甘いもの

最近また甘いものをよく食べるようになった、と感じている。

自分で「感じている」というのもおかしな話だが。

お正月の伊達巻も今年は自分で作ってみた。

非常に簡単で、しかも市販のものとあまり変わらない見かけのものが出来た。

ま、高級なものと比べると味はフラットかも知れないけど、ああいうものは多分良い魚のすり身と厳選された卵。出汁も厳選されたもの、とか、そういった感じだろう。

僕はスーパーで買ったはんぺん、安い卵。出汁もその辺で売っているものを使うけど、充分満足できるものになった。

伊達巻の違いが分かる男、なんて…。

ホットケーキも100均でリングみたいなやつを買ってきて、そこに流し込んで蓋をして15分位待って背の高い真ん丸のホットケーキにする。

これがまたおしゃれなお店で出している様な感じに出来るんだなぁ。

自分で作ることも好きだけど、最近のコンビニのスイーツはあなどれない。

洋菓子も和菓子もちょっと食べたくなったら手軽に買うことが出来るし、値段だって比較的安い。

日本はたいしたものだ。

でも、やっぱり東京で言えば、大國屋のおだんご、谷口商店の甘納豆、ポルトガル菓子ド―ス・イスピーガのプリン、京都は出町双葉の豆大福などは絶品。

静岡発祥のキルフェボンのタルトとか、言い始めたらきりがない。

八天堂のクリームパンとか…饅頭好きの省悟も好きだろうなぁ。

東芝で107ソングブックシリーズの録音が終わったら、プールに寒天やプリンを作って飛び込みたいとか二人で言っていたなぁ。

最近想い出したもので、萩の月、というお菓子がある。

仙台のお菓子だが、僕はこんなことをよく覚えている。

ナターシャーで東北をまわっていた時、汽車の窓から…ハンカチは振っていない…何気なく、流れていく外の景色を見ていた。

見渡す限りの田んぼだった。

その前の晩だったか、前の前の晩だったか、省悟と二人でホテルの部屋でテレビを観ていた。

なんかUFOに連れ去られたという農家のおじさんが出ていた。

おじさん、こう言っていた。

「なんか訳の分かんねーうちに光さ浴びせられただ。どれくらいの時間が経ったのか分かんねーけど、ふっと気がついたら地上に立っていた。辺りを見回してみたら、田んぼだなぁ。おら驚いた。田んぼだなぁ」

それを見て二人で笑い転げて「田んぼだなぁ」といいながら寝た。

汽車の窓から二人で「田んぼだなぁ」と何回言っただろうか。

そんな中、ある看板が目に付いた。

仙台銘菓萩の月、と書かれていた看板に超美味しそうなものの写真がドカーンと。

まるで月に初めて降り立った宇宙飛行士が、月の石に呼ばれたようだった、という逸話にも似た感覚でその看板を凝視してしまった。

「省悟!寝ている場合ではない。あれを見ろ!」「なんだ。あ、田んぼだなぁ」

「いや、田んぼじゃなくてあの看板」

汽車はそれほど早くなかったので二人でよだれこそたらさなかったが見つめてしまった。

恐らく、松任谷由実よりも早く僕らが見つけたかもしれない。

その萩の月、東京ではなかなか手に入らないが、つい先日、友人が送ってくれた。

埼玉の人で、仙台物産展みたいなのがやっていてそこで手に入れました、とわざわざ送ってくれたのだ。

開けてびっくり。思わず歌ってしまった。

「月が~出た出た、月がぁ出た~あよいよい♪」…これは福岡か…。