2022年 アイルランドの旅 3

約一週間前に日本を出た時はゾッとするくらい暑かった。今日は8月4日。

ここゴールウェイはなかなかの天気だ。良い天気という意味で。気温は13℃ということ。

風が冷たくて日差しが暖かい、という理想的な気候だ。

昨夜は、昼に一旦別れたフランシスとちょっと一杯飲むか、ということで待ち合わせをした。

一応フィドルとパイプを持って、バスで街まで出て来たので、近くの有名なパブに行ってみた。

もちろん、オーナーも昔からよく知っているところだが。

2階ではアンダース(アコーディオン奏者)が7~8人のミュージシャンに囲まれてセッションも佳境に入っていた。

ちょっと眼で合図をしてから下の階にいくと、フランシスがバーテンダーと何か話している。

そこの空いている席で演奏してもいいか?と訊いて来たらしい。

これが、なかなかアイルランド人でないと出来ないことだ。

そしてバーテンダーが快く承諾してくれ、驚くことにパイントを買いに行ったら「店のおごりだ」という。

これでは下手な演奏は出来ない。

さぁ始めようとした時、隣の席にいた集団の中からおじさんが立ち上がり話しかけて来た。

「何ということだろうか。あんた知ってるよ!俺シカゴから来ているんだけど、20年くらい前にパディとフランキーとシカゴに来ただろう」

世の中狭いもんだ。

僕らが演奏を始めると多くのオーディエンスが寄って来た。そしてフランシスがもう一杯いくか?と立ち上がり、バーテンダーの方に向かい、

戻ってくると「これもおごりだそうだ」と嬉々として言う。

こんな風に奢って店の方は大丈夫かな、と心配になるが、隣のおじさんのグループ6人くらいは一体何杯目なんだろ。

そんなグループや、1人でフラフラしながら飲んでいる人がワンサといるパブにとって、大切なミュージシャン達に酒を出すのは当たり前な事なのかもしれない。

結局、2時間ほど演奏して店を出ると、まだビールにうしろ髪を引かれている様なおじさんがヘロヘロになって話しかけてくる。

めんどくさいので「帰りは気をつけて運転して帰れよ」と言っておいた。

もちろん近所の常連さんだろう。もう自転車にも乗れないくらいフラフラだった。

こちらもフランシスのおかげで気持ちのよい晩を過ごすことができた。

今は4日の午前10時半。日差しが降り注ぎ、冷たい風が吹き、緑一杯に囲まれて流れている川の堤防の様なところで、サギらしき鳥が佇んでいる。

昨夜も同じところにいた様な気がするが、まるで毎日朝と言わず晩と言わず、同じパブで見かけるおじさんのようだ。