2017年 アイルランドの旅 11

816日(水)雨のち曇り。7時過ぎに起きた時にはかなり雨が降っていた。

今日はブレンダン・ベグリーとAdeaという小さな村で待ち合わせをしている。

エニスまでブライアンが送ってくれるのでそこからバスで行くことにしている。

どこの街に行っても「あんた達Fleadhに行くんでしょ?」と言われるが、それで盛り上がっているエニスは僕らにはいつも通過地点だ。

「いや、あんなにすごい人波は東京だけで充分」と言ってお茶を濁す。

Adeaの待ち合わせ場所には時間通りにブレンダンが待っていた。

一路ディングルを目指す。

途中でいくつかのレストランに立ち寄ったが、どこも時間的にランチタイムは終わっていたので、ディングルまで我慢。

結局、本日の演奏場所St.James Churchのすぐ近くの小ぢんまりしたレストランで食事をした。

ブレンダンが全ての支払いを済ませて早々と別な場所に行った。僕らは直接教会に向かう。

サウンド・チェックは6時から、と言われたが、やっぱりアイルランドだ。誰も来ていない。

庭で野良猫が数匹ウロウロしている。

しばらくすると、スタッフが現れてあっという間にサウンド・チェックの始まり。

アイルランド人というのは、やり出すまでは時間がかかるけど、やり出したらとんでもなく早く終わらせるという話を聞いたことがある。

この日のサウンドマンもあっという間に音を決める。それも最良の音を。

かくしてコンサートは7時半から僕らがファーストハーフ、ブレンダンと息子のブリアンがセカンドハーフを演奏。

コンサートが終わるとすぐに近くのTommy OSullivanの経営するパブへ。ここでも演奏だ。

教会の静けさとはうって変わってこちらは思い切りたくさんの人が飲んで楽しんでいる。

それでも注意深く音楽を聴く人で溢れているのだ。

ブレンダンが言う。「John Sheehanが来ている。引っ張り出そう」
かくして世界的に有名なDublinersのフィドラーが加わったわけだ。

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セッションは限りなく続く。ケイプブレットンスタイルの若手Rosie MacKenzieという女性も加わって迫力ある演奏を披露する。

1時も回ったころ、連日の仕事疲れがたたっているブレンダンと一緒にその辺で失礼することにしたが、まだセッションは続いたようだ。

暗闇をすっ飛ばすブレンダン。

彼、自慢のトレイラーハウスに到着したのが1時半頃。

ワインを飲んでしばし話をして、眠りについた。

817日 (木)快晴。

855分。よく寝たようだ。しばし散歩をしてケリーの雄大な景色と澄み渡った空を、そして冷たく美味しい空気を楽しむ。

10時過ぎにみんな起きて来た。ブレンダンは相当疲れているようだ。

3分の1ほどの体の希花さんもブレンダンの10分の1ほどの動きで疲れ果てているようだ。

それというのも、この家は彼が自らの手で組み立てたトレーラーハウスなので、都会暮らしに慣れている現代っ子には相当厳しいものがある。

そのあまりに大きいギャップから尚更神経が疲れているのかもしれない。

僕も都会っ子だが、戦後間もない生まれなので、多少のことには動じない。といえどもこの家には筆舌に尽くしがたいものがある。

何はともあれ、彼の建てた家はいろんな意味でアイルランドの、特にミュージシャンの間では有名なのだ。

そんな家の中で聴くアコーディオンの音色にはまた格別な味わいがある。

時間は矢のように過ぎてしまい、11時に出発してディングルに向かう。僕らはそのままゴールウェイに行くことになっている。

ランチを一緒に食べよう、という話になり、ブレンダンお気に入りのレストランに入った。

おしゃれで、食材にも気を配った小ぢんまりしたとてもいいレストランで前にも立ち寄ったことがある。

また彼がご馳走してくれるというが、よっぽど日本でいい思い出を作ってもらった、と感じているのだろう。

こちらが出したお金を全く受け取らず、次はアイルランドNo.1のコーヒーを飲みに行こうというので、それは僕らがご馳走することにした。

確かに美味しいコーヒーでお店も大繁盛していた。しばし一緒に時を過ごし、僕らは一路ゴールウェイに向かう。

彼も早く帰ってゆっくり休んだ方がいい。ブレンダンに感謝だ。

ゴールウェイにはトラリーを経由し、途中リムリックに寄ってそれからゴールウェイ、という道のり。

着いた時にはすっかり暗くなっていた。945分。ずいぶん日が短くなったものだ。とはいえ、今年の来訪は8月に入ってから。いつもの7月は11時でも

まだうっすら明るいので時間の感覚がおかしくなる。

友人のアパートまで歩いていると、後ろから「ジュンジ!」という大きな声が響いた。振り向くとミッシェルが立っていた。

ディ・ダナンでボーカルを担当していたミッシェルだ。

ちょうど通り過ぎたレストランで食事をしていた、ということ。よく見つけて声をかけてくれたものだ。

その少し後で今度は、フルートとブズーキのジョージ・グラッソに出会った。

彼はまだ高校生だった頃カリフォルニアで僕とトニー・マクマホンのコンサートに来ているが、今はれっきとしたプロのミュージシャンとして

様々な活動をしている。

やっぱりしばらく住み慣れていた街だ。明日からも多くの再会があるかもしれない。