サイモン・ラトル指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

奇跡の再会から2年。今回はメールで数回のやり取りをしていたので、20日午後5時に会場であるミューズ川崎に向かう。

サイモンは僕と希花に大きなハグをしてくれて「よく来てくれた。今からリハを見てくれ。君たちの席も用意してあるぞ。ところで元気か?」と本当に気さくに接してくれる。

僕みたいに昔から気軽に付き合ってきた人間とは気楽に話せるのだろうか。いや、彼は誰にでも愛嬌があって結構気を使わせない人なのかもしれない。

しかし希花にしてみたらこれは夢のようなことかもしれないのだ。ベルリン・フィルのリハーサルを、しかもサイモンが「僕についておいで。どこに座ってもいいぞ。全部君たちの席だ」と笑いながら言ってくれる。そんなことが実現するなんて考えてもみなかったはずだ。

コンサートはやはり素晴らしかった。隣には彼の奥さんと8歳の男の子。客席の人達は誰もが陶酔して聴き入っている。とはいっても僕はあんまり詳しくない。オーケストラの指揮者ってよくわからないのだ。

演奏者たちの素晴らしさはわかる。

ともあれ、指揮棒を振っているサイモンを見るのは初めてだった。すしを食べながら無邪気に遊んだり、僕のギターやバンジョーに合わせて机を叩いたりしている姿くらいしか知らなかったのだ。

希花はさすがにオーケストラ経験があるだけに、サイモンの素晴らしさが良く分かるようだ。勿論団員たちの素晴らしさも。

サイモンは夜の飛行機でバケイションに飛び立って行った。その前にありがとうを言って、再会を約束した。

「今度はもっと時間をつくってゆっくり会おうな」サイモンはそう言って沢山の人に囲まれて去っていった。

「クラシックをやっていたら叶わなかったようなことがアイリッシュをやっていてどうして…?」と前回そう言った希花の言葉が蘇った。