Alec Brownと共に

ひょんなことから日本に来てもらうことになった彼。

去年の12月に続き2回目だったが、事実上初来日と言えるくらいに前回は短い滞在だった。あれじゃいくらなんでも可哀そうだったんじゃないかと思い、今回は約1ヶ月。

もちろん理由はそれだけではない。

もしかしたら何か形にできるんではないか、という希望が前回で見えたからだ。

アメリカはアーカンソーの生まれ。オザークマウンテンが走るその地方で生まれ育っただけにブルーグラス、オールドタイミーにも明るい。

それにアイルランド音楽研究者ということ。そして今回さらに、やはりアメリカの若者ということもあり、ブルースやポップスにも興味がある、と言うことを再発見した。

ジョン・ハートフォードをこよなく愛し、トレイシー・チャップマンの唄を歌ったり、サム&デイブなどを聴いて感激するなど、結構僕と近い音楽体験を持っている。

かと言って、

世代が全然違うのでノーマン・ブレイクのRising Fawn String Ensembleは初めて聴いた、など、彼にも新しい発見をしてもらったようだ。

クラレンス・アシュレイのCuckooなどにもえらく感動したようだし、僕らが1960年代、まだ15~16歳の時に聴いていたものなんかも彼にはどこか懐かしかったのかもしれない。そういう環境で育ってきたのだろう。

僕らの音楽にもいい具合に溶け込んでくれたようだ。

練習時には一生懸命コード譜をチェックしていた彼。その上「お客さんの前で見てはいけない」という考えであることを聞かされた時には「これはいける!」と思ったものだ。

スタジオ・ミュージシャンやバック・ミュージシャンではないのだし、ましてやこういう音楽で楽譜を見るなんて、いかに体で、そして心で演奏することが出来ていないかを人前でさらすことになってしまうのだ。

お互いを見ながら、お互いの音を聴きながら演奏をする。これこそが大切だ。

アレックはそういうことが良く分かっている奴だった。

希花さんと同世代。2人のお姉ちゃんに叱られながら育ったという彼。

希花さんにも叱られながら日本で楽しい時を過ごすことが出来たに違いない。

各地のコンサートに足を運んで頂いた皆さんに感謝です。