Irish Music その76

Da Slockit Light  Air

  • Da Slockit Light

SlocketともSlokitとも書く。この曲を初めて聴いたのは、定かではないが70年代後半に手に入れたThe Fiddle Music of Shetlandというアルバムからだったと思う。真っ白いひげのおじいさんがフィドルを作っている。背後の壁にはいっぱいフィドルが並んでいる。それも白黒写真で、という明らかに“ジャケ買い”といえるものだった。Tom Anderson/Aly Bainというデュオアルバムだった。Aly BainThe Boys Of The Loughでお馴染みだったがTom Andersonとは、まだ誰だか知らなかった頃だ。そのアルバムの中のこの1曲はすぐにお気に入りの曲となった。それこそがTom Andersonの名作だったのだ。後年、僕は故坂庭省悟と共にツイン・ギターにアレンジしてよく演奏していたものだ。最近、クラシック畑の人が“シェトランド・エアー”と名付けてこの曲を演奏していたりするが、どうやら出どころを知らないらしい。Tom は1970年のインタビューでこのように答えている。

「それは1969年の1月の終わりころ、生まれ故郷のEshanessという村で見た光景だった。子供の頃は多くの灯りが灯っていたこの村も、一つ、また一つと灯りが消えていった。そして、それはまるで最近あの世へ旅立った自分の女房の想いでと重なるようだった。その時、古い言葉Slockitという文字が頭に浮かんだのだ。そして、その意味は“消えていく灯り”」彼のこの言葉を知らずしてこの曲を弾くわけにはいかない”