気になる、というのは人それぞれ”なりどころ”が違うのだろう。だから一概に「あんたこれが気にならないの?」などとは言えない。
僕は肌に関する感覚としてよくあることだが、麻などの生地が苦手だ。例えばチベットなどの民芸調織物とかというのは苦手で、それらの素材の手袋など、見るだけで痒くなる。
時として「どうしてこれが痒いの?」と言わんばかりにそういうものを身につけている人もいるが、僕は見るだけでも痒くなってしまうのだ。
僕らが子供のころ、よく洗濯物に「糊」と言うものが付いていることがあったのだが、それはそれは苦手だった。
ここまでは洋服などの素材の話で本題とは少し違う話だが、先日友人と寿司屋に行った時のことだ。
寿司屋と言ってもくるくる回るところ。
カウンターに座って、さてオーダーを決めようかな、と思っていたらふと隣に座っている3人の有閑マダムの会話が耳に入った。
その昔、有閑マダムというのはとても勇敢な女の人のことだと思っていた。
それはともかく、マダムと言うには少し歳がいっているその3人のうちの一人が「白魚がまだきていないわね」と言った。
他の二人も「そうね、訊いてみましょうか」と。彼女達はもうすでに随分皿を重ねている。
やがて、職人は忙しそうだったのでウエイトレスを呼んでそのことを伝えた。
ウエイトレスはベトナム人。最初は話がうまく通じないようだったが、大したものである。「シラウオですね」と言うと職人を呼んで「スミマセン、シラウオマダデス」と少したどたどしい感じで言った。
職人は「わかりました。今すぐに」と言っていたが、さぁ、この辺から気になりだしたのだ。
昔「出前の醍醐味」なる記事を読んだことがある。
「今作っています」「これから出るところです」「今そちらに向かっています」まことしやかにつかれる嘘を承知で受け入れる。
また受け入れる側が信じている、信じていないに関わらず嘘をにこやかに押し通す。このやり取りこそ出前の醍醐味である。という記事。
やがて彼女達は「そろそろ行きましょうか。まだ作っていないようね」無理もない。あれから10分以上は経過している。
僕がレストラン勤めの経験があるからだろうか。
他所でも、あそこの客がまだオーダーを聞いてもらえてないとか、水を欲しがっているんではないかとか、やたらと気になって仕方がない。
そんな時、代わりにウエイトレスに知らせてあげたほうが良いのか、余計な御世話なのか難しいところである。
今の世の中、そういうことをすると「変なおじさん」と言われかねない。
ところで白魚は…。夜、布団の中でも気になってしまった。