言わずと知れたオールドタイムに於けるバンジョーの奏法だ。最近はギターにも応用している人もいる。ジョディ―・スタッカーや、よく一緒に演奏したスティーブ・ボウマンなどがその代表だが(どちらもサン・フランシスコ)取りあえず今回はバンジョーに限って書いてみよう。
初めてこの奏法のことを知ったのは、多分ピート・シーガーの教則本だったかも知れない。彼自身はもうちょっとシンプルなダブル・サミングという弾き方を使っていたようだが。
スリーフィンガーといわれるブルーグラスに於けるスクラッグス・スタイルとは全く違って派手さはないが、そのなんとも言えない味わいのあるサウンドには随分前から興味があったし、それなりに極めてみようかという考えも持っていた。
しかしそこには多くの面倒なことが存在する。
まず、中指の爪の甲と親指の2本指だけでメロディを作りださなくてはならないので、考えようによってはスリーフィンガーよりも複雑だ。
というより、スリーフィンガーに比べて無理も生じてくる。
そのために、その曲だけに使うチューニングというものも考案しなければならなくなってくる。必然性を求めるわけだ。
そして、厄介なのがそうして綺麗にメロディを創りだしても、いわゆるスタンダードなキーで演奏できるとは限らない。
例えばMiss McLeord’sという曲。スタンダードにはAmajかGmajで演奏される。だが、Cチューニング(この場合gCGCE)にして創り出すメロディがとてもきれいなのだ。そうなるとどうしてもCか、カポをしてDでの演奏がベストなサウンドになる。
勿論、普通にGチューニングでも演奏できないことはないが、それでは本当に普通になってしまう。
そんな風に他の人と合わせる時などにいろいろと面倒なことが起こる。
更にアイリッシュ・チューンなどをその道の第一人者Ken Parlmanを筆頭に、多くの人が実に見事に演奏するが、それはソロ・パフォーマンスという評価でしか語れない。
リズムも違ってくるし、メロディも多少変えなければいけない部分も出てくるし、キーも曲によってはスタンダードなキーでは演奏できない、ということも出てくるし、しょっちゅうチューニングも変えなければならない、ということも出てくるだろう。
それを考えなければ、とても魅力的な奏法だ。
特にある程度歳がいってくると、スリーフィンガーのような細かい奏法よりも、よく言えば味わい深いこの奏法に移行していく人も多いようだ。
そして、この奏法は多くの場合、リゾネーターのないオープンバックのバンジョーを使用するので、何といっても軽い。年寄りにはやさしい物となる。
そんなクロウハンマー(フレイリングあるいはドロップサムとも呼ばれる)を今一度研究してみようかな、と思っている今日この頃だ。