フィドル

2021年3作目のアルバムは僕らの基本的なスタイル、フィドル&ギターというところに重きをおいてみた。

これまでハープ&ギター、そして様々な楽器のものが2作目。どちらも希花さんのフィドルはあまり登場していない。

なので、今回はフィドルを少し多めにしてみた訳だ。

10年前、このデュオを始めた時、これはもっともっと本場のプレイを聴いたらいい、と思ったものだ。

それは音楽だけではなく、生活感も空気感も全てがこの音楽に結びつくという考えからだった。僕が1984年にカーターファミリーと過ごしたあの時のように。

更に、そこに住むという選択肢も無いことは無いが、そこで得た体感を自分自身の感性と結びつけるのには、少し離れたところに身を置くことも必要だと思う。

そして、もはやアイルランドのあちらこちらで一流のミュージシャン達に認識されるようになった希花さんだが、そこは賢い性格が邪魔してか、なかなかフィドル・メインのアルバムを作ろうとしなかった。

そこにはこの音楽に対してのリスペクトが大きく関わっているのだろう。

ただ、僕も思うにそれは本当に大切なところだ。

ある程度のテクニックは他人に教えることが出来るが、それ相当の責任を持たなくてはこの手の音楽を他人には教えることが出来ない、と云うのが僕の考えだ。

なので、アルバム作りもそれと同じだと考えている。

ちょっと考えすぎかもしれないが、ただ「いい曲」「好きな曲」と云うだけではなく、その曲に秘められた背景や歴史的な物語などを知らなければ、ただ楽譜にあるだけのものになってしまうからだ。

僕は95年くらいからティプシーハウスで演奏し出して、そこを深く意識してきたが、恐らく107ソングブックの時から持っていた感覚だったのかもしれない。

なので、希花さんもそれはこの10年ずっとみていることだ。

上手い人は一杯いる。でも、造詣の深いミュージシャンこそが真にこういった歴史ある音楽を奏でることが出来ると信じている。

理屈はともかく、この10年でアイルランドを代表するくらいのフィドラーの一人となった希花さんのプレイと、今回はブルーグラスタッチの5弦バンジョーも収録されているし、久しぶりに僕は1899年製のマーチンでも1曲弾いたし、この3作目を是非楽しみにしていてください。

ありゃ、結局CDの宣伝みたいになってしまったけど、とに角フィドルをフューチャーしたアルバムに乞うご期待を。まだまだ現在進行中です。