2012年アイルランドの旅 ~7月12日 ミルタウンマルベイ~

今日もどんよりとして寒く、時折激しい雨が降ってはサッと止む。

朝、キッチンに行くとブレンダンがコーヒーを淹れていた。再会を祝し、コーヒーとポリッジでしばし歓談。今日は午前中アコーディオンのクラスがあるので、午後ちょっと先のベルブリッジホテルというところのロビーで待ち合わせることにした。

美しい海岸線が臨めるスパニッシュポイントの近くにあるこのホテルに居ると、見た顔がぞくぞくと現れる。

フィドラーのオシーン・マクディアマダが気軽に声をかけてくれる。アコーディオンのジョー・バークと奥さんのアン・コンロイ(今はバーク姓だ)は、むかし何度かセッションで同席させてもらったことがある。

ブレンダンが若い男の子の生徒さんを連れてきた。一旦家に戻り、すこし一緒に弾こう、ということに話が落ち着き、お決まりであるキッチンセッションのスタートだ。

若い子は若干15歳。まだまだこれからだが、真面目にチューンに取り組んでいる。席を外したブレンダンに変わり、シェーマスの息子であるコンサルティーナ弾きのオーインが横でサンドウィッチを作りながら、そこのメロディは違う、そこのタイミングはこうだ、など事細かに教えている。みんなそうして曲を覚えていくのだ。

キッチンでのセッションを終え、また街に出てみる。いくつかのパブを見て歩くと、少し大きめのセッションをやっているところで、フルートを吹いていた女の人が「ジュンジ」と大声で呼んだ。キャサリン・マカヴォイだ。一緒にやろう、と言ってくれたので、今一緒に演奏している人だ、と希花を紹介してセッションに加わった。

小さい希花がもっと小さくなっている。それもそのはず、キャサリン・マカヴォイについては僕が以前のコラムに書いたようなことをいろいろ話していたからだ。

15人ほどのそのセッションに、ひとりボーンズを持ったおじさんが現れた。いい気分でカチカチとボーンズを鳴らしている。少しうるさ過ぎる。気をつけたほうがいいんじゃないかな、と思っていた矢先にキャサリンが演奏をやめて立ち上がった。「ちょっとあんた。なんでもかんでもたたきゃいいってもんじゃないわよ。うるさいからやめてくれない?」関係ない希花までさらに小さくなっている。他の人も聞いて聞かないふりをしている。確かにそのおじさんが出て行った後はいい感じの音が響き渡っていた。僕の耳元にキャサリンがつぶやいた。「わたしは音楽を聴きもしないくせに参加してくるやつが大嫌いなの。あんなのは同じ場所にいてほしくないのよ」

セッションが終えてキャサリンにお礼を言って別れた後、アレック・フィンが歩いてきて「ハイ、ジュンジ」と声をかけてきた。ボーイズ・オブ・ザ・ロックのカハル・マコーネルとも挨拶を交わし、その日も少し早い目に帰ることにした。帰る直前に、ジョセフィン・マーシュの相方であるミック・キンセラに出会った。ハーモニカ吹きとして有名な人だ。

そしてミックとの出会いをきっかけにして、ジョセフィンからその晩電話がはいった。「明日の夜、キルラッシュというところでやるんだけど是非来てほしい。久しぶりに一緒にやりましょう」