2023年アイルランドの旅 31

今回は「友あり、遠方より来たる」編とでもいおうか、伊豆のギター制作家、櫻井航くんが僕らを訪ねてきてくれたことを中心に。

その日僕らは演奏のためにウォーターフォードに来ていた。

トラモアにある、ラフカディオ・ハーン日本庭園、言わずと知れた小泉八雲ゆかりの地。

航くんは数日間のアイルランドの旅、最初に選んでくれたのが僕らとの再会。

ちょうど初めて出会ってから10年になる、という。

以来、様々な場所で音響を担当してくれ、またギター制作に関する多くの知識を聞かせてくれた人。

今回の演奏もマナス、ギャリーとのクワルテット。

庭園は美しく、天候にも恵まれたが、前日はすごい雨だったらしい。ひょっとしてまたもや晴れ男全開だったのか。

お客さんも沢山来てくれたし、中にはこちらに住む日本人の方もいた。

まれかさんが「君が代やろうか」と言ったので急遽君が代も演奏。

その日本人の方が「まさかここで君が代を聴くとは思わなかった」と感激していた。

マナスとギャリーも満足そうにポカンとしていた。

サンフランシスコ時代の知り合いも偶然近くに住んでいて駆けつけてくれたけど、当時小さな女の子だった娘さんがあれから30年ほどになるのかな、面影といのは分からなかったけど居たことは覚えていた。

そして、コークからわざわざリズとマットのクラニッチ夫妻、カーローからは1時間ほど、ということでキアラン君も。

帰りはマナスとギャリーとは別れてキアラン君の所へ。

夜10時に、れいこさんとも合流。いつものカーローの夜が始まった。

キアラン君は嬉しそうにチーズ、ガーリックブレッド、ハムそしてワインも開けて、いつもの面白さ全開。

フルートも出してきて数曲。

これには日本から到着したばかりでくたくたのはずの航くんも「凄い肺活量」と感心していた。

それでも1時ころには寝床について、僕はまた早起きで6時には裏庭のウサギを鑑賞して、あ、そう言えば4時ころだったかな、それから僕が起きるまで猫のペンギンが僕の上で寝ていた。ゴロゴロという音がしばらく聴こえていたっけ。

次の日にはゴールウェイに戻るので、航くんを含めた僕らをキアラン君がキルデアまで送ってくれた。

そこで観た光景はまた違ったもの。なにが面白かったかというと、羊たちが道のわきにいっぱい居たのだが、どこにも柵がない。

なので道路を勝手に歩いていたりする。これには驚かされた。

考えてみれば、これなら車はスピードを出せないし、周りの住宅にとってもいいのかもしれない。

そんなキルデアを後にして昼過ぎにゴールウェイに着いた。

疲れている航くんをパブに連れていき、先ずいっぱい。更にダニエルのドーナツを食べ、そしてパブフードを食べに出かけ、また一杯飲んで、9時半からチコリでミック・ニーリーがやっているのでそれまでにワインとチーズを少々。

さすがの航くんもミックたちの演奏を聴きながらパイント半分くらい飲んで「あ、僕もうだめかも。帰って寝ます」ということでその日は沈没。

次の日にはダブリンに戻るという弾丸ツアーなのでせっかくだからジモピーのあゆ子さんにモハーの断崖まで連れて行ってもらった。

天気も上々。またしても晴れ男の面目が立った。

崖を見ながら歩いていたら、オーイン・オニールがアコーディオンの人とバンジョーを弾いてバスキングしていた。

いつもはエニスで歩いていると出会ったりしていたが、今回エニスには立ち寄っていなかった。それがまさかこんな所で出会うとは…。旅は時として驚きの連続だ。

モハーを堪能した航くん、帰りはドゥーランに寄って、僕らがよく演奏していたガス・オコーナーというパブでいっぱい。それからゴールウェイに戻り「いっぱいいくか」と誘ってみようと思ったがアイスクリームにしておいた。

ダブリンに着いてから寝る前にちょっとどこかで飲んだらいいし。

夕方、5時15分、航くんはダブリン行きのバスに乗って行った。多分バスの中で爆睡したことだろう。

なんと2日間でダブリン~キルケニー~トラモア~カーロー~キルデア~ゴールウェイ~モハー~ドゥーランを巡り、ビールとワイン攻めにあったとんでもない弾丸ツアーだったはずだ。

そういえばゴールウェイで楽器製作者のポール・ドイルの工房も訪ね、かなり話も弾んだようだった。

アイルランドの後も数か所寄って楽器制作の現場などを見て帰る予定だと言う。

修行のためにイギリスに住んでいたのはずいぶん前だったらしいが、また本人の中で胸騒ぎが起こっているかも。

そんな充実した旅になったと思う。

今日のゴールウェイは15℃で晴れたり曇ったり。

だんだん日も短くなってきた。