なんとキャッチ―なタイトルだろう。
先日、京都からナターシャーの元スタッフ、西田君がやって来た。
ここらではロッキードと呼ばれている彼。
通称名が「コーちゃん」なので、何故そう呼ばれているかはお分かりだろう。
因みに、越路吹雪も「コーちゃん」か…。
彼は、いつもSuicaを探している。
電車に乗る時、電車から降りる時、ポケットからありとあらゆるものを出しては、おかしいなぁ…と。
「さっき財布の中に入れていたけど」と言うと「ほんまか?」と言って今度は財布を探す。
世の中で探し物をすることほど無駄なことはないと思う。
「あれどこいったかな?」とハンガーにかけた上着のポケットを探る時。
絶対にありえない引き出しを開けてみる時。
しまいには冷蔵庫まで開けて財布を探したり…ま、あんまりないか。
僕は割と置き場所を決めている方だが、それでも急いでいたりすると想像もつかないところに置いてしまう事がある。
ロッキードコーちゃんだが、今回も見せてくれた。それも一日に何回も。
アメ横、皮製品の店でベルトを購入した彼。
省ちゃんの買い物の時のように僕は何を見るわけでもなく、店の中を眺めていたら、ふと目に入ったのが古びた皮の財布。
ショーウインドーの上に売り物のようにして置いてあったそれを、僕は「これも売り物?」
と、店の親父さんに訊いたら「それ、わしのや。そんなとこに…」と、コーちゃん。
そのアメ横に出掛けた時も改札口に入る時、出る時、やたらと時間がかかった。
そのおかげで僕はある物を見つけた。
仙台物産展。
なんと「萩の月」と堂々と書いた旗がたなびいているではないか。
まだ探し物に躍起になっているコーちゃんを無視して、僕はそちらの方に吸い寄せられてしまっていた。
つい先日、友人が送ってくれたばかりなのに、そうそう買えないので、また買ってしまおうと、甘いものに本当に目が無い自分を反省しながらも、何といっても萩の月だし、と言い訳をして購入。
やっぱり美味い、お、これはいつものスーパーのアジア人トリオ、ニャンちゃんと王さんとテ―さんにあげようと思い、持って行った。
僕もアメリカで働いていた経験上、よその国で働くのは大変だろうな、と思うので、この子達とはよく会話を楽しんだり、ちょっとしたお菓子を持って行ってあげたりしている。
そしたらテ―さんが、驚いたことに「あ、これ美味しいですよね。仙台のお菓子ですよね」と流暢な日本語で言った。
「おぬし、できるな!」というところだ。
しかし、美味しいお菓子は心を落ち着かせてくれる。
ところでロッキードコーちゃんだが、別れ際「それじゃぁね」と言いながら改札口まで来て、僕が中に入るとまたしても、後ろの方でポケットのものを全部出しながら首をかしげている。
しばらく待ったが一向に見つからないらしい。
ま、帰る方向も逆だし、先に行けばいいか、と手を振って階段を下りた。
戻ってから、立ち寄ったドクターサウンドの小林君に今日のお礼と、結局そういうわけでコーちゃんは置いてきてしまった、とメールしたらこう返事が来た。
「さっきお店で財布出した時、中にSuicaありましたよ」
※なお、コーちゃんは他に類をみないほどに気が利くし、動きも機敏だし、話も頓珍漢なことは無いので、いわゆる「天然」というところなんだろう。