Irish Music

今回から僕らのレパートリーについて詳しく書いてみよう。いつまで続くか、そして、

あまり書くべきこともないものもあると思うが、アイリッシュ・ミュージックに本格的に取り組みはじめてから23年あまり、希花とのデュオを組みはじめてから3年目、アイリッシュ・ミュージックのひとつの要素であるレパートリーの数もだいぶ増えてきた。

ここらで、どの曲がどういういわれを持って生まれてきたか、その発祥は分からなくても、数多く存在する曲たちにどんなストーリーがあるのか、などを考えてみるのもこの音楽に対する大切な接し方であろうと感じたからだ。

まず初回は、このセッとから。

Broken Pledge/Tommy’s Tarbukas/Reel Beatrice/Eileen Curran/Pachabel’s Frolics

この5曲のセットはデュオを組むきっかけともなったものだ。

★Broken Pledge

“10歳になった頃のフランキー・ギャビンに兄のショーンがフィドルを弾くように言い、持ってきた曲がこれだったそうだ。そして、フィドルの練習というのは耐え難い音を伴ううえに、こんな難しい曲はないだろう、と思ったそうだ。でも、最初にへんてこなやりにくい曲から始めたら、後の航海は楽になる、と彼は言っている。でも、そこでやめてしまうひとがほとんどだろうに。誰の作かは不明なようだが多くの録音が残されている。あまり好きではないが、ジグとして(アレンジ)演奏する人もいる。以前からよく知っているバンジョー(5弦)弾きのTony Fartadoが素晴らしいメロディック奏法での録音を残している”

★Tommy’s Tarbukas

“これはAlasdair Fraserの曲だが、Sparkyというタイトルでも知られている、とてもテクニカルなかっこいい曲だ。1985年から87年の間に書かれた曲で、最初はBang on the Floorと呼んでいたそうだがSharon ShannonがSparkyというセット名にして何曲かメドレーで演奏しているので、そちらのタイトルを知る人も多い。Tommyとはいわずと知れた(でもないか)Tommy Hayesのことだ。

彼をパーカッション奏者としてレコーディングを行ったAlasdairがこう名づけた。Tarbukaというのは太鼓の一種だ。ジャンベというものがあるが、あれに似たもの“

★     Reel Beatrice

“最も有名な演奏はLiz Carolによるものかもしれないが、ジプシー・フィーリングあふれるこの曲はケベックのフィドラーJean Carignonの作ではないか、という人もいる。また、同じくケベックのAndre Alainの作だという人もいる。だが、この曲はイタリアの曲で、ある地方ではアコーディオンによってよく演奏されている、という話もある。いずれにせよとても楽しい3パートの曲だ。

★     Eileen Curran

“またの名をSailor’s Returnというが、そちらの名前はあまりポピュラーではないと思われる。いずれにせよ、1903年にはもう採譜されているのでかなり古い曲であり、作者も分からないそうだ。また一説には18世紀のLady Dalrymple(strathspey)のReelバージョンともいわれている”

★     Pachabel’s Frolics

“Eileen Iversがかの有名なPachelbel’s Canonをもじったものとするのが一般的な説であるが、これはもともとケイプ・ブレットンのフィドラー達がよく演奏するKohler’s Hornpipeである、という説は非常に面白い。

また、Martin Hayesの演奏でもとても有名だ。

 

こういった事柄には興味がない方もおられるだろうが、少なくともアイリッシュ・ミュージックをこよなく愛し、また、この音楽の本質を理解する努力を惜しまないきもちで、この音楽に取り組む人には大切な事柄だと、僕は感じる。間違っていることも、また全然説明不足の事柄もあるかもしれないので、様々なご意見をいただくも結構。ただ流し読みして、へー、そうなんだ、と思っていただくのも結構。

ともあれ、まだまだこれからの人生をかけても書ききれないくらいのレパートリーがあるので、すこしずつでも書いていこうと思っています。