーだ。

同じく2002年頃、家に遊びに来て、前の晩全く寝ずに飲み続けていてお腹が減ってしにそうだ、と言ったのでピザを食わしたら、馬のようにがっついて、と思ったらトイレに駆け込んで、吐いて、そしてケロっとしてまた食べたかと思ったらすぐバンジョーを弾き始めた奴だ。

あの時、まだ子供のような風貌で信じられないプレイを見せてくれたが、もうかなり大きくなっている。

YouTubeでみていたので分かったが、それでなければわからないかもしれない。しかし、バンジョープレイはかなりすごい、狂気に満ちたものがある。

少し話しをして別れたが、またいつか会えるだろう。

ゴルウエイに着いたのが9時45分くらい。ダーモットは「さぁ、無事にみんなを送り届けたから飲みに行くぞ」と一緒に行った2人とパブに入って行った。僕らはそこで失礼した。

彼に感謝だ。もし彼に会わなかったらスライゴーには行かなかった(行けなかった)だろう。