New Album「Collage」の紹介

2021年は録音に時間を費やしました。といえども、まだまだ続いております。

今回の作品「Collage」は、前作の「The Strings」とは全く違うコンセプトです。

希花さんは全ての楽器を駆使し、僕は5弦バンジョーを数曲、久々にスリーフィンガースタイルで弾いてみました。

ここではライナーに書き切れなかったことや、よもやま話を少しだけ書いておきます。

Horse Keane’と云う曲はMick Moloney Robbie O’Connell Jimmy Keaneのアルバムから覚えた曲です。最初はあまり好きな曲ではなかったのですが、何度か聴いているうちに、可愛らしい良い曲だな、と思えるようになりました。聴いていただいたら分かると思いますが、とても微笑ましい曲です。僕らはコンサーティナとバンジョーという編成で演奏しています。そしてそのままSally Annに入ります。ここはクローハンマースタイルのバンジョーとフィドル。お決まりのオールドタイムスタイルです。Sail Away Ladiesとしても良く知られているこの曲ですが、少しだけアレンジしております。

Stephen’sはNoel Hillの甥にあたる、同じくコンサーティナ奏者であるJack Taltyの曲。これは聞いた途端に希花さんに音源を送り、録音に踏み切りました。ちょっとだけ僕が創ったイントロをガットギターで付けています。牧歌的な雰囲気を持った曲なので、そんな景色が見えたらなぁ…と思っています。

Blackwater Sideは僕がアメリカで参加していたバンドCronanのシンガーであるRebeccaが歌っていたものをソースにしています。Bert Janschの演奏も有名ですが、元々は70年代のAnne Briggsの唄でよく聴いていたものです。なので、Rebeccaがこれを唄い出した時もごく自然の成り行きで僕のイントロと間奏を付けました。続いてVincent Broderickの名曲Crock of Gold. 普段はフィドル&ギターで演奏していますが、今回はマンドリンとギターに、オクターブマンドリンをかぶせてみました。レコーディングならでは、ですね。驚きなのは希花さん、この曲はマンドリンで弾いたことがありません。マンドリンでやったら可愛いんじゃない?という意見が出た直後、録音を済ませました。

The Coalminerは良く知られている曲ですが、ほとんどのケース、Gで演奏されるようです。僕らは今回Dで演奏しています。そうしていろいろ見てみると、結構Dで演奏している人もいることに気がつきました。シンプルな、いい曲だと思います。続くLucy Campbellは必ずといっていいほどDで演奏されます。Gで演奏することでとても落ち着いた曲に聴こえますがいかがでしょうか。これらの曲はイーストクレアでのセッションを想い出させてくれます。

Mr. O’Connorはジャッキー・デイリーとアレック・フィンの演奏で覚えたものです。とても分かりにくい曲ですが、慣れてくると癖になる魅力的な曲だと言えます。しかし、ここまでくると、もしかしたら間違えて採譜されているんではないか?と疑いたくなるような曲であることも否めません。Turlough O’Carolan13番目の作品と云われています。

Polly Put the Kettle On は古いチルドレンソングでマザーグースにも登場しますが、かなりメロディが違います。多くのバージョンが存在するので、どれが正しいというわけではなさそうです。僕はルーカス・プールの演奏から覚えましたが、その昔、ナターシャーセブンで「やかんを持ってきて♪」と歌ったのは同じ曲のまた別なバージョンです。この曲は収録リストには無かったのですが、ちょっとやってみようか、と相談して始め、1回だけ録音してみました。テイクワンOKです。そしてそのままBrian Finneganの今どきチューン、Donegal Lass. 何気なく5弦バンジョーのマウンテンマイナーチューニングで試してみたところ、お、なかなかいいな!と自己満足の録音をしてみました。典型的クローハンマースタイルから8分の6拍子のスリーフィンガースタイル。相反するような2曲ですがいかがなものでしょうか。僕はかなり気に入っています。

January Snowsはケビン・クロフォードのプレイから想い出したものです。初めて聴いた頃、Ann BriggsやDick Gaughanの唄が気に入って聴いていました。最近、Seamie O’Dowdが歌っているものも聴いたけど、どれも名演だと言えます。僕も大好きなメロディのひとつです。過去にも録音したことがありますが、今回はこの後、大好きなホーンパイプHumours of Tullycrineを持ってきました。初めて聴いたのはTerry Binghamのコンサーティナ演奏でアンドリューとのトリオで演奏した時。アンドリューが面倒くさかったのかTerry’s Hornpipeと言っていたのを想い出しました。

Out of Jointはずっと僕のヒーローであるビル・キースの作品です。彼の独特なコード感覚は音楽の成り立ちが良く分かっていないと生まれてこないものかもしれません。1977年にマッドエイカーズと共に来日した彼を家に呼んで音楽談義に花を咲かせ、その時にこの曲を教わりました。彼の残した1972年のレコーディングとは少し違うバージョンで、更に音の進行が複雑だったのを覚えております。以後、その時の記憶を基に時々弾いていましたが、今回の録音では久しぶりでした。ビル・キースの演奏にはどれも素晴らしい展開の音が含まれているのですが、長く弾いていないと頭が混乱して指が付いて行きません。気がついたときに、少しずつでもいいので彼の曲を弾いてみると「ボケ防止」になるかもしれません。

Crested HensはSolasの演奏で有名になった曲…かな?最初聴いたときには、なんか歌謡曲か演歌みたいな感じだなぁ、と思い、あまり好きにはなれなかったのですが、確かに美しいメロディではあります。いかにもフランス人が書いた、とも云えるかも。僕らの演奏はフランス人に評判のようで、フランスからのコメントも多かったりします。ひょっとして彼らも演歌とか好きなのかなぁ。僕はどうも…???だ。なお、作者の名前ですが、ライナーの日本語表記の部分ではGillies Chabanat作、とありますが、正しくはGillis Chabanatです。アメリカ人がeを入れていて、後から「ごめん、フランス人の名前でGillisだった」とコメントしていましたが、そのコメントに気がつかなかったのでそのまま載せてしまったのです。この場を借りて、彼にお詫びをしておきますが、どうか無駄にならないように。なお、英語表記ではちゃんとしているのでお許しを。Lusignacは偶然見つけたChris Wood & Andy Cuttingのライブ映像から学んだものです。この人達の演奏から学んだ曲、というものも今までにいくつかあります。

Limerick Lamentationはコメント不要なくらい有名な曲です。歴史的には、リムリック砦包囲戦(1689-1691)で戦死した兵士たちに対する哀歌でしょうか。Irish Lamentationとも呼ばれるこの曲、うる覚えのまま時々ギターで弾いていたものですが、好きな曲だったので今回収録してみました。

Waltz Mareka-sanは、アコーディオン奏者のJohnny Og Connollyが希花さんのために書き下ろした曲に僕がコードを付けて二人でアレンジしたものです。Johnny Og の作品には希花さんのお気に入りのものが多く、以前にも録音しているし、一緒に演奏したこともあるので彼女にとっては大変嬉しいことだったはずです。マンドリンの音色が可愛らしいと思いますが、さて、どの楽器で演奏してみようか、などと相談するのも楽しみのひとつではあります。

小さい秋みつけたについては…もうなにも言う事はありません。美味しいものを沢山食べて、良い旅行ができて、仲間たちと会えて…そんな秋になりますように。