Irish Music その91

Kitty O’Shea’s     (Barndance)

★Kitty O’Shea’s

この曲を初めて演奏したのは、パディ・キーナンとのツァー中だったと記憶している。彼はたしかKitty O’Neil’s Hornpipeとして演奏していた。それは2パートのシンプルなものだったが、後になってEdel Foxとのツァー中、彼女が演奏したのは6パートだった。いや、7パートだったかもしれない。それくらい長くて混乱する曲だ。この人物は1870年代から80年代にかけてニュー・ヨークで活躍したダンサーということだ。Kitty O’Neil’s Champion Jigとよばれるこの曲。ジグでもないのに何故ジグなんだろうと思っていた。これは多分に時代によるものらしい。19世紀のアメリカでは2/4 2/2などでもミンストレル・ショーなどの躍動するダンスの象徴とされていたらしい。そういえば、何かの映画でブルース・ウィリスが全ての大活躍が終わった時「ジグでも踊るか」と言っていた。それがアイリッシュ・ジグに限ったことではないだろうことが、ここからも分かってくる。でも、なんでO’Neilと言ったりO’Sheaと言ったりするんだろう。一説によると、それはトミー・ピープルスが間違ってKitty O’Sheaと言ったのが始まりだ、と云われている。元々はKitty O’Neilだったはずだ。もっと調べればいろんな説が出てくるだろうが。ところで、最も古い資料では2パートだ、という説もある。

 

Billy in the Low Ground / Ragtime Annie  (Reel)

★Billy in the Low Ground

“これは決してアイリッシュ・チューンではない。アメリカン・オールドタイムと呼ばれるカテゴリーに入るものだろう。面白いことにSharon Shannonがやっているようだが、随分僕の知っているメロディとはかけ離れているし、タイトルもなにかもじったようなものになっている。僕はというと、70年代初頭、Nitty Gritty Dirt Bandの最初のアルバムで聴いたのが初めてだった。Uncle Charlie and His Dog Teddyというタイトルのアルバム。その中で マンドリンとギターでフェイド・インして入ってくるしゃれたやり方が印象的だった。後年、アイリッシュの世界に入った時、Maid Behind the Barという曲に出会ったが、どこまでもこの曲に似ていたが、どこかでクロス・オーバーしたのだろうか。とに角これは希花さんに古いギブソンで弾いてもらうことにしたが、とてもいい音で曲調にもよく合っている。

★Ragtime Annie

“これもアメリカン・チューンだがアイリッシュ・ミュージシャンにも好んで取り上げられている。僕は1922年頃のEck Robertsonの録音をよく聴いていた。おそらくこれが最初のこの曲の録音だと言われているが本当だろうか。日本では石田一松が「のんき節」を録音したのと同じ年だ。なお、ほとんどのブルーグラス・ミュージシャンは2パートで演奏するが、この録音を聴く限りではもともと3パートのようだ。その昔、宵々山コンサートでジョー・カーターと弾いたのはこの曲だった。このようにアメリカン・チューンでもアイリッシュ・ミュージシャンに取り上げられているものや、決してそうでないもの、また、その逆の現象もあるので、こと細かに見ていると面白い。