ひとりバンジョー談義

  Allisonというメーカーのバンジョーのことを調べていたら、Rhode Islandにある、Providence Banjo&Guitarという場所にたどり着いた。どうやら正確にはMichael Allisonという人物らしい。

これは、以前にも書いたかもしれないが、ニュー・ヨークのソーホーあたりで見つけ、そして暫くしてカリフォルニアで手に入れたものだった。

アイルランドのロングフォードにおけるバンジョー・フェスティバルでAlison Brownと一緒になった時、彼女も「あ、アリソンだ。Lがひとつ多いけど」と言っていたものだ。

日本では、彼の有田君が「とてもいいバンジョーですよ」と言っていた。坂庭君もいたく気に入って一時期彼が使っていたこともあった。

あまり一般的ではない楽器のルーツを探ることはとても面白い。

しかしそれはバンジョーに限ったことではない。マンドリンでもギターでも、もちろん、僕らにはあまり縁のない楽器でも、それに携わっている人たちの中には、周りの人には理解できないくらいに調べまわったりする人もいる。

つい先日、ギブソンのAタイプのマンドリンA-4をある人が持っていて、それはなんともいえない音色の素晴らしいものだった。

シリアルナンバーを覚えておいて早速調べてみたが、2番違いのものがあった。どうやら作られたのは1911年。こんなことを事細かに分からせてくれるのだから、すごい時代になったものだ。

僕は随分前にスチュアート・マクドナルドの比較的安価なバンジョーを持っていた。ほとんどキットと呼べるものだったかもしれない。しかしながら結構きれいなインレイが入っているものだった。

正確にはスチュアート・マクドナルド・イーグル・キット・バンジョーだったかな。72年ころだった。今になっていろいろ調べてみても同じものは出てこないが、そのディテイルや外観はほとんどよく似ている。

後年になって、京都の占部さんというギター職人(現在はウクレレ製作家として高名)に4弦のネックを作っていただいて、それを装着していたことがあった。インレイは銀杏の葉っぱの形にしていただいた、かなりきれいなネックだった。

グレイト・レイクスのことはもう既に書いているが、当時(70年代)は本当に手に入りにくいものだった。

価値的に、ということではなく、物があまりなかったからだろう。1977年のマッド・エイカーズ来日の際(だったと記憶している)同行していたビル・キースを無理やり連れ出し、彼のリックを探り出し、様々な話を聞かせてもらった。

そこで本題だけど、と切り出し「あなたの使っているバンジョーは?」と訊いてみると「グレート・レイクス・エリート。手に入れるのは困難だよ。もう作っていないし」という旨の答えがかえってきた。

そして彼のそれは、彼好みのトップ・テンションで異常に重たかった。しかしながら、そのデザイン、ネックのフィット感、サウンド、どれをとっても素晴らしいものだった。

僕は、ほどなくして神戸のある楽器屋さんを通してグレイト・レイクスを手に入れたが、それはビル・キース・スペシャルという、エリートのワンランク下のものだった。トップ・テンションではなかったものの(かえって軽いからその方がいいが)それはそれは素晴らしく、僕のメイン楽器となった。

また、79年にアメリカのバークレーで同じくグレイト・レイクスのオープンバック・モデルであるヴァンガードを見つけた。

因みに、ミシガンの公演で制作者と出会った時、持っていたのはこのバンジョーだ。

80年代に入ると、京都でひとり、グレイト・レイクスNo 5というモデルを手に入れた、当時高校生だった男の子がいたが、彼曰く、ニュー・ヨークかどこかで作られたコピーらしい。もしこれを読んでいたら是非またバンジョー談義に花を咲かせてみたいものだが。

90年代後半になると、坂庭君がちょっと変わったスタイルのグレイト・レイクスを手に入れた。

インレイパターンは明らかにビル・キース・スペシャルだったが、ブラケットがテンション・フープの途中で引っかけるという非常に変わった構造だった。

それによく見ると、インレイもどことなく簡素なものであった。が、しかし、彼は気にしてかビル・キース本人にものを見せて確かめたのだ。

その結果「これは本物だ」という答えが返ってきたそうだ。そしてそのバンジョーは坂庭君亡き後、僕の手元にある。

結局、グレイト・レイクスをまともに見たのはビル・キースのもの、僕のもの、そして坂庭君のもの、京都の彼のものはコピーということで外すとして…それだけだ。