今年は彗星の当たり年だった、ということで、つい最近もいくつかの彗星が観測できたようです。
そこで思い出したのが「百武彗星」
1996年の3月(調べてみてわかったことですが)、僕とジャックとデイルの3人、そうです「ジョディース・ヘブン」でストックトンという街に演奏にでかけました。
ストックトンはジャックの生まれ故郷。サン・フランシスコから東へ約130キロ離れた小さな街です。
因みにストックトンは静岡市と姉妹都市関係にあるそうです。お茶とみかんはないだろうけど。
その街にあった、これも小さな「Blackwater Café」そこで僕は「ティプシー・ハウス」のメンバーとして‘95年の確か9月にデビューしたのです。1曲目は「Providence」だったと記憶しています。
それからほとんど月に一回のペースでこの小さな街に出かけ、この小さなコーヒー・ハウスで演奏して来ました。
‘96年の3月はシアトルからデイルを迎えての、この地区での初めてのジョディース・ヘブンのお披露目だった、と記憶しています。
9時から始めたライブを11時頃終え、ジャックの古いボルボに乗り込んで帰路に着きました。
その時だったか、彼らの会話に吹き出しそうになったのを覚えています。
ジャック「お米を美味しく炊く方法を知ってるか?」
デイル「さぁ、知らないな」
ジャック「米を洗うんだって」
デイル「へー」
僕「はっはっはっ(笑っている)」
二人「何がおかしいんだ?」
僕「だって、当たり前すぎて」
そんな会話から、今日のあの曲は…などの話し、次はあれやろう、これやろう、とわいわい言いながら、真っ暗な田舎道を走っていました。
田舎道というよりも山道と言った方が妥当かな。とにかくその日、百武彗星が最も地球に接近する、などと言う事はとっくに忘れていました。
カフェを出てから1時間ほど経った時。突如として目の前が明るくなりました。真っ暗な丘とも山とも言えるその陰から百武彗星が顔を出したのです。
尻尾がキラキラと輝いて、とてつもなく大きな光の塊がゆっくりと動いています。「ジャック、山の上に登ろう!」僕とデイルが叫びました。
ジャックも一目散にアクセルを踏みます。
彗星はいつものジャックくらいゆっくりと動いています。そしてジャックよりも大きな体で沢山の子分の星を引き連れて、悠々と空の散歩を楽しんでいるようです。
僕等はしばし、誰もいない真っ暗な山の上から宇宙の神秘を見つめていました。時間にして20分くらいだったかな。
そして、段々小さくなっていく彗星の後を追うようにして帰路につきました。
これが、僕にとって今まで見た一番大きな星でした。おそらくこれからもあれだけ大きな彗星を見ることはないかもしれません。