2022年 アイルランドの旅 43

朝からすごく良い天気の10月2日、日曜日。

今日は、アコーディオンとフィドルの夫婦デュオ、アンダースとまよさんの家に午後のひと時を過ごしに行く予定がある。

歩いても20分ほど。

2016年頃、彼らの家を訪れているが、このコラムの2015年8月、彼らに子供が産まれた、と書いている。

確かその子がまだヨチヨチ歩きだったので、それはやっぱり一年後くらいだろう。

もうすっかり大きくなって、あの時はまだいなかった下の男の子も部屋の中を元気に走り回っている。

アンダースはデンマークの産まれ。

そこで、北欧でしか手に入らない、美味しいゴートチーズを食べるか?と勧めてくれた。

チーズは好きだけど、全くの初心者でブルーチーズやゴートチーズはかなり苦手だが、彼が「ちょっとだけ」と言ってスライスしてくれた。

それが、なんというかまるで生キャラメル。

茶色いチーズで、ゴートチーズをベースにしてキャラメルを混ぜてあるらしい。これは危険なくらい美味しい。

が、デンマーク以外の土地ではまず手に入らないというから、残念やら喜んで良いのやら。(なお、最近は日本にも入ってきているらしいという噂も聞いた)

そして今度は彼が焼いたクルミのパンにそのチーズをのせて…これがまた絶品。

まよさんは美味しい緑茶を淹れてくれて「もったいないから良いよ」と言うと「いや、こういうものは分かる人に飲んでもらわないと」と言いながら、

次は彼女の作ったヨーグルトムースタルト(これ、正式な名前じゃないと思うけど、勝手に名付けました)これがまた、見かけも味も絶品。

そんな楽しいひと時に時間も忘れて4時間以上が過ぎてしまった。

ちなみに僕は、小豆を炊いて白玉粉代わりの米粉を持って行ったら、帰った後早速ぜんざいを作った、と言って写真を送ってきてくれた。

子供達とアンダースのぜんざいを前にした嬉しそうな顔がなんとも言えない写真だった。

夜になると、ブライアン・マグラーからホストの仕事が入った。

パブに向かう途中、見たことのある顔が通りの向こう側を歩いている。

マリー・マクナマラの旦那さんのケビンだ。

ちょっと立ち話をすると「マリーさんも娘のサーカもみんないるよ」と言う。

僕らは9時から。その前にアコーディオンのコナー・コノリーも交えてやっていたらしい。

しかして、みんなと顔を合わせたが、中に1人、タラケイリバンドのドラムのおじさんがいた。

僕は今までに顔を合わせて話したことはなかったが、絶対にどこかで会っているんだろう。すぐ僕の横に来て話し始めた。

「ずっと前に日本から大きな体のフィドラーがきたなぁ。知ってるか?髪の毛がモジャモジャの」

葉加瀬太郎だ。そう言えばなんかタラまで行って彼らと交流したフィルムを見たなぁ。

結局、この音楽はかなり手強い、というような結論だったのを覚えている。

おじさんは盛んに「ちょっとうるさ過ぎるか?」と言っていたが、やっぱりベテランのいい演奏家だ。周りを気にしているし、もう多分70年くらいケイリをやっているのだろう。いかにも曲の成り立ちが分かっているようで、確かにドラムというのはちょっと音が大きいけど「はい、うるさいです」なんて言えない。

アンドリューの事や、彼の家族のこと、あのエリアのミュージシャンの事などを話し合うとおじさん一言「あんた、俺より詳しいな」

今年78歳ということ。まだまだ元気で満面の笑顔が素晴らしかった。

11時にお開きになって、それから少しまた話をしながら飲んで、いや~充実した1日だった。