2019年 アイルランドの旅 8
8月8日 (木)晴れ。
今日は一日エニスでゆっくりすることにした。明日からはおそらくゆっくりしていられないだろうし、体を休めておかないと。
それでも夜はどこででも行われているセッションでものぞいてみようと街に出る。
いかにもアイルランドらしい寒々とした雨が降っている。そんなに強くはないが。
いくつかのパブを覗いた中で、知った顔を見つけた。フランシス・カスティーだ。若いバンジョー弾きと、フィドラー、それに前日フィークルで出会ったベルギーからのフィドラーとオランダからのパイパー。そんな組み合わせで上質なセッションが繰り広げられていた。
バンジョー弾きのキーガンという若者が一生懸命になって椅子を用意してくれて結局、ちょっと覗いて帰るつもりがやっぱり12時頃になってしまった。
良い人ばかりの良いセッション。エニスの夜が更けていく。
8月9日 (金)曇り。
今日はTullaに向かうが、その前に腹ごしらえ。Dunnesというスーパーマーケットのカフェテリアでコーヒーやポリッジなどをいただいたが、安くて量もあって…とは言えども決して美味しいとは言い難いが、まぁ満足のいくものだった。
これからエニスではここが無難かな、という話に落ち着いたのだから決してそんなに悪いわけでもない。
さて、Tulla アンドリューの家だ。第二の故郷。家の中の細かい配置などは多少変わっているものの、村の景色は少しも変わっていない。
あるべきものがあるべき場所にある。
おそらく初めてこの村を訪れた20年前と何ら変わらないのだろう。しばし感傷にふけった後Feakleに向かう。
Pat O’ConnorとJohn Cunnyのセッションで演奏。フェスティバルも週末になり、徐々に人が増えてきた。
Patはのってくると止まらない。次から次へとチューンを出してくるが、僕らは2時にPepper’sでアンドリューと待ち合わせをしているのでそろそろお暇します、ってな具合に身支度を整えると、一緒に弾いていたPatの奥さんのエリカさんがニコニコして「あ~助かった」と言っていた。それくらいにとどまるところを知らない良いプレイヤーだ。
さて、アンドリューは時間通りに待っていた。もう何杯くらい飲んでいるだろうか。もちろんタクシーを呼んでいるのでそれで帰るのだ。
アンドリューのお姉ちゃん、マリーさんのご主人であるケヴィンと4人で乗り込んでタラまで。約15分くらい。
さぁ、帰ってからが大変。
アンドリュー嬉しそうに「なんか録音しよう」と言って機材をキッチンにセットし出した。マイクロフォンをたて、フィドルのマイクを天井からぶら下げ、よれよれに絡み合ったコードをつなげる。「おかしいなぁ」と何度も何度も文句を言いながら、それでも何とか繋がっていざ本番。
もちろんシビアーなレコーディングには程遠く、デモテープくらいのものだが。録ったものを聴いてみると呆れるくらいに音がいい。
これは一つにはこの空気感によるものか。はたまたベロンベロンになったアンドリューのイーストクレア魂に僕らも引っ張られているのか。
思えば僕にとってはここから始まったようなこの音楽。そしてその僕と毎年行動を共にしてアイリーン・オブライエンやカレン・ライアン、マーク・ドネランなどの錚々たる面子に揉まれてきた希花。
そんな僕らと嬉しそうにしているアンドリューだが、果たしてこの感じはそのまま日本に持ってくることができるだろうか?否だろう。
ここまでの彼をみることはここ以外ではなかなかできないことかもしれない。
就寝は結局5時。日も短くなってきたので、そろそろ明るくなってきていたかな?よく覚えていない。
8月10日 (土)小雨
どうやら5時間ほどは寝たようだ。小雨の中、メインストリートを少しフラフラしてみた。200メートルほどしかないこの通りにレストランが2軒、ファストフード店が1軒、パブが4軒、肉屋が一軒、洋服屋さんが1軒、雑貨屋さんが一軒、20年前にできたばっかりの自然食やさんが1軒、美容院が一軒、食料品を売っている大手の(決してでかくはない)マーケットが1軒、しょぼい食料品屋が1軒…これで終わりかな。もしかしたらもう一軒くらい雑貨屋さんがあったかな。あとクリーニング屋もあったか。僕がよくアンドリューの服を持って行ったり受け取りに行ったりしたところだ。
みんなどうやって生活しているんだろう。
僕らは、僕が初めてここを訪れた時にできたばかりのレストラン「Flappers」で食事をすることにした。僕はケイジャンチキンラップ、希花さんはバーガーというこの辺りではお決まりの間違いないものにしておいた。
何にせよ、各自一緒についてくるチップス(フライドポテト)の量たるや、マクドナルドの大の5個分は軽く超えているだろう。とても食べきれるものではない。
それを横の爺さん婆さんが普通に食べている。
さて、4時半頃ケヴィンの車で、僕らとアンドリュー、そしてお姉ちゃんのマリーさんとでフィークルに向かう。
5時からアンドリューと。10時からジョセフィンと。
2時半を過ぎた頃、ジョセフィンと共に帰宅。帰ってきた頃には上がっていたが、結局今日は一日中雨だった。
8月11日 (日)晴れ、時々小雨。
久々にこちらに在住の赤嶺くんとゆっくりお話しした。それと京都大学の院生で、やはりこちらに長期滞在していて、もうすぐ戻るらしいけど、なかなかしっかりした学生さんの雨宮さんも交えて食事。
楽しいひと時も過ぎて行き、これまた別な楽しさのアンドリューとの演奏で8時頃まで。アンドリューは別なものが6時からあるので、僕らに任せて一足先に抜け出したが、最後までいいセッションだった。もちろんまだ続けることも可能だが、9時半からまた呼ばれている。
ピート・クイン、カレン・ライアン、アイリーン・オブライエン、アンドリュー、そして僕ら、という不動のメンバーだ。
さぁさぁこれがまた止まらない。お客さんの「狂喜乱舞」とはこのことだろう。全員の「鬼気迫る演奏」というのもこのことだろう。
パブの従業員が「もういいだろう」と言ってもなかなか止まらない。
それでも2時半にパブを出て前庭のベンチに座り又しても「さぁみんな楽器を出そう」と言い出すアンドリュー。そこで始めて時刻はもう
3時をとっくにまわっている。
ケリーから来ていたフィドラーのカップル達と家まで戻った。それからアンドリューが「昨日の録音を聴いてみよう」と言いだし、しばし歓談。又しても4時は軽く過ぎていた。
8月12日 (月)晴れ。
朝から…と言えども昼近くから恒例のハムサンドを作り、アンドリューの提案で3人のビデオを作ることになってスマホの操作に奮闘。
これもラフだが録音をした音を流し、ビデオを録った。ご満悦のアンド流。お、これも面白い変換だ。
今日はエニスからカーロウに向かう。
アンドリューの車に揺られて又してもしばしクレアの景色に魂が溶け込んでいた。
エニスから乗換駅のリムリックに行く電車の中で見慣れた顔の男が声をかけてきた。アレックだ。アレ、ビックリだ。
ちょうどゴールウエイからリムリックに帰るところだ、と言っていたが偶然にもほどがある。まぁ電車の数も少なくて、京浜東北線や阪急電車で誰かに出会う確率よりは多いのかもしれない。
久々にキアラン君とチャイニーズをテイクアウトしてゆっくりし、今日は12時前くらいには寝たいな、と思っていたが気がついたら2時にもなっていた。クレアからの時差ボケか…?