2016年 アイルランドの旅 4

カウンティ・カーローの小さな町に来てから約1週間。すっきり晴れた日はまだ1日しかない。

だが、生い繁る緑に雨が降り注ぎ、遠くに見える丘が美しく、風にそよぐ木々から落ちる水滴がキラキラと光る。

やはり、都会の雨では味わえない趣がある。

昨日は地元の高校生たちの演奏を聴いた。キアランの生徒さんたちだ。

アイルランドのどこでもそうだが、普通に実直なトラッドを演奏する子供たちの表情がとてもいい。

いかにも音楽が特別なものではなく、生活の一部であるということを否応なく感じてしまうのだ。

しばし彼らと紅茶を飲み、マフィンやスコーンをいただいて歓談し、家に帰ってきたらキアラン君がパスタを作ってくれる、と言い出した。

連日の仕事で疲れているだろうに、やる気満々なのでそのままお願いした。

出来上がったパスタは素晴らしく美味しかった。

ギリシャヨーグルトを使ったクリームパスタだ。トマトや玉ねぎ、セロリがふんだんに入った実に味わいのあるもの。レストランで12ユーロは取れるくらいのもので実に満足した。

それから少しお茶を飲んでいたら、カウチに座ったキアラン君から寝息が聞こえてきたので、僕らも少し休むことにした。

ここで急にキアラン君と、君付けにしてよび出したが、彼の兄貴であるデクランは、日本人でも知らない言葉を知っているくらいに日本語が堪能な人物だ。その彼が「キアラン君」と呼んでいたのでいつしか僕らもそう呼ぶようになっている。なので、時々君付けだったりそうでなかったりすると思うがお許しあれ。

今日はもう6月も終わるので、庭の手入れを手伝った。ここの庭は相当広い。都会で育っている僕らにしてみれば手入れはかなり大変な作業となることは間違いない。

ほとんど電動だが、刈り上げたものを捨てる作業は手動でやらなければならない。

キアラン君が芝や木々を刈り上げ、希花がそれを熊手で集め、僕が裏山に捨てに行く、というトリオ編成で行った。

時々芝刈りを交代したり、希花が裏山に捨てに行ったりした。

9時過ぎに作業を終えたが、まだサンサンと陽の光が降り注いでいる。ただでさえも労働の後のビールは美味いだろうが、こう明るかったらやっぱりどこかへ出かけて飲もうというはなしになってしまう。

が、しかし彼らにとっては特別なことではない。

街まで出ると、まだ早いのか、バーには5〜6人のお客さんしかいなかった。なかには推定80代後半と思えるお婆さんもいる。

10時半も過ぎるといつのまにかカウンターが埋まってきて、座りきれない人たちも立ち話に興じる。

これは明らかに文化だ。

日本で例えて言うならば、というような事柄が見つからない。

11時半、パブを出るとやはり西の空はまだ明るい。

夏はすぐそこまでやってきているのだろうが、とてもそうとは思えないくらいに寒い。

パブはもう賑わっている。その賑わいを後に帰路についた。