7月21日 めずらしくよく晴れている。
リムリックを発ってエニスへ。
バスにフィドルを持った東洋人の女性が乗ってきた。日本人でないことは明らかだが、どこの国の人だろう。むかし、アメリカに住んでいる日本人のフィドラーが言っていた。「僕ら、よく中国人に間違われますけど、中国人は自分の国の文化に誇りを持っているから、他の国の音楽なんかやらないですよ」もしかしたら一理あるかもしれない。
同じところで降りたので声をかけてみた。
タイ人でニュージーランドに住んでいるらしい。そして友人がやっているアイリッシュにはまった、ビギナーフィドラーだ。
宿泊するところが同じなので一緒に歩いた。僕らは着いたらすぐにカスティーズ向かった。やっぱりあまり長い間コンサルティーナを借りているのは心配なのでとりあえず返すことにしたからだ。
店に行くと、貸してくれたジョンはおらず、イタリア人のパウロというアコーディオン弾きが店番をしていた。
そこで、事情を話し、それでもまだ考えているから、誰か他に欲しいという人が現れたら必ず連絡をくれるように念を押しておいた。ジョンにも話しておいてくれる、ということで、しばしコンサルティーナとお別れ。
夜は久しぶりにケリーズというパブでアンドリューとの演奏を楽しんだ。
7月22日 曇り。夜から雨になる。
お昼、ホステルの台所を使って、フレンチトーストを作るが、火は弱いわ、フライパンは引っ付くわで、まるでスクランブルエッグのようなものが出来た。
それでも、アイルランド人の朝食よりはましかもしれない。
それから、近くのスーパーマーケットにでかけると、いたるところにアンドリューみたいな人がいる。
彼は典型的アイリッシュ顔かもしれない。あれもアンドリューみたい、あれもアンドリューみたい、あれ、あそこから歩いてくるのも…といっていたらアンドリューだった。
夜は購入した豚としょうがとしょうゆで“豚のしょうが焼き定食”を作った。あー、なんと素晴らしい味だろうか。しょう油は偉大だ。
ブローガンズというパブでジョセフィンとミックがセッションをするので、8時ころ街にでかけた。
セッションには例のタイ人も来た。やはり日本人の奥ゆかしさと違い、数少ないレパートリーを結構頻繁に弾いたりする。そうして数年後にはかなり弾けるようになるのかも知れないが、知らない曲にまで適当に参加されてしまうと、こちらのコード感覚に支障をきたす。気になって分からなくなってしまうのだ。
その日は、こちらに住む日本人のフルートを演奏する“ユカさん”ともお会いして、話が弾んだ。
ジョセフィンのセッションは彼女の人柄からとても人気があるそうで、僕らにとっても大好きなプレイヤーの一人だ。